銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫 た 43-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415324

感想・レビュー・書評

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  • 読みながら何度も涙が滲むような、温かい物語だった。

    大阪の寒天問屋の和助に銀二貫で命を救われた鶴之輔は名前を松吉と改め、和助の元で働く…度々、大火に見舞われる大阪。和助は人々のために貴重な銀二貫を差し出すのだが…

    温かい人々のつながり、松吉の困難に立ち向かう健気な姿に何度も胸を打たれる。

    高田郁さんの『みをつくし料理帖』を始めとするハートウォーミングな時代小説は読む度に心がほかほかする。

    2014年春、NHKでドラマ化されるようだ!

  • みをつくし料理帖シリーズを7冊読み終えてから手にしました。
    またしても髙田郁にやられた~!!
    寝る前に読み始めたら、やめられなくなってしまい、結局一気読み。
    髙田郁作品を寝る前によんだらあかん!!教訓です。

    http://azumystyle.exblog.jp/17937545/

    大阪天満の寒天問屋井川屋の主、和助。
    天満宮再建への寄進のために用意した銀二貫。
    その大金が松吉の命を救い・・・
    巡り巡って・・・
    天満の天神さんはちゃあ~んとみてくれてはったんや!

  • 22年と言う長い長い歳月をかけた、成功までの苦節の物語。
    どんなにつらくとも、努力と精進を重ねる主人公と、それを暖かく見守る人々。
    高田郁さんらしい、人の心の温かさと愛情に満ちた話は、随所で涙を誘う。

    それにしても、本当に江戸時代は、火事が多かったのだな…
    身を寄せ合うようにして建てられた木造建築では、火の回りも早かったろう。
    その渦巻く炎の中で逃げ惑う人々の、地獄絵図をまざまざと見せつけられるような筆致に慄き、凍てつく天場の描写に、自身の指先までもが寒さでしびれるような感覚を覚える。

    純愛も少し添えた大団円に、心がほっと凪ぐ。
    水戸黄門的と言われようと、これだからハッピーエンドはやめられない。

  • みをつくし料理帖シリーズの高田郁さんの1巻完結の読み切り作品。江戸時代の大坂を舞台にした寒天問屋の話。料理の話という点ではみをつくし料理帖と重なるがこちらは男が主人公。みをつくし料理帖もそうですがこちらも登場人物が魅力的で愛に溢れていて共感が持てます。仕事で疲れて帰ってから読み始めても、話しに引き込まれ一気に読んでしまいました。感動する本が読みたい方にはお勧めです。

  • 江戸時代の商人達の心意気を描く。
    安永七年(1777年)のある日、寒天問屋の井川屋の主・和助は仇討ちの現場に出くわす。
    父親をかばう幼い男の子を見て、仇討ちを買うと申し出て、持ち合わせた銀二貫をいう大金を渡してしまう。
    それは天満天神宮が焼け落ちたために、一帯の商売が苦しくなり、天満宮の再建に寄進するため、恩ある大店・美濃志摩屋から受け取った大事なお金だったのだが…
    遺された男の子・鶴之輔は侍の子。商人の世界でやっていけるかどうか、冬の寒天場という厳しい修行の場に出し、その後に井川屋で丁稚の松吉として雇うことに。
    天満宮を大切に思う番頭の善次郎は、このいきさつを不満に思い、心を許さない。
    当時、神信心あってこその商売と思われていたそうで。

    木で出来た日本家屋は火事が起きるとひとたまりもない。
    料亭の板長だった嘉平が、真帆屋という小さな店を出す。
    料理の腕前は確かで繁盛し、琥珀寒という新作も人気になっていたが、その店も焼けてしまう。
    そこのお嬢さん・真帆と松吉は親しくなっていたのだが…
    行方を捜し続けると、大やけどをした娘に出会う。
    おてつという違う名を名乗っていたが、同じ家事で娘を亡くした母親と一緒に暮らしているのだった。

    当時はまだ蒸し羊羹しかなかった。
    寒天を生かす工夫を続ける末吉が、今の練り羊羹を開発するまで。
    製法は秘密にせず、寒天の美味しさを広めようとするという。
    登場人物がなんとも生真面目で純粋。
    心が洗われるよう。
    銀二貫は、当時はやっていた心中物で落としたお金と同じなんですね。
    銀二貫が何度も出てくる構成だが、縁は異な物というのか金は天下の回り物…違う?
    2009年6月発行。

  • 上方の"銀二貫"は今なら二百万円くらい(変動相場)だそうです。
    ただ、庶民の食費がやたら安く、うどん十六文(160円くらい)の時代ですから、寒天専門店で二百万円を貯める、というのはこの数字以上に大変な事だったと思います。
    大阪天満宮に寄進するはずだった銀二貫で命を救われた少年が、恩を返すべく精魂込めて働くも、町を度々襲う火災。
    運命に翻弄されながらも真っ直ぐに生きる松吉と、周囲を取り巻く人々の温かい心に涙が出ました。
    清々しい読後感。読んで良かった。
    一言で言うならば……「情けは人の為ならず」……これだ。

