プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫 白 209-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003420935

感想・レビュー・書評

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  • p.156予定説→個々人のかつてみない内面的孤独化の感情という帰結
    p.166「隣人愛」はー被造物ではなく神の栄光への奉仕でなければならないからー何よりもまずlex naturae(自然法)によってあたえられた職業という任務の遂行のうちに現れるのであり、しかもそのさいに、特有な事象的・非人格的な性格を、つまり、われわれを取り巻く社会的秩序の合理的構成に役立つべきものという性格を帯びるようになる。
    p.178そうした自己確信を獲得するための最もすぐれた方法として、絶えまない職業労働をきびしく教えこむということだった。つまり、職業労働によって、むしろ職業労働によってのみ宗教上の疑惑は追放され、救われているとの確信が与えられる、というのだ。
    p.185カルヴァン派の信徒は自分で自分の救いをー正確には救いの確信を、と言わねばなるまいー「造り出す」のであり、しかも、それはカトリックのように個々の功績を徐々に積みあげることによってではありえず、どんな時にも選ばれているか、捨てられているか、という二者択一のまえに立つ組織的な自己審査によって造り出すのだ。
    p.211注8
    p.226
    p.238神の恩恵の獲得が人間の合理的企図の対象とされることになった。
    p.264「見ゆべき教会」は、来世を目的とする信託遺贈財団というか、当然に義しい物語も義しからざる者も包含するような公的制度(アンシュタルト)とはもはや考えず、もっぱら、みずから信じかつ再生した諸個人、そうした人々だけからなる団体とされた。
    p267呪術からの解放
    p.279現世の徹底的な呪術からの解放は、内面的に、世俗内的禁欲に向かう以外、他の道を許さなかったのだ。
    p287このような、来世を目指しつつ世俗の内部で行われる生活態度の合理化、これこそが禁欲的プロテスタンティズムの天職観念が作り出したものだったのだ。
    p.296行為
    p.304労働
    p.345たゆみない不断の組織的な世俗的職業労働を、およこ最高の禁欲的手段として、また同時に、再生者とその信仰の正しさに関するもっとま確実かつ明白な証明として、宗教的に尊重することは、われわれがいままで資本主義の「精神」とよんできたあの人生観の蔓延にとってこの上もなく強力なこうかんとならずにはいなかったのだ。
    p.352富の増加したところでは、それに比例して宗教の実質が減少してくるようだ。
    p.356「精神のない専門人、心情のない享楽人。この無のものは、人間性のかつて達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れるだろう」

  • 2013 11/22読了。Amazonで購入。
    岩波文庫を読みなおそうシリーズ。
    近代資本主義の精神の起源はプロテスタンティズムの禁欲的倫理と「天職」に励むという考えにある・・・という有名な話はもちろん知ってたけど、実際に読んだのは初めて。
    もっといかにも社会科学、って感じの話が続くのかと思ってたけど、かなりの部分はプロテスタントの教理とか倫理観にかかわる記述なんだ、というのは実際に読まないとわからなかったところ。
    自然な欲望に任せたり、安定を望んだりしないで、禁欲的に自分を律することに意義を見出す姿勢についての話とか、その合理的に振る舞おうということを最上位に据える考え方の不合理性に関してとか、自分自身の振る舞いについて考えるところも多かった。
    もっとはやくちゃんと読んでおくべきだったな・・・。

    以下、気になった点メモ。

    ・p.286
     ・どの教派においてもつねに、宗教上の「恩恵の地位」をば、被造物の頽廃状態つまり現世から信徒たちを区別する一つの身分と考え、この身分の保持はーその獲得の仕方はそれぞれの教派の教義によって異なるけれども-なんらかの呪術的=聖礼典的な手段でも、懺悔による赦免でも、また個々の敬虔な行為でもなくて、「自然」のままの人間の生活様式とは明白に相違した独自な行状による確証、によってのみ保証されうるとした。このことからして、個々人にとって、恩恵の地位を保持するために生活を方法的に統御し、そのなかに禁欲を浸透させようとする機動力が生まれてきた。

    ・p.331-332 プロテスタントの芸術への拒否に関する記述・・・初期図書館界のフィクション嫌いとかに絡んでくるのか?? このへん、宗教意識との関連について全然フォローしてこなかったので今後意識しておく。

