この女

著者 :
  • 筑摩書房
3.60
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本棚登録 : 938
感想 : 221
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804310

感想・レビュー・書評

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  • このひとの書く話って、さわやかな風が吹き抜ける初夏のだいたい午前9時ぐらいの、空気がすきっとしている感じ、っていうなんだかよくわからないイメージがあるのだけど、この話は違った。じめっとした感じ、日が当たらない感じ、淀んだ空気が身体に纏わり付く感じ、そんなあんまり気持ちのよいものじゃなかった。けど、それでもやっぱり人間は生きているんだって思わせてくれる、力強い文章があって。ちょうどこの話が展開されている年にいろいろあったからなのか、現実のことに置き換えて読んでみたら、読んでダメージを受けているのに関わらずなおのことダメージが蓄積した。小学生のころの話だから記憶は薄れているけども、あのころは日常を過ごしていてもどこか暗くて、後ろから生き物ではないなにかがひたひたとついてくるような焦燥感に当てられていたような気がする。
    泥臭く生きる人間の姿が確かに存在していて、強いなあと思った。読み終わったあと、また冒頭の手紙の部分に戻って読んだらすごく、こう、せつなくなった。

    (309P)

  • この人の小説を読むと、生きることが超カッコイイことに思えてくる。

  • 友人大輔の紹介で、結子という人妻の生涯について小説を書くよう頼まれた、日雇労働者の礼司。

    物語は、礼司の描いた小説そのもの。

    読んでいて、実際に物語の中に取り込まれていくような錯覚に陥った。
    「はてしない物語」のそれを思い出した。
    壮絶な人生に身を置いた登場人物たちの生き様は淡々と描かれているのだが、それゆえ一層のリアリティが感じられた。
    「女の壮絶な生き様」という点では向田邦子作品を思わせるような見ごたえ感もありつつ、追々明らかになっていく真実や時代の流れ、散りばめられた伏線の数々には、ダイナミックなミステリー映画を見ているようでもあった。(例えがチープで申し訳ない・・・)
    今までの森絵都作品にあったさわやかな印象とは全く違った、新たな雰囲気が楽しめた。
    かつ、森絵都らしい微笑ましいタッチやさりげない問題提起もあり、大満足な1冊でした^^

  • 久しぶりに一気読み。面白かった。
    中学に入って初めてカラフルと出会ってから、早十年以上。
    やっぱり森絵都さんすき。

    すきなのは、「幸せは、絶対、もっといろいろや。」って結子が言うところ。
    なんか、そのとおりだなぁって。
    オムライスを、ばくばく食べたったらええねんって言って食べてるのが良かった。

    読み終わってから、冒頭の手紙をもう一度読むと、嬉しくなる。

  • 読了後、最初の手紙をよみかえすと、新しい感動が。
    そうか、彼は戻ってきたんですね。

    前向きになれる本。
    私も図太く生きよ♪

  • まさしく「この男」と題される小説でした。
    結子の半生を書く事でますます謎めいてくる礼司の過去。
    種を明かせばそれだけ?だったのだけれども端々に礼司の人品骨柄が見え隠れして、描かれない見た目も妄想されて、ぐいぐいこの二人のその後を知りたくて読み進めてしまいます。
    冒頭部でもう知っていても、二人のその後の幸せを願わずに入られない。
    読み終えて冒頭部をまた熟読。ああ、彼は元気だったのだなぁ。

  • 「この女」は作中で書かれることになった小説の題名。
    主人公礼司が書き進める過程とこの女である結子とのやりとり、
    そして明らかになる結子の人生。
    読むほどに、知るほどに感慨深い波乱の人生。
    いつしか結子との距離がぐっと縮まってきている自分に気づく。
    なぜたやすく男と寝るのかという質問に答えた、結子の純な心情がとても切なかった。
    後半、礼司自身のことも明かされてくる頃にはこの小説にとっぷりはまっていた。
    1994年、そして1995年。
    あまりに大きな事件のあったあの頃を甦らせながら読んだこの作品、とても心に残る。ラストの章、大好きだ。じ〜んとして、元気が出る。

  • プロローグからぐいぐいと引き込まれて、一気に読了。
    1995年、あの年のあれこれが新たな震災の起きた16年後の今、何かの符丁のように思い起こされる。
    主人公(礼司)の執念が、小説のその後に幾ばくかの希望を残したことに救われる。
    森絵都さんの作品、さらに高まりを見せているなあ。

  • 思ってたのとちょっと違うかな。
    でも、面白かった。

  • 森絵都さんがまた違った世界を見せてくれた作品。読み終えてから、また冒頭の手紙の部分を読み直しました。小説の題「この女」は、「この男」にしたいところと教授が書いていましたが、私もそう思いました。甲坂礼司、二谷結子、神戸大学の文学部の学生、藤谷大輔、釜の松山(松ちゃん)、舞台は、大阪、釜ヶ崎地区。大阪は、詳しくないけど、釜ヶ崎がどんな感じなのかは、なんとなく、ぼんやりと知っている。釜ヶ崎のラスベガス構想、教団に傾倒し、出家を決意する大輔。礼司と結子は、釜ヶ崎から東京へ旅立とうと決めたが。運命って誰にもわからないものなんだなぁーと。色々な事が絡まり合って、すんなり上手くいく事も、いかない事も。そして震災に襲われる街。
    みんながそれぞれもがいたり、悩んだり。ハンデのある礼司、震災の前の日、結子と食べたオムライス、2人のテーブルが幸せの光に満ち溢れていた事で救われた気がします。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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