コーヒーが冷めないうちに

著者 :
  • サンマーク出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763135070

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;川口氏は、劇団を主宰し、脚本家・演出家・小説家として活躍。舞台の「コーヒーが冷めないうちに」で杉並演劇祭大賞受賞。その後に小説として出版。本屋大賞にノミネートされ、映画にもなった。氏の趣味は、筋トレと旅行・温泉で、モットーは❝自分らしく生きる❞だそうです。
    2.本書;幾つかのルールを守れば、過去に戻れるという喫茶店が舞台。家族・愛情・後悔をテーマにした4つの話。『第一話;恋人 第二話;夫婦 第三話;姉妹 第四話;親子』。読者の生立ちにもによるが、あの日あの場面に戻ってみたいという願望がある人には魅力的。文章が平易で読み易い。読者から❝何回も泣けた❞と評判になったベストセラー小説。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『第一話;恋人』より、『二美子は仕事一筋で生きてきた。・・「仕事が恋人」そう言って、何人もの男性の誘いを塵を払うがごとく断ってきた」「五郎(恋人)となら結婚してもいいと思うようになっていた」「五郎は(二美子よりも)アメリカ行きを選んだ」「(喫茶店で過去に戻った時の五郎の言葉)3年待ってほしい・・必ず帰ってくるから」
    ●感想⇒第一話は、結婚を考えていた彼氏と別れた女性の話。主人公の二美子はキャリアウーマン。彼から大事な話があると言われ、聞いてみると別れ話。本当は話したくないのに、渡米する彼を止めなかった事を後悔。喫茶店で過去に戻り、「3年待ってほしい・・必ず帰ってくるから」と言われる。結婚観について考えてみたい。一昔前は、家庭での役割分担、則ち❝亭主は外(仕事)で稼ぎ、女房は内(家)を守る❞と言われました。現代ではこの考えは化石でしょう。男性も女性も、それぞれの価値観に基いて自分の人生を決めるべきだと思います。その人生のワンステップに結婚があるのです。結婚は、家と家の問題もあります。二人で熟慮し、相手の価値観を尊重できる人を選びたいものです。そうは言っても、結婚は理屈で割り切れるものでは無いので、二人で決めるしかありません。結ばれて家族を持てば、悩ましい事もありますが、喜怒哀楽の日々を送るのもまた楽しいものです。物語の 二人はめでたく一緒になったのでしょうか。気になりますね。カップルに幸多かれと祈ります。
    (2)『第二話;夫婦』より、「(房木;夫)アルツハイマーだと診断され、日々、記憶が消えていく恐怖と不安を抱えながら、それでも妻である高竹にはそれを気づかせず、一人で耐えていた夫」「お前(妻)は看護師だから、もう俺が色んな事を忘れていく病気だという事に気付いているかも知れない」「房木が高竹に望んだのは、妻であり続ける事だった。たとえ、記憶を失っても」
    ●感想⇒第二話は、記憶が消えていく男と看護師の話。房木はアルツハイマー症が進行し、妻の高竹を認識出来なくなる。発症前に書いた手紙で望んだは、「妻であり続けてほしい」という事だった。夫の気持ちを知った妻は・・・。五木寛之さんは書いています。「人間の傷を癒す言葉は二つある、❝励まし❞と❝慰め❞だ」と。妻は、きっと強く立ち上がる気力を得たでしょう。これを読むと、私は、母の事を想います。母は、認知症で要介護状態にあり、施設で面倒を見て貰っています。幼い頃、家族で出かけた旅行等を回顧すると、目頭が熱くなります。人は生まれた時から、色んな別れがあります。それは宿命です。感謝の気持ちを忘れずに生きたいものです。
    (3)『第四話』より、「奥さんの心臓は、出産に耐えられないでしょう。・・奥さんが産む事を選択した場合、母子共に無事である可能性は極めて低いと考えられます」「今回、産む事を諦めたとしても、誰も責めはしない。それでも計は産もうとしている」(喫茶店で未来の我が子と会話)「私は生まれてきて、本当に良かった。私を生んでくれてありがと・・」「翌年の春、元気な元気な女の子がこの世に生を享けた」
    ●感想⇒第四話は、この喫茶店で働く妊婦の話。主人公の計は、堕胎すべきという周囲の意見もあるが自分の命を懸けて、産む決意をします。死を覚悟の出産には、人によって意見が分かれると思います。堕胎は、道徳的には許されるものでは無いのですが、私はごく普通の人間なので、産むべきではないと考えます。主な理由は、「①愛すべき妻が死んでします ②生まれた子供は母無しの片親生活 ③父親だけで子供を育てる大変さ ④・・・」。これは、生き方の問題なので、主人公が子を産むという選択は、彼女には正解なのでしょう。周囲のの意見に耳を傾けても、結論を出し難い悩ましい問題ですね。
    4.まとめ;本の帯に読者の便りが数点載っています。ほとんどが❝泣けた❞というコメントです。私は泣けませんでした。戯曲が小説になったもので、どこにでもあるような話。物語の展開が一般的で他の文学作品に比べ、話の壺にやや精彩を欠いています。加えて、文章力が醸し出す雰囲気も味わえませんでした。但し、第二話と第四話は社会問題として考えさせられます。さて、「あなたには涙する事がないのか」と言われそうでですが、私も色んな悲しみを経験しました。とりわけ、会社の盟友の死には何度も涙しました。彼は、私と共にプロジェクトメンバーの一員でした。二人の子供(小学生)を残し、さぞかし無念だったと思います。今でもコスモスの咲く季節を迎えると、当時を思い出し、悲しみが込み上げます・・・。(以上)

