火星に住むつもりかい?

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929893

感想・レビュー・書評

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  • こういう物語を読むと、自分がもし処刑される側になったらという恐怖を抱くけれど、実際は逆の処刑する側になってしまう方が多いのだろうと思う。

    自分が殺されないために殺す方を選ぶ、間接的にではあっても。正義とか秩序のためという名目で。

    こんな極端な世界ではないにしても、日常生活で感じる息苦しさの構図は既にこうなっているように思う。

    自分は誰の処刑にも加担したくはないが、じゃあ誰かのために声をあげられるか。やはり怖い。でも違和感はなくしたくない。

  • なるほど。見事な伊坂ワールド。
    「正義」「理不尽」「偽善」、これらの意味があやふやになり、自分の立つ足元がゆらぐ。
    「平和警察」が支配する世界は恐ろしいが、それに慣れていく人間も恐ろしい。
    犯人も、それを追う刑事も、どこか憎めないキャラ設定なのも伊坂作品ならではで、ほっこりするのではあるが、著者のミステリーの中でも本作のように「全ての伏線が最後にはピタリとひとつのピースに当てはまる系のやつ」を最近他にも数冊読んでしまったからか、どうにも全てのピースがあまりにも上手く収束し過ぎてしまうのに味気なさを感じてしまうのは私だけだろうか…。
    いやなんか、あまりにもお見事というか、出来すぎというか、全てが伏線と思って身構えちゃうというか、読んでて気が抜けないというか(笑)
    2018/08

  • すっげぇ面白かった。これは今、読むべき本という気もするな。そして、読みながら『ゴールデンスランバー』、『モダンタイムズ』といった、この人の別の話も思い出した。

    モリカケ問題とか、いろいろ出てくるけどさ。なんでここまでになってなにも変わらないんだろう、といやな気分になる。そこに生き残る知恵を提示してくれた、というより、こうしたらどう?なんて陽気に道筋をしめしてくれるような感じだ。

    虫の話が出てくるのも、他の話に近くていい。この人のこの系統の本。もっと読みたいな。

  • 信じていた正義が悪に変わる瞬間の恐怖感と勧善懲悪的感覚が大いに刺激される。権力の前の無力感本当に怖い。

  • 将来、こんな世界になりませんように、と思ってしまった。また、どこかで会いたいあの人(笑)

  • 相変わらずのさらりとした伊坂調だが、描かれているのは監視&密告社会、そしてかつての特高のような平和警察とは名ばかりの思想警察。そんな閉塞感に覆われた社会に突如として現れたヒーローとは。
    平和警察の憎々しさが上手く書かれていてさすが。現代社会も一歩誤れば、小説のような世界になるかと思うとゾッとさせられる。そんな社会全体を変えようとするではなく、身の丈にあった正義という考え方も伊坂さんらしく、ラストまで伊坂節を堪能できる一冊。

  • 一時、伊坂さんの作品は好きで読みまくったけど、気に入らない内容が増えて離れていた。この作品は・・展開は初期作品に通じるじけど、設定が・・風刺と割り切るには冷酷過ぎる。ラストで中和しようとしても、後味の悪さは消えない。正直、やり過ぎでしょう。少々の優しさでは拭えません。名前の誤魔化し、社会の理不尽さ、人の身勝手さは戯画化でも現実に通じるが・・ギロチンはいけません(^^;
    前の、ふと感じるほのぼのが好きだったんだけどなぁ~

  • よくぞやってくれました!というスッキリ感よりも怖さが残る読後感。それはたぶん、公開処刑を煽る群衆の中にいる自分を少しでも想像できてしまうから。仮に私の住む町が平和警察の安全地区に指定されたとして、こんな仕組みはおかしいという当たり前の結論にすら辿り着けない可能性があることを、現実社会で感じているから。

  • 平和警察による危険人物の取り締まりと称し、情報操作、密告、拷問、公開処刑が公然と行われるようになった日本。そこに謎の正義の味方が出現し、弱者を救っていくのだが…。

    序盤の拷問や、サディスティックな描写、悪意には気持ちがずんと重くなる。徹底的な悪を描かないと、そのあとの正義を正当化できないから、仕方がないのだろうが、寝る前に読むと寝付きが悪くなった。

    市民と警察の視点が複数入り交じって語られるうち、主要人物が絞られてきて、徐々に全体図が見えるようになる。
    ときどき前のほうのページを見直して、伏線を確認し直しながら読んでいくが、ミスリードされてさらに足元をすくわれる。いつもながら、よく練られたしかけで楽しませてくれた。

