82年生まれ、キム・ジヨン [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 今さらながら読み終えました。こういった女性の生きづらさは今の日本でもそんなに改善していないのだろうなと思います。

  • 涙が出るくらい共感したし、胸が苦しくなるほど絶望した。でも希望もあった。

  • 韓国における普通の女性の普通の苦労を描いた小説。大事件が起きるわけではないが、女性差別という日常の中の異常が、淡々と描かれている。
    淡々とした中で、たとえば指差し棒で身体を突かれていた女子生徒が泣きながらそれをふみにじるとき、たとえばママ虫と言われたキムジヨンが憤怒するとき、女性は静かに暴発する。
    社会に何が起きているかを代弁するこの本の価値。これは女性の思いを、男性に届くように、翻訳したものだと思う。

    以前統一教会で韓国の男性と集団結婚をした日本人女性が、虐げられてものすごく苦労した話を読んだことがある。ああいうことは(極端な例だとしても)宗教云々だけに原因があるわけではなく、韓国で起きる土壌はあったのだと思った。

  • キム・ジヨンを受け持った男性精神科医が語る最後の一文、皮肉が効いていて歪な認知の根深さと問題を読者に投げ掛けている。これが普通だと思って生きてきた人ほど悪意が薄い分ゾッとする。
    キム・ジヨンの幼少期から子をもうけて壊れるまでの人生を、差別的なシーンだけ切り取ってきれいに繋げている。
    日本でも似たような男尊女卑の構造はあって、身に覚えがあるだけに生々しくてきつい。

    面接の質問で志望者にセクハラへの対応をどうするか聞くってキモすぎるな…。

  • 環太平洋大学附属図書館の所蔵情報はこちら⇒
    http://library.ipu-japan.ac.jp/Main/Book?book_id=TS00079187

  • これは小説なのか? 不思議な読後感。。
    誰の視点で描かれているのか最後でわかった。
    韓国名の登場人物達がとてもわかりにくいので読みやすいとは言えないが、淡々と最後まで読まされてしまった。
    旦那としては複雑な話でした。

  • 小説の形をとっているものの、現実をつきつけるノンフィクションのような感覚。
    韓国の女性の立場のしんどさ、みたいなものがこれでもかとクローズアップされ、しんどい。しかし、それが現実なのだろうと。

  • ◆読書記録2冊目
    ◆No.055

  • キム・ジヨンという女性、1児の母親が、ある日から「別人」、といっても彼女の身近な女性の人格に代わってしまう瞬間がある。キム・ジヨンの母親であったり、大学時代の先輩であったり。

    いよいよ親族づきあいの最中にもこの症状が出てしまい、カウンセリングにかかり、カルテという形でこのキム・ジヨンという女性の人生が語られる。

    キム・ジヨンは極めて理性的で、常識的で、賢く、しっかりと自分の意志を持っていて、誰が読んでも共感できる、応援したいと思える理性的な女性だ。
    そんな彼女の人生に降りかかってきた、小さな、けれど数えきれないほどの「女性であるがゆえの」理不尽が、韓国社会の実情もあらわに、キム・ジヨンの母親のストーリーをまじえて語られている。

    「韓国だから」という話ではない。これは、すべての女性が味わってきた痛みで、これから味わう痛みでもある。
    女性が思っていても言えないようなことを、作者は痛烈にセリフとして描く。

    昔に比べて技術が発達したことで家事は楽になったはずだ、と言う医者には、

    「以前はいちいち医者のカルテを探して手で記録し、処方箋も手書きしていたのに、最近の医者は何が大変なのかとか、以前は紙の書類を持って上司を追っかけて決裁をもらっていたのに、最近の会社員は何が大変なのかとか、(中略)そんな乱暴なことは誰も言わない。どんな分野でも技術が発展すれば物理的な労力は減るのが普通なのに、家事労働に関してだけはそれが認められない」。

    落ち着きのなさを指摘される子供の行動に悩む妻に、絶対に大丈夫だ、自分は医者なんだからと言う夫には、

    「一日に十分もあの子と一緒にいないあなたに何がわかるの?その十分だって、子供じゃなくて携帯を見てるのに。寝てるところだけ見てもわかるの?寝息だけ聞いてもわかるの?神が降臨してるの、あなたには?医者じゃなくてシャーマンなの?」

    と。

    キム・ジヨンしかり、この女性しかり、論理的に思考し、意見を述べることができる女性たちがみな追い詰められていく。

    韓国の男女の賃金格差はOECDの中で最低だとか、戸主制度の廃止実態などが主人公の体験談として出てくるので読みやすく、「あれ、日本ってどうだっけ」とひやりとする。

    フェミニズム小説、とくくってしまうと、つい手が遠のくものだと思う。私自身、読み終わってから、「あ、こういうのフェミニズム小説っていうのか、まあ確かにそうだなあ」とぼんやり思った。

    体験したことのないことは想像できない、だから男性には女性の言う「差別」や「理不尽」がわからない、女性もそれが当たり前になっていて言語化されていない、それを主人公の人生を通じて追体験ができる。
    これこそ読書の強みだよね。

    すべての女性の物語。そして男性にとっては母親の、妻の、妹の、隣人の「いま」だ。

    そして読み終わったら思うはずだ、
    「どうすればいいんだろう」と。

    広く読まれてほしい。すでにベストセラーだけど。

  • 話題の本、図書館で読了。以前韓国ドラマの「傲慢と偏見」というもので、この本に書かれているようなOLのヒロインの女性差別の状況が出て来た。それで、読んでいて「それだな」と思い当たった。日本社会にもあるような事だと思うが、全部同じだと思ってはいけない。ドラマに描かれたものでも、この本でもより苛烈な印象がある。そしてあちらの人たちはこういう本で声をあげるし、集会も開く。それが社会の中で取りざたされる。日本ではそういう点はもっと閉鎖的だ。その分もう少し差別状況が優しいのかもしれない。もちろんアジア全体ではこの本に書かれているような、家父長制が一般的だ。そしてそれは、改善される事はほとんど今後もないだろう。そう思って、本を閉じた。ひとりの女性の半生記としては、時代が下ってもほぼ私のものと同じで、すごく共感はできた。

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著者プロフィール

チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科を卒業。放送作家を経て、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』で第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。大ベストセラーとなる。2018年『彼女の名前は』、2019年『サハマンション』、2020年『ミカンの味』、2021年『私たちが記したもの』、2022年『ソヨンドン物語』刊行。邦訳は、『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、ちくま文庫)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(小山内園子、すんみ訳)、『サハマンション』(斎藤真理子訳)いずれも筑摩書房刊。『ミカンの味』(矢島暁子訳、朝日新聞出版)。『ソヨンドン物語』(古川綾子訳、筑摩書房)が近刊予定。



「2024年 『耳をすませば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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