アズミ・ハルコは行方不明

著者 :
  • 幻冬舎
3.21
  • (21)
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  • (30)
  • (7)
本棚登録 : 681
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344025103

作品紹介・あらすじ

地元で再会した3人組が、遊びではじめた人探し。彼女はどうして消えちゃった?大丈夫、わたしが見つけるから。『ここは退屈迎えに来て』で注目の新鋭が書き下ろす、ポップでミステリアスな無敵のガールズ小説!

感想・レビュー・書評

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  • 今時も若者はこんなに静かに暮らしてるのだろうか。
    あまりお金のない若者でのレス・ザン・ゼロだったらこうなるのだろうか。
    (レス・ザン・ゼロ観たこと無いけど)

    とても寂しく、物悲しさすら漂うくらしの若者たち。
    でもよく考えたら自分もそうだった気がする。
    四半世紀前の若者は、もっと景気良くお金をつかってはいたが
    心中はこの小説で描かれるより貧しかった気がする。
    貧しかった自分に気づけないほど貧しかった。

    この小説に登場する若者は、今の息苦しさにうすうす気付いてなおもがく。
    もがいてるつもりはなくても、居心地が良くなりはしないかと目配せくらいする。
    ただ、状況が悪く、お金もあまりない。

    昔の若者のとても馬鹿だけど金がそこそこあって、物欲に長けてるのと
    どっちが不幸だろう。

    失いかけている「何か」を感じてどうにかしようとする若者は
    辛いだろうけれど、よく見えているし、幸せに近いところにいる。

    女の子が元気で救われる。
    女の子があまりに救われないと、見てられない。

    とはいっても劇中の男連中のダメさ加減も大概だ。

    しかしこのダメさも生き抜くための最低限の強かさの発露だろう。
    もっとダメな人だと酷く引きこもるだろう。
    やりがいを求めたり、昔の恋を引きずるなんて
    まだ生の力が残っている。
    残っている力であの通りというのが切ないのだけれど、まあしかたない。

    恋愛体質の男の子は一人くらいしか居なかったようだけど
    男の恋愛体質は多くないのだろうか。
    昔は男女両方、だいたい恋愛体質だったように思っている。
    そうでなかったとしても性欲か世間体で、ほぼ同じ動きをしていた印象だ。

    今の子は、自分も他人も今もそれなりに見えてしまってるんだろうね。

    そこはかとない諦観の物語。

    このままでは終わりたくない。
    終わりたくない物語。

    昔とは様変わりした茫漠とした未来が
    昔よりも、夜は冷たく昼は灼熱の、茫漠たる日々が押し寄せる。

    終わらないロストジェネレーション。
    踵を返すきっかけはまだ見つからない。

  • いろいろあれなところはあるけど、こういうのをわたしも書きたいです。

  • 優雅な生活が最高の復讐である

    って言葉好きなんだけど、スペインのことわざだったって初めて知った〜

  • 2.0

  • イマイチよくわからなかった。夢ランドで春子の幻と会話する愛菜のシーンは良かった。
    いなくなった女の子たちが少女ギャング団になってたらいいなと思う。
    登場人物がテンション高い時のノリがしばしばうざかった。
    私には理解しきれなかったけどなんかロマンチックな感じがする小説だなと思う。

  • なんともイマイチでした
    残念

  • 地元で再会した二十歳の三人。
    バンクシーに影響されたユキオと学はグラフィティをスプレーすることに熱中する。二人は交番の前に貼ってあったアズミ・ハルコの顔をステンシルにして街中にスプレーしていくが、話題になり過ぎて警察にマークされてしまったようなので一旦グラフィティは休止となる。
    愛菜はユキオとセックスしたり、学の性器を咥えたりしていた。

    安曇春子は地元でつまらない職場で働いていた。幼馴染の男が初恋の女と不倫したり、職場の先輩が結婚して退職した影響で仕事が忙しくなったり、色んなことが重なって姿を消した。

    少女ギャング団に襲われて気を失っていた学は、様子を見に来た警察にスプレー缶が見つかって落書き犯だとバレてしまう。
    しかし、アズミ・ハルコのグラフィティの話題性から学は地元のアートフェスに誘われる。
    地元で一瞬有名になった学とユキオに嫉妬した愛菜は深夜のアートフェスに忍び込み、泥酔して寝込んでしまう。愛菜を起こしたのはキャバクラ時代の先輩、そして安曇春子だった。離婚した先輩、先輩の娘、安曇春子の三人で暮らしているらしい。そこで一緒に暮らすことになった愛菜はハッピー!

