格差社会: 何が問題なのか (岩波新書 新赤版 1033)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310334

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  • ~格差の拡大は日本の高齢化による「見かけ上の問題」とする見解を2006年一月に内閣府が公表した
    ~この内閣府の見解をめぐって、「格差が拡大しているのか」や「格差が見かけにすぎないか」について再び論争が続いていた
    ~小泉首相が国会で「格差はどの社会にもあり、格差が出ることは悪いことではない」と「成功者をねたんだり、能力あるものの足を引っ張ったりする風潮を慎まないと社会は発展しない」と端的に表した。(以上、文章内容を参考して自分が作った文書である)
    ーーーみんなの政府? 
    ーーー有権者の政府と有金者の政府?


    ~この本を読んだとき、一つのエピソードを思い出しました。
    ―NHKテレビ放送局が中国の格差について、インタビューをして、スペシャル番組を作成しました。番組の内容は一人の北京の大金もちともう一人の天津へ働いに行く農民工を比較して、日本で格差を宣伝し放送しました。その金持ちは会社の理事長で、大変贅沢な宴会を行い、よいマンションに住み、高い車を持っています。それに対して、その天津で仕事をしている人は小さい部屋を借りて、毎日つらい仕事をしています(ちなみに、その農民工の家が私の故郷の内モンゴルの赤峰市の辺鄙の農村ですから方言で聞くと判ります)。もちろんこれは本当に所得の差があるし、貧富の差も現れます。ーーーしかし、こんなバカな比較をまさか誰か信じているのでしょうか。ーーーここで誰かに皮肉する意味もありませんが、中国の格差を認めないわけでもありません。ただし、この比較の方法は全く間違っていると思います。おそらくこういうふうに考えているのは私だけでなくて、少しでも経済を分かっている人でもこう考えるでしょう。何をする時でも、客観的に論じるのは大切なことです。
    ~この本を読むと、いろんなデータを使って、客観的に日本の格差が大きいということが証明しました。
    ~これから、私は中国の貧困の格差についてのレポートとか論文を書くかもしれないと思って、「格差社会」からたくさん勉強しました。
    ~いい本で、すごく感謝しております。

  • 大学受験小論文のネタ集めに読んだ一冊。
    丁寧で分かりやすい。

  • 『はじめに』
    ・格差は本当に拡大しているのか,見かけに過ぎないのか.
    ・「格差の何が悪いのか」といった考え方が,今日起きている論争の特徴.

    『格差の現状を検証する』
    ・格差を測る指標は,資産,消費よりも,所得を用いる.
    ・ジニ係数(格差や不平等を計測する数値.0が完全平等,1が完全不平等)は,概して上昇している.
    ・筆者の考えでは,貧困者が増加し,かつその人々の所得が減少している.絶対貧困(これ以下の所得だと食べていけない)率は,大都市で2002年が15.7%,地方で10.8%となり,増加傾向にある.生活保護が105万世帯.貯蓄0の世帯が22.8%.
    ・格差は見かけか?高齢者は格差が大きい.その高齢者が増えたため,格差が増えているように見える,が政府の見解.
    ・結論として,日本では,かつてより所得分配の不平等度は高まってきている.次章では,その要因を考える.

    『平等神話崩壊の要因を探る』
    ・格差が拡大した要因として,長期不況の影響.潜在失業率(就活をしていない人の率)と公表失業率(している人)を合わせると,10%は超えている.
    ・非正規労働者の数の拡大.
    ・労働市場の規制緩和.
    ・所得税,相続税など税の累進性が弱まった.
    ・構造改革の何が問題か.格差拡大の根本的原因ではない.しかし,格差拡大を容認し,規制緩和や競争促進の政策により,助長している.もちろん経済の活性化という賛同すべき効果もある.

    『格差が進行する中で』
    ・格差が進行すると,何が起こるのか?

    『格差社会のゆくえを考える』
    ・格差が広がっても大丈夫なのか?
    ・「格差の何が悪い」を小泉首相.経済効率のためにはしかたがないという考え.
    ・貧困者の増大は社会にとってマイナス.労働意欲を失う,労働力を失う,犯罪が増える,社会の負担を増やす,倫理的な問題.

    『格差社会への処方箋』
    ・結果から見ると,経済の効率性と公平性はトレードオフの関係にある.しかし,機会から見ると,公平性を上げることにより,効率性も増す.したがって,トレードオフでは無い.
    ・高所得者が勤労意欲を失わないために,所得税を下げた.本当に勤労意欲をなくすのか?そのような証拠は無い.

    『格差社会への処方箋』
    ・格差をどのようにして是正するべきか?

    ----------以下感想----------
    「格差」とは何か?どのようにして測るか?
    「格差が起きて悪いことがあるのか?」
    という視点.
    皆(私だけかもしれないが)あいまいなまま議論をしていたのではないか?
    また,格差が論じられているご時勢だから,何かあるとすぐ格差に結びつける「偶然に秩序を見る」もあるかもしれない.

  • 法政通信の入学時の課題図書。

    格差社会についてデータを元に分析してあるんだけれど、
    やはり実感とはかけはなれている感がぬぐい切れなかった・・・。
    ただ、教育格差については当事者だけに納得感はあり。

    当事者意識を持てるか持てないかが大きなポイントなのかも。

  • 格差社会について知りたいならまずこの本!
    問題点が非常にわかりやすくまとめられています。

  • 漠然と感じていた「経済格差」がデータと言語化ではっきりとしたものとなった。この本が書かれた当時、日本の貧困率は先進国の中で第3位。経済格差の何が問題なのか、なぜ格差が起きたのか。格差が出るのは悪いことなのか??最後まで読みやすく、考えさせられた。

  • 経済学者の立場から、現代の格差について、その現状と行方を中央省庁や内閣府が行った調査などを用いて解説した画期的な書。

    発行が2006年と、今では古くなってしまったのが難点だが、格差社会をどのようにして乗り越えていくのか、という解決策も提案されているので、一読の価値はある。

    どこの社会にもそれなりの格差は存在する。しかし、どの程度まで格差を容認するかが問題なのであって、日本の現状は十分に問題視しなければならない局面に来ているということを本書を読んで痛感させられた。

  • 今から三年前に書かれた本だけど
    今2009年に問題になっていることが正に指摘されていることに
    すごいなって思った
    当時はちょうど格差社会って言葉が流行りだしたころで
    私はそうなの?実感ないけど。。くらいにしか思っていなかった

    小泉内閣の方針で実力主義な社会になっていったわけだけど
    その結果が今出てきている
    果たしてよかったんだか、、私は失敗じゃないかと思います

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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