殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

  • 二見書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576072142

感想・レビュー・書評

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  • 殺し屋ケラーシリーズ三作目。

    本作は短編および中編の連作で、作品同士の結びつきがとても心地良い作品。

    殺し屋としての孤独、憂鬱、葛藤に苦しむケラー。

    特に殺しと向かい合うケラーの心の揺れが本作では表現されている。その背景には、アメリカ同時多発テロが関係しているのだが。それと同時に彼は寄る年波と共に次第に引退に心を寄せていく。

    殺し屋としての引き際が見えてきたケラーの変化にも注目したいところ。

    ドットとの軽快な会話は変わらず、安心感を覚えるが、終わりに向かっていく寂しさがどことなく感じる。

    ケラーシリーズを読む上で、重要な分岐点にあたる作品だと思う。

  • アメリカの作家ローレンス・ブロックの連作ミステリ短篇集『殺しのパレード(原題:Hit Parade)』を読みました。
    『殺しのリスト』に続き、ローレンス・ブロックの作品です。

    -----story-------------
    【殺し屋ケラー】シリーズ
    殺しの計画の微妙なずれに、孤独な仕事人の心は揺れる……人気シリーズ好評の第三弾!

    ケラーが今回依頼されたターゲットは、メジャーリーグの野球選手。
    球場へ足を運んだケラーは、その選手が通算四百本塁打、三千安打の大記録を目前にしていることを知る。
    仕事を逡巡するケラーがとった行動とは?
    上記の『ケラーの指名打者』をはじめ、ゴルフ場が隣接する高級住宅地に住む富豪、ケラーと共通の趣味をもつ切手蒐集家、集団訴訟に巻き込まれる金融会社役員など、仕事の手筈が狂いながらも、それぞれの「殺し」に向かい合うケラーの心の揺れを描いた連作短篇集!
    原題:Hit Parade

    【伊坂幸太郎 氏】
    ローレンス・ブロックからはあからさまに影響を受けています。
    『殺し屋ケラー』シリーズは僕が書きたいものの到達点であるような気すらします。

    【名物書店員さん絶賛! このミステリが熱い!】
    40代、独身、職業・殺し屋……。依頼を受け、見知らぬ土地に向かい、そして“仕事”をするだけ。
    派手なことはなにもない、まるでビジネスマンのような男。
    だが、その“日常”が読ませるのだ!
    孤独な中年男の心のゆれが、ロマンの香気さえ漂わせ、読み手をグイグイ引きこむ。
    断言しよう、読み終えたときのあなたの「もっとも好きな殺し屋」にケラーはなっていると!!!
    ─────ときわ書房 船橋本店文庫担当 宇田川拓也
    -----------------------

    2006年(平成18年)に刊行された、殺し屋ケラーシリーズの第3作で、以下の9篇が収録されています。

     ■ケラーの指名打者 Keller's Designated Hitter(2001)
     ■鼻差のケラー Keller by a Nose(2006)
     ■ケラーの適応能力 Keller's Adjustment(2005)
     ■先を見越したケラー Proactive Killer
     ■ケラー・ザ・ドッグキラー Keller the Dogkiller(2008)
     ■ケラーのダブルドリブル Keller's Double Dribble(2006)
     ■ケラーの平生の起き伏し Quotidian Keller
     ■ケラーの遺産 Keller's Legacy
     ■ケラーとうさぎ Keller and the Rabbits(2003)

    相変わらず面白かったですねー ターゲットとなる人物が、大記録を目前にしたメジャーリーグの野球選手、競馬の騎手、ケラーと同じ切手収集家から、なんと犬まで… ケラーが赴く前に、殺されることを察知したターゲットが逆に依頼人を殺害していたり、ケラーに殺しを依頼した二人の人物が、それぞれ当初のターゲットとは異なるターゲット(お互い)をターゲットに変更したりと、バリエーションが豊かで一筋縄ではいかない事件ばかりで愉しめましたね、、、

    9.11がケラーに与えた影響が描いてある展開には時代性を感じましたね… バスケットボールから、ケラーが子ども時代の母子の関係を回想したり、自らの死に備えてドットに切手のコレクションの処分方法を指南したり、ケラーが独り言の相手に犬のぬいぐるみを購入したりと、しんみりする展開も印象的でした。

    ケラーとドットのウィットに富んだ会話会話も健在… ある事件をきっかけにドットが株にはまる展開も意外性があって良かったな、、、

    本シリーズ、他の作品も読んでみたいんですが… 古書店でも滅多に置いてなくて、入手困難なんですよねー 残念。

  • 殺し屋ケリーと彼に殺人依頼を告げるドットとの淡々とした会話にニヤッとしてしまう。 ハードな殺人シーンはなく、ケリーの仕事(殺し)は淡々と静かなうちに終わる。 心を激しく揺さぶるシーンはないのに、いつしか殺し屋の彼に心を奪われ応援している。「ケリー、頑張れって・・・。」(^_^;)

  •  殺し屋ケラーシリーズ3冊目。こんどはまた短編集にもどったが、それぞれゆるやかなつながりがあって、お、と前を読み返したりもする。さすがにローレンス・ブロックうまい、やることは毎回同じだから、そこにいたるまでの経緯に工夫がこらされている。ケラーとドットとの会話からはじまって、ターゲットに近づいて周囲をぶらぶらし、仕事はあっという間で、またドットとの会話にもどる。その仕事前後の関係者との軽妙小粋な会話が読みどころだ。それだけではマンネリなので、後半ではやることに齟齬が生じてきたり、思わぬ展開になったりして、ハラハラさせる部分も。切手蒐集家にまつわる「ケラーの平生の起き伏し」なんていい話だ。もうちょっと違う結末はなかったのかな。それはともかく切手蒐集は実におもしろそうで惹かれる。お金ないんだけど。