    仮想の日本ではあるけれど、監視カメラやネットでの情報操作、そして危険なものをいち早く排除することで平和を守ろうとする人々の姿は、決して現実とかけ離れたものではない。
    悪者をでっち上げ、吊し上げることで捌け口を作り、恐怖政治を行う。そんな日本にはならないでほしいと、切に願う。

  • 一九八四年に代表されるディストピアもの。

    昆虫すごい。組織を変えるには中に入ってトップをすげ替えるといいらしい。

    平和警察よりはシビュラシステムの方が好みだな。

    結局のところ個々が考えなくなること自体がまずいんですよねとか。

  • ゴールデンスランバーのような感じ。
    世界の経済のパワーバランスの移行、テロ、正義などなど
    今の世界情勢も学べるような内容。
    著者の言いたいことが伝わってくるような感じもする。
    読んでいる間、これからの日本がどうなっていくのか想像してしまう。
    テロが起こる理由もわからなくもない。生まれた時から階級制度のように、運命は覆すことができないのなら、この資本主義社会を、格差社会をいったんぶっ壊して更地にしてしまおう。という考え方はあるんじゃないかなと。
    しかもスピードの増したインターネット社会のおかげで、もはや国という集団を個人でも壊すことはできなくはない。
    これからどうなるのか。遠くの国で起こっている戦争はもはや身近なことになっている。

  • 系譜としては『モダンタイムス』のような監視社会が舞台。タイトルからSF作品かなと思っていたら違った。残酷な描写を軽い表現で書いているけれど、実際にあったら怖いことばかりだよなぁと思う。最近の伊坂幸太郎は当たりはずれが大きいなぁ。

  • ドキドキしながら読み進めたけど、私の想像力不足もあって、そんなに強力な磁石だったらもっと日常生活に影響出ちゃうんじゃ・・・?とか余計なことを考えてしまった。でも、また仙台が舞台なので、そのあたりは想像しやすくて楽しませていただいた。
    久慈の祖父の宝くじの話は、誰かのために使っても偽善って言われるし、自分のためにしか使わなくてもケチっていう人はいるし、努力せずに何かを手にした人に対しては何か言わずにはおれない人が必ずいると思う。人一人にできることなんて限られているんだから、自分の中で限界を決めるのは正しい方法だと思う。

  • 悲嘆の門を読んで気分が重くなったので、軽い話を・・・と、伊坂先生の作品に手を出したら・・・初っ端から期待を裏切られました。
    もう少し時間をおいて違う本を読んでから読むことにします。

  • 振り子の揺れを真ん中で止めることはできない。大事なのは行ったり来たりのバランス。偏ってきたら別方向に戻さなければならない。警察には警察にとって都合のよいシナリオがあって、殺人者さえも釈放される。義だ誠だと声高に叫びながらも自分たちにとって都合のいい情報が真実となる。社会の人の考え方も一つに揃えない方が自然な状態。全体の力は弱くなるが安定する。それはそれで、ある意味、平和ということなのかもしれない。良くも悪しくも今の世相である。自分自身のありようというものを静かに見つめなおすことができた。

  • すごい小説。素晴らしい小説を読んでしまった!一日使って読んで、今は達成感と充実感でいっぱい。とてもこわかった。恐ろしかった。でも面白かった。
    本当の意味での正義とは善意とは何だろうと考えた。この小説には色んな人がいて色んな考え方があった。震災のことも重なった。病気のことも重なった。死を意識したことも。フィクションだけれど、伊坂さんの心の葛藤のようなものもとても感じた。苦しくなった。でも最後には優しい方向に終わった気がする。バランスが大事だなと思った。偏りはやっぱりこわいし、ダメだよねぇ。
    伊坂作品はいつもそうだけど印象的な言葉が多いなぁ。忘れないようにノートに書いておこう。
    とても楽しい読書時間だった。15/06/19

  • デビッド・ボウイさんの名曲のタイトルを冠していますね。
    だからといって、その曲自体との関連性は、あくまで気分的なものみたいです。
    「住みづらい浮世」=「火星にすむしかない」というたとえ話的な気分。
    原曲の意味とはちょっと違う使い方。