    • 辛4さん
      ダイちゃんさん>
      おはようございます。
      そうです。同感でした。

      > 物語の展開が一般的で他の文学作品に比べ、話の壺にやや精彩を欠い...
      ダイちゃんさん>
      おはようございます。
      そうです。同感でした。

      > 物語の展開が一般的で他の文学作品に比べ、話の壺にやや精彩を欠いています。加えて、文章力が醸し出す雰囲気も味わえませんでした。

      みなさんの評価が高くて、そのうえ映画にもなっているのに、私は全くダメ。泣けるどころか、最後まで読めず投げ出してしまいました。
      わたしの観点がほかのひととちがうのだろうか。。。
      ダイちゃんさんが一緒だったので嬉しくて。です。
      ありがとうございます。

      私はこういうゲームものがだめなのかもしれません。
      同じルールに則ったお話であるツナグは大好きなのですけれど。
      2023/08/08
    • ダイちゃんさん
      辛4さん、おはようございます。ダイです。フォローして頂き、ありがとうございます。この小説に対する私の感想は、読者の皆さんに反し、辛口かなと思...
      辛4さん、おはようございます。ダイです。フォローして頂き、ありがとうございます。この小説に対する私の感想は、読者の皆さんに反し、辛口かなと思いました(実はこれでもややセーブしたつもりです)が、辛4さんのコメントを読ませて頂き、嬉しくなりました。これからもよろしくお願い致します。
      2023/08/08
    • 辛4さん
      ダイちゃんさん
      ありがとうございます。

      > 実はこれでもややセーブしたつもりです
      実は、ここまで私も一緒でした。
      控え目に、でき...
      ダイちゃんさん
      ありがとうございます。

      > 実はこれでもややセーブしたつもりです
      実は、ここまで私も一緒でした。
      控え目に、できるだけポジティブになるように、と心がけていますが、なかなかね。

      こちらこそどうぞよろしくお願いいたします~
      2023/08/08
  • 誰にでもやり直したい過去があり、後悔して生きていくがやり直した未来がどうなるのかこの本を通じて考えさせられました

  • 2017年本屋大賞ノミネート作。
    最近、自分がコーヒーにはまっていることもあり読んだ。

    時間移動ができる席がある喫茶店での4編の短編集。

    その席でコーヒーを一杯飲んでいる間だけ過去に戻ることができる。そして、コーヒーは冷め切る前に飲み切らなくてはならない。席を移動することもできない。

    そして、過去に戻って何をしても現実を変えることはできない。

    制約は多い。でも時間移動を有効に使うことができれば、心のありようは変わる。悲しいすれ違いを修復できる。後悔したことを挽回できるかもしれない。

    やはり「幸せ」とは自分の心の中にあるものなのだろう。
    The Boomが「逆立ちすれば答えがわかる」という曲で歌っているとおり、考え方次第で世界は丸かったりコンペイトウに見えたりする。
    思い込みや偏見を取り去って、捉え方を変えることができれば、現実を変えるより幸せに近づけるかもしれない。

