文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218780

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  • ジャレド・ダイアモンド(米国・1937年~)は、生物学者、地理学者、進化生物学者、更には歴史学者。現・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授。その専門的かつ学際的な研究から、二つの脳の持ち主とも、三つの才能を重ねる人とも言われる。
    本書は、1997年に原書が出版され、1998年の ピューリッツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞し、著者の名前を一躍世界的に有名にした。日本でも、2000年に出版され(2012年文庫化)、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」1位に選ばれるなどした。
    本書は、著者が33年間に亘りフィールドワークを行ってきたニューギニアで、1970年代のある夏に現地の有力者から「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのか?」と尋ねられ(そのときには答えられなかった)、その後30年の研究に基づく1つの答えとして書かれたものである。
    そして、著者による結論は次のようになる。「歴史は、異なる人びとによって異なる経緯をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」
    【以下、上巻について】
    論旨は概ね以下である。
    ◆ヨーロッパ(旧大陸)人がアメリカ(新大陸)先住民を征服できた直接の要因は、銃器・鉄製の武器、騎馬などに基づく軍事技術、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、航海技術、(ヨーロッパ国家の)集権的な政治機構、文字である(本書のタイトルはそれを凝縮して表現したもの)。但し、その逆(新大陸が旧大陸を征服する)が起こらなかった究極の要因があるはずである。
    ◆究極の要因のひとつは、ユーラシア大陸においては、他の地域よりも、多くの栽培できる植物や飼育できる家畜、即ち、多くの食料を手に入れることができたことである。それによって、他地域に先駆けて、帝国という政治形態が出現し、読み書きの能力や鉄器の製造技術が発達した。
    ◆二つ目は、ユーラシア大陸は東西に長く、アメリカ大陸、アフリカ大陸は南北に長いことである。食糧生産は、世界の何ヶ所かで発祥し、それが周辺地域に広がって行ったが、東西の地域的広がりは南北の地域的広がりに比べて、気候のパターンが似ており、農作物や家畜の伝播が容易であるため、ユーラシア大陸では、その伝播が速かった。車輪や文字などの技術・発明も、食糧生産システムを介して伝播することが多く、ユーラシア大陸ではその速度が速かった。
    ◆ヨーロッパ人は、家畜との長い親交から病原菌への免疫を持っていたが、アメリカ先住民はその免疫を持たず、ヨーロッパ人が新大陸に持ち込んだ病原菌によって人口の急激な減少を余儀なくされた。
    本作品における主たる研究・分析の結果は、上巻を読めば概ね把握することができる。
    出版から20余年を経て、主な主張は既に何らかの形で耳にしているとはいえ、一度は直に触れておきたい大著である。
    (尚、近年のベストセラー『サピエンス全史』では、農業革命は爆発的な人口増加を可能にしたものの、実は、サピエンスが農作物に家畜化された「史上最大の詐欺」だったと分析しており、面白い)
    (2020年2月了)

  • 昨今の差別思想を科学的に覆す良書。

  • まず何を探ろうとしているのかを提示した上で、例を詳しく説明していく形でとても読みやすい。こういうことかなと予想しながら読めるのでとても良い。

  • 長かったー。面白かったけど、サピエンス全史の方が好き。
    大陸ごとの発展は、人種ではなく環境に依存しているというのは興味深い。私達の優生思想が如何に誤っていて不要な差別を生んでいるか。
    征服には銃の所持がキーとなっていたというのはわかりやすいが、病原菌というのは意外だった。でも確かに、病原菌はある意味銃よりも強い。

  • 人類史の謎、旧大陸人が新大陸人を何故征服できたかを、栽培植物、家畜、病原菌、など基に明らかにする壮大な物語で、とても面白かった。
    ゼロ年代ベスト1は伊達じゃない。

  • 結局 人類の発展は自然の法則に従ってるということ。

  • 以前から読みたいと願っていたものの、厚い単行本が上・下巻では持ち歩きには適せず保管も場所を取るため、暇な時間ができた頃に図書館からでも借りて読もうかと漠然と考えていました。そうしたら、この程文庫化されたことを知り早速購入しました。この本がよもや文庫化されるとは思っていませんでしたで、やった~という感じです。
    今からおよそ1万3000年前氷河期が終わる時期に世界中にちらばっていた人類が今に至るまでどのように自分たちの世界を築いていったのか。
    著者がこの本を書くきっかけとなったのはあるニューギニア人が発した素朴な疑問からでした。それは、富や権力を持つものと持たざるものの格差があることへの疑問でした。「どうして自分たちは自分たちのものといえるものがほとんどないのだろう」それは人種による優劣等という生物学的な説明では到底解決できない課題でした。現代世界における民族や地域間の不均衡はなぜ生み出されたのか、今に至る富や権力の分配はなぜこのような形になったのか・・人類史の謎への旅の始まりといった読み物です。
    折しも、NHKの番組シリーズ「ヒューマン」でこの本の内容の一部をもとにしたようなテーマで放送があったりしたので、ますます興味が増しわくわくして読んでいます。

  • 人類史を知る上で外せない本。
    当たり前に思ってた地域差。欧米の発展や植民地化の挙動に対して、なぜ?を突きつける。
    結論、環境が違うから、の一言に尽きるが、その詳細を丁寧に追っていってくれる。
    具体的には、人類の出発点と移住の流れ、食料生産の始まり、栽培化家畜化とそうでない種…。
    そして3部の最初で終わるが、タイトルにもある病原菌についての言及。
    すぐに暮らしの役に立つものではないが、知る知らないでは生物やいのちに対する姿勢が変わるのは間違いない。

  • ウイルスがどのように進化するか、について印象に残った。今までその目線からウイルスをみたことがなかったため、ウイルスがより感染を広げられるような症状を示すように進化する、というところが興味深かった。家畜との関わりから新たな感染症が生まれるため、家畜が少ないアメリカでは感染症が少なかった。

  • おもしろいが、やはり長い。作物の話などはそんなに細かくなくていいかな……などと思う。
    丁寧に書こうとしていることはもちろん好感を持てるが。
    あと、人類が農耕を始めた流れを詳細に書いているが、あくまでも地理的条件が一番と言っていいくらい重要であり、民族そのものやそこに住む人の性質は関係ないのだ、というスタンスがナイス。先に農耕を始めた人たちは、優れているから先に始められたのではない。単に、周囲にそういう条件が揃っていたからなのだ。

    そういう話がメインなので、人類のアイデアとか人間の工夫みたいなのが少ないのが、やや飽きるところ。私の好みとしては、もう少し、人が生み出した知恵みたいな話を読みたい。
    そういう意味では、目次を見る限り、下巻の方がおもしろそう。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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