    伊坂幸太郎さんの最新作。
    オーウェルさんの名作「1984年」を、仙台を舞台にして、痛快にハッピーエンドにしたような内容です。

    これまでに、衝動買いした
    「チルドレン」(2004) を皮切りに、発表順で言うと

    「ラッシュライフ」2002
    「陽気なギャングが地球を回す」2003
    「重力ピエロ」2003
    「グラスホッパー」2004
    「死神の精度」2005
    「魔王」2005
    「砂漠」2005
    「陽気なギャングの日常と襲撃」2006
    「ゴールデンスランバー」2007
    「モダンタイムス」2008
    「SOSの猿」2009
    「オー!ファーザー」2010
    「バイバイ、ブラックバード」2010
    「マリアビートル」2010
    「夜の国のクーパー」2012
    「残り全部バケーション」2012
    「ガソリン生活」2013
    「死神の浮力」2013
    「首折り男のための協奏曲」2014
    「アイネクライネナハトムジーク」2014
    「キャプテンサンダーボルト」2014
    「火星にすむつもりかい?」2015

    と、なんと23作品読んでいることになります。
    僕は好きです。凸凹はありますが。
    大体において、犯罪があったり殺人があったりというのはほぼ一貫していまして、
    それなりに入り組んだ伏線と、弱者への暴力という現実を認めつつ、
    フィクションとして最後にうっちゃりをかまして溜飲を下げる、というエンターテイメント性。
    そういう意味で基本は男子向きなんだろうとは思います。
    (ここまで読んじゃったら、もう、未読の作品もおいおい全部読んじゃおうと思っています)


    特に好きなのは殺し屋モノ「グラスホッパー」「マリアビートル」。
    それから「バイバイ、ブラックバード」「キャプテンサンダーボルト」。です。
    僕としてはこの4作は特に、真冬に凍えて帰って風呂につかるような快感でした。
    (並べるとカタカナ題名ばかりですが…)

    ####

    「火星にすむつもりかい?」。面白かったです。

    設定はまあ、現在もしくは近未来?の日本。
    2015年現在の安倍政権よりも、もっと恐ろしい国家権力重視な政権下の日本です。
    (2015年現在からまっすぐ直線上に想像できるところが怖いんですけどね)

    このフィクションな日本では、「平和警察」という名前の、戦前の特高警察のような組織ができています。
    この組織が警察の一部でありながら特権的な力を持っていて、
    「テロに加担している」という疑いをもたれた市民、あるいはそういう密告を受けた市民を、
    合法的に拉致監禁して、非人道的な拷問を課して、
    例え無実でも自白させてしまって、公開処刑しています。
    市民はこの警察を恐れつつ、
    「まさか無実の人を有罪にしていないでしょう。彼らは悪い人なんだろう」
    と、納得してしまっています。
    そして、「密告した者勝ち」の様相を呈しています。

    ここで寒気がするのは、

    「人を見下して、優位性を味わいつつ虐げる喜び」

    「他人事に不感症になり、スキャンダルとして娯楽的に愉しむ国民たち」

    「権力そのものを正当化して、権力を行使するために、暴走する権力」

    ということを圧倒的に描いていることですね。
    それはつまり、

    「あなたもわたしも、われわれの身近にも、実際そうでしょう?」

    という慄然とするリアリズム、とでも言いますか。


    つまり、「いじめ」「パワハラ」の構造です。


    ただ、伊坂幸太郎さんの小説をエンターテイメントとして読めるのは、
    ワンパターンとも言えますが、そういう前半部を経て、
    必ず「おとぎ話でも良いから、それが敗北する結末を用意してある」ということですね。

    と言う訳で、この小説は、その「平和警察」が、大ドンデン返しで崩壊するまで、を描きます。

    途中までは、「平和警察」に挑む孤高の反逆者のミステリー。
    この、バットマンのような反逆者は誰なのか?なぜこんなに強いのか?

    そして、途中からは、追い詰められたバットマンがどうやって逃げ延びる?
    強大な平和警察にどうやって立ち向かう?というミステリー。

    相変わらず、
    「恋愛」も「不倫」も「性愛」も「家族愛」も「そこはかとないセンチメンタルさ」も、
    「淡々とした日常の悲しみ」とか「傷つきながら自分を発見していく」とか、
    「不治の病」とか「夢を追い続ける」とか、「癒されて行く心」とか、
    「内省的に傷ついた心情から前を向くまで」とか「親子の葛藤」とか、
    そういう低予算日本映画的な世界観から遠い地平線に飛翔したぶっ飛びハードな娯楽小説です。
    (「低予算日本映画的な世界観」が面白くない、ということではありません。
    ただ、伊坂幸太郎さんの個性っていうのは、そういうことかなあ、と。
    例外的な作品もありますが)

    当然ながら、細部で言うと、
    ●暴力的な悪役たちの、ちょっと読むのが辛いような残虐さ
    ●立ち向かうバットマン的なヒーロー?の、痛快なアクション
    という部分もあります。

