昨日までの世界 下: 文明の源流と人類の未来

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532168612

感想・レビュー・書評

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  • 人類の脳は原因・主体・意図を推定してそこから生じ得る危険を予測する能力と、その予測結果の因果関係を説明する能力を発達させ、その副産物として宗教が誕生したという、宗教の起源についての仮説がおもしろかった。伝統的社会を美化するべきではないが、伝統的社会は、現代社会に取り入れれば人々の生活をもっと豊かにしてくれると思われる特徴を多数備えている。

  • 下巻では、危機の対応、宗教、言語、健康について伝統社会から現代社会への教訓を述べている。下巻で特に違和感を感じたのは、彼にとって、現代社会=アメリカ社会を前提としていることであった。言語については多言語での教育を説いているが、大体数の日本人には不可能だし、健康についても、栄養過多を問題にしているが、多くの日本人にはさぼど深刻なように思えなかった。他にも高齢者の尊重や乳幼児教育もあまり納得できず、個人的経験を無理に敷衍しているようで、論が雑に感じた。

  • 「銃・病原菌・鉄」で著名な生物学者が、研究のために定期的に訪れるニューギニアでの生活をもとに、伝統的社会と工業化社会との広範囲かつ詳細な比較を通して、現代社会が抱える課題と解決策を提示した大作。

    著者は、我々が常識として受け容れている文化や生活様式が、実は人類の長い歴史からすれば「つい最近」作られたものであり、 人類が圧倒的に長い時間を過ごしてきた「昨日までの世界」における人間関係、紛争解決、リスク回避、宗教、子育て、高齢者対策の中に、「今日の世界」が物質的豊かさと引き換えに抱えた新たな社会問題を解決するためのヒントがあると主張する。

    ともすれば産業化が遅れた「未開の地」として片付けられがちな伝統的社会に光を当てつつ、それらを手放しで賞賛するような単なる懐古主義に終わらない点は、著者の非常に幅広く学際的な研究領域によるところが大きいと思われる。やや冗長な表現も多いが、時空を超えて視野を広げることができるスケールの大きな作品。

  • 文化や人類学、宗教など幅広い視野が得られる。

  • ページ数が多く読了に時間がかかった割に、得たものは少ない。
    テーマがぼやけていて散漫な印象。
    エピソードを絞れば新書程度でも十分なのではないか。

  • 下巻。

    「危機とそれに対する反応」として、伝統的社会における「建設的なパラノイア」という態度が説明される。他部族との遭遇や怪我、病気などによる命の危険が多い社会では用心深い態度が求められ、現代社会の観点からするとパラノイア的にも見えるが、確率の低い出来事も数多く繰り返されると危険であることを教示している。たとえば交通事故など。

    ・狩猟や採集など、食物の獲得が不安定な社会では誰かがとったものは全て集団全体に分配する。これによって収穫の不安定さをならすことができる

    ・われわれは「危険」をマスメディアを通して知るため、めったにおこらないような事故を過大評価する。上巻の「建設的なパラノイア」の観点から言えば、飛行機事故よりも交通事故の方を重視して生活すべき

    ・糖尿病や高血圧など、非感染性疾患による死亡が現代社会では多い。カロリーや塩分を容易に摂取できる食生活の影響。

    ・宗教の役割は
    説明することー科学にとってかわられた
    不安を軽減することー国家にとってかわられた
    死への恐怖(死後の世界を約束する)
    規範・道徳を与える
    戦争の正当化(異教徒は殺してもよいという理由付け)
    に用いられてきたが、死への恐怖以外の点ではかつてほどの重要さはない。

  • 今回の著作は人類が誕生して文明を築くまでの世界が舞台。

    600万年前から1.1万年前までの長い時間軸の中で人類の特徴をあぶりだします。

    ジャレド・ダイアモンド博士の長編論文が1.1万年前からの文明発展のことであったのに対し、より根源的な問題に取り組んでいます。

    ただし、研究内容が人類の根っこ部分なため、ニューギニアから俯瞰するにはちょっと無理があったか、という感想です。

  • 下巻も読破ー

  • これを「温故知新」と言う。
    日本人にはなじみの概念だが、これだけの文章を尽くさないとアメリカ人にはわからないのか。
    前2作に比べて衝撃は無く、ネタ尽き感がある。

  • (以下、「上」のレビューとおなじ)


    1.ジャレド・ダイアモンド『昨日までの世界 文明の源流と人類の未来』日本経済新聞出版、読了。『銃・病原菌・鉄』の著者による新著。「今日の世界」とはヨーロッパ化された世界。前著でその経緯を辿った。本書では工業化以前の「昨日までの世界」と対比する中で、文明の危機への処方箋を提供する。

    2.J・ダイアモンド『昨日までの世界』日本経済新聞出版。「今日の世界」の根幹は国家の成立だ。しかし600万年に及ぶ人類の歴史の中で、国家の成立は5400年ほど前に過ぎないし、ここ百年で「今日の世界」となった事例も数多くある。歴史的にも人類は「昨日までの世界」で長時間過ごしてきた。

    3.J・ダイアモンド『昨日までの世界』日本経済新聞出版。豊富なフィールドワークと人類学的調査から著者は、子育てや介護といった現代社会の岐路となる問題のヒントを「昨日までの世界」に求めるが、その論証は説得力に富んでいる。しかし、著者は同時に「過去への憧憬」も手厳しく否定する。

    4.J・ダイアモンド『昨日までの世界』日本経済新聞出版。ヨーロッパ文明のおごりも否定する。成功は文化的に優れていたからではない。安易なイデオロギー批判とロマン主義趣味を柔軟に退け、叡智を学び未来へ開くこと。著者の文明論の集大成の本書は柔軟な思考と公平さの指標となるだろう。

    5.J・ダイアモンド『昨日までの世界』日本経済新聞出版。なお9章は「デンキウナギが教える宗教の発展」(下巻所収)。文化人類学的宗教の役割変遷論のまとめ。7つの項目で検証した図表があるので紹介しておきます。

    https://twitter.com/ujikenorio/status/340477492215291906/photo/1

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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