名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書 463)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035662

感想・レビュー・書評

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  • 西洋史が好きな方でも、詳しくない方でも楽しめる一冊だと思います。
    オールカラーで満足度も高いです。
    2014.01.10

  • 絵画、名画を通してフランスブルボン王朝について語られる本作は、姉妹作のハプスブルク家とは縦糸と横糸のように絡み合いながら結び付いている。
    著者自身が書いてるように前作では項目にすらなっているスペインのカルロス4世が、本作では端役であったり、ヨーロッパ大陸の複雑な血縁外交関係が、透かして見える。
    また、本作で扱われている絵画の多くはルーブル所蔵だが、同じ作者、ゴヤやルーベンスの作品は前作の作品が所蔵されるプラドでも見れるところも、敵であったり味方であったりしながらも、密接な関係があったことを窺わせてくれる。

  • ユベールロベールについて書いてる本がこれくらいしかなかった。ここでもそんなに触れてないけど。廃墟のルーヴルがショッキングな絵だったということだけ分かった。

  • ハプスブルグ家に続く、名画で読み解くシリーズ第二弾。
    家系図や年表も付録されており、
    西洋史に詳しくなくても面白く読むことができる。

  • わかりやすく簡単に書かれていてテンポよく話が展開していくため、読みやすい。
    個人的には前作であるハプスブルク家の方が好きだった。

  • 絵ってすごい。
    それぞれの絵に込められた意味がそれぞれ歴史をつくっていて。
    まるで、本の挿絵のように思えた。

  • 中野京子さんらしい軽妙なテンポで読み進み、あっという間に読み終わる、軽〜い歴史案内。興味深い絵や写真がふんだんに配されているが、悲しいかな新書の紙面は絵画を鑑賞するには小さ過ぎた。虫眼鏡で細部を確認してしまった。それをしたくなる位の筆力が著者中野京子にはあると思う。
    冒頭に示されているブルボン家系図が非常に見にくい。この家系図は12章を通して何度も確かめたくなるページなので、もう少し力を入れて制作して欲しかった。

  •  16世紀のアンリ四世から,19世紀のルイ・フィリップ一世まで。フランスブルボン王朝の歴史を,名画とともにたどっていく。とてもテンポの良い文章でさくさく読める。
     ブルボン朝って徳川幕府と同じくらい続いたんだな。タイムラグがあって,ブルボンの方が20年くらい早いけど。ヴァロア朝のアンリ二世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスが産んだマルグリットが,フランスブルボン朝の開祖,アンリ四世に嫁いでいる。
     カトリーヌは,三人の息子が次々王位を継ぐのを見,続く王位争いでヴァロア朝の終焉を予感しつつ死ぬ。彼女の死後は娘婿のアンリ(四世)が,息子のアンリ(三世)を暗殺してヴァロア朝断絶。この争いにはもう一人のアンリ(ギョーム公)も参加していた。世に言う三アンリの戦いだ。
     三アンリの戦いは,宗教問題に発していたが,勝ったアンリ四世も,プロテスタントの押しつけは得策でないとしてカトリックに改宗。ナントの勅令を出し,30年続いたユグノー戦争が終結(1598年)。以後,フランスではブルボン朝が安定し,繁栄の礎が築かれた。
     最盛期は何と言ってもルイ十四世。在位期間は72年というからすごい。昭和天皇よりも長い…。でもその代わり,その間に王位継承者の息子と孫を亡くし,曾孫に王位が継承されることに。それがルイ十五世。
     太陽王ルイ十四世は,戦争好きで,あちこちで戦争していた。スペイン王家から嫁いできた妻マリア・テレサの持参金不払いのため,不問の約束だったスペイン王位の継承権を主張し,スペイン継承戦争の末,息子をスペイン王につけている(フェリペ五世)。これがスペインブルボン朝の始まり。
     こうしてスペインハプスブルグ家の断絶により生まれたスペインブルボン朝は,なんと現在まで続いている(フアン・カルロス一世)。ルイ十五世が身体頑健でなかったら,そこでブルボン家もスペインハプスブルグ家のように断絶していたかも知れない。ルイ十四世は幸運だった。
     著者の文章は少々の誇張があるにしても大変読みやすい。ルイ十五世の寵姫ポンパドゥール夫人の肖像を評したくだりを引用すると,「この絵の彼女は、寵姫になって十年ほどたつ三十四、五歳。ふつうなら容色の衰えや、ライバルになりそうな若い愛妾の存在に不安を覚えそうなものだが、王の心を完全に掌握している余裕が、ごく自然なリラックスした態度に表れている。表情は、まさに有能なキャリアウーマンのそれだ。このまま現代高層ビルのオフィスへ連れてきてパソコンの前に座らせても、なんら違和感はないだろう…美貌と才覚でのし上がる女性の典型といえる。」p.117
     フランスブルボン朝の終焉は,大革命で突然来たわけでもなく,共和制とナポレオン帝政の後には王政復古があった。1789年の革命で亡命していたルイ十六世の弟が1815年即位(ルイ十八世)。その死後そのまた弟が即位してシャルル十世に(1824年)。
     1830年の七月革命でシャルル十世は退位させられ,より民主的なルイ・フィリップ一世が即位。しかし彼もまた18年の在位で保守反動化してゆき,二月革命で追放されてようやく王政は終焉を迎える。
     もっともそのあとの共和制で大統領に選ばれたルイ・ナポレオンは,のちにクーデターで皇帝ナポレオン三世になる。ブルボン朝末期からのフランスは,政体が本当にくるくる変わってものすごい…。革命ってなかなかすんなりとはいかないよなあ。

