パンとスープとネコ日和

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758411943

感想・レビュー・書評

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  • なんだかしみじみとしてしまいました。
    群ようこさんということで、いつものようにクスッと笑えるお話を期待していました。
    お母さんが遺してくれた飲食店を改装して自分なりのお店を試行錯誤しながらやっていくアキコのお話です。
    前半は面白キャラの人たちも出てきて、『うん、いいぞ!いいぞ!群ようこだねぇ〜』と読んでいたのですが、後半、悲しいことがあり、そこからのアキコにもう胸が締め付けられてしまいます。
    五十歳を過ぎて、他人に迷惑をかけず一人で生きていこうという覚悟が自分をがんじがらめにしているようで、泣いていいんだよ、頼っていいんだよ、と背中をさすってあげたいと思ってしまいました。
    でも、やっぱり群ようこさん。ラストはププッと笑わせてくれます。
    いつも元気なあの人もこの人も、色々あるよね、そうだよね、と思わせてくれる一冊でした。

  • 私生児として産まれ母子家庭で育ってきた主人公が、母の死をきっかけに店を受け継ぎ暮らしていく話。
    群さんの書く女性は、等身大の近くにいそうな、はたまた読む側の人間とも重なる部分がありそうな女性が多く、すんなりと話に入っていける。
    一人で生きて行かなければならない時も、ちゃんと周りには支えてくれる人がいて、時には「世の中いろんな人がいるなぁ」と溜め息をつく日でも、ちゃんと自分の味方になってくれる人はいる。すごく勇気を貰ったというか、癒やされるお話でした。いつも温かい人やものに囲まれて、小さい事でも笑って生きて行きたいな。

  • 読んだあとにドラマ化されて気になった。
    (WOWOWなので観られず・・・)

    主人公がどうにもその年代には思えなかった。
    かわいくて一生懸命。それが若くみせているのだろうか。
    ならばそういうふうに年を重ねたい。

    こういうカフェ、いまそこここにあって
    お客さんの会話なんてまさしくそうだろうというふうに描かれている。
    おいしそう、と思いながら
    本を読んでいるのを飛び越えていた気がする。
    あるのだ、カフェが。そこに。

    甘える猫がかわいいったらない。
    でも・・・・哀しかった、とても。とても。

  • 積読していたけど、ドラマが始まる前に読んでおきたい!と読了。

    大好きな群ようこさんが書いたおいしい食べ物とネコときたら
    すぐにでも読みたいぐらいだけど、ネコのたろちゃんの結末が
    悲しい方向なのを知っていたので、
    読もう!という気持ちがどうしても挫けてしまった。

    お母さんが遺してくれたお店を改装して、修道院のように簡素な空間で
    安心できる食材を使って、おいしいパンとスープのお店を出したい。
    そんなコンセプトを元にオープンした、
    壁にすっきりと柱がのびているお店「āエー」。

    大きな木製のテーブルに椅子、乳白色や淡いベージュで揃えられた食器、
    テーブルの上には生花がちょこんと飾られるアキコさんのお店。
    お店の上にある自宅スペースには唯一の家族、ネコの"たろちゃん"。

    母の経営していた食堂の常連客だったおじさんたちがわいわいと集まる
    憩の場を失くしてしまっていいのか…とぐるぐると葛藤しつつも、
    自分なりの店を作っていこうとするアキコさんと
    気働きのできる優しくて明るい唯一の店員さんのシマちゃん。

    閉鎖的な商店街では良しとされない難しい部分もあったり
    自分のコンセプトと店の現状に悩んだりしつつ、
    料理専門学校をしている先生や、確証は持てないけれど
    たぶん血の繋がりがあるであろう優しい人たちとの触れ合い、
    何よりいつも心からの癒しと元気をくれたたろちゃんの優しさや
    来てくれるお客様への感謝のキモチに支えられるアキコさん。

    食べるということ、いただくということ、アキコさんなりの
    食事への想いと祈りを感じる食堂のメニューはどれもステキで
    かもめ食堂のように穏やかで清潔な空間が浮かんでは
    空想することの幸せをめいっぱい噛みしめる。

