六の宮の姫君 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M き 3-4)
- 東京創元社 (1999年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488413040
感想・レビュー・書評
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円紫さんと私シリーズ4作目も面白かったです。
今回は今までのような事件の謎解きではなく、芥川竜之介の「六の宮の姫君」に纏わるお話でした。
芥川のお話を読んだのは随分前でほとんど覚えておらず、ふわふわと読んでしまいましたが、ピースがかちかちと嵌まっていく様が気持ちよかったです。
主人公の私はこのまま卒業して就職するのかなぁ…なんだかトントン拍子に物事が進んでいきます。。
続きも楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさに卒論。同じ文学部として恥ずかしくなる内容でございます。菊池寛と芥川龍之介の関係性とか全くの専門外だし、こういう話嫌いじゃないので普通に楽しめた。
ただし、好き嫌いはあるだろうなぁ。 -
北村薫の『私と円紫さんシリーズ』の第四作目『六の宮の姫君』。一作目『空飛ぶ馬』(《私》19才、大学2年の5月から12月まで)、二作目『夜の蝉』(《私》大学2年生の3月から3年生の8月頃まで)は短編集、三作目『秋の花』と本作は長編となっている。
本作では大学4年生の5~9月末頃の《私》が描かれ、三年次から心に決めていた芥川龍之介の卒業論文作成に取り掛かる。題材としてどの作品を論ずるか当初は未定であったが、あるきっかけから「今昔物語」を素材にしたとされる「六の宮の姫君」が自著「往生絵巻」の裏返しとして書かれることとなった背景に隠された文学史の謎に挑むこととなる。その謎解きたるや、なんと大正文学を代表する名だたる実在の作家が容疑者となるから痛快だ。そして、謎解き自体がある種、作中作として論文の骨格を形作ることとなる仕掛けが施されている。まさに読みどころ満載なのである。
「様々なことを、いろいろな人に教えられた。しかし何が身についたという実感もないうちに、はや大学四年である ~ 物心ついてからずっと《生徒》であったのが、もうすぐそうでなくなる ~ 自分も一年後には大学にいない、何らかの仕事に就いている筈だという現実の重みを感じた」
《私》は、大学の恩師から卒論にも役立つであろうからと出版社のアルバイトを紹介され、そこでの熱心さが買われ渡りに船で就職先が決まることとなる。そして、出版社の社員から譲り受けたクラシックコンサートのチケットが運命的!な出会いへと繋がっていく。
親友の正ちゃんの運転で福島県裏磐梯の曽原湖までドライブ旅行をする。そのときの装いが、本文中ではジーパンに、白に薄水色の太い横縞のシャツであるのに対し、高野文子氏の描く表紙イラストでは縦縞と食い違いが見られるのも一興である(たしかに横縞では絵にならない・・・)。 -
凄い!こんなミステリーもあるんだ。
文学の研究とか<太宰をやる>って意味がわからなかったけど、こんな感じなんだ。全く未知の世界を除いた気分。
きっと半分も理解できていないと思う‥‥一気に通して再読したい。 -
主人公の卒論執筆過程を追体験すると同時にミステリーにもなっているというおそろしい書。ご一読あれ。
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趣向を凝らした格調高い文芸ミステリーです。
芥川のある謎のことばにひっかかり、その真意を残された文献や書簡などから迫るという趣向は、松本清張の「ある小倉日記伝」を彷彿とさせます。
実はこの本も、小谷野敦氏が推薦していた本ですが、そういえば彼の著書「芥川賞の偏差値」で「ある小倉日記伝」も64と高評価だったことを考えればこうした地道で正統派の労作が好きなのでしょうね。
確かに、試行錯誤しながらも徐々に真相に迫っていく過程は、推理小説のようなスリリングさとさらに知的興奮も加味されており、より味わい深い作品となっています。 -
私が芥川作品であまり苦痛なく読むことができた作品を題名に据えていたから、なんとなく親近感を持って読んでいました。
文学者たちの考えはやっぱりいまの私にはわからないけれど、それがすごく貴重なことだけはひしひしと感じますし、それってそそられる人にとってはとっても興味をそそられるなものなのだろうとも。ぶわっといろんなことが思い浮かんで、色々と考えさせられる作品でしたし、私の肌には合ったのかな、と思います。
他人にお勧めするには少しテーマの入りが難解かな、とも思いました。 -
主人公は文学部4年生、芥川を主題に卒論を書く。しかし、さすがに文学的知識がなさすぎてうまく読めない。