古代国家はいつ成立したか (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313250

感想・レビュー・書評

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  • 2011年刊。著者は大阪大学名誉教授。本書は、弥生後期を日本の初期国家形成の端緒とし、その実態を主に考古学的知見から解読。国家や都市の定義は多様で、定義次第の感は残るが、当時の勢力関係の解析は納得しやすい。自説に影響を齎した他者の見解も名前明記で言及する点は好印象。ところで「疑わしきことは自国に有利に」「ほんとにやった悪いことはなおさら自国に有利に」と、歴史研究者を名乗る人物が表紙に臆面もなく書き散らした書を見るにつけ、本書あとがきの「考古学は実証の上に立つ」との言が実に清々しく見える。
    邪馬台国論を含め、それほど新奇な見解は開陳されていないが、若手の研究者の成果(例えば三角縁神獣鏡の製作地につき、西晋説の復権もあるという)も指摘している。雄略朝期の全国規模の墓制・墓地選定で首長系譜の変動が生じている点、継体朝も首長系譜の変動(ただし、雄略朝前の主張の復権らしき事態も想定可能)の点も同様か。

  • 考古学と文献史学から見た古代国家概観。
    邪馬台国の成立前に日本国内に騒乱があったことを考古学の観点からも述べている点に感心した。

  • 邪馬台国については畿内説をとっており、その前提での話の展開になるが、各地の古墳形式の年代や出土品などをもとに考証し、憶測が突っ走ってないので、信頼を置いて読める本だと感じた。

  • この時代の話を最近、見ていなかったので、国家の成立過程について大変、勉強になった。
    考古学の魅力を味わわせてくれる。

  • (欲しい!/新書)

  •  古墳時代を中心とする考古学による古代国家形成論の概説。叙述が平明で過不足なく、研究史・学説史への目配りもあり、現状では古代国家・王権論の最適な入門書だろう。

  • 初期国家論の第一人者である阪大・都出比呂志氏による、
    一般向けの概要書・啓蒙書になりますが、
    非常によくできている概要書だと思います。

    弥生時代~古墳時代~律令(体制)時代と
    時代の古い方から順を追って、章が進んでいく形になっており
    いろんな研究者の意見を参照しながら
    現在の研究成果ではこういうことが推測される
    ということを紹介されています。

    啓蒙書ということを意識されて、
    考古学の本領とも言える土器などの形式・編年については
    触れられておらず、そういった知識がない人でも流れを
    つかめるように配慮されています。

    ただ、どうしても専門的な用語が頻繁に出てきますので
    その点は取っつきにくさを生んでいるかもしれません。

  • 弥生時代から律令制度が整うまでを考古学の立場からまとめたもの。

    政権の中心の変遷が、朝鮮半島の鉄資源をめぐる大陸との友好関係と情勢変化の結果であり、それが古墳の全国的な変動にも見られるとの説明がおもしろい。根拠を示しながらていねいに説明されており、この時代の社会の大まかな動きが見えてくる。

    ・環濠集落は、古代国家ができる前の集団間の争いが激しい時期に誕生することが、世界各地で共通している。
    ・鉄は1世紀代まで北部九州で最も普及していた。楽浪郡を支配していた後漢王朝が「ツクシ政権」を庇護していたため。2世紀末に後漢王朝が弱体化したため、畿内が鉄を運ぶルートを掌握して力を増した(山尾幸久)。
    ・4世紀半ばから5世紀初頭、中国が五胡十六国時代に入って弱体化したため奈良盆地の勢力が衰退し、朝鮮半島の百済や伽耶との友好に積極的な河内の新興勢力が優位に立った。船の埴輪は外海輸送の大型船が活躍した時代を物語る。大阪の法円坂遺跡:5世紀後半の巨大倉庫
    ・朝鮮半島南西部にある前方後円墳は6世紀前半の倭人の墓。百済政権との深い関係を物語る。
    ・各地の有力氏族の権力を誇示する手段だった古墳は、6世紀に中央政権が地方行政組織の長である国造を任命するようになって意味を失い、急速に減少した。
    ・6世紀末の大王クラスの首長墓は、前方後円墳に代わって方墳が採用された(用明陵古墳、推古陵古墳、石舞台古墳)。北魏の制度のまねと考えられ、仏寺の建立を伴う。

  • 日本列島で「国家」はいつ成立したのか。それを解き明かす一つの鍵が考古学の成果にある。集落の構造、住居間の格差、富を蓄えた倉庫の様子など、社会構造の変遷を追っていったとき、邪馬台国は国家なのか、倭の五王の頃はどうか、あるいは7世紀以降の律令体制を待つのか……。諸外国の集落との比較も交え、わかりやすく語る

  • この本超面白い

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著者プロフィール

1942年大阪生まれ、68年京都大学博士課程中退 京都大学助手 滋賀大学助教授をへて大阪大学教授 1989年浜田青陵賞受賞、『王領の考古学』(岩波新書、2000年、『前方後円墳と社会』塙書房、2005年他多数

「2018年 『古墳時代に魅せられて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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