- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758441889
感想・レビュー・書評
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うーむ青山文平はしみじみ良い。名子っていう聞き慣れない概念が物語の鍵なんだけど、初めて知りました。背後から姉に声をかけられるシーンで泣けた。面白かった。
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単行本
名子という言葉は不知だったが、話に興味持てず… -
遅咲きの直木賞作家の作品。
直木賞は2016年「つまをめとらば」で。
徳川幕府が始まって150年のころ。
農業も改良や開墾などで収穫高が高くなり米の値段は下がる。
かたや武士は未だ禄高で収入を得ていて、ジリ貧の勝手事情。
徳川が日本を統一するころ、武士を捨て領土に土着する武士集団がいたが、150年も経つと、その立場もずいぶん変わっていった。
豪農の次女として生きた智恵(ともえ)は、養母、喜代が亡くなって以来家の中に息苦しさを感じていた。
子を成さぬということで家に帰される出戻りでもある。
姉の多喜(たき)は、美しく明るく2度も結婚しながら戻ってきたが天真爛漫に振る舞っている。
そんな中、百姓から、代官所に務め、その才能を買われてどんどん出世する「笹森信郎(のぶお)」から求婚される。
名主に対して名子という言葉の説明などを始め、当時の農村の生活や経済の仕組みなど、会社組織のような武家の役人のピラミッド。
信郎のいまは、契約社員と言ったところか。
その出自や来し方が彼の生き方を作り、智恵の生き方も作る。徐々に解き明かされる家族の真相。
揺らぎのないほどの史実を盛り込んだ設定の中で、登場人物は生き生きと悩み喜び涙する。
登場人物の言葉にも自然、重みがあり、脇役であっても人となりが見えてくる。読み応えのある1冊でした。 -
「わたくしは名子ですから」
名子ゆえに本当の武士にならんとする夫・信郎
もらわれ猫だと思いながら育った妻・智恵
互いが互いを想いながら最後にたどり着いた結論が温かい -
2016年9月角川春樹事務所刊。2018年8月ハルキ文庫化。武士を目指す信郎は、代官所の手代から勘定所の普請役に職替えし、妻の智恵と一緒に江戸で暮らし始める。江戸時代農業コージミステリーとでも言うような要素があり、信郎の思考の道筋が興味深く、楽しい。ラストの信郎と智恵の気づきと決心に拍手。二人の互いの想いが呼応する様が秀逸。
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