    「幸せ」になろうと思って生きることって大切だ。

  • 冬にぴったりの、ちょっと心が温まるストーリー。
    帯に「4回泣ける」とありますが、わたしは3話と4話でほろり。
    シリーズ5作出ていますが、全ての舞台は同じ場所なのかな。まだ回収されていない部分というか、疑問の残る部分や謎が残っているので、今後のシリーズで少しずつ明かされるのでしょうか。
    となると、続きも読みたくなりますね。

  • 喫茶店「フニクリフニクラ」の片隅にある席。
    そこに座ると、コーヒーが冷めるまでのほんの少しの時間、その同じ場所にタイムスリップできる。
    ただそれには、色々とめんどくさいルールがあって───。

    ”4回泣ける”との評判に、それでなくとも涙腺のゆるい私はいったい何回…と身構えて読んだんですが、案外大丈夫でした。

    ただ、四話めの#親子。
    自分の命と引き換えに、子供を産む道を選択した母。
    育ててあげられなくて、ごめんね。
    どんな娘に育っているのだろう…。
    会いたいよね…。成長した姿、見たいよね…。
    とうとう泣きました。

    タイムスリップものは大好物です。
    後悔していることも、やりなおしたいことも山ほどあるので(笑)。
    たいていは過去に戻ってやり直せば、なんとかなる話が多いですよね。
    でもこのタイムスリップは、現実は決して変わらないんです。
    それもまたつらいものがありましたけど…。

    これ、たぶん続編ありますよね。
    あの時、流と数が北海道に行っていた理由や、
    その席にいつも座っている女性の幽霊の謎とか。
    そういえば、コーヒーを何杯も出して、その女性が席を立つように仕向けたときは笑ってしまいました。

    過去に戻ってやり直しても、現実は決して変わらない。
    でも未来は変えられるんだ。
    今、この瞬間から────。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      帯がそそるので読もうかなと思ったんだけど、友達からそこまででもなかったと言われて、ならいいや〜と思った作品で...
      こんばんは(^-^)/

      帯がそそるので読もうかなと思ったんだけど、友達からそこまででもなかったと言われて、ならいいや〜と思った作品です(*≧艸≦)

      うさちゃんもそこまでだったのかな?
      悪くもなさそうだけど、うさちゃんの感想を読んで満足したわ(⁎˃ᴗ˂⁎)
      機会があれば読むけど、読みたい本が崩れ落ちてきそうだからね(笑)

      では、またね〜♪
      2016/12/04
    • 杜のうさこさん
      けいちゃん、こんばんは~♪

      あはは、私の感想で満足させてしまった?
      あいかわらずけいちゃんのコメントは楽しい!
      寝ようと思ったら目...
      けいちゃん、こんばんは~♪

      あはは、私の感想で満足させてしまった?
      あいかわらずけいちゃんのコメントは楽しい!
      寝ようと思ったら目がさえてしまったよ。(笑)
      レビューざっと読んだら、結構酷評もあってびっくり。
      なんかね、煽られすぎて逆にっていうパターンなのかなぁ。
      泣きたい気持ち満々の方には残念なのかもね。
      私はあまり泣かずにすんで良かったけど…。
      少し読みづらい感じもあったけど、やさしいお話だったよ。

      崩れ落ちそう?同じく。(笑)
      積読消費月間のはずが、今日また仕入れて来てしまった。はぁ…。

      では、おやすみなさ~い☆
      2016/12/05
    • 杜のうさこさん
      chiruさん、こんばんは~♪

      うふっ、またまたご一緒!
      chiruさんブクログ再開で楽しみなことの一つです。(*^-^*)

      ...
      chiruさん、こんばんは~♪

      うふっ、またまたご一緒!
      chiruさんブクログ再開で楽しみなことの一つです。(*^-^*)

      この本、ブク友さんのレビューで知って、読みたくなったので、
      そんなに前評判の高い作品だって知らなかったの。
      たしかに、この涙腺に締まりのない私が(笑)さほど泣かなかったので、
      そこは物足りない方もいらしたかも…?

