本をめぐる物語 一冊の扉 (角川文庫 た 72-1)

  • KADOKAWA/メディアファクトリー (2014年2月25日発売)
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本棚登録 : 948
感想 : 109
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中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。
しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。
『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。
案の定、この短編集も特徴的というか・・・。


中田永一「メアリー・スーを殺して」
おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。
あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。
「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。

宮下奈都「旅立ちの日に」
手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。

原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。
ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。

小手鞠るい「ページの角の折れた本」
どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。
ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。
主人公みたいな女の人がとにかく苦手。

朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」
夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。
ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。

沢木まひろ「時田風音の受難」
おもしろい。
官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。
主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。
なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。

小路幸也「ラバーズブック」
素敵な話だと思う。
しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。

宮木あや子「校閲ガール」
校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。
ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。


全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。
なので、あまり心に残らない。

強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。
『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。
掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。
芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。
そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。
ただ、やはり男性にはうけないだろう。
私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月7日
読了日 : 2015年6月16日
本棚登録日 : 2020年10月7日

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