  •  課題読書。読了としたが(注)は殆ど飛ばした。解説でも触れられているがこの本は(注)と本文のどちらが多いか分からないくらいなので内容理解は50%くらいかも。(注)の理解には歴史的な知識がかなり求められるためまずは本文のみで読了とした。本文も完全に理解出来たとは言えない。自分が読んできた本の中では難しい部類に入った。もっと学問的な本も読んで教養を身に着けなければ。
     本書の核心を一言でいえば「プロテスタンティズムの禁欲的な精神が産業革命、近代資本主義誕生の要因である」ということだろう。禁欲が資本主義を誕生させたという逆説は有名らしい(不勉強にして自分は知らなかった)。一見矛盾して見えるが読んでいくとなるほどと思わされる。ピューリタンにとって労働は救いを確信する手段でだったので世俗的禁欲、合理的な労働を促進させた。そして近代資本主義が成立すると宗教的な動機は薄れて有名な「精神のない専門人、心情のない享楽人」が生まれるというわけだ。
     ヴェーバーはよくマルクスの唯物史観と対比させられる。しかしヴェーバーは唯物史観を否定しようとしたのではなく多元論をとっていたというだけなのだ。だからプロテスタンティズムも資本主義誕生の一要因に過ぎず、けっしてそれだけが唯一の要因であると理解してはならないということは注意しておくべきだろう。ヴェーバーかゾンバルトか、という対立も面白い。個人的には贅沢が資本主義に繋がったというゾンバルトの方がしっくりくる。
     

  • 倫理でこのタイトルを聞いた時、「なんて長い名前の著作なんだ」と思ったことがある。

    普通、「キリスト教」というと、「金と神の両方に仕えることはできない」「金持ちが天の国に入るには駱駝が針の穴を通るより難しい」など、禁欲的で素朴なイメージがあって、「金持ち」とか「資本主義」とは結びつきが薄い、むしろ正反対のイメージを抱くかもしれない。
    ところが、この著作でマックス・ヴェーバーが社会学的観点から主張するところによれば、プロテスタント、とくにピューリタンの禁欲的倫理が近代の資本主義に大きく貢献したという逆説なのだ。

    すなわち、神の栄光のために働くことは尊いことだというのである。
    一生懸命禁欲的に働いて、消費を抑えれば必然的に財産は貯まる。
    それも、財産をためるための財産、労働ではなく、あくまでも根底にあるのはピューリタニズムの禁欲的な倫理だというのだから逆説的である。

    あとは、世界史や倫理で習ったカルヴァンの「予定説」、あれにはどうも納得いかなかったが、あの説がカルヴァン自身の確信であって、「どうすれば救われるかどうか」ということは民衆に説いてなかった、そのため、人々は不安になったがヤケクソになることなく神の救いに叶うような禁欲生活を営んだという話を読んで、ちょっと納得した。

    自分自身にとっても、「働く」とはどういうことなのだろうか、どういう姿勢で働くのが神にかなったあり方なのかということを考えさせられました。

  • プロ倫言わずと知れた社会学の名著。資本主義がプロテスタントと結び付いているのには理由がある。是非とも社会学に興味があったり学んでいる人は一度は読んでおいてほしい一冊。