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    中学時代の地続きの世界で暮らす若者たちの喜劇、という感じかな。少女ギャング団についてはよく理解できなかったけど、初恋の相手のことを知りたがる曽我への、安曇春子の複雑な心境には見覚えがある気がした。

    ”いつまでも思春期恋愛を引きずるのは心地いい。自分の青春が、まだ終わっていないような気になるから。恋愛だけじゃなくて、自分の可能性が丸々残されているような気にすらなれるから。
    けれど目の前に、まだそんなところにとどまっている人間がいるとなると、なんだか急にバカバカしくなるのだった。自分のことは棚に上げ、その成長のなさにやるせない思いでいっぱいになった。”(P135より引用)

    的確な心理描写だなあ。全くもって安曇春子さんの思う通りだ。
    学とユキオの、なんか面白いことして有名になりてーんだよ!という感情も大いに理解できた。理解できなかったのは少女ギャング団についてだけだ。

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    何年も前に連絡を取り合っていた人が”アズミ”という名前だった。スマートフォンにアズミと入力するたび、「アズミ・ハルコは行方不明」と予測変換で表示されていたことを思い出した。
    アズミさん、元気かな。「アズミ・ハルコは行方不明」の映画、観たのかな。もし観ていたとしても、少女ギャング団はアズミさんも理解できなかっただろうな。

  • 読みやすく、面白かったけど、地方に暮らす地元を出ないで暮らしてる人をかなりディスってる。このディスり方、いいのかな?
    ここに出てくる登場人物達は、別に田舎にだけいる訳じゃない。
    地方と都会ってデジタルに分けるのは分かりやすいけど単純過ぎる。田舎で暮らしても都会に出てても、ほとんどの人は実現できそうな夢もなく、自分の人生こんなはずではないと燻ってる時代を経て大人になる。特別じゃなくても、立派でもじゃなくても、自分を受け入れ自分の居場所を見つけて歩きだす、若者の物語。
    若い女の子には、もっと自分のこと大切にしてあげてって言いたい。

  • 先に映画を観て、少女ギャングの意味がよくわからなくて、でもなんとなく気にはなってた。
    原作は山内マリコさんだったんですね、と今更知って読んでみたんですけど、面白かったです。
    地方都市の何者にもなれない若者の鬱屈は、すごくよくわかる。誰かがどこか高いところへ連れて行ってくれないかと夢見るけど、そんなうまい話はないんですよね。

    テンションの高い作品紹介は違和感ですけど、結末は力強い女の子の明るさがあって良かったです。

  • イイね!
    救いのない田舎町の若者たちの群像、が、皮肉とあざとい現実から反転して、少し希望のあるエンディング。

    田舎町に住んでいて、高校を出たけど高校から先は何のエキサイティングな出会いも希望もない人生となったら、…少子化もすすむわけだよなぁ。

    地方都市活性化事業が皮肉っぽく鮮やかにダサく語られていて、最高。

  • いろんな意味で、「女子力」万歳。

    可愛さを武器にするのも、
    男に遊ばれるのも、
    そこから強く生きていくのも。

    表紙絵はまるで『新しい国語』のようだけど、
    中身はバンクシーに憧れ、
    漠然と鬱憤をためた現代の若者たちの姿。
    どこか村上龍も思わせつつ、
    女の強さが随所で印象に残る。

    地方暮らしはしたことがないから
    田舎の閉塞感は共感できないけれど、
    誰だってスカッとするラストだ。

    『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』と、本書自体の映画も観てみたい。

  • ★突き抜ける女性の解放感★題名に惹かれて読み進めて既視感があるなと思ったら「ここは退屈迎えに来て」の著者だったのか。地方都市の鬱屈を書かせたらピカイチだけど、主人公が入れ替わる章立てといい、クスリと笑わせる小ネタといい、あまり変わらないかなと思っていた。
     ただ、最後が素晴らしい。元トップキャバ嬢も冴えないOLも自分のないショップ店員も、男からも地域からも解き放たれて美しい。さらに匿名の女子高生ギャングの集団の強さがいい。面白く爽快に終わった。
     調べたら蒼井優主演で映画にもなっていたんだ。なかなかの人選だが、映画であまりヒットしそうな気がしない。どうだったんだろう。むしろテレビドラマ向きでは。女子高生は顔が見えない集団として描いてほしい。

  • 女性の赤裸々な感情が滲み出ている作品。

  • 文学

  • 地元という小さな場所に閉じ込められたような閉鎖感、大切にされていないとわかっているのにすがってしまうクズ男。
    とても共感できて苦しいはずなのになんだか可愛いと思ってしまう一冊。
    女子高生の疾走感溢れる描写が好き。

  • 初読

    煙となって消えたアズミ・ハルコ、
    OLとして働く安曇春子。

    学とユキオと愛菜、
    蘇我氏と春子。
    男の子達の嫌になっちゃうようなあの感じ。

    そこに少女ギャング団。
    風穴を開けられる気がするファンタジー。

  • 田舎の膿んだ若者にスポットライトを当てた作品。映画化された作品。
    作者の山内さんは、主演女優が蒼井優さんと分かった時点で「完璧!」と言われたとのことです。
    どんな物語なのか興味を持ち手に取りましたが、終始蒼井さんの顔が脳裏にちらつく。(顔をステンシルで街中にペイントして回るというストーリー上、余計に!)

