ユルスナール・セレクション 1

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560047118

感想・レビュー・書評

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  • 評価の高い本。ローマ人の物語からの脱線で読んだ。私の未熟さゆえに、この本の良さは分からないが、ハドリアヌスがアンティノウスの死に打ちのめされる描写には心が揺さぶられた。自殺の理由はわからず、わからないからこそ、残されたものは理由を探し続ける。何度も振り返り、その兆候を見出そうとする。その下は、私なりに理解した。
    その後の後継者選びでも、若いルキウスの死があり、そのたびににハドリアヌスと同じように胸を痛めた。そして、自身の死。死を感じながら生きる。仕事もする。皇帝の孤独。
    なんというか、静かな小説だった。

  • タイトル的に、マルクス•アウレリウス•アントニヌスの『自省録』の(第三者の想像による)ハドリアヌス版かと思って手に取った。皇帝目線ではあるが、ほぼ伝記物的な内容だった。

  • イタリア→須賀敦子→ユルスナールという順序でここに。訳者の詩人・多田智満子さん関連で『魂の形』も本棚にある。
    読みかけ。美文が素敵なんだけど、ゆっくり浸って読むには時間も余裕も足りない。

  • 『ハドリアヌス帝の回想』の日本語版は1964年・1985年・1993年・2001年・2008年と白水社から出ています。
    先日1993年の物を読み、読了前にレビューを書きました。http://mixi.jp/view_item.pl?id=1595408&reviewer_id=4337602

    ここに書いたように、この本は難しい単語のオンパレードでした。辞書を片手に読み終えました。途中でレビューを書いたときは「もっとわかりやすい翻訳本をだしてほしい」と提案しました。

    辞書を頻繁に調べて本を読むのは大変でしたがとても楽しくもありました。
    また、この翻訳の多田さんの「ユルスナールの靴」文庫版にある解説、そしてこの「ハドリアヌス帝の回想」のあとがきを見ると、そんなに難しい文を書いていません。
    これは「ハドリアヌスなら…」と想定して、難しい言葉を並べたのかなと思いました。大変味わい深い文章でした。

    ユルスナール女史も「修正の上に修正を重ねた」とあります。

    先日「ライフネット生命社長」の本を読んだとき一番お気に入りの本がこれでしたし、レビュー等を読んでも絶賛の嵐です。
    ハドリアヌス帝・ユルスナール女史・多田智満子さんがそろって超一流なのです。

    今回私がなぜこの2001年版を借りたかと言うと、1993年版を読んだときに明らかなミスを見つけたのでそこがどうなっているか知りたかったからです。
    いくつか疑問に思ったけど、二箇所調べました。

    長口舌(長広舌)
    白晢(白皙)

    前のままです。
    そして今回見ていたら、私の前に借りたひとが他にもミスをみつけて鉛筆で修正していました。

    ロデス(デロス)
    これは1993年版でも。

    そして今回新しいミス
    「ボスフォルス…(最後の」がない)

    つまり前回のミスが直っているどころか、むしろ増えている?
    他にもあるのでは?

    これだけ一流のメンバーをそろえているのですから、白水社さんにも完璧にしあげてほしいと思いました。

    そしてもうひとつ疑問に思ったのは、私と違ってこの本をすらすら読んでしまった方達はいったいどう思っているのでしょう。
    「誰にでもミスはあるから、気にしない」のでしょうか?

    それとも「1961年ニューヨーク近代美術館にアンリ・マティスの絵が47日間も逆さに飾られ、最終日の前日になるまでのべ11万6000人もの観客の誰も気づかなかった」みたいなことなのでしょうか?

