白光 (光文社文庫 れ 3-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334744649

感想・レビュー・書評

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  • まさかの展開
    家族やその繋がりのある人、全ての人が一人の少女に関わっていたなんて、、、
    ミステリー好きに読んで欲しい!
    特に人間の裏の顔(人の醜さ)がすごいおもしろい

  • 少女が殺される。その母親、父親、母の姉、その夫、祖父、他界した祖母、母親の不倫相手。その家庭に関係する人々の心の中に潜んでいる闇が暴かれながら事件の真実が少しずつ明らかになる。作者の小説によく描かれるドロドロの人間関係は、文庫本のカバーにあるように救いのかけらもなかった。読後感が悪いかと言えば、そうは言い切れない気持ちになるところが恐ろしい。

  • 二十年前の作品。
    今や、血の繋がった我が子を餓死させたり、赤ん坊を骨折するほどの力で殴ったり、なんて報道されるだけでもゴロゴロ転がっており、この本の結末を受け入れるのに覚悟なんていらないのではないだろうか。
    なんとお行儀のよい人たちだろう。薄く色の付いたセロファンを何枚も重ねて闇を深めるようなこの物語は、もはやメルヘン。現世はヘドロにまみれている。

  • ある家で幼い姪が殺害され庭に埋められる。その事件を機に両家の家族等が次々に自分の心情と認識を告白していくことで、二転三転しながらも事件の真相が明らかになっていく作品。

    1つの真実に対して、誤解や認識不足により登場人物それぞれの事実が存在するため、読者としては情報の上書き、追加を繰り返さなければならない読みごたえある作品だった。

    また、姪の殺害には到底無関係と思われる人物まで何らかの闇を抱えており、嫌気が差すくらい人間の闇を見せられる作品でもあった。
    帯に書かれているとおり、本当に、この物語に「救い」なんてひとかけらもなかった。

  • 母に薦められて初めて読んだ連城三紀彦作品。「あ、この文章の感じ好き」というのが読み始め1ページでの第一印象だった。誰かの視点で必ず語られ時間が進んでいくが、不思議と混乱することはない。終盤に差し掛かると、その視点の切り換えも早まるために、独白形式の劇でも見ているような気分がした。話し手のみにスポットライトが当たっているような感じ。最後は、小さな光が主役に温かく寄り添っていた気がしている。

  • 一癖も二癖もある登場人物たちの独白によって事件の真相が明かされていく、といった趣のミステリーで、さほど目新しさはないのですが、事件の真相(らしきもの)に至る展開を演出する方法としては結構ハマっており、悪くはないと思いました。
    なのですが、彼ら一人一人のとる行動が何だか昭和の2時間サスペンスドラマみたいで、冷静に考えるとかなり無理があるような気が。20年前の作品なのである程度割り引いて考えないといけないのかもしれませんが、子供が殺されたのに皆平然としているとか、妻の不貞を義姉に事細かに打ち明けるとか、文学賞の選考対象になったら間違いなく「人間が描けていない」と言われちゃいそうなくらいに作り物感が漂っているのがちょっと残念でした。

  • 自分勝手で一方的な考えから、延々とすれ違いを繰り返すもどかしさ。
    一人の女の子の死をめぐり、全員が「私が殺したのかも。」と、罪悪感と後悔を滲ませるのに、口から出るのは言い訳ばかり…
    一人称で決して交わることがない。どこかで誰かがきちんと向き合っていれば生まれなかった悲劇。人間関係の難しさと怖さを思い知らされた。
    驚愕の展開ととそのための伏線が至るところに張られているが、あまりの救いのなさに爽快感はなく、ある程度の覚悟を持って手に取る必要がある。

  • 姉の家に預けていた娘が死体で発見される。
    殺したのは誰か。

    不倫をしていた母親か、それともその不倫相手か
    それとも結婚当初からの関係であった姉の夫か
    それを恨んだ夫の犯行か、はたまた関係に気付いた姉か
    戦時中の悲しい記憶に苦しむ認知症のおじいちゃんか

    それぞれの思惑が交差して
    それぞれの視点からの主張が独白される

    それぞれが「あの人が犯人」と思いながら 
    同時に「自分が殺した」と思っている
    直接手をくだしていないだけで
    自分が殺したのも一緒だと

    途中から
    結局誰やねん!てなってくる
    わかったあとも
    ほんで結局なんでやねん!
    てなる
    みんなが自分中心自己陶酔に思えてくる

  • 『藪の中』のような語り口で物語は進む。
    誰もが皆、嘘をつき本音を隠し、いや、あるいはそれが真実だと思っている。
    誰が本当のことを言っているのか。
    いや、語り手にとっては語っていることが全てなのだ。
    熱に浮かされたように、譫言のように、たとえ始まりが虚言であっても、それが語り手にとっての真実になっていく。

    本書は、芥川の描いた手法を使いながら現代を織り込む。
    そこで語られるのは、南の島の情景。
    それはパラダイスやホリデイという前向きな言葉の「南の島」ではなく、70年以上も前の、大戦の記憶だ。

    行ったきり帰ってこないと分かっていたから、前妻は「この子はあなたの子ではない」と懺悔したのか。
    そもそも懺悔だったのか。
    本当に、女の子は殺されたのか。
    熱に浮かされ、罪悪感が見せた幻影だったのか。
    もはや読者には何が現実の出来事なのかわからない。

    殺していいのよと誰が言ったのか。
    愛などない夫婦、愛していない子供。
    家族の姿は、白い光の元で不気味に変化していく。
    それとも、初めから整ってなどいなかったのかもしれない。
    すべては真っ白な光の中、人を過たせる世界の中の、物語。
    だとしても、「南の島」の記憶は、もしかしたらそれだけは本当だったかもしれない。
    罪なき人を、殺めた記憶だけは。

  • 4歳女児が殺された。犯人は誰か?
    登場人物の独白という形式で進行し、
    皆それぞれ「真犯人は私!」と思っている。
    最終的に息の根を止めたのが誰か?という部分はそれほど重要視されてないように思う。
    何故幼女を殺害したのかという理由も、
    登場人物たちの自分勝手な言い分に、
    誰にも感情移入できない。
    殺された女の子が不憫すぎて読後感は悪い。
    でもね~、さすがの連城さん、
    読み物としては一気読みできる面白さだった。

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著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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