俺ではない炎上

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575245196

作品紹介・あらすじ

ある日突然、「女子大生殺害犯」とされた男。既に実名・写真付きでネットに素性が曝され、大炎上しているらしい。まったくの事実無根だが、誰一人として信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも。ほんの数時間にして日本中の人間が敵になってしまった。必死の逃亡を続けながら、男は事件の真相を探る。

感想・レビュー・書評

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  • あるSNSのつぶやきが発端となり、一瞬で「女子大生殺害犯」に仕立てられてしまうーー

    4人の視点で物語が進み、少しずつ真相が明らかになっていく。話し手が変わることで場面が切り替わるり、長編だけど飽きずにのめり込むように読めた。

    2つのSNS関連の事件を扱うことで、時間軸や人物の巧みな叙述トリックに見事に騙されてしまった。
    1回読んだだけではトリックが分からず、真実が分かったうえで丁寧に読み直すと、「そういうことだったのか」と納得。

    誰一人として無実を信じてくれず、仕事、家、車、食事、睡眠、衣服が奪われ、、そしてアイデンティティでさえも失われつつあった泰介の前に現れたシーケンの青江さんが、泰介の無実を「知ってます」「こんなおかしな日本語、大帝ハウスの山縣さんは絶対に許しませんから」と告げたシーンが好き。


    今回の事件は、数々の「自分は悪くない」が引き起こした結果だと思う。

    言葉は違えど、SNSでつぶやく人たちはみんな「自分は悪くない」と主張していることに気づいて「そういう人間にはなりたくない」と言う幼い頃の江波戸くんは、たしかに少年漫画のピンバッジをつけるのにふさわしい人間だった。
    「俺は俺の信念を貫く」が間違った方向にまっすぐ進み、大きな事件を起こすことになってしまったのが悲しい。彼もまた、警察の取り調べで「自分は悪くない」を主張していた。


    夏実が言っていた「私が悪いのに、『私は悪くない』と主張しようとしたせいで」というのが自分にもすごく響いた。

    自分がミスをしてしまったとき、きちんと認められているだろうか?
    【Sorry. It's my fault.】と言えるだろうか?

    とても考えさせられる作品だった。

  • SNSを通じてエリートサラリーマンが犯罪者と疑われる内容だが、正直読み応えはなかった。ただ、逃亡の中で半生を振り返って今までの出来事に気づき、結果自分を改める良い方向に進んだのだが。。どん底を体験してみないと分からないことはある。それはそうだと思う。

  • 伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』にアガサ・クリスティの『春にして君を離れ』を混ぜ合わせたような感じだった。テンポ感が良いのでサクッと読める。
    最後の伏線回収がちょっとわかりにくいので二度読み推奨。犯人の動機にいまいち共感できず、オチが腑に落ちなかった。個人的には6人の嘘つきな大学生の方が好み。

  • 殺人容疑をかけられたオジさんと、そのまわりの家族やSNSリツイート者たちの言動から、現代ならではの恐怖を描いた作品。
    リテラシーの大切さや、「俺ではない」の精神のあやうさが身に染みます。
    スピード感のある展開でスラスラと読めてしまうので、丁寧に読み進めないと終盤で「えっ?」てなって、まんまとミスリードにハマりますね。

  • 衝撃。

    本を閉める。
    もう一度はじめから読む。

    うわぁ。すごい。

    「6人の嘘つきな大学生」がおもしろく、同じ作家さんが書いているこの本を手に取りました。正直「あれ?」と思い始めたのは本の終盤。読了後は「なんだこれ。」。

    「6人の嘘つきな大学生」が面白かったと思われた方はこちらもハッとさせられるかも。

  • SNS版逃亡者という感じの、無実の主人公が逃亡しながら、真犯人を探し出すとして、斬新的で面白かったが、ところどころよくわからないところがあった。

  • 時系列の叙述トリックは、章と章を上手く繋げられており、最後まで騙された。
    ネットの闇というよりは、人間の他責本能へのアンチテーゼといった内容で、身につまらせる思いだった。誰だって我が身が可愛いし、自分本位で視野が狭くなる。自己と他者での認識の相違が痛々しく描かれていた。
    若者世代にも中年世代にも、全方位に牙を向くような風刺のきいた話だったが、個人的にはその通りだと思ったので面白かった。

  • SNSで、会社がバレ、家がバレ、顔がバレ、あっという間に拡散され……。
    自分には、身に覚えのない犯罪の犯人にされてしまう。
    数時間前の平和があっという間に崩されていく。

    こういう事って、本当にあり得ることかも……という怖さ。
    この後、どうなっちゃうの??
    どうなるの?どうなるの?と、続きが早く読みたくなっちゃう作品でした。

    余談ですが、

    別荘を持つなんて「敷居が高い」と思っていませんか?

    という
    「敷居が高い」
    の使い方が間違っている、

    という所で、え?違うの?と思って調べてしまった私。
    間違えていた日本語の使い方をこの本で、
    一つ覚えました。



  • このTweetを見る限り自分が犯人に見えてしまう…という状況下の逃走劇はスリリング。ギリギリのところをなんとかすり抜けていくのはテンポも良く、先を急いで読みたくなった。
    途中からは違和感があったものの、先を読みたい気持ちに負けて叙述トリックが見抜けなかった。他の本も読んでみたくなる。

  • こんな風に成りすまされたら覆すことは難しいと思うし、覆したところで1度形成された印象は燻り続ける。誰かを陥れたいと思ったら別に自分が物理的な犯罪に手を染めなくても、相手にとって不利益な噂を流してやれば良い。よっぽど親しい人間でない限りは否定のしようがないのだから。これだけ誹謗中傷の問題が取り沙汰されてもどんなに人が亡くなっても「火のないところに…」から抜け出せない。
    『六人の嘘つきな大学生』に続いて二作目の聴了だが、前回は若者ばかりだった世界に中高年層の視点も加わって深みが出たなぁと思う。
    X(twitter)や〇〇系ユーチューバーなどのSNSの世界観がとてもよく出ている。ニュースに対する意見という形をとった自己顕示欲。どこまでも肥大してゆく正当化。議論だと、正義の叫びだと思っているものの中身は空っぽで、それどころかただの言い訳なんだよと著者は指摘しているのだと思う。私も概ね同意する。俺じゃない、俺はやってない、俺のせいじゃない、俺は関係ない、俺は正しい。「俺ではない」の意味を知る。
    エンタメミステリーの形を取ってるけど、問題提起のある良い作品だなと思った。

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著者プロフィール

1989年生まれ、小説家。関東在住。第十三回講談社BOX新人賞Powersを『ノワール・レヴナント』で受賞しデビュー。『教室が、ひとりになるまで』で推理作家協会賞の長編部門と本格ミステリ大賞の候補作に選出。その他の著書に『フラッガーの方程式』『失恋覚悟のラウンドアバウト』『六人の嘘つきな大学生』など。

「2023年 『六人の嘘つきな大学生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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