    たろちゃんとのお別れは、天国に旅だってしまった
    家族猫たちを思い出して苦しくて涙が止まらなかった。
    過ぎていく時間はそんなに優しいものではなくて
    時間がたつにつれ苦しさが増していくアキコさんが
    読んでいてほんとに辛い。

    悲しみは逃げることも、時間が解決してくれたりもしないけれど、
    時には心のままに泣いたりしながら、ずっと心に大切に抱えて
    いきていこうと悲しみのど真ん中で顔をあげていく
    アキコさんに少しでも多くの笑顔が訪れるといいなと願った。

    ドラマではたろちゃんの話もどうなるのか、できれば
    元気でいてくれたり…なんて逃避的な希望を願ったりしつつ[´ー`;]
    優しいスープとパンの景色がドラマで見れるのが楽しみ。

  • 母親が亡くなって、母の店をやる事に。
    全くコンセプトが違うおみせはアキコなりに満足出来るもの。
    アシスタントにも恵まれ、順調な日々だがこれでいいのかと迷う事も。
    そんなさなか、唯一の家族だったネコのたろが旅立つ。
    悲しさからまだまだ立ち直れないアキコだけど、この先また愛おしいものに出会う事は出来るのかな。

  • まわりは気にせず、自分を貫く。ほわほわした雰囲気ですが、かなり強い。そして何となく上手くいってしまう。

  • アサコさんが、母の死をきっかけに勤めていた出版社を辞め母のやっていた食堂を改装してカフェを始めるお話。
    母との関係はフクザツだな。母にも娘への思いがあったのだろうけど。たろの大切さを感じた。

  • 小林聡美さん主演でドラマになると知り、
    ドラマは見れないから原作を読んでみようと思った。

    素敵なお店を始めるのだが、いろいろ周りがうるさいのよね~
    そういうのすっごくわかる。同じように店をやってるから。
    誰にでも愛される店にしたいけど、なかなか思うようにいかないのよ。
    主人公は本当にマジメさんだわ。

    後半は飼い猫の話が主になるけど。
    ペットも家族の一員なのよね。
    もしかしたらそれ以上の存在なのかもしれない。

  • スープをひとさじすくって飲み、
    パンをかじる。

    (うん、今日も美味しい。)

    そんな私を見上げるでぶネコちゃん。

    まんまるで

    まんまるな体で
    にゃあにゃあおねだりするたろちゃんは
    すでにご飯を食べちゃったみたい。

    (もうないの?ほんとに食いしん坊さんね。)

    こんなやわらかい朝はほのほのと今日もやってきた。

    でも、
    明日もやってくるとは限らない。

    (明日もこんな日が続くといいな。)と思うけど
    願っているわけではない。

    たった一人の肉親であった母も、
    今ではもう、写真立てのなかで微笑むだけの人になってしまった。

    50を過ぎて独身のアキコさんの人生は、
    誰にでもやがて訪れる晩年の人生である。

    誰かと共に、毎日を笑いあえたら、わかり合えたら、触れ合えたら、どんなに心安らげる日々となる事だろう。

    (願ってはいない)と言いながらも尚、

    (もしも、そんな繋がりがある人と巡りあえたら…)
    と、考えざるを得ない不運な出来事がアキコさんを襲った矢先に、
    その細い糸は光った。

    その糸にしがみついていいのだろうか?

    今まで、たった一人で、何でも解決し、生きてきた彼女の目の前に
    するすると降りてきた糸は、彼女を救ってくれるのだろうか?

