「見せかけの勤勉」の正体

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  • PHP研究所
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  • / ISBN・EAN: 9784569779881

感想・レビュー・書評

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    「やらされ感」が「やる気」を持てない原因。
    「所有感」をもって仕事をさせることがモチベーションアップのカギ。
    「所有感」を持たせるためには、責任や裁量などの権限を移譲しなければならない。上司としては冷や汗ものかもしれないが、良い成果があがるなら覚悟も必要か。
    「所有感」は「当事者意識」に置き換えられるかも。
    「当事者」として仕事に当たれば、いい仕事をしようとして、いろいろと面倒なことも考えてしまうよね。
    これが「憂鬱でなければ仕事じゃない」に繋がるのかな?

  • 社会人になった20年前から、一般的に日本人は残業が多くて有給休暇を使わないほど勤勉であると認識されていると思います。実際にはそれ以上前からそうだったと思いますが、特に派遣社員が多くなるまでは、正社員の数が多くて、部署によっては暇を持て余しているところもあったように記憶しています。

    この本では、「そのような日本人の姿は見せかけであって、その正体は異なるのでは」と、太田氏が述べています。この本の内容を読んで耳が痛い人がいるかもしませんが、成熟社会となって黙っていても成長していた10年以上前の日本や今の中国とは違っているので、成熟社会にあった働き方、更にはそれを評価するシステムを確立すべきだと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・日本人は決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくのはダメ(p22)

    ・日本人の「やる気」はもともと強くなかった、組織と仕事を取り巻く環境が大きく変わったことで、今それが表面化しているに過ぎない(p27)

    ・「見せかけ」でなく「本物」のモチベーションは、本人の自発性から生まれる(p32)

    ・能力を発揮させるための能力=メタ能力、の発達度合いに差がある、つまり、物事に取り組むモチベーションの質が違う(p36)

    ・サテライトオフィスや、評価者が離れた本社にいる営業所のスタッフはおしなべて帰りが早い(p47)

    ・目標がかえってモチベーションを引き下げる作用を及ぼしている(p63)

    ・退職理由をきかれた場合には、表向きには「周りの人が認めてくれなかった」「相手にしもらえなかった」とは答えずに、キャリアや仕事内容、待遇といった答えをするもの(p84)

    ・評価要素としては、能力面・業績面・情意面の3側面から評価する、情意とは、積極性、規律性、協調性である(p103)

    ・苦労すること、汗をかくことだけが尊いという社会は暗いし、恐い(p115)

    ・「やる気主義」は、その位に反して必ずしもやる気のアップに結びついていないばかりか、むしろ逆にそれを低下させている(p118)

    ・「やらされ」モードと、「所有」モードとのモチベーションの違いは、当然、仕事の成果に大きく影響する(p161)

    ・未来工業の社員にやる気を出させるポイントは、1)社員をラクにさせる、先にアメを与えてやる気にさせる、2)管理をしない、である(p169)

    ・日本人の低いモチベーション、生産性をもたらせている要因として、1)終りの見えない残業と休みにくさ、2)上司からの理不尽な要求、3)過剰な管理、4)人間関係の歪み、5)処遇の不公平感、がある(p170)

    ・人間の認知能力を理解している欧米企業は、成果主義の評価は3段階から4段階を採用している(p177)

    ・モチベーションが高すぎるとパフォーマンスが落ちる要因として、1)視野が狭くなる、2)不安が生じる、である(p187)

    ・上司は、部下の管理以外のことに大きな目標を持つと良い、片手間(無責任と異なる)にやるから良い妥協点、解決策が見つかる(p193、200)

    ・スイーパーリーダーとは、1)部下が直面する障害を取り除き、2)目標へ向かう動きを見定めて、3)成果が挙げられるように支援する、が役割(p210)

    2010/09/26作成

  • 日本の風習をよく捉えている本。

    ただ、「マネジメント」の読んだことがある人には
    あまり必要ないかもしれない。

  • 自発的モチベーションの源は「所有感」

    やる気主義>反比例してやる気は低下

    感情労働>ホックシールド

    同質性を基本にしたチームワークから異質性を基本にしたチームワークへ、自分を殺すチームワークから自分を生かすチームワークへ

    管理の効果はすぐ表れるのに対し、その弊害はゆっくり表れる

    良い人間関係と濃密な人間関係はイコールであるかのように考えがちだ>濃密な人間関係は窮屈さの裏返しであるし、1つ間違うと危険な顔を見せる。>温かさ、面倒みのよさと息苦しさ、不自由さとは文字通り紙一重