  • すごく良かったです。私自信あまりレビューは書きませんが、強くお勧めします。

  • 羊羹が食べたくなる。

  • 4.0 これも一気読み。まだ読んでない高田さんの小説がどんどん減っていく。けど止められない。早く新しいシリーズ書いて欲しい。

  • 料理帖に似てると思った。
    1冊で完結するから、展開の速さはいい。

  • 銀二貫で仇討ちを買って、その後どういう話になるんだろうと思ったら、
    じんわり心温まる結末になりました。

  • 2015年雪組宝塚バウホール公演原作。
    大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。侍の子供だった鶴之輔改め松吉は商人の子として厳しくしつけられながらも周りの温かい人たちに支えられ成長していく…というストーリー。
    松吉を救った銀二貫の行方がなんとも粋。上方商人の天満の天神さんへの信仰心の深さには驚かされる。度重なる火事ですべてを失ってもまた立ち上がる心意気に胸を打たれました。そして、松吉と真帆の恋の行方も。心温まる人情物でした。髙田郁さんにハズレなしだなぁ。
    宝塚版は、原作の一番粋だと感じた部分がまるっと削除されていてそこだけが不満だったけど、キャストも含め全体的に素晴らしい出来だと思いました。

  • 泣ける!面白かった!
    国語のテストに出てきて気になりすぎて探し出して読んだ思い出。

  • ええ話しやった。
    晩年の和助さんと善次郎さんが可愛らしい。

  • 何度も噛み締めたくなる作品。
    髙田郁さんの素晴らしさが凝縮されている。

  • 高田郁作品、2冊目。
    「刀で命の遣り取りして決着をつけるのが侍ならば、智慧と才覚とを絞って商いの上で決着をつけるのが商人や。」だから、仇討ちをお金で解決!という訳でもないでしょうが、寒天問屋・和助の懐の深さに圧倒されました。お金に執着するわけではないが、天満宮への寄進は、最期(商売を終える)までの目標のような商人魂にも。こんな感じが、私たちの根底に流れている生きざまなのかも。

    寒天の良さと可能性を聞いた松吉が、寒天作り、練羊羹作りに挑む姿にもは、半分呆れながらも半分羨ましく感じる。餅は餅屋なのか、専門職でないゆえの優柔さ、大胆なアイデアだろうか。一所作ごとにその工夫がみられるが、反面時間がかかり過ぎる気(専門家ともっと共同してやろうよ)もする。ただ、そんなことが許される時代だったのでしょうか。

    一部の登場人物を除いて、ほとんどが、人にやさしく、思い込みがあり、自分の仕事に誠実で、一生懸命。みんなで共同してゆかなければ(天災や火事などが多い時代ゆえ)生きてゆくことが難しい時代だからことなのかもしれないが、今の私たちにかけているものをいっぱい(当たり前のように)持っている、そんな想いを感じさせれらました。

    印象的なフレーズは:
    ★寒天を商うお前はんが、その寒天の良さに気づいていない。それやのに寒天問屋で寒天を売らなあかんのはしんどいやろう、可哀想や、といわれたからなんや
    ★始末、才覚、神信心――この三つのうち、どれひとつかけたかて店を大きすることはおろか、保っていくことさえ難しい
    ★私、初めて、あの火事で生き残ってよかった、て思えた。今日、初めて
    ★商いが上手いこといってると、何や景色まで違ってて見えるもんやな
    ★一里の道は一歩では行かれへん。けんど一歩一歩、弛まんと歩き続けたら、必ず一里先に辿り着ける。お前はんは、もう歩き出したんや。転んだなら立ち上がったらええ。簡単に諦めたらあかんで

  • 情景が浮かぶ。感動した。

  • ただただ感動!とにかく内容に引き込まれるし文体・表現もとても易しく、かっこつけてる所が全く無い。ストーリーは単純かもしれないけど、ホントに価値のある読書はこういった本を読むことではないかと強く思う。時代物は生きてる人々の気質や物事の考え方などが今と違って純粋な所が惹かれ要因なのか。この作家の他の作品もとても興味がある。

  • 最初から最後までとても良いお話でした。
    松吉だけでなく、全体にフォーカスが当てられて、いろんな人物の心中が分かり、読みやすかったです。
    最後の項では、義次郎こそ、お嫁さんもらって幸せになってほしいと思いました。最初の頃はネチネチしてんなーと思ったけど。彼の厳しさや細かさがあったから、ずっと井川屋がある気がします。
    もちろん、松吉も梅吉も真帆も。誰にでも幸せになる権利はあります。素晴らしいエンディングでした。ほろり。。
    個人的には読み切りで梅吉目線とかも読みたいです。

