82年生まれ、キム・ジヨン [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 2つの点で面白かった。
    1つ目は今まで全く知る機会のなかった韓国の文化、慣習、日常、そして女性の立場。
    2つ目はフェミニズム小説として。

    77年生まれ、大学卒、姉一人弟一人の私が経験したことがたくさん含まれている。
    医者の最後の言葉は、私が結婚により退職(国際結婚なので辞めざるを得なかった)することになった上司に冗談ともつかぬように言われた言葉と同じ。
    恐ろしいのは、それらの体験や言葉を聞き流したり受け入れてきたりしてきた自分の鈍感さ。私は過去の私を抱きしめてあげたい。

    この本の前に読んだのは『服従』。女は男に服従することこそ幸せだと、ヨーロッパが家長制度に回帰していくことを暗示するお話。そのあとに、いまだに家長制度的考えや男尊女卑が背景にある環境にもがく女性を描くこの本。

  • 『戦争は女の顔をしていない』
    『本音を隠すオトコたち 本音を知りたい
    オンナたち』
    こういう本を読んだり見かけたりして
    すっかりジェンダー思想は浸透していると
    思っていたがアラサー世代や女性でも
    まだ人によってはマッチョな考え方、性差別を
    していることに驚くことがある。
    ジェンダーとはきちんと勉強して、個人としても
    理解する能力がないとなかなか身につかない
    ものなのだと思う。
    大体世界ではロシアの侵攻やイランのヒジャブなど不正がまかり通っている。
    やっぱり定期的に男権をウオッシュしないといけない。
    そう思ったら無性に本書が読みたくなった。
    韓国の典型的な儒教的家父長の名残がシンボリックに
    出てきて驚くほど読みやすい。
    冒頭、幽体離脱、憑依的展開にああこういう
    つかみかと新鮮な驚きがあった。
    解説と訳者あとがきで「あ!」と思わされたこと3つ。
    ①「この小説では夫のチョン・デヒョン以外の
    男性には名前がない」「男たちに名前など
    必要ない。強烈なミラーリングである」(P185)
    解説の伊東順子の指摘。確かにそうだったと
    思わず膝を叩いた。
    ミラーリングとは「女性へのヘイト発言を、
    そのまま男性への発言に置き換えて鏡のように
    見せる」(P176)こと。
    ②「訳者あとがき」で
    「一冊まるごと問題提起の書である。
    カルテではあるが、処方箋はない」(P186)
    ③「1982年に出生した女の子の中でいちばん多い
    名前がキム・ジヨン」(P187)
    リサーチを経て、巧みに練られた作品だと分かる。
    読んでいて苦しくなったのは予備校帰りの
    ストーカーな男子生徒の話(P58)。
    男姓に悪意がないからジオンの恐怖感との
    ギャップに驚く。
    男性はもっと想像力を働かさないといけない。
    折しも今朝の新聞に映画『SHE SAID/
    シー・セッド その名を暴け』の記事が載っていた。
    観てみたいと思った。

  • 映画見たから読んでみた!女性が生きやすい社会になってほしい 難しいなと思った

  • 女性の人生のリアルが詰まってた。
    韓国の話に限った話じゃない。
    妊娠出産育児。
    男性が子供を産める身体にならない限り
    この先も永遠に続く課題。
    内容としては重いはずなんだけど
    さくさく読めた。

  • 「加害者が小さなものを一つでも失うことを恐れて戦々恐々としている間に、被害者はすべてを失う覚悟をしなくてはならないのだ。」

  • 韓国のベストセラーフェミニズム小説。
    82年生まれのキム•ジヨンは、ある時から死んだ先輩や母親が乗り移ったかのように話すことがあり、精神科にかかっている。
    この本は、その主治医がジヨンの半生をカルテという形で綴ったという形式になっている。
    どこかで、ジヨンはわたしだ、というキャッチフレーズを見た気がする。本当にその通りで、ジヨンが受けてきた女性差別的な仕打ちは、自分が日本で受けてきた•見聞きした扱いに通じるものが多くある。
    長男主義で男性を無意識に持ち上げる祖母、
    女の子もこれからはきちんと勉強しろというけど、進学や就職への真剣度では、男兄弟たちとどこか差をつける両親、
    クラスメイトの男の子の乱暴な振る舞いも「本当はお前のことが好きなんだから許してやって」、
    痴漢などの性被害を軽く考える社会、
    夫からの「育児も家事もちゃんと 手 伝 う よ」