    わたしは世代的にもしっくり来すぎ、無敵の女子高生達にも共感。
    自意識過剰でむやみに攻撃的だったり、依存したり男が全てだったり、存在意義を見失ったり…
    いちいち共感してしまう部分が多かった。ハイテンションなラストは少々呆気に取られましたが男達を蹴散らしていく彼女等の姿が爽快!
    女性へのエールを感じる一冊でした。

  • 僕らの七日間戦争みたいなオブラートで、
    内容は主人公の視点が変わっていく感じの円で終わる感じ

  • 個人的に好きではない。
    つまらなかった…
    地方のバカな人たちの暮らしを読んでも
    なんら得る物がなかった。

  • 2017.4.10読了 34冊目

  • ブログ更新:『アズミ・ハルコは行方不明』山内マリコ
    http://earthcooler.ti-da.net/e9299982.html
    だがその場所は、依然として「地方都市」のどこかであるかもしれない。それは大した問題ではないかもしれない。逃げるのは、裏切った男への腹いせで自殺するという紋切り型ではなく、幸せになって復讐するという〈革命〉こそが必要なのだとしたら。

  • ハルコが煙になって景色の中に溶け込んで”消えてしまった”伏線は最後にしっかり回収。なるほどそういうことか。
    半端ない観察力/発想力を思わせる文章表現が随所に観られて感心します。

    「なにかしたいという気持ちだけが澱のようにユキオの中に沈殿していった。」てな主題はこの世代にとどまらない普遍なテーマかも。

    どんな風に映像化されるか楽しみ!

  • 映画化するので先に原作を読もうと思って。
    自分自身は地方都市などにいたことはないけど、大人になりきれない20代男子や、誰かと繋がってはいたい女子の詰まっていた。
    古さが残る舞台やアイテムと、新しい今の単語が交じり合っていて、そうしてまたこれも古いものになっていくんだなと。
    読みやすくて変な爽快感はあった。女子は強い。

  • 2016/7/22

    LINEにFacebook、twitterでの拡散等々、今、の本。
    副題「A LONELY GIRL HAS GONE.」
    「一瞬だけ近づいて、すぐにすれ違い、もう二度と会わない。そんなつき合いをいろんな人と、何度も何度も重ねてきた気がする。」

    田舎町で息苦しく暮らす若者たち。楽しければいいのよ。

  • 女子の読み手は2つに分かれると思う。同じような風土でしがらみを経験した人と、そうでない人と。私は年代的にも離れているし、まとわりつく「地元」がないので、未知の文化のドキュメンタリーを見ているようだった。感情移入できるとしたら会社の先輩か。

  •  地方都市に生活する若者たちのお話。思い描いていた理想とは全然違う現実を生き、どこにも行けず何者にもなれずに悶々と日々を過ごす若者たちの描写はとてもリアル。愛菜たちを見ていると、そんなに必死になってまで人とつるんでいたいものなの?と思うけど、誰かに必要とされたい、認められたいという気持ちは誰しもが持ちうる感情だと思った。全体的に閉塞感が漂っていて苦しかったけれど、思うようにならなくても、何もしないよりかはもがいた方が未来はあるのかもしれない、と思わせてくれる今井さんのカラッとした性格に救われた。

  • いきなり少女ギャング団登場。物語とどうつながるかわからないうちに、愛菜とユキオと学。この3人を軸に物語は展開していきます。アズミ・ハルコの扱いもうまい。
    自分のやりたいことを見つけられないもどかしさをぶつけて自分なりに解決していく女性たちが描かれています。

  • 女に幸あれな話。女子校時代を思い出す。
    現代っぽさというか、時代の空気感が詰め込まれてるなあ。ステンシルアートとか壁の落書きはどちらかというと昭和的だけども。
    タイトルの付け方がすき。愛菜のモノローグの言い回しもすき。

  • 田舎の退屈なマイルドヤンキーの話。自分を変えようじゃなくて周りに求めてばっかりで寂しさとか暇とか仕事とかなんでも「取り敢えず、適当に」埋め合わせている感じ。
    読んでいて気分が悪いんだけど。今の若者のあるあるが詰まっている。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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