格差社会: 何が問題なのか (岩波新書 新赤版 1033)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310334

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  • 「格差社会」橘木俊詔著、岩波新書、2006.09.20
    212p ¥735 C0233 (2019.05.13読了)(2009.04.29購入)(2006.10.10/4刷)
    副題「何が問題なのか」

    【目次】
    はじめに
    第1章 格差の現状を検証する
    1 所得から見る格差の現状
    2 日本の不平等を国際比較する
    3 深刻さを増す日本の貧困
    4 統計に表れない格差の存在
    5 格差は「見かけ」なのか
    第2章 「平等神話」崩壊の要因を探る
    1 長期不況と失業の増大
    2 雇用に広がる格差
    3 所得分配システムの変容
    4 構造改革の何が問題なのか
    第3章 格差が進行する中で―いま何が起きているのか
    1 新しい貧困層の様相
    2 低所得労働者が意味するもの
    3 富裕層の変容
    4 地域格差の実態
    5 奪われる機会の平等
    第4章 格差社会のゆくえを考える
    1 格差拡大を容認しても大丈夫なのか
    2 貧困者の増大がもたらす矛盾
    3 ニート、フリーターのゆくえ
    4 階層の固定化と人的資源の危機
    5 格差をどこまで認めるのか
    第5章 格差社会への処方箋―「非福祉国家」からの脱却
    1 競争と公平の両立
    2 雇用格差を是正する
    3 地域の力を引き出す
    4 教育の機会を奪われない
    5 急がれる貧困の救済
    6 税制と社会保障制度の改革
    7 「小さい政府」からの脱却
    あとがき

    ☆関連図書(既読)
    「競争と公平感-市場経済の本当のメリット-」大竹文雄著、中公新書、2010.03.25
    (「BOOK」データベースより)amazon
    低所得労働者の増大、新しい貧困層の出現、奪われる機会の平等…。教育や雇用などあらゆる場で格差が拡大するなか、いま日本社会に何が起きているのか。格差問題の第一人者である著者が、様々な統計データによって、格差の現状を詳細に検証し、不平等化が進行する日本社会のゆくえを問う。格差論の決定版。

  • さまざまな統計データを示して、現在の日本の格差の実態に迫った本です。

    日本の経済格差は明らかに進行しており、ヨーロッパはおろか「小さな政府」をめざしているというイメージの強いアメリカにくらべても、格差が小さいとはけっしていえないという主張が提出されています。

    本書や『日本の経済格差―所得と資産から考える』(岩波新書)での著者の問題提起に対しては、大竹文雄による批判があり、さらに佐藤俊樹数土直紀などによって議論の地平そのものが掘り下げられていきましたが、そうした舞台そのものを用意したという意味では、大きな意義があったといってよい本ではないかと思います。

  • 735円購入2010-07-08

  • 2006年の本

    ・絶対的貧困: 生活できないレベル、所得で閾値を決めて算出
    ・相対的貧困: 平均年収と比べて何%以上低い
    ・日本はOECDのなかでも3位。15.3%。平均年収の半分以下の人
    ・格差拡大の要因は、非正規の増加(社会保障料が安い

  • 格差があって何が悪い?という声があるが、この本を読むと日本がだんだんと今までとは違った国に向かっていくような感じにとらわれる。広く国民のコンセンサスをとっていかなければ、気がついた時にはもう取り返しがつかなくなるのではないか。

  • 2017/09/29

  • 3.5
    格差の何が悪いのかをある程度の数字を用いて、述べられている。筆者は、2006年時点の小泉内閣あたりで、小さな政府になっており、十分な救済になっていないという意見。経済効率を高めるためには、貧富の格差が拡大するのはやむを得ないという考え方は、「収穫逓減の法則」で説明でき、有能な人に高い所得を与えたとしても、それから得られる経済効率への効果はある程度の限界がある。貧富の格差が広がってもセーフティネットを確立させて、敗者・貧困者を救えばよいというが、実際にはそうなっていないとのこと。どこでバランスをとるか考えていく必要がある。なかなか面白い。

  • レビュー省略

  • タイトル通りの内容。経済学の立場から論じられているので、説得力があります。ただ、ところどころ論拠の弱いところがあります。この辺りは、読者として考察できると、おもしろいのだろう思いました。著者の意見と比較的近い考えのため、受け入れやすかったです。

  • 本書は非常に分かりやすい構成を取っている。具体的には「格差の現状の提示(データで示す)→その要因→格差社会の日本社会への影響→格差社会の進行によって起こる問題点→では、どうすべきか?(処方箋)」というように、順序立てて分かりやすく論が進められているため非常に理解しやすい。

    この本から分かることは、この本が出版された2006年当時においては格差社会は確かに進行しているということだ。ただ著者は格差社会の問題点を指摘しているものの、根拠としては特に目新しいものはないように思え(もっとも、この本を読んでいるのが2016年とかなり時間が経って格差が当たり前になってしまっているからかもしれないが)、その点についてはやや残念。もっともこういった問題は誠実な語り口が求められるがゆえのことなのかもしれないが、もう少し新たな視点が書かれていればもっと面白かったかなと思う。また、たとえば「p161 北欧のような高福祉・高負担社会の実現も工夫によっては可能」と書かれているが、その根拠も曖昧だろう。北欧国家の体制の問題点にも言及されていない(ページ数の都合もあるだろうが)。

    様々な意見を言うのは簡単だが、ただ意見を言っているだけという人も多いと思われる。たとえば本書は次のように指摘している。「p203 日本社会では、一般的に、次のような認識が広く存在しています。日本は税金が高く、社会保険料も高い。にもかかわらず、国民への社会保障の還元は非常に少ないという認識です。いま見たように、社会保障の還元が最低レベルであることは、統計と合致しています。しかし先述したように、税と社会保障の負担率は、実際には、国際的に見ても低いのです」。では果たして、どれほどの人がこのようなデータによる前提を踏まえて議論をしようとしているだろうか?そうした日本社会の現状(とは言え2006年当時のものだが)を知るという意味では本書は役に立つものと考えられる。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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