    別れ、とは残酷なものだが、
    物語のなかにあった言葉のなかに私も安らぎをもらった。

    「動物はね、人間と違って生死をたいして重要に考えていないのよ。
    だから、愛情をもって接してくれた人が哀しんでいると、困ってしまうのよ。」

    生死を重要に考えない…

    究極の悟りだな、と思った。

  • うーんっ(*^_^*)。
    かもめ食堂の日本バージョンのようで、お料理へのこだわりやお店の雰囲気がとても気に入りました(^ー^)ノ。
    群さん作品でかもめ食堂の次に好きな作品かな(^O^)。
    どうしても頭の中で主人公を想像しちゃうと、小林聡美さんになってしまってd(^_^o)。

    かわいい猫ちゃんが(もう猫ちゃんの何気ない仕草や行動をしっかり文章で表現している群さんマジックはさすがで、ほれぼれしちゃいました)突然の死んでしまい、その辛さを表現している後半部分では、涙が止まらなくなりました。・゜・(ノД`)・゜・。。。
    でも、最後はきちんと前向きな気持ちになれた主人公に、かならず明るい日々が戻りつつありそうな雰囲気だったので良かったです。

    • 山本 あやさん
      この本も買ってあるのー♡

      群さんのあのかもめの世界をそのまま舞台を日本に
      うつしたらって思うとたまらないねーー[*Ü*]
      えぬちゃんのお気...
      この本も買ってあるのー♡

      群さんのあのかもめの世界をそのまま舞台を日本に
      うつしたらって思うとたまらないねーー[*Ü*]
      えぬちゃんのお気に入り度からして、絶対にワタシも
      大好きな世界だなぁって、わくわくが大増量だよーー♡

      ネコちゃんが死んじゃう本がすごく苦手だから
      ちょっと勇気が縮みつつ[´ー`;]
      でも、えぬちゃんのおかげで前もってココロの準備ができて
      大大感謝だよーっ!思ってもなくて見ちゃうとショック度がハンパなくて[ ・ェ・;]
      えぬちゃん、ステキなレビューありがとうーー♡
      2012/11/20
    • まろんさん
      タイトルがすごく気になっていたのですが
      実は群ようこさんの本は読んだことがなくて、ためらっていました。
      でも、猫の描写について書いてくださっ...
      タイトルがすごく気になっていたのですが
      実は群ようこさんの本は読んだことがなくて、ためらっていました。
      でも、猫の描写について書いてくださった、このkuroayameさんのレビューのおかげで
      おお!読んでみよう♪と気持ちに弾みがつきました(*'-')フフ♪
      2012/11/20
  • 日常を少していねいに過ごしたくなる。

    ムリせず、自分のペースでいいんだと
    思える。

  • 読みながらカウンセリングを受けているような、牧師や住職に話を聞いてもらってるような気分になる。

  •  題名だけで読みたくなりました。
    あくせくしなくても、できちゃう人っているよなぁと、ちょっと羨ましく思いました。
    でも、色々あってもグレることなく?、淡々とやってきた結果なんだろうからと反省。
    思わぬ展開で、出先なのにウルウルしてしまいました。あっという間に読めちゃいますね。

  • 後半涙が止まらなかった。

    動物とのお別れは本当に辛く寂しいものだ。

    2017.11.30 読了

  • 群ようこさん『パンとスープとネコ日和』ドラマ化決定 - 株式会社 角川春樹事務所
    群ようこさんの小説『パンとスープとネコ日和』(四六判 定価1470円 小社刊)が、wowowプライムにてドラマ化されます。

    連続ドラマW パンとスープとネコ日和
    http://www.wowow.co.jp/pg_info/release/002535/index.php

    7月21日(日)スタート 毎週日曜夜10:00(全四話)

    原作:群ようこ「パンとスープとネコ日和」(角川春樹事務所)
    監督:松本佳奈
    脚本:カーゴパンツ
    主題歌:大貫妙子
    音楽:金子隆博
    出演:小林聡美 伽奈 もたいまさこ 光石研 塩見三省 美波 市川実和子 加瀬亮 岸惠子 ほか
    http://www.kadokawaharuki.co.jp/topics/topics.php?no=239

  • 図書館。
    私がもっと性格が良くて、動物を飼った経験もあったら、好きだったかもしれない。

    私にとっては、主人公の年齢とほかの風景がうまく噛み合わなくて、読みやすいのに読みにくい印象。何を言われても主人公の感情が動かず、凪の状態で、でも猫のことになると取り乱したり、自分を「お母さん」と呼んだりしていたところに違和感を感じた。あんなに冷静だったのに。
    あと、お店で出すごはんの描写がもっとあると思っていた。

