コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488252045

感想・レビュー・書評

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  • 第一部は内容的にもどんよりしたり、読み進めにくい部分もあり、なんとなくちびちびと読んでいたのですが、第二部に入ると第一部が生きてきます。第二部に入って思わず一気読み。
    第一部を振り返り振り返り読み進んでいったので、一気に読んだ方が良かったのかもしれません。あと油断すると泣けるので電車で読むのは危険でした....。

  • ミステリー好きの知人に勧めてもらった本。
    女性二人の友情が描かれたと聞いて、読みやすそうだと思いましたが、予想に反してかなり読みづらく、第1部は難儀しました。

    1部と2部とで筆者が変わるという設定。二人の女性それぞれが書いたものとなっており、文体もかなり変わります。

    第二次大戦中、ナチスドイツに対抗して戦うイギリスとフランス。
    戦時下が舞台であり、イギリスの特殊部隊に属する一人の女性はナチスにとらえられ、スパイとして尋問を受けているため、直接的ではないにせよ、むごい拷問を想像させる表現が随所に見られます。

    ミステリーというよりよりも戦争文学で、かなり読み進めるのがつらいストーリー。
    ただ、第1部で語られる二人の少女の出会いと交流は、そうした悲惨な状況を忘れさせるような生き生きしたものになっています。

    とはいえかなり冗長で、戦闘機の専門用語などが多いため、一般人には忍耐が必要。何度も途中で脱落しそうになりました。

    第2部は、第1部で語られたのと同じ状況がもう一人の少女によって記され、そこから見えてくるものがあります。

    そして第3部。人々の悲劇はひとえに戦争という狂った状況がもたらしたものだと、ひしひしと感じます。
    その、どうにも抗いきれない大きな流れに呑まれながらも、必死に抵抗し続けた少女たちの魂の強さに胸を打たれます。

    ナチスという巨大な組織の前に、なすすべもない二人。
    しかし、決してそれだけではなく、文字では残されず、言葉では語れない信条を貫き、最後まで敵に屈することを良しとしなかった2人。

    離れていても恋人のようにさえ見える息の合った二人は、戦時中でなければさぞいい親友になっただろうと思われますが、お互いの出自の身分が違いすぎるため、平和な世の中ではまず出会うことはなかったものと思われます。
    つまり、悲惨な戦争が二人を引き合わせたというなんとも皮肉な結論。

    最後の最後に、二人に課せられた秘密の任務が明るみになります。
    命の危険にさらされながら、ゲシュタポや「夜の霧」の恐怖に挑む少女たちの勇敢さ。
    彼女たちが非力であるがゆえに、その不屈の精神はいっそう涙を誘います。

    英米のヤングアダルト小説ですが、かなり複雑でハードな内容のため、一読しただけでは理解は困難。
    大人向きの作品です。

  •  第2次世界大戦中に、ドイツのとある場所にイギリスからのスパイの女性が囚われる。彼女は激しい拷問のうえ、暗号を伝え、さらにイギリスのことを書き記すように紙を与えられる。
     彼女はそこにマディと呼ばれる女性飛行士の物語を3人称で語り始める。1週間という期限内に書くこと。その間は生きられることが保証される。しかしながら、彼女の状況は過酷であり、最後まで書き進めることができるか非常にあやうい。

     彼女の手記と彼女の状況が挿入されるのが1部、そして2部と読みすすむと、なんというか、奇跡だなぁと思う。実にフィクションだ。
     物語の中で彼女らが生きていたこと。戦争という非日常の世界で日常があったことを考えさせられる。
     しかし、実に魅力的なヒロインらだ。

     正直、1部は読みつらくなかなか読み進めにくい、けれども2部に入ると一気に読みやすくなる。そして読み終えると1部から読み返したくなる。そんな物語。

  • 過酷な状況、暴力を示唆する描写が最初は読んでいてつらかったのだけれど、眼下に海岸線を臨む空からの描写が美しかったり、ジュリーやマディはじめ勇敢な女性たちの強さと愛に胸打たれ続けた小説だった。
    人間がモノ以下の暴力の世界で、信念と心でつながっていた人々が立ち向かう姿がたくましかったし、そのための言葉と名前と物語だなやはり、と気づかせて小説だった。
    言葉が場面ごとにリンクし共鳴しあったのも、心地よかった。

  • 第一部と二部でがらりと印象が変わる。第二次大戦中フランスに渡ったイギリス軍女性将校である「わたし」ことクイーニー。彼女はフランスに渡った際にゲシュタポに捕まり拷問を受けた。そして拷問から逃れるために知ってることを小説風に書き記したのが第一部。拷問で心が折れた彼女は、知っている機密を順々に書いてしまう。それは彼女の親友であり女性飛行士として彼女をフランスに運んだマディの物語だった。なぜクイーニー自身でなくマディの話なのか。文章もヒステリックだったりしてどこまで真実なのか分からず、話がこんがらがる。その意味が第二部で明らかにされた時は衝撃だった。クイーニーとマディの一瞬の邂逅で発せられた言葉には胸を打たれる。正直あり得なさすぎる話だとは思うが、とても面白かった。

  • ストーリーに一切触れられないタイプの小説。ちょっとでも触れたら興味を削いでしまいそう。

    やけにボールペンに拘りがあるのはなぜだ。

  • 先の大戦では日本には女性飛行士はいなかったことから西洋の女性は逞しい。

  • ナチスに捕えられたイギリス特殊作戦執行部員。彼女は軍の情報を提供することを強要され、親友の視点からの物語として記し始める。
    第二部ではその親友自身が語り手となり、もう一つの物語が語られる。
    ふたつの物語が明らかにする悲しく勇敢な真実ーヴェリティー。

  • タイトルと装幀だけでレジに持って行ったので、あらすじやジャンルは分からないまま読み進めた。創元推理文庫なのでミステリか?とあたりをつけるも、それにしては色んなことがあからさまなので、不思議に思いつつ。

    解説まで読んで、児童書なのだと知って納得した。本書は2部に分かれており、秘密が散りばめられているが、浅く土がかけられている程度だ。分かりやすいと行っていい。

    誤解しないでほしいが、児童書は好きだ。私の読書体験の原石だから。飛行中の景色ーー緑色の月の光や、心の底から邪悪な人間としての描写がないことーーあの親衛隊大尉すらーーなどは、懐かしさを覚える。子供の頃、この本を読んだらきっともっと胸の奥まで針が刺さっただろう。

    今年発売の新刊に本書の登場人物が出るという。邦訳が出てほしい。楽しみに待っています。

  • 第二次大戦中を舞台にしたミステリ。
    時代背景を考えると、女性が主人公というのは珍しい。ただ、ミステリというよりは一般文芸に近い印象を受けた。
    他の著作も邦訳されれば読んでみたい。

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