      個人的には好きな雰囲気だったので、続編が出たらまた読むと思います。

      ぜひ読んでみてね!
      感想楽しみにしてま~す♪
      2016/12/06
  • 電車の広告でよく見かけるのでずっと気になっていたところ、読む機会があったのでちょうど良かったと思い読みました。

    話自体は感動できるものと思いますが、登場人物にいまいち感情移入できず、、
    全体的に薄っぺらい気がしました。
    続編を読めば喫茶店の従業員たちの内面が見えてくるのでしょうか。

    一番はじめの話が一番好きです。
    才色兼備の二美子が失敗しながらも好きな人に思いを伝えようとする姿が可愛らしいな、と思いました。

  • とある街の、フニクリフニクラって喫茶店のとある席には不思議な都市伝説があった。
    その席に座ると、その席に座っているあいだだけ
    望んだとおりの時間に移動ができるという…。
    ただし、そこには非常にめんどくさいルールがあった…。
    ・過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができない
    ・過去に戻ってどんな努力をしても、現実はかわらない
    ・過去に戻れる席には先客がいる。
     座れるのは、その先客が席を立った時だけ
    ・過去に戻っても、席をたって移動する事は出来ない。
    ・過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、その珈琲が冷めてしまうまでの間だけ
    めんどくさいルールはこれだけではない
    あなたなら、これだけのルールを聞かされて
    それでも過去に戻りたいと思いますか?

    うーん、過去に戻る説明が長いし、いちいち説明が繰り返されてる。
    登場人物や喫茶店の人間関係の説明とか…。
    誰が、喋っているのかわかり辛い所もあった。
    読み始めから文章が合わないのか数ページ読むのに何日も掛かった。
    なかなか物語に入り込めず、読めなかった~放置しまくり。
    四つのお話がありそれぞれ、心温まったり、良いお話なんだけどなぁ。
    二話の「夫婦」では、若年性アルツハイマーの夫と看護師の妻のお話で、
    夫から妻への手紙にはじんわりしました。

    じんわりしたけど、なんだか合わなかったなぁ。
    文章が合わないのかもしれない。
    じんわりしたのもあったけど泣けなかった
    本屋大賞にノミネートされて、ワクワクして予約し川口さん初読みでしたが、
    期待し過ぎたのか残念に感じてしまいました。
    でも、ドラマ化すると面白いのかもしれないって感じました。

  • 色んな制限があるものの、過去の思い残したことを浄化できる喫茶店。なぜ愛する彼と別れなくてはならなかったのか?なぜ夫が妻にあてた手紙を書いたのか?姉に伝えたかった妹の幸せは何だったのか?最後は未来を心配して我が子に会いたいと願う母親。全ての話しはこのコーヒーが冷めるまでに、現実は変わらないが、その人の心を癒し、考え方を整理できた。所謂カタルシスであり、何気なく過ごす時間は大切で、後悔なく過ごしていきたいな。やっぱり伝えたいことはちゃんと伝えよう!毎日、自分のカタルシスに付き合ってくれる大切なひとに感謝。

  • その喫茶店のある席に座ると、過去に戻れる。
    しかし戻るためにルールがたくさん。

    その喫茶店のある席に座ると未来にも行ける。

    とある小さな喫茶店を舞台とした、ほっこり心が温まるストーリー。

    上品に、ゆっくりと時間が流れていく。

    スリルやサスペンスは無いが、読み終わった後は心がほんのり温まるストーリーだった。

    難しい表現も無く、文字数も少なく、中高生にも読みやすい本ではないかな?と思った。

    読書苦手な人でも入りやすい一冊ではないかと思う(*^o^*)

  • ある条件を満たすことで過去に戻れる喫茶店で起きたお話です。
    過去に戻れたとしても、戻る際(現在)に起きていた現象は変えることができないという制約があります。一見すると戻ることが無駄なようにも思えますが、戻った際にその人が何を聞いたか・何を伝えたかによって、未来が変わっていく描写が切なくもあり、温かくも感じられます。

    登場人物や背景の設定で、一部分からないところがあります。その点は少し惜しいなとは感じましたが、読む分には困らないかと思います。
    コーヒー片手に、読んでみるのもいいかもしれません。

著者プロフィール

大阪府茨木市出身。1971年生まれ。小説家・脚本家・演出家。舞台『コーヒーが冷めないうちに』第10回杉並演劇祭大賞受賞。同作小説は、本屋大賞2017にノミネートされ、2018年に映画化。川口プロヂュース代表として、舞台、YouTubeで活躍中。47都道府県で舞台『コーヒーが冷めないうちに』を上演するのが目下の夢。趣味は筋トレ、サウナ、シーシャ。モットーは「自分らしく生きる」。

「2023年 『やさしさを忘れぬうちに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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