英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ウ 21-1 ファージング 1)
- 東京創元社 (2010年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488279059
感想・レビュー・書評
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舞台は英国、ナチスと講和条約を結んだ1949年の世界、という設定に惹かれて読み始めたものの、前半は“普通の殺人事件”というか、名門一家のお家騒動というか、それはそれで面白くないわけではないのだけれど、折角の舞台装置が勿体無いなぁという気がしていた。
でも半分過ぎた辺りからこの設定が活きてきて、話もどんどんスピード感が増し、俄然面白く。
最後は、人とは、そして世界とは、こうやって少しずつ、しかし急激に良くない方向へ流されていくものなんだなと、背筋が寒くなる思いがした。
残り2冊にも期待。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これがSFに入るかといえば、微妙。歴史改変物ミステリー。
英国とナチスドイツが講和した世界のミステリー。
「双生児」が好きな人にはSF具合が足りない。「ファーザーランド」が好きな人には良いかも。「ユダヤ人警察同盟」が好きな人にはアクションが足りない。「高い城の男」が好きな人にはキツイ。
英国上流階級やそういった人達の戦争やユダヤ人に対する態度などどことなく「遠い山なみの光」を思い出した。 -
まただよ。
訳者あとがきで、
「ネタバレにならない程度に予告しておくと」と書いた上で、
第二部、三部のことを教えて下さっている・・・。
これから読むのだから、そんな事教えて欲しくないのですが。
茂木健氏に限らず、どうして訳者は未読の読者に内容を教えたがる人が時々いるのか?
作品本編は素晴らしいものであっただけに残念だ。
1941 年にイギリスとナチスドイツが講和条約を結んだ後の世界を背景に、
ある殺人事件を中心としているが、イギリスがファシズム国家へと、
大きく舵を取り始めるうねりの様なものが上手く伝わってくる。
第二部以降、物語がどう展開していくのか楽しみだ。 -
淡々としながら飽きない雰囲気。イギリス上流階級の描写が、クリスティを彷彿させます。訳もいいです。
「もし第二次世界大戦でドイツとイギリスが手を組んでたら」っていう世界ですが、派手な展開を期待すると裏切られます。SFでなく、単に、政治やマイノリティの問題を提起するための設定なのだと思います。
それにしても、同性愛が多すぎる。 -
英国がナチスドイツと和平条約を結んだ世界という設定。”ファージング”三部作の1作目。
ヒットラーと手を結んで英国に平和をもたらした有力政治家の一人が、田舎の邸宅で殺害される。ここから、英国政治を牛耳ってきた派閥の力関係と、迫害を受け続けるユダヤ人と英国民の複雑な感情が入り乱れるのだが、肝心の殺人事件の捜査が場当たり的で、興を削がれる。
あっけなく犯人も判明し、登場人物のほとんどが大した役を与えられないまま話が終わってしまった。SFとしてもミステリとしても中途半端。一体何を書きたかったのか、今もって不明。三作全部読んだら、作者のメッセージが見えてくるのだろうか。 -
イギリスとヒットラーが手を組むとこんな世界になるのか((゚m゚;) で、あの夫婦はどうなるの…。三部作なので次巻に載ってるのかな?これは読まなければ!
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話題の歴史改変ミステリ。
面白かった~!
名前ではわからないけど、作者は女性。ウェールズ出身でカナダ在住。2003年に世界幻想文学大賞を受賞しています。
イギリスがはやばやとナチス・ドイツと講和条約を結んだと変えられていると聞いて、そういうイギリスってあんまり…
とすぐには手が出ませんでした。
ところが、これが面白い。
1作目に関しては、クリスティなどを読んでいるミステリ読みならすぐになじめる雰囲気で、わかりやすく展開します。
イギリスでその講和を導いた政治中枢を担う面々がファージング・セットと呼ばれている。
このときも、ファージングにあるエヴァズリー卿の屋敷でパーティーが開かれます。
社交界の花形である夫人は、やり手で美しいが傲慢で、娘には冷たい。
視点はこの夫人と不仲の娘ルーシーと、事件が起きてから呼ばれたカーマイケル警部補の視点で交互に。
令嬢ルーシーは亡き兄の戦友だったユダヤ人デイヴィッド・カーンと恋に落ち、反対を押し切って結婚、親たちの政策に真っ向から反抗したのですね。
イギリス生まれで裕福な銀行家の息子であるデイヴィッドは、イギリスは大陸とは違う民主主義の国と信じ、いつかは受け入れて貰えると考えている善良な男。
翌朝、下院議員がベッドで死んでいるのを発見される。
ユダヤの星が突き刺されていたため、ユダヤ人に疑いが…?
1941年にドイツと講和したので、ドイツは負けずに1949年になってもまだロシアとの戦争がだらだら続いている、という状況。
ユダヤ人に対する苛酷な処遇はドイツが敗れて一気に公表されたほどには知れ渡っていないでしょうが、徐々に知られてきているといった所。
三部作なので、結末はこの独特な設定に関わっています。
続きはまた設定を生かして、大きく展開するらしい。けど、知り過ぎちゃってもつまらない? -
ナチスドイツと講和したイギリス。そこで起きた殺人事件。しかも国を動かす権力者階級での出来事。おまけにこの世界が三冊も続くという。これは僕にとってあまりにも魅力的でした。
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読書完了日2011年01月10日。三部作の第一作。イギリス文学や慣習が好きな人にも良いかも。ミステリーぽくないです。