日本人としてこれだけは知っておきたいこと (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569648446

感想・レビュー・書評

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  • 本書のこのタイトルは,ふつうと比べ,たしかに少し長すぎるかもしれません.(冒頭の一文)


    日本人として知っておかなければならない内容として,大東亜戦争と天皇を取り上げ,日本の文明と我々が認識する日本の自画像を議論している.

    ん?,と思ってしまう文章がたまに.
    例えば,P27の『昭和天皇は,さすがに正しくGHQの意図を見抜かれておられ,その上をゆくお考えを持っておられたわけです.』とか,P195の『天皇とは,祈る君主なのです.』とかは,尊皇的な考えなのかと疑ってしまう.
    また,P138あたりのコミンテルンの話などは,疑わざるを得ない.なぜならば,もしコミンテルンの共産主義スパイの手によって,アメリカも日本もたぶらかされ,開戦につながったのが事実だとされば,アメリカも日本もまか不思議な思想を遮断できるだけの有識者が政府上層の意志決定者にいないおバカな国だったと推察される.そんな状態であれば,とうの昔に共産主義圏が地球を支配していてもおかしくはないのでは?

    ただ天皇制に関する議論で同意できる点は,国民が成長しなければならないことだ.天皇家は芸能人と違ってプライバシーが守られるべきで,周りの国民が意識を変えなければいけない.

  • 日本論

  • 作者の考え方が合わないので、評価を低く付けてしまいました。
    なんかすごく街宣車で騒音出している方々に、読んでてイメージが被ってしまいました。
    本当は良い事が書いてあるかもしれませんが、節々で池袋でよく大きな音で
    演説している方々がフラッシュバックして、気持ちが下がってしまいました。

  • 気になった点をいくつか。

    ひとつめは、議論の進め方が不親切だなあ、と感じてしまう。読んでいても、いったい誰を批判しているのか、何を根拠にそんなことを言っているのかよくわからない。著者の言うところの「「戦前」」を「全否定」する「奇妙な歴史観」をつくったのは、「左派の歴史家」だという主張だけど、「左派の歴史家」って誰のことを指しているのだろう。誰のどの議論を批判しているのかはっきりさせておかないと、議論の相手が何を言っているのかをちゃんと知ることができない。それこそ著者が国際関係で重視すべきと主張する、聖徳太子も言っていたという「対等」(p148)な関係を作るべきだという理念に反するんじゃないだろうか。まあ、これはあくまで国際関係上での教訓であって、「左派の歴史家」との個人的・学問的関係では「対等」の原則は適応されない、ということなのかもしれないけれど。

    それから2点目。僕は歴史を勉強していながらトインビーもハンチントンも真面目に読んだことないのは恥ずかしい次第でしょうがないとしても、たぶんこの本を手にする大半の人も読んだことがないと思う。なのに「文明史」「文明」の説明が無いのはちょっと不親切なんじゃないだろうか。日本は独自の「文明」を持ってます、「美意識―穢れに敏感な道徳意識」(p222)あるいは「心」がそれです、と言われても、そもそも「文明」の定義が説明されていないから、その「心」が文明としてふさわしいかどうか判断できない。

    3点目は、「日露戦争が大東亜戦争の原因となった」という説を、「結果から見て、勝手に意味を後付けした議論」(p109)として厳しく戒めている。日露戦争原因論の正否はここでは措いておくとして、後付はよくない、という意見はその通りだと思う。でもそのあとに幣原の「軟弱外交」を散々に叩いているのは、結果からみた批判じゃあないのかなあ?1927年の「クリスマス・メッセージ」で、英中が接近したことを喜んだ幣原を、「英米コンプレックスの強い人でした」の一言で片付けているのは、「喜んだ幣原」という結果から、「英米コンプレックスが強い」という原因を導き出しているように読めてしまうのだけど、どうだろうか。仮に幣原が英米コンプレックスの強い人間だったとするなら、その根拠を明記してくれないと、僕のようなものの知らない人間には「本当かなあ」、という気になってしまう。

    あと幣原が出たついでに、幣原や松岡の外交政策を戦略的見地を欠いていた点において批判するのはいいとしても、中国やその他諸外国との関係で重要なのは対等の精神で、それは聖徳太子が煬帝に送った手紙を見習え、というのはちょっと乱暴にすぎやしないか。それだったら、適切な外交政策が遂行でき戦略的見地を持った人材を養うための組織や機関を充実させたほうがいいような気もする。それこそ、日本を上回る戦略を見せたソ連を見習うべきなんじゃないのかなあ(皮肉です)。

    というわけで、「わかりやすい文体で書く」という最初の表明は僕もいいことだと思のだけど、全体としては文体はわかりやすいけど、自説の主張の根拠や批判の相手が省略されている部分が多いので、本当かなあ?という気になってしまう。そんなもん自分で調べろ、あるいは「常識」だからわざわざ明記するまでもない、ということなのかもしれないけれど、「多くの日本人に読んでもらわねば」(p11)というならば、やはり典拠はいちいち明確にしてほしい。そうでないと、単なる「煽動」の謗りを受けかねないんじゃないかなあ。

著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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