    私はとっても弱くて感情の起伏が激しいので、この人の境地には至れないんだろうなあ。

  • 主人公はとても真面目でしっかりしていて、すると突然堅苦しくなって全部が全部嫌になりそうなものだけど、年の功か上手くいなしたりいなせなかったり。悩んで煮詰めた分だけ滋味が出る。飲む私たちにはほっこり優しく、スープのように沁み渡る本

  • 誰かの期待に応える為に、自分の信念を曲げる必要なんてない。たとえ自分の意思を貫くことで、誰かをがっかりさせることになったとしても。

    猫の「たろ」の愛らしさや主人公が営むカフェのシャレオツ感が終始キラキラしている本編ではありますが、個人的に印象に残ったのは、「優しげだけれど芯は強い女性」のまっすぐに生きる姿でした。

    生前の母親が経営していた食堂に溢れていた近所のおじさま達を、経営方針の転換で締め出す形になってしまったことに心を痛めながらも、揺るぎなく自分のやりたいことをやり通す主人公が清々しい。彼女を支えるバイトの「しまちゃん」の潔い実直さも読んでいて心地良い。

    湿っぽくならず、誠実に他人とコミュニケーションを取ろうという直向きな主人公に、なんだか勇気をもらった気がしました。

  • ドラマを見て興味があったので読んでみた。
    ドラマもとても良かったものの、引っかかった個所がいくつかあったが
    原作はその辺りが全く無かったのも良かった。

    特にアキコさんがたろちゃんをとても可愛がっていて、
    ドラマのようにドライでも無責任でもなく最初から
    「あまりにかわいくて手放すのが惜しい」と思っていて
    実際とても可愛がっていたところに安心した。
    死んでしまったあとの気持ちの描写はもらい泣きしてしまった。

    お寺に行くエピソードも、そもそもおとうさんのことはおかあさんから聞いていて
    行ってみた時も話しているのは奥さんの方なのが良かった。
    猫が死んで思わず行ってしまうところも良いし、
    奥さんが言っている通りお寺とは本来そういう時に行って良い場所のはずだ。

    昔なじみの人たちが「あの娘にひとこといってやらねば」という思いで
    お店にやってくるのも気持ちがわからないわけでもないが
    お母さんとやりたいものが違ったのだから、アキコさんが自分を曲げてまで
    お母さんのお店を引き継ぐ必要はない。
    同調圧力のあるような田舎の商店街で、嫌な思いをしつつも
    きっぱりと丁寧にお店を営んでいるアキコさんは恰好良いと思う。

    お店をやっていく上で判断が難しいところではあるが
    客層が豊かなのは潰しも効くけれど、媚びる必要もないはず。
    取材を断るのは傲慢だと思うが、それでやっていけるなら良いだろう。
    店主の店なのだから、主の思うように営めば良いのだ。
    「どうやってお客さんを呼ぼうか考えてる店がほとんなんだから、贅沢な悩み」
    が全くそのとおり。

    普通ならそもそも数席しかないキャパでお店を開店する時
    まず知り合いに頼んで手伝ってもらって、軌道にのったら人を雇うだろう。
    何より心配なのはお客さんが来るかどうかのはず。
    アキコさんはなんだかんだで、周りには恵まれている。

    ギルトフリーやエシカル消費といった言葉も聞かれるようになってきた今、
    シンプルで丁寧、安全な食べ物を出してくれるアキコさんの店は
    もし近所にあるなら自分も通うだろうと思う。

  • お店の経営の姿勢などは好感持てるけれど、異母兄に会いに行く神経が私にはまだ理解しきれない。
    主人公の行動に、嫌悪感すら感じた。

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著者プロフィール

1954年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。数回の転職を経て、78年、本の雑誌社に入社。デビュー作『午前零時の玄米パン』が評判となって、作家専業に。「無印物語」で人気を博す。『かもめ食堂』『れんげ荘』『三人暮らし』など著書多数。

「2023年 『老いとお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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