- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041019245
感想・レビュー・書評
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こういう設定ってみんな一回は考えたことあるんじゃないですかね。ワクワクするし夢があるけど整合性がとれなくて設定自体が破綻してしまうようななんでもありな世界。
それを敢えて書いてしまう恒川氏は称賛に価すると思います。幻想的な作風のファンからは攻撃くらうと予想できたでしょうしね。
虚言癖の男のところ、リアルでよかったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
主人公、斉藤夕月はおかしな男にくじを引かされた。
当たったのは「スタープレイヤー」。
気づけば、そこは地球のようでそうではない世界。
10の願いを叶えられる世界。
あなたなら、私なら、その願いを何に使う?
大金持ち?
絶世の美貌?
最高の頭脳?
具体的な願いならほぼ何でも叶う。
さあ、何を願おうか?
スタープレイヤーは一人ではない。だから社会ができていく。
すると願いは自分だけのために使うものではなくなってくる。
あるものは戦を望み、あるものは平和を願う。
それぞれに理由がある。
その時自分が欲しい、それがいい、と思ったことしか願いは使えない。
未来のこと、長期の展望、たとえ考えていたとしても、今は今。
そして、そうやってできた社会で望みを叶えるには10個はあまりにも少なすぎる。
けれども、現実、スタープレイヤーではない私たちの星の数は決まっていない。
失ってしまったものは手に入れられない。
亡くなってしまった人は呼び戻せない。
悲しみは、消せない。
スタープレイヤーのような神のごとき力を私たちは持ち合わせてはいない。
だからこそ、社会があり、人がいるのだ。
力を合わせれば、星など使わなくても叶えられる願いはたくさんある。
自分一人で考えていたよりもずっといいものが出来上がる。
フルムメアはなぜスタープレイヤーを選んだのだろう?
その答えは書かれてはいない。
この宇宙を統べる存在がプレイヤーを使って遊んでいるのかもしれない。
そう考えることもできるが、私はそうではない、と信じたい。
何度でもやり直すために、より良いものを作るために、彼らは選ぶことをしたのだと思いたい。 -
期待したんだがなぁ
10の願い。最後の願いはなんにしたんだろう? それ楽しみにしていたけど、ピタッと決まった感じがなくて続きは続編でって終わりかただった。あまり冴えないバツイチおばさんが主人公だから乗らなかったのかなぁ。さくっと読めるから、続編も読んで見ようっと。 -
続きが気になる。一気に読みました。
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最初はライトノベルのような作風で相当ガッカリしたが、案外スルスル読み終えてしまった。面白かったです。自分ならどのような願いを叶えてもらうか考えながら読んでしまった。
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RPGっぽいファンタジー、現実世界とは完全に切り離された物語。
普通、異世界に飛ばされたら、元の世界に戻ることを目的にすると思うのですか、そうでないところが面白い。
人間の欲望は愚かで醜く…でも読んでいて本当に酷い人は出てこないし、みんな素直で純真。悪役のこともそれほど悪く描写してないし。死が意味がないから、誰も悪くないように感じたのかも。ご都合主義だなと思わなくもないけど、読み心地は良い。何もかもを与えられた人はこの後どうしていくんだろう、というのは、現代人にも言えることかも。
最後までどこか夢見ているような、万能だった主人公が、地に足がつくのかつかないのか、ふわふわとしたままのラストも、個人的にはいいと思いました。 -
自分の願いを〈審査が通れば〉何でも10個叶えてくれるスターを手に入れる。っていうシンプルな設定。自分の願いのためにどうスターを使うか。
自分の富や容姿に使う者も居れば、国家を形成したり戦争を起こす者もいる。
見た感じからもうちょっとファンタジーな感じを想像してたんだけど、意外にリアルな世界観でびっくりした。願いはどんどん付け加え、一つの願いに多くのものを望むことがが出来ることもあって、スターに依存してしまうと恐ろしい結末に!主人公は早々に自分を絶世の美女に変えてしまうけど、34歳無職なんだよな…って思うと複雑、笑。スタープレーヤーの勝手な願いのためにたくさんの人が苦しんでいる。正解は何かわからないし、常識も倫理もその域を超えているのはわかる。とりあえず、自分ひとりのためじゃなく、みんなのために願うことは難しいなぁと思った。 -
B++
恒川の新刊だったから -
34歳バツイチ無職の斉藤夕月。ある日、突然現れた男にくじを引かされると一等を当ててしまう。そして気がつくと彼女は異世界へと飛ばされ、10の願いを叶える力を持った”スタープレイヤー”となったことを告げられる。
夕月がバツイチ無職となった理由は、なかなか暗いものがあります。住居や日々の食糧問題など生活の不安をまずは解消した後、彼女はそうした恨みを解消するため願いを使います。
しかし後半、徐々に彼女の世界が広がっていきます。自分以外のスタープレイヤーとの出会い、異世界の住民との出会い、そして異世界での紛争などの問題に積極的に関わるようになっていくのです。そして、それを通じて徐々に彼女の願いの種類も変わっていきます。
それは彼女の内面の変化を表しているように思います。人生の失敗や暗いところに囚われていた女性が、新しい世界を知ることで徐々に前向きに、そして人のために願いを叶えていくようになります。
力を持つものは何をしなければいけないのか、力を持つものとしての責任とは何か、そうした人の善の部分が徐々に強く語られていくのです。
そうした人の暗い部分と明るい部分に光を当てつつも、ファンタジーとしての世界観の作りこみもしっかりとされています。現地人の生活の様子や勢力争い、他のスタープレイヤーによってこの世界に連れてこられた地球人たちの物語もしっかりと織り込み、さらにシリーズの今後を感じさせる伏線も触れられていて、今後もこの世界はどんどん広がっていきそうです。
幻想色の強い作品が多かった恒川さんの作品の中で、こういう王道ファンタジーは珍しいですが、これまでの恒川さんの作品と並行して、このスタープレイヤーの世界の広がりも期待していきたいと思いました。