    マネジャーというものは、自分のやる気や意気込みが強すぎると、その意欲とエネルギーが部下の管理に向かう。またマネジャー自身が上司からやる気や忠誠心を見られていると思うと、それをアピールするため部下の過剰に管理してしまうことがある。

    そもそも冷静に考えてみたら分かるように、苦労すること、汗をかくことだけが尊いという社会は暗いし、恐い。

    ただ、ふつうに見られる「やる気主義の失敗」はもっと善意から生じる。それだけにいっそう始末が悪い。

    「所有感」こそが「やらされ感」の対極にあるものだ

    社員にやる気を出させるポイント2つ>社員に楽をさせる。(ホウレンソウ禁止)。管理をしないこと。

    社員のモチベーションを引き出すには「社員のやる気をなくす要因を取り除いてあげればいい」

    あえて評価はアバウトに>やる気を失わせる最大の元凶は「評価」>アバウトと不正確とは混同し易いが、まったく違う。

    「管理は腹八分で」

    管理は片手間に>片手間のほうが視野が広がり、物事を長期的に見ることができる>片手間と無責任とは違う。

    「最大の問題は『管理したい』という欲求を抑える方法を本能的に体得している人が、あまりにも少ないという点なのだ」エクセレントカンパニー著者

    部下の仕事を見るときの大事なポイントは、できるだけ「川下」すなわち成果や目標に近いところで見る。

  • まあ、そうかなと同意するところは多い。本当のやる気のある人が楽しんで仕事ができて、そうでない人たちが邪魔さえしないなら、別に問題ないのではないか。

  • 方向性はアグリー。けど特に目新しくはない。問題は、わかっていても実現できないこと。そのあたりは、学者っぽい論調。たぶん、既得権益をどうするかだと思うのだが…

  • 「やらされ感」と「所有感」
    ■何が意欲を失わせているか?
    ①くすぶる残業への不満
    ②定まらない目標
    ③過剰な管理
    ④まだら模様の人間関係
    ⑤不公平な評価、処遇

    ■リーダーの3つの役割
    ・障害を取り除く
    ・仕事振りを川下で見る
    ・部下を支援する。

  • 中学生のとき、毎年冬になると、全生徒が10km走るマラソン大会があったんです。きっとどの学校でもありましたよね?
    大会近くになると体育の授業は学校の外を何周もするジョギングになり、当時はそれがもうイヤでイヤでしかたがなかった。歩いたり、近道したり、1周目なのに2週走ったフリをしたり、どうやってサボろうかということしか頭になかった気がします。走ることは、運動の中でも一番嫌いでしたから。

    そして20年以上たった今、自らすすんで毎日ジョギングしているんですけど、なぜなんでしょう。
    その違いを本書では「所有感」と「やらされ感」という言葉を使って説明しています。確かに中学の頃はやらされ感しかなかったもんなー。

    この本は、日本独特のやる気主義、欧米型の成果主義、双方の失敗を挙げ、そのどちらでもない自発的モチベーション型のマネージメントの良さを事例とともに紹介していきます。
    歴史的な偉人のようなリーダーシップのある人よりも、カーリングのスイーパー(ゴシゴシやる人)のような、仕事を川上ではなく川下で見ているプレイングマネージャー型のリーダーが、これからは必要だと。子育てにもあてはまるかもしれません。
    昨日読んだ『ヒトデはクモよりなぜ強い』に通じるものがありました。

    あと、この本読んでたら巨人の原監督も、すごい人なんだなぁと思いました。

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-10770495724.html

  • ビジネスよりのモチベーション本。
    「日本人はなぜやる気がないのか」
    について納得できる考え方が書いている。

    この本では人が対象になっているが、、
    マクロの視点で見れば、経済や政府だってそうかもしれない。
    企業は監視されコンプライアンス遵守なんて耳タコだし、
    政府は肥大化し必要以上に統率を図る。

    小さな政府で、セーフティネットを敷けば・・・やっぱみんなの党か。

  • 「ノウハウ情報を仲間に教えるか」で、欧米が90%近いのに、日本が50%なのは、残念だけど、理解はできると思った。
    曰く、日本人は決まった仕事を決まったメンバーでこなすのは得意だが、新しいプロジェクトを新しいメンバーで進めていくとなるとさっぱりだめなのだそうだ。