  • ユルスナールは文献を渉猟し研究を重ね、その上で文学的想像力を働かせた秀逸な小説だが、本書以前は有能とも言えない上に同性愛者であったことからフランスで人気のなかったのに、この本が出て一気にハドリアヌスがローマ皇帝中で一番人気になったらしい。それほどに手紙の書き手(ハドリアヌスが書く手紙の形式をとった小説になっている)の魅力が文章から溢れている。決して飾った文章ではなく、キケロのように練りに練った修辞と言うのでもなく、カエサルのように簡素簡潔と言うのでもなく、静かで押し付けがましくなく、控えめでかつ芳雅な雰囲気がある。
    そう思って、とある仏文学者・フランス語翻訳者に素敵な日本語だと述べたら、いやあれは原文とはだいぶ違い非常に硬い翻訳ですよ、と言われた。そのあと原文を購入したが、そこまで判断できる素養がなく、むしろ硬質な文体がローマらしさを逆に醸しているとさえ思えてきた。その後、多田さんの詩集や随筆もいくつか読んでみたが、翻訳もまた独立した文体の創出として創作と言えるんじゃないかという意見に傾いている。

  • ハドリアヌス帝の回想が綴られている。
    描写がすばらしい。
    統治を学ぶには良いかもしれない。
    しかし、読み進める気にならず半分ぐらいしか読んでいない。時期が来たら読み直したい本。
    尊敬という純金は恐怖という金属を混ぜなければ柔らかすぎる。

  • 難しかった。斜め読み。

    しかし、訳の日本語の美しさはすばらしかった。ゲーテのような、流れる美しいことばで綴られていて、とても優雅な気持ちになれた。

    2013.05.16

  • 何世紀もの過去からユルスナールがよみがえらせる古代ローマ皇帝の声は、あまりにも魅力的で、1行目から引き込まれる。死を目前にした賢い老人の遺言のようにして始るこの回想録は、しかし、情熱的かつ率直に恋人の肉体への愛を語って、読むものをぎょっとさせもするのだ。
    軍人として名を上げながら、平和と秩序の維持につとめ、ヘレニズムに傾倒して詩作や建築に熱中し、旅と美しい愛人を熱烈に愛したひと。世界を支配する巨大な権力を手にしながら、あくまでひとりの人間であろうとしたこのひとは、自らが引き継いだ世界への責任を誰よりもよく理解している統治者でもあった。
    美と愛を貪欲に追い求めるひとりの個人と、本質的な意味で公的な存在として己の預かった権力を行使する皇帝の像とがぴったりと重なるとき、ユルスナールが描き出したこの人物はあまりに魅力的すぎて、実際の皇帝がこれほど思慮深く自省的な人間でありえただろうかと思ってしまう。でもたぶんここは史実よりも、それほど魅力的な人間像を創りだしたユルスナールの筆に身を任せてしまった方がいいのだろう。何度でも読みなおしたくなる魅力的な文章だ。

  • ハドリアヌス帝ー第14代ローマ皇帝。五件帝のうちの一人。

    物語はハドリアヌス帝が自分の一生を振り返る形で進んでゆく。

    皇帝と血の繋がりがない彼がどうやって皇帝にまでなったか、
    どういう治世を行ったか・・・
    どういう恋をし・・・
    どういう気持で病魔と闘ったか・・・

    が書かれている。(ただ、私には難解すぎて半分くらい流し読みしましたw)

    ☆ハドリアヌスの名言集☆

    「私は自由を求め一部において自由を容易ならしめるためにのみ権力を求めた」

    「嫌いな用事に出くわすと、私はすぐにそれを研究対象にしたてあげてそれからうまく喜びの種を見つけるように努めた。」

    また彼は軍隊に派遣された時、
    虚勢をはり命をはり勇敢であることを示し栄光を勝ち得た、という。

    さらに、彼は元老院の決議の記録係であったが、この退屈な職分を思慮深い厳密さで果たすことを嫌がらなかった。なぜならば「あらゆる公職を有用なものとすることを心得ていたからである。」

    その後皇帝の秘書に抜擢されるが、演説の草稿をつくる仕事がまわって来た際、上記の仕事に着いていた時に元老院議員のために草稿を作っていた経験が役立った。

    のだという。

    出世志向の向上心、野心のある若者にもオススメできる一冊。

  • ようやく終わりました。
    美しくていろいろと密度の濃い文章に溺れて死にそうになりました。
    経験値が決定的に不足していて、読みこなすところまで行きませんでした。
    もうちょっと年とってから再挑戦したいです。
    それまでにハドリアヌスのことをもう少し勉強しておこう・・・
    (09.10.12)

    図書館。
    読書会の課題本。
    ハドリアヌス帝って誰だっけ(←ヲイ)
    (09.09.07)

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