- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480017178
作品紹介・あらすじ
情報が行き交い、フェイクニュースで記憶が上書きされる現代。自分の記憶をよりよく世話するには何が必要か。コンピュータ活用法など創見に満ちた知的悦楽の書!
感想・レビュー・書評
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テレビ、新聞、本の他、ネット、SNSの普及により絶えずして情報の濁流に飲み込まれている現代人にとって、自分の記憶を「世話」することは可能か?
私の実感として、ネットで見たことはほとんど記憶に残らない。インターネット上のどこかのファイルに仕舞い込まれており、自分の目の前に並んでいるわけではないので、思い出すトリガーが限られるからか。また、たまに脳内の引き出しから出てくることはあっても、ではその出典はどこだったかなどは、全くと言っていいほど思い出せない。
その点、紙の本はそれが並んだ本棚を見るだけで、読んだ内容がほのかに甦ってくる感覚がある。例えばジャンルごとや著者ごとといった風に、自分で本を体系化して本棚の中で並び替えられるのも思考を整理するのに便利な気がする。
とはいえ有形のものは収納スペース等に限界があるし、そうした自分だけの体系化された記憶をネット空間で整理できて、見やすく整理できたらそれは便利だろうな。山本さんが考えるような知識OSが早く実現してほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「哲学の劇場」での丁寧な語り口と深い知識に好感を抱き、ちょくちょくお二人の書籍を漁っております。
本作の結論はプログラミングの知見もあり、且つ人文学や社会学などの思想系にも精通する著者ならではの発想ではないでしょうか。個人的に、このような知的OS興味有りで、ぜひ使ってみたいと思う。
最近は紙と電子書籍併用しているが、電子書籍の平面でかつ限定的なディスプレイだと積読している本を思い出すきっかけが確かにないなーと感じている。スクロールしてみると、そういえばこんな本買ったなと記憶が蘇ることしばしば。
記憶の曖昧性、個人的な記憶と社会的な記憶、記憶の形態なんかも学ぶことができて、理解の網の目が細かくなったかな。適宜参考文献紹介してくれるスタイルも好きで、おかげさまで読みたい本が増えました。 -
インターネットでいつでも検索できるにしても、それらは巨大な倉庫に格納されている素材にすぎず、人が自らの人生を生きるためには、それらのフラグメントを自己の時間的/空間的にネットワーク化された記憶(五感も組み入れられた自分自身の内なるシステムともいえる)と相関させることが必要であるはず。その際には、自分自身の記憶について、「上手くできたインデックス」を活用できるとうれしい。コンピュータ/通信の技術を役立てるとしたら、このインデックスを洗練・高機能にできるという面ではないか。
と、いうようなことを語っておられるようだ。かっちりした解説書というよりも、ふんわりとしたケーブのような印象のエッセイ。 -
記憶を自然、技術、社会、精神の4領域の観点から語るエッセイ
現在を情報の濁流と表現しており、まさにそうだと思われる
その中で適切に記憶するにはビオトープ、つまり安定した池のような環境形成が大切だと語られている
まさにその通りで、流れる情報をそのまま受けていたら処理しきれない
ビオトープを作るには工夫が必要であり、情報の遮断というのも一つ
また書籍での情報というのも一つの形
書籍は開かない限り情報として入って来ないが、置いてあるだけでもタイトルや物理的な形から漏れ出る情報は拾える
暗知的な情報取得の手段となる
普段、明確に言語化できていなかったことを文章として明示してくれて有り難かった -
ちょっと興味がなかった…。
でも、「情報の濁流の中で自分なりの積読環境をつくれ」的なことを書いてあったので、遠慮なく積読へスライドさせることにする。 -
記憶そのものについてというより「記憶と技術」についての思索を試みる本。「検索ができれば記憶は不要では」という仮説に対する違和感は著者と似た感覚を持っていて、新たな気づきは多くなかったがその分スラスラと読めたし、思考を整理してもらった気分。著者のいう「知識OS」「知識アトラス」のようなものは個人的には欲しいし実現しそうな気もするけど、その使いこなし方に格差が生まれるであろう問題とこうした技術自体は別問題。結局は知性のあるべき姿や水準の社会合意と教育の問題になるのか、技術でどうにかできるものなのか。
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膨張する情報環境のなか、自分の記憶をいかに世話をし、デザインできるかを考察したエッセイ。記憶が成り立つ条件(自然・社会・技術・精神)を俯瞰し、知識アトラス、知識OSといった記憶をよりよく保つための整理法を提示する。
知識の出典を辿れる仕組み=知識アトラス。現在も似たツールがあるけれど、これ、ファクトチェックを含めもっと手軽に誰もが利用できる仕組みとなればいいなぁ、と読みながら考えた。
本書の構成自体が知識アトラスのいい事例だと思う。アイデアや見解の出典が注釈や囲みコラムに書かれている。参照した論文や本が数珠繋ぎに広がっていき、読みたい本が増えていく。それによって知的好奇心が刺激される。 -
2021I004 141.34 /Ya
配架場所:A2 東工大の先生の本 -
エコロジーという語句が何度も登場するが、カタカナ語の特徴で何となく意味が分かったような気になってしまう.「生態学」と漢字で表記した方がより理解しやすいと感じている.本書では記憶のあり方について、エコロジーの観点から論じているが、生態学的に、自然、社会、精神(個人)と技術に分けて議論している.PC上に効率的な書斎を構築するアイデアとして、知識OSと知識アトラスを提案しているが、知識OSには非常に引き付けられた.このようなOSを何とか作りたいものだ.
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記憶というものがどういうものか。記憶は、自然と人工物の重なり合った時空間を基礎として、他者との関わりの中で形成される。さらに、インターネットとコンピュータによる情報環境が加わることで、意識には上がらない定着することなく忘れ去られてしまう膨大な記憶がある。
そのような現代社会において、自らの記憶をどのようにデザインするか。内部記憶と外部記憶の役割を整理することで、ネット社会における内部記憶の重要性を再認識させてくれる。
最後に提案される知識OSは、情報環境の発展に寄り添った画期的なアイデアであり、好奇心くすぐるものであった。