    でもこの小説家さんのいちばんの個性は、
    ●そういうことを俯瞰に嘲笑うような客観性
    ●愚直なハードバイオレンス物語にはあり得ない、軽い脱力した人物造形。
    ●最終的に「アレがアレだったのね」と膝を打つ伏線の功名さ。
    ということですね。

    何より、そういう男性的な娯楽小説的な愉しみや、高度な技術と同時に、
    娯楽の基盤としての「残酷な現実」と「それを許したくない情熱」があることが、僕は好きです。
    そういう意味では、津村記久子さんの小説に似ています。
    (仙台=東北、というローカルな舞台設定に拘泥するところも、津村記久子さんに似ていますね。
    「エヴリシング・フロウズ」も、是非おすすめです。洋楽の楽曲名を題名にしているのも似ていますね。
    女性読者には、特に津村さんがお勧めですね)

    高度経済成長どころか、長引く低成長、不景気、非正規雇用、将来への不安、そしてそれに伴う右傾化と全体主義と反知性主義の台頭…
    そういう21世紀の日本の雰囲気と誠実に向き合っている作家さんだなあ、
    という信頼感が、僕はあります。
    (また、「娯楽小説を書く技術」と言う中に、「豊富な過去の作品への愛情と傾倒」が色濃いことも、僕は大好きです。ソレがあるから、大量生産できているんだろうなあ、と思います。
    小説に止まらず、映画や音楽も含めて、「ビデオレンタル世代」の偉大な創作者だと思います)

    最期のなぞ解きというか、大団円への怒涛の展開が、若干強引かな?という疑問も残りますが…。
    (ま、その辺で、伊坂さんの最高傑作のひとつだ!とまでは言いません)

  • 偽善行為、自己満足、自己犠牲など、なんとなく触れて欲しくない部分が事件を通してさらされる。
    政情が良くなった様でそれは振り子がどちらかへ振れたに過ぎない。
    そこから逃れたかったら“火星に住む”しかない。割とストレートな伊坂ワールド。

  • 伊坂幸太郎自身も後書きで書いていたけど、すごく読むのが辛かった。

    夜の国のクーパーでも、自分が恐いと感じたことを書いて安心すると語っていたけど…なんでこんなに恐いことを書くのだろう…と思った。

    恐い内容に対して、それを乗り越える部分が私にとっては比率的に少なくて、なんというか、人間の恐ろしさに目を向けさせる小説なのかな…という印象で終わった作品でした。

  • 「どうした私!伊坂の世界に入り込めないわぁ」
    と思いつつ読み進めて途中、あぁ、伏線回収をしたいがためにオチを作るための前半戦?!と深読みをしながらあれよあれよという間に深みにはまり込み、でもどうしても納得できないまま終盤へ。
    練りに練ったストーリーテラーに舌を巻く思いですが、なんだろどうしてだろ、☆は5つ付けたくない。
    後味の悪さ、手を洗っても洗っても綺麗にならないような気がしてしまうような・・・

  • いつも伊坂氏の語り口ではあるが、世の中の設定が実はおそろしい。善悪、偽善について考えさせられる。世の中常に偽善の中で生きているような気すらするもの。その果てにもしかしたらこんな社会が待ってるかも?そのころ火星に住めるようになっているかどうかは???

  • この前に読んでいた本に比べてページが進むこと進むこと…改めてエンタメ読書だな自分、と痛感。
    さて、伊坂さんの新作です。正義って何かね…と菅原文太さん風に聞きたくなるような。伏線回収のスカッはあっても、読後感はスカッとする感じではなくモヤモヤと考えさせられる。ゴールデンスランバーやモダンタイムスで公権力の怖さみたいなものはよく書いておられますが、それともまた少し違う感じ。
    集団心理の怖さ?暴力のもつ引力?誰が、何が正しいのか?
    常識を疑え、心で感じろ、という言葉がうかびましたが、本当にこんな風になったら下を向いて嵐が過ぎるのを待ってしまいそうだ。と言っている時点で他人事なのだが。
    淡々と抑えて話が進む感じが余計に怖かった。伊坂さんらしい軽妙な会話や伏線はいつものように楽しかった。

  • あとがき、がよかったw なんてね。伊坂さんの小説は大好き。内容がどうこうというより、一瞬で別世界に連れて行ってくれるから。そう、伊坂ワールド♪何とも不思議な空間。しかし、トリップしっぱなし、には決してならに。ひゅんと現実世界に戻ってくる。そして、あんなにハマっていた世界の記憶は、どんどん希薄になる。でも、あのワクワク、ドキドキ感だけは忘れない。
    だからまた行ってみたくなる。何度でもww