    新しいプロジェクトを新しいメンバーで運営するには、プロジェクトに対しても、またほかのメンバーに対しても自ら積極的に関わっていかなければならない。日本人はそれができない。プロジェクトの目的を達成するために、また自分の役割を果たすために周囲と力を合わせていこう、他人を巻き込んでいこう、という意思と気迫がたりないのである。

    著者の主張では、過剰な管理はやる気をへらしてしまう。仕事に所有感を持たせること、評価は細かく行わず、アバウトにすること。
    管理職はプレイング・マネージャーになることなどが進められている。

  • 会社に対するモヤモヤとした不満を解き明かしてくれる一冊。
    社長や上司に読んで欲しいと言うのが正直なところだが、自分が部下を管理する上でも大いに参考になる。
    不公平感が部下の不満の原因なのはよく分る。その解消法を知りたいのに、本書ではそこが分らず残念。

  • ビジネス書ではあるけれど、モチベーションを扱った本なので学習について考えることもできる。要旨としては、おおよそ以下のような主張だ。

    ・日本人は残業するなど「やる気」に満ちていたように見えるが、それは見せかけのものであり、もともと仕事へのモチベーションは低かった。
    ・それは、「やる気」をなくす要因が様々にあるからである。
    ・その要因を取り除くことで、「やる気」を出すことができる。

    社員に「所有感」を持たせることで自発的なモチベーションを引き出すとか、上司はプレイング・マネージャーであったほうが「片手手間」に社員を管理するようになるのでかえって良いとか、わりと自分が共感できることが書いてあった。

    ところが、そうであるにもかかわらず、読んでいてあまり説得力を感じない本でもあった。それはきっと、主張の根拠が全て具体例で、いわば事例主義に陥っているからだろう。おそらく、反対の立場の人であれば、反対側の事例を同じように集められてしまうからだ。具体例だけで人を説得することのむずかしさを感じた本でもあった。

  • なぜ成果主義がうまくいかなかったか、さらに「やる気」主義が会社を駄目にする、という内容。
    将来、部下をもつようになったときには、気をつけなければと思う内容が多く書かれていた。

    「やる気」が重視される社会
    上司は部下の「やる気」を出そうとさせるが、何かしらの要因があって自然と「やる気」は出るもの。
    言われて「やる気」がでるわけでない。

    上司が部下の「やる気」を出そうとすればするほど、部下にとって「やらされ感」が出てしまうことが多い。

    「所有感」をもたせることが大事。
    広島のめがねチェーンの「21」は、社員全員が共同経営者。
    社員全員が経営者視点をもつべき言われることは多いが、言われるだけだと「やらされ感」となり、「所有感」にはならない。
    「やらされ感」と「所有感」は反対のもの。

    さらにモチベーションを下げる原因として
    曖昧な評価がある。
    「やる気」を残業等の姿勢だけで判断して不要な残業を増やしたり、目標を達成すると目標が次々とつり上がり、力の出し惜しみにつながる。

    上司は部下が、仕事に対して自律的に取り組むことを願っているが、実は上司の管理の仕方が自律を阻んでいる。
    「人の管理」と「仕事の管理」
    陥りやすい「人の管理」
    「管理したい」人の本能 押さえつけることが重要 部下を管理したいコントロールしたい