  • とても面白くまた名画があっていい感じに仕上がっている。

  • 今日は、中野京子さんの『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』と『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』を読みました。

    中野さんは某地方紙の夕刊で毎週連載のコラムを書いていらっしゃいました。それで興味を持ったのがきっかけでしたが、名画を取っ掛かりにして様々な歴史的エピソードが語られるので、西洋史に疎い私のような人間でも十分に楽しめる本でした。

    『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』ではハプスブルクを中心にして12のエピソードが語られ、『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』ではハプスブルクと因縁浅からぬブルボン家が中心となり、前作では脇役だった人物が主役となっています。
    2冊読めば両者の視点から様々な事件の深いところまで楽しめるので、よりいっそう歴史のダイナミズムを感じることが出来て面白いですよ。

    これらの本を読むと、人間一人一人の行動によって歴史は動いているんだな、ということがよく分かります。
    特に印象に残っているのは、駒として動かされる人間の悲劇です。
    代表的な人物と言えば、かの有名なオーストリアの女帝マリア・テレジアの娘、マリア・アントニア(フランス読みでマリー・アントワネット)でしょうね。
    勉強嫌いでおてんばなマリーはどこか小さな国の王妃にでもなっていれば案外幸せな人生を送れたのかもしれないのに、姉が亡くなり玉突きよろしく礼節を重んじる超大国フランスに嫁がされてしまったばかりに、フランス革命の起爆剤になり、ギロチンで処刑されるというなんとも恐ろしい最期を迎えてしまいます。

    また、スペイン・ハプスブルクの家系を辿っていくと、外から新しい血を入れなければその家系は自滅してしまう、ということが恐ろしいくらいに分かります。
    「高貴な青い血」にこだわって近親婚を繰り返したばかりに、(叔父姪婚が当り前のように行われ、この一族の家系図は恐ろしいことになっています)満足のいく子どもに恵まれず、スペイン・ハプスブルク家は自ら衰退の道を辿ってしまいます。

    それから、今のスペイン王室にブルボンの血がちゃんと繋がっているのが驚きでした。執念深いというべきか、しぶといというべきか、そこまでするのかという感じですが、今まで逞しく生き残っているのはすごいですよね。
    こういうご先祖様の様々なエピソードが残っていて家系図を何代も遡っていける家に生まれるのって一体どんな感じなんだろうと疑問に思います。ちょっと私には想像出来ません。

    それにしても、カトリックとプロテスタントの宗教的対立というものは凄まじいなと感じます。その辺をのらりくらりと曖昧にかわし信仰の自由を認める王がいたかと思えば、徹底的に他の宗教を弾圧し大量虐殺を命じる王もいます。王の態度に振り回される民衆の気持ちになってみると、なんだかやりきれないですが。

    他には、王権神授説というものがありますが、「王権は神から授かった絶対のもの」だということを民衆が本当に信じていた時代があったのだというのが非常に興味深かったですね。
    ピューリタン革命を起こして王を公開処刑し共和制を樹立したことで有名なクロムウェルという人物がいますが、王を神のごとき存在と信じていた民衆はその事件に戦慄し、クロムウェルの死後、またたく間に王政復古し、クロムウェルの一族郎党は皆殺し、本人の遺体も掘り起こされ、改めて斬首の後、長い間晒し台に放置されていたという衝撃的なエピソードもありました。

    他にもマクシミリアン一世だとか、カール大帝だとか、ナポレオンだとか、ブラッディー・メアリーだとか、アンヌ・ドートリッシュだとか、皇妃エリザベートだとか、まだまだ興味深い話はたくさんあるのですが、あまりネタバレし過ぎると読む楽しみがなくなるので、このくらいでやめておきましょう。

    今の私たちの生活から考えると、ここに描かれている人々の生活はまるで別世界で、ファンタジーや物語の中の出来事のようにも思えます。
    ですが、それもほんの百年か二百年か何百年か前の世界で実際にあった現実の出来事なんですよね。
    それが、なんというか不思議で仕方ありません。
    しかし、自由を獲得する人々の血生臭い闘いの上に、今の発展した社会と私たちの暮らしがあるのだと思うと、もっと今を大事に生きなきゃいけないなと強く思います。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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