やっと訪れた春に

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 144
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396636296

作品紹介・あらすじ

男は、生きるのがどこまでも下手だ。

二人の藩主を擁する橋倉藩。
割れて当たり前の藩を割れさせぬ――
重すぎる命を課された近習目付たちの命運は。
名もなき武家と人々の生を鮮やかな筆致で映し出す。

橋倉藩の近習目付を勤める長沢圭史と団藤匠はともに齡六十七歳。本来一人の役職に二人いるのは、本家と分家から交代で藩主を出す――藩主が二人いる橋倉藩特有の事情によるものだった。だが、次期藩主の急逝を機に、百十八年に亘りつづいた藩主交代が終わりを迎えることに。これを機に、長らく二つの派閥に割れていた藩がひとつになり、橋倉藩にもようやく平和が訪れようとしていた。加齢による身体の衰えを感じていた圭史は「今なら、近習目付は一人でもなんとかなる」と、致仕願を出す。その矢先、藩の重鎮が暗殺される。いったいなぜ――隠居した身でありながらも、圭史は独自に探索をはじめるが……。

感想・レビュー・書評

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  • 小説NON2022年2月号〜5月号掲載のものに加筆修正し、2022年7月祥伝社刊。二つの家から交互に藩主を出すという橋倉藩。そのことわりを形づくったと言われる鉢花衆を継ぐ同い年六七歳の長沢圭史と団藤匠の二人の近習目付の活躍が楽しい。特殊な設定の中で、藩主暗殺事件がおこり、二人が謎を追うというストーリーは、緊迫感たっぷりで面白い。犯人の動機に納得できないところもあるが、狂気じみた意表を突く展開と出来事が興味深かった。

  • 「藩政を抜本改革した分家の岩杉重明以降、本家と分家から交互に藩主を出していた橋倉藩は、重政が相続を遠慮したため分裂が終わるはずだったが、その重政が刺殺された。重明の命で反対派を粛清した鉢花衆の末裔・長沢圭史と団藤匠は、馴染みのうどん屋で議論しながら犯人を追う。」(『2023本格ミステリ・ベスト10』歴史・時代ミステリ2022)

    簡にして要を得た紹介なので、ママ転載。

  • 題名が爽やかな感じがして借りたが、内容はかなり凄まじい話だった。くるみみそのうどんが出てきて食べてみたくなった。

  • もやもやとしながらどんどん読み進む。桜の春は、哀しい。

  • 百十八年間藩主が二つの家から交互に立っていた橋倉藩。そのため近習目付も二人。
    その交代制を終わりにした分家当主が暗殺。身体の衰えを理由に隠居しはじめていた二人の近習目付がその真実に迫る。
    67歳。今ならまだまだ元気に現役で仕事をしている年齢だろう。それでも身体は衰えていく。
    それぞれに重い荷物を降ろし、それぞれにやっと訪れた春を謳歌しようと思っていた矢先の事件。
    真実を探る二人に降りかかる過去の因縁。
    丁寧に梅仕事をしながら友と語らい合いながら余生を楽しむ、後添えももらう、やっと春が訪れたのだから。
    そんなささやかな幸せを阻む過去から続く見えない何か。
    梅の香りがほのかに流れる。来年の春に、きっと思い出すだろう。梅の花が、その実が、もたらすはずだった遠い時代の春のことを

  • 毎回飽かずに思うけど、青山文平の作品は、時代小説だということを忘れてしまうほど登場人物たちの心の動きがリアルに描き出されている。そして怖い。
    唯一無二のスタンスをもった時代小説作家だと思う。

    百十八年にわたって本家と分家で交互に藩主の座につく習わしになっていた橋倉藩。それは、武神と称せられる四代目藩主の伝説から生まれた慣習であった。
    近習目付を勤める長沢圭司と団藤匠は、その伝説に登場する鉢花衆の末裔だった。
    ある日、藩主の供を務めていた圭司は城の堀に落ちるという失態をおかし、勤めを辞退する。

    高齢ではあるが壮健だった圭司がなぜ堀に落ちたのか…
    それを発端にいくつもの謎の存在が明るみに出、解かれていく。
    伝説の真実はどこにあるのか。

  • 藩主が二人いる橋倉藩。
    当然、そこには二人の近習目付を置くことになる。
    だが、藩主相続を望まないという申し出と共に
    藩はひとつにまとまった。
    春が訪れようとしていた。
    が、そこで起きた暗殺事件。
    P220
    〈時々の代をつなげていく者たち〉の
    命(めい)に縛られた過酷で悲しすぎる生き方に胸が塞がる。

    青山文平さんらしい、重厚で情に溢れた作品。
    読み終えてほーっとため息が出た。

  • 前半の説明が長く、我慢の読書が続きました。かと言って後半もなんだそんなかよと。タイトルもなんだかなあ。

  • 老境を迎えた二人の重臣。

    その老後を淡々と描くと思いきや、二人が仕えた元藩主が突然殺害される。

    背景に二人の祖父たちが関わった班の重大事件が浮かび上がる。

    藩主の交代制や、考えにくいが屍体を斬る稽古は、何度も縫って使い回すことも含め、実際に例があったという。

    間者が同様の訓練を永年にわたってできたかは何とも言えないが、間者故に可能だったとも言えるか。

    2つの殺人と藩の過去とのつながりが明らかになるに従い、犯人の深い絶望にも思いが至る。

  • 読みやすいが、犯人にも展開にも納得行かず。急に呼び捨てるし。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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