  • 本日ご紹介する本は

    我々のような知識労働の
    マネージャーはどうするべきか。

    また、チームワークを高めるには
    どうするべきか。

    といった内容が、
    今の時代に沿った形で
    ヒントが得られる本です。


    職場において、もう仕事が終わっているのに
    周りに気を使って早く帰りにくい…とか

    周りに気を使って有給休暇をとりにくい…
    というようなことを称して

    「遅くまで残業して、有休は取らない」
    =「見せかけのやる気」です


    人によって残業や有休に対する思い方は
    違うと思いますが、
    多かれ、少なかれ誰でも
    このような感情はあると思います。



    そして、「見せかけのやる気」
    に対して、「本当のやる気」
    とは何か、
    どこから「本当のやる気」
    は生まれてくるのか。

    「本当のやる気」
    でないと本当の成果には
    つながらない。

    といったことが、体系的に
    説明されています。



    また、著者が推薦する
    管理手法を「カーリング」を比喩として
    説明してあります。

    マネージャーの方は大変参考になりますし、
    マネージャーでなくとも、チームワーク
    を高めるための考え方のヒントが得られ、

    チームワークが良くなると、結果
    自分の仕事も楽に、職場も楽しくなるはずです。

    なによりも、職場に関する深い洞察が得られます。
    ぜひ、読んでみてください。



    ◆本から得た気づき◆
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    「本当のモチベーション」=本人の自発性から生まれる
    本物のやる気にとって最大の難敵=「やらされ感」
    「所有感」=自分のものであるという感覚(やらされ感の対極)
    「上司は部下よりえらい」は思い込み、「人の上に立つ」は間違い
    「マネジメント」の語源=物事を円滑に進める
    「片手間」の管理=①視野が広がる ②精神が安定する ③「大人」の対応ができる
    「カーリング」=マネジメントの対象が人ではなく、人から放たれたモノ
    「スイーパーリーダーシップ」=①部下が直面する障害を取り除く ②目標へ向かう動きを見定める ③成果があげられるよう支援する
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ◆目次◆

    第1章 「見せかけのやる気」が通用しなくなった
    第2章 やる気の足かせ 何が意欲を失わせているか
    第3章 皮肉にも、成果主義が「やる気主義」を強めた
    第4章 「やる気のパラドックス」はなぜ起こる?
    第5章 「やらされ感」から「所有感」へ
    第6章 部下の管理は腹八分で
    第7章 上手な片手間とは? --スイーパー・リーダーシップ
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    ◆マインドマップ◆
    http://image01.wiki.livedoor.jp/f/2/fujiit0202/42f30be9718c6c32.png

  • 本屋をぷらぷらしていて、タイトルと目次が面白そうだったので買ってみた本。
    自己の迷走っぷりに歯止めがかかるかも、という淡い期待もあったのですが・・・。
     書いてある内容は、『まぁ、そうだよな~』と共感できることが多く、読みやすい書き方なのでさくさく読める。(ちょっと変な書きぶりの所もあって「??」と思う部分もあったが)
    私的には答えを導くきっかけを見出す、というよりも読中そうか~といいながら自分をなぐさめているような感覚を覚えてしまいましたが…。

    読んでいて最初に思ったことは、「これって会社の話じゃなくて、学校の話じゃないの!?」ということ。(本文中にもそういったことに少し触れてた部分があったかな…?)
    …三つ子の魂百まで…ってことなんですかねぇ。
    そういえば、学校行ってたときにも、似たような事でプリプリ怒っていたかも・・・。
    ということは、私も進歩がないということか。
    やっぱり三つ子の魂百までオチ。

    ただ、後半はマネジメント層向けの話が主だったので今の私が求めているものとはちょっと違ったかな…と。
    ただし、(自分が今後どういった立場になるかはわからないが)今後生きてくる可能性もあるわけだし、この読書体験は無駄にはならないと思う。
    まあ、そういった内省・考察を促すきっかけになったってことで、★三つ。

  • 良いことは書いてあるんだけど、起伏や整理せず書いてあるので、分かりにくい。話を聞いているような感じ。

  • 「やる気」に焦点をあて、組織の問題点・解決策を論じた本。

    どうやって「やる気」を引き出すか、ではなく、「やる気」を阻害するものは何か、というアプローチにより組織・風土が抱える問題を抉る。

    自分の現状と照らし合わせて読むと、頷ける部分が多かった。
    後輩は部下ではないけれど、良き先輩として支援が行える存在でありたいと思った。
    これからも何度か読み返したい。

  • 視点が独特で、地に足がついた感じで、うなづけた

  • 勤勉と考えられている日本人が、実は勤勉に見せかけているだけで、生産性が高くないとの指摘。その本質は管理体制にあり、管理を厳しくすればするほど、やる気は低下するということのようだ。
    やる気を起こさせるためには、逆に管理を緩くして、自主性にまかせる方が効果的。また、管理職の人は管理したい欲望を抑えるために、プレイングマネージャーになり、管理職としての仕事は片手間にしかできない状態にするのが秘訣。子供への教育も同じこと。→共感

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著者プロフィール

同志社大学政策学部教授

「2022年 『何もしないほうが得な日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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