  • ここまで極端じゃないけど、現在の状況を描いているような…【俺たち平和警察が得意なのは情報のコントロールだ。噂話の制御もな】って薬師寺警視長の言葉は今のメディアが思い浮かんだ。
    けどいちばん怖いのは、与えられた情報を鵜呑みにする大衆なんじゃないかな。
    どんどん暗い気持ちになる展開だったけど、ラストのどんでん返しで少しは希望が持てるかな。怪しいとは思ってたけど、展開に引き込まれてたな。

  • +++
    この状況で生き抜くか、もしくは、火星にでも行け。希望のない、二択だ。
    密告、連行、苛烈な取り調べ。
    暴走する公権力、逃げ場のない世界。
    しかし、我々はこの社会で生きていくしかない。
    孤独なヒーローに希望を託して――。
    らしさ満載、破格の娯楽小説!
    +++

    いまの時代だからこその物語のような気がする。バットマン的正義の味方が現れるかどうかは別として、平和警察の存在は、虚構の世界のできごととして安閑とはしていられないようにも思われて、空恐ろしささえ感じてしまう。黒ずくめの正義の味方が生まれたいきさつも、成り行き感満載で、いまの時代を映しているようにもみえる。著者が武器に選んだものも、虚を突かれた感がある。銃火器だけが武器になるわけではないのだ。東京からやってきた個性的な捜査官・真壁鴻一郎があっけなくやられたときには、こんなはずはないと思ったが、彼の続編をぜひ読みたいものである。いろいろと示唆に富む一冊である

  • みんなのタグがネタバレを含みますね。
    予想できても予想をさらに越える展開で、終始上回られた感覚。

  • タイトルが..
    内容をあまりにかけ離れているけど
    まあ、内容は面白い。ちょっと怖い・くらいパラレルワールド。最近の政治家の発言がちょっとダブったり。

  • 初読。図書館。こんな社会ないよな、でもあってもおかしくないよな、あったらこわいよな、いつかこんな社会になってしまうのかな、という絶妙なバランスで描き上げるのが伊坂さんは本当にウマイ。「国家権力と正義」というお得意のテーマ。国家権力のえげつなさはどんどん描写がエスカレートしていて、お前ならどうするんだとキリキリと答えを迫られて苦しくなる。「正義」ってここのところいろんな作家さんがテーマとして取り上げているけど、「正義」の意味を深く考えなければいけない時代になっているんだなあ、と痛切に感じる。

  • 統制社会の恐怖と希望を描くサスペンスミステリー。

    前半の統制社会を描いた部分は魔女狩りの様相を呈していて、フランス革命の粛清にも似て、非常に恐怖感を覚えました。
    最近の独裁国の暴走、日本の言論統制にもつながりかねない立法など、現代への警鐘にも感じます。
    伊坂さんなのでブラックだけでは終わらないと思いましたが、仙台が舞台だったり、どんでん返しもあったり、伏線もすべて回収するところはさすがです。
    真壁さんという死神シリーズの死神や探偵泥棒の黒澤のようなダントツキャラだけでなく、平凡的ではあるが正義感が強く事件に巻き込まれる定番キャラとしての床屋やロベスピエールを髣髴させるような警視長をはじめ登場人物たちもいい味を出していました。

  • 久しぶりにこっち系統の伊坂作品だなーというのが最初の感想。人がどんどん酷いやり方で死んでいきます。バイオレンス。ずっと不愉快だったけど真壁鴻一郎の出現でソフトに和やかになったかな、少しは。サディエストな作品。
    初っ端から掴みはバッチリ。
    冒頭のリストラなんて魔女狩りと一緒だ、から心掴まれたのだが酷い惨殺シーンが多すぎて思ってた展開とは進まずまずびっくり。いくつもの描写がはじめ交差し、登場人物の多さ、伏線になかなかページをめくる手が早まらなかった。(けど面白い!)
    火星とかいうタイトルだからてっきりSFものかなと思ったのはわたしもです。SF苦手なので構わないけど。
    最後の最後までそこそこの不愉快さは残ったけど、

    あ、以下ネタバレ

    真壁が死んでなかったこと、臼井が悪人ではなかったこと、臼井の手で騙された蒲生や水野が無事だったのは良かった。(田原は生きてるのだろうかという疑問はあるけども…)
    こういうバイオレンスな伊坂作品もわたしは大好きです。久しぶりにスリルを感じた作品でした

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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