  • シリーズ三作目の短編集。シリーズ全五作の折り返し地点となる今作は前二作に比べ、変化球的な作品が数多く並んでいる。9.11を経たケラーの心の揺れに始まり、今まで多くを語られなかった彼の内面が描かれていく。依頼人や標的との接触を禁じてきたケラーが偶発的だったり自発的にルールを逸脱することで展開のバリエーションは増えているが、変化の及ぼす影響により、前作で仄めかされた【引退】の二文字もより一層現実的となる。あとがきによれば、次作は本格的な長編とのこと。書店で中々見かけないので、入手し易い内に積んでおいて大正解。

  • 殺し屋ケラーシリーズ第3弾。
    このシリーズはどれも短編集となっている。短編が苦手なわたしも、何故かこのシリーズは読める。愛って怖いですなー。もちろん、作者のローレンス・ブロックの語り口のうまさ、というのもあるのだけれども。

    ケラーはニューヨークで一番の殺し屋。ドットという女性が、彼とクライアントとの窓口になっている。
    ドットから「アイスティー飲みにこない?」と誘われると、ケラーはドットの家までいき、そこで殺しの依頼を聞く、というわけだ。


    ケラーは殺し屋なので、もちろん殺しのシーンも出てくるのだが、このシリーズにおいて、そこはあまり重要ではない。どうやってターゲットに近づき、どうやってターゲットを殺すか、というサスペンスを求めてはいけない。
    そもそもケラーの得意技は、「殺しに見せかけない殺し」なので、血なまぐさいシーンはほぼない。

    ではこのシリーズの醍醐味は何かといえば、ケラーとドット、ケラーとターゲット、ケラーと偶然隣り合わせになった人、との軽妙でシニカルな会話だ。だから、この作者のこの語り口が苦手な人には、恐らく読み終われないだろう、と思うくらいだ。バーニィシリーズのような明るさでもなく、スカダーシリーズのように暗くもなく、なんともいえない空気がこのシリーズには流れている。
    人間としてはバーニィと同じようにコミカルな人間なのだろうが、殺し屋という職業がそれを抑えているという感じだろうか。依頼を受けて人を殺す際に、何故この人は殺されるのだろう? と考えてみたりするシーンは、ケラーが殺し屋であるということを思い出させるシーンでもある。

    また、プロの殺し屋とその仲介屋であるケラーとドットの関係がいい。同じ作者の泥棒バーニィシリーズの、バーニィとキャロリンの関係のように、信頼関係で結ばれた親友同志である。もちろん仕事は仕事で行うけれど、それを越えた信頼関係があるようで、それがまたすばらしい。
    なんでも安易に恋愛関係にもっていこうとする昨今の傾向に、真っ向から反対しているようだ。

    更に、作者に大きく影響を与えた事件として、9.11事件がある。作者はニューヨーク在住のようなので、さもありなんではある。
    そのため、事件後に書かれた作品では、この事件をあえて描いている作品が多い。(でも、『砕かれた街』は、ブロック信者のわたしでも、さすがに面白くなかった)
    ケラーも、この事件をきっかけにあることを考えている。そしてなんと、次回作にその決断が引き継がれ、更に、次回作でシリーズラストという訳者コメントが載っていた。
    また、無条件で読んで大丈夫なシリーズがなくなっていくのか……。

  • 前回のゆったりとした雰囲気を残しつつ、物語にも分量を割いて最終作へ向けて動き出す。個人的には第一作の緩い感じが好きなので、動き出さなくて良かった。ドットとの会話がユーモアに富んでいてかつ、緩かったので面白かった。

  • 殺し屋ケラー第三作"HIT PARADE"。
    タイトル通り、殺しの短編連作集である。

    初期と同じように暗殺の依頼を淡々とこなしていく。
    殺す過程はあっさりと、
    ドットとの会話とケラーのライフワークとなった
    切手収集の描写に重きを置く所は相変わらず。

    こういった描写でキャラに愛着を持たせるのは、
    ブロックの上手い所の一つだと思う。

    短編集ではあるのだが、大きな話の筋のようなものがかすかに見え隠れする。
    そして次回作"HIT AND RUN"へと続くのだ。

  • 野球選手を殺す短編集で軽い読み物。暇な時に読む本。サスペンスや推理としては期待できない。

  • ヒットマンであるケラーシリーズの連作短編。冷静かつ淡々と仕事をこなすケラーが健在だが、本作では依頼人やターゲットの人間関係や、更に自らの人生の在り方なんかにも心を巡らせ、葛藤するという、ハードボイルドを得意としてきたブロックとしては異色の作品といえるだろう。葛藤の結果、ケラーの採った選択というのがなかなか面白いと思う。

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著者プロフィール

ローレンス・ブロック Lawrence Block
1938年、ニューヨーク州生まれ。20代初めの頃から小説を発表し、100冊を超える書籍を出版している。
『過去からの弔鐘』より始まったマット・スカダー・シリーズでは、第9作『倒錯の舞踏』がMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀長篇賞、
第11作『死者との誓い』がPWA(アメリカ私立探偵作家クラブ)最優秀長篇賞を受賞した(邦訳はいずれも二見文庫)。
1994年には、MWAグランド・マスター賞を授与され、名実ともにミステリ界の巨匠としていまも精力的に活動している。

「2020年 『石を放つとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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