  • 暴利の禁止を倫理的に禁止する「プロテスタンティズム」。利潤追求の営みとして成り立つ「資本主義」。
    一見相反するこの2つのキーワードが歴史的関係において密接に結びつき「近代の資本主義形成」(前近代のそれと違い、簿記などを土台に、合理的な産業経営、利潤追求がされるもの)に大きく貢献していくことを見出した書。
    商業や金融活動のさかんなユダヤ教などからなぜ「近代資本主義の形成」が成立しなかったのか?逆にピューリタリズムからなぜこれが生まれたのか?
    一つキーワードとしてルターの天職観念がある。世俗の職業は神の召命。われわれが現世において果たすべく神から与えられた使命。そのために人々は「禁欲」(絶食や苦行など自分の身体に苦痛を与え、何らかの非合理的な力を身に着けようとするのではなく、他のあらゆることを忘れ、エネルギーのすべてを目標達成のために注ぐ行動様式。)を重視する。これはやがて、プロテスタンティズムの思想的特徴へつながっていく。
    はじめピューリタン商人は金儲けが目的でなく、神の栄光と隣人への愛のために専心する。そのように禁欲のエートス(個々の勤労や節約といった「徳性」を倫理的雰囲気・思想的雰囲気のように統一した行動システムまでまとめあげたもと)をもって労働に励むゆえに、お金が溜まる。無駄な消費をしないのでさらにお金は溜まる。この貯蓄こそが、隣人愛を実践したメルクマールとなり救いの確信にいたる。
    この流れは次第に「意図せず」合理的経営が土台として成立していく。儲けなければ経営がなりたたなくなるにつれ、資本主義の社会機構が世俗的禁欲を外側から強制していく。
    この資本主義の精神は資本家だけでなく労働者も含まれる。資本家は経営を拡大。労働者は経営内の規律に自ら進んであたかも労働が絶対的な自己目的(天職)であるかのように励む。
    しかし、上記の強制は進行はもちろん、その精神も薄めていく。
    残ったのは天職義務の行動様式だけである。
    そのような状況を「精神性のない専門人。心情のない享楽人。この無なるものは人間性のかつて達した事のない段階にまで上り詰めたと自惚れるだろう」という言葉で閉じる。
     ...とほとんど大塚先生の解説を参考にまとめてみる。歴史の例が多く、脚注も多く、論旨が何度も曖昧になりかけた。
     ただ、社会学徒必読の書であるのは間違いないと確信した。基本的かつ必要なメンタリティーが凝縮されている。
     一見相反するキーワードを歴史的かつ論理的に構成する方法。
     修道院の規律が人々の思うものより強制が弱かった例。反営利的な倫理的諸信念の中から近代資本主義の成長を内面から力強く推し進める資本主義の精神という結論。これらからわかるように外側からの強制よりも内側からの強制が強くなる現象。つまり、個人が機械化し無力と不安になっている人々に安定を与え、救ってくれるような新しい権威に従属したいという近代社会に見られる人々の願望。
     このような社会学的なものへの有効性。それはもちろん、また、「(アメリカでは理想とされる)ビジョナリーカンパニーが日本では一歩間違えればブラック企業」という某飲食店の今日の事例を見るように、アメリカ的手法をそのまま導入しても成功しない政策・方法などのいい示唆にもなるのではないだろうか。
     そのような両者のエートスの違いで生じてくる問題を多くあるとかんがえる。
     なお、訳者も強調しているように、「プロテスタンティズムが資本主義を形成したのではない。」本書を読む前そう思っていたゆえにそこは気をつけたい。

  • 矢崎ゼミ三年次の教材の一冊。
    働く意味、ということを歴史から考察した社会学の名著にして古典。
    特に組織の経営者には必読書である。再読して、反省。。

  • 「企業って結局利潤追求が目的でしょ?それが何か?」
    とクールに言い切り、黙々と働く、、、、
    この思想、どこからやってきたのでしょう?

    「欧米の人ってよくわからないんだよね。」
    というか、アメリカ人とヨーロッパの人って同じような違うような・・・
    理由はよくわからないけど、でもとにかく日本人とは違う!

    そんな疑問に応えるヒントがここに。

  • 大学に入学してまっさきに講義で出会った書物。
    すでに当時カビの生えた講義だったように感じるが、その逆説的な物の見方に感銘を受けた。とりあえず何でも逆説的に考えるのが癖になってしまった。
    資本主義の外見は人間の欲望で成り立つように見える。
    しかしその由来は欲望とは対極に位置するように見える禁欲的教義=倫理。プロテスタント教国特にカルバン派で資本主義が発生した理由が述べられる。
    「行い」が時の流れとともに本来的意味を失うときに、新たな時代の要請に応じた「行い」が適合する例は探せば他にもあるんだろう。
    思いつかないけど。

  • 難しすぎワロタ
    キリスト教の歴史に関する前提知識が必要

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著者プロフィール

1864-1920。ドイツ、エルフルトに生れる。ハイデルベルク、ベルリン、ゲッティンゲンの各大学で法律学を専攻し、歴史、経済学、哲学に対する造詣をも深める。1892年ベルリン大学でローマ法、ドイツ法、商法の教授資格を得、同年同大学講師、93年同助教授、94年フライブルク大学経済学教授、97年ハイデルベルク大学経済学教授、1903年病気のため教職を去り、ハイデルベルク大学名誉教授となる。1904年Archiv für Sozialwissenschaft und Sozialpolitikの編集をヤッフェおよぴゾンバルトとともに引受ける。同年セント・ルイスの国際的学術会議に出席のため渡米。帰国後研究と著述に専念し上記Archivに論文を続々と発表。1918年ヴィーン大学教授、19年ミュンヘン大学教授、経済史を講義。20年ミュンヘンで歿。

「2019年 『宗教社会学論選 【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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