  • 2008年から時代小説を書き始めた高田さんの2009年の作品。
    困難に立ち向かい、苦闘の末に勝利を勝ち取る。
    「あきない正傳」シリーズに見られる作風が既に芽生えている。

  • 初郁。噂に違わぬ傑作でした!ただの寒天の話なんだけれど、それを取り巻く人々の描写が魅力的すぎて——大っ嫌いな大阪を少しは見直しました(^^;; 星四つ半。

  • 何度も何度も、静かに心揺さぶられる物語でした。
    図書館で借りて読みましたが、購入して手元に置いておこうと思います。

  • 暖簾の重み、信用の大切さを感じる

    大阪の馴染みある地名には親近感。

    • ムギュラさん
      暖簾の重みを感じた。
      日頃すごす、天満や天神橋、堀江などの地名が出てきてリアリテイを感じた。
      暖簾の重みを感じた。
      日頃すごす、天満や天神橋、堀江などの地名が出てきてリアリテイを感じた。
      2019/09/15
  • 読み終わって、あとがきを見て笑ってしまった。あとがきを書いた人も、面白くて一気によんでしまったらしい。同じく、自分もそうなってしまった。
    内容自体は、特に何のへんてつもない本のようだし、内容も何となく想像できるようなものなのだが、何だか止まらなかった。
    実話なのか、そうでないのか調べてはいないが、どうなるんだろう、この先、どうなるんだろう、という期待が止まなかった。
    寒天の問屋が、練羊羹を発明する話だが、その中には、商いの基本である、信用、そして、ここぞというときに賭けること、あきらめないこと、困っている人を助けることなどがちりばめられている。辺な流行りのビジネス本を読むより、なんぼか役に立つ本である。

  • 面白かったです。
    皆さん良い人ばかりでほっとします。
    寒天問屋の主人・和助は天満宮へ寄進するための銀二貫を仇討ちを買うのに使い、救った鶴之輔を引き取ります。天満宮への寄進のお金をそんなことに使って!と番頭の善次郎は怒って鶴之輔改め松吉に辛くあたるのですが、読み進むにつれて和助と善次郎コンビ大好き…になりました。
    知り合った料理人・嘉平と娘の真帆との安らかな日々も束の間、高田先生…と思うくらい、大火に次ぐ大火でとても辛くなりました。
    失っても失っても立ち上がる人々、そして嘉平の思いを繋ぐ寒天作りはとてもドラマチックです。
    松吉の成長も良かったです。梅吉も良い人でした。
    善次郎は途中から、「昭和元禄落語心中」の松田さんか…?と思うくらい涙脆くなっててかわいいです。松吉の作った羊羹を泣きながら食べてて、和助に「泣くか食べるか、どっちかひとつにしなはれ」と言われてるところ、感動してたのに笑ってしまいました。
    苦しい描写はたくさんありましたが、最後には晴れ渡る空のような清々しさが残ります。
    ラストの和助と善次郎のやりとりにまた泣く。
    素敵なお話でした。羊羹が食べたくなります。

  • 読書会で勧められて、あまり手に取ったことのなかった時代小説かーと思いながらも読み始めたらもう、、次々とやってくる試練、そしてそれにめげずに向かって行く松吉の姿に勇気をもらった

  • 大火で焼失した大坂天満宮の再建の為の銀二貫で仇討ちでの遺児鶴之輔(松吉)を救った寒天問屋の主和助。
    種を撒き時間をかけて植物を育てるように愛情をかけて人を育て上げる和助の姿と、恩人に忠義を尽くし艱難辛苦を乗り越えて成長していく松吉の姿に感動。知らず知らずに涙が溢れました。
    銀二貫はいったいどれほどの実りを与えてくれたのか。これぞ生きたお金です。
    辛くとも誠実に真っ直ぐに生きていけばきっとその先には幸せが待っている。
    各地で災害が度重なり復興もままならない現実だけれど、きっと立ち直れる。
    頑張ろう日本。そんなエールをくれた一冊でした。

  • 勧めてもらって読みはじめました。
    最初は独特の台詞回しと聞きなれない単語等に戸惑いましたが、次第に引き込まれていきました。
    初めて読む作家さんでしたので、巡り会わせていただき感謝しています。

  • 高田郁さんにハマったきっかけ本です。
    テンポもよく、話の展開も見事。整合性もしっかりしていて、読みはじめたら一気に引き込まれ時間を忘れて読んでしまいました。
    読後感もすっきり!
    目の前に映像が見えるような素晴らしい作品。

  • 大阪が舞台ということで、馴染みのある場所も多かったことに加え、話自体もとても心が温まるものだった。
    読むことに夢中になって、一気に読み上げた。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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