    自分が無意識に忘れようとしていたことについて思い出してしまい、私は差別的な扱いを受けていたんだな、と今になって感じ、切なくなってしまうことも多かった。
    ジヨンはきっと、ちょっとずつちょっとずつこういう扱いを受けて、心が削られていって、おかしくなってしまったんだと思う。

    巻末の伊東順子の解説で興味深かったのは、
    現代の女性嫌悪は、伝統的な「劣った性」として女性を差別すると言うよりは、「不当に恵まれている」として攻撃するというところである、
    これは女性だけでなく、地下鉄のフリーパスを持っている老人など他のマイノリティにもむけられる、
    という話。
    結局のところ、男性もしんどいし苦しい、その不満の行き場がなくてそうなっているのではないかなぁ。
    韓国の大学受験は日本よりずっと苛烈だし、一流企業と中小企業の差はものすごいし、一流企業に入っても定年まで勤め上げられるのはごくわずか、兵役もある、、、
    行き過ぎたグローバル新自由主義は庶民を苦しめて、分断を深める
    どうか同じ庶民同士でいがみ合うのではなく、適正な再分配を求める運動に繋がってほしい
    と思うのであった。

  • すごく雑にまとめると、主人公のキムジヨンの人生を生まれる前から淡々と描写してるだけの話。ただ冒頭でジヨンと親戚とのシーンまでだけでもグッ…と辛くなるような描写があって、でも見る人(特に男性)から見たら幸せそうじゃん〜って言われそうな現状なのが既にキツい
    単に結婚から妊娠出産、退職、育児だけで病んだわけではなく、生まれた瞬間から「女だから」以外に理由のない差別的な扱いを受け続けた結果、とうに限界を迎えていた心が遂に目に見えて壊れちゃったのかなとか想像してしまった
    同じような経験に押し潰されてそのまま世を儚んでしまった女性もいるのかもとか、そもそも生まれるところから…って考えると…
    私は社会を変えてやろうとか会社でのし上がってやろうなんて能力も野心もないけど、途中に出てくる「バスでジヨンに声をかけた女性」みたいになりたい

  • ラスト精神科医の独白が怖すぎる。ホラー。あんたキム・ジヨンさんの診察を通して「特別な経験」したんじゃないのかよ。何を見て聞いてたんだ?!

    後書きに書いてあったけど、女性の登場人物にはちゃんと姓名が当てられていて、男性の登場人物は父とか弟とかでしか呼ばれていなかったのは意図的だったのか。「男に名前など必要ない。-強烈なミラーリングである」まさに…

    映画版にムムム…となる人が多かったのにもちょっと納得したな。何も大丈夫になってないし救われてないぞ。韓国映画そこら辺は描き切ってくれるかと思ったけどねー…

  • なんの前知識もなく「前に少し話題になってたな」くらいの気持ちで手に取った。
    他人になって喋りだす主人公を、最初はサイコホラーだと思った。読み進めていくうちに、全然違うことを伝えられていると、気が付いた。

    女性であるゆえに貶められたり、女性であるゆえに強いられる負担は現実にある。世代を超えて受け継がれていく負担があって、それは男性からだけのものでなく、前の世代の女性から強いられる場合もある。多々ある。

    私は最初ホラー小説だと思ったが、読み終わって日本人がまだ書いていない、日本人女性にはまだ書けない、日本にも存在する問題について書かれた、とても怖い小説だと思った。おそらく、この物語のラストが示すように、問題は根が深い。

    私たち女性に今ある権利は、自然とあったものでなく、かつての女性が社会や男性から勝ち得たものだということを忘れてはいけないし、黙らせようとする意見には断固として拒否しなければならない。それは私たちだけじゃなく、声を上げた女性たちが今の私たちに道を開いてくれたように、私の後を生きる女性たちのためにもなるのだから。

  • 韓国の大学生の様子が日本よりだいぶシビアで進んでいる。とても勉強になった。日本の男性の方(特に母親が主婦だった方)が読んでも中々感覚がわからないと思う。

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著者プロフィール

チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』、2019年『サハマンション』、2020年『ミカンの味』、2021年『私たちが記したもの』、2022年『ソヨンドン物語』刊行。邦訳は、『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、ちくま文庫)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)いずれも筑摩書房刊。『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。『ソヨンドン物語』(古川綾子訳、筑摩書房)が近刊予定。



「2024年 『耳をすませば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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