新装版 人間の証明 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041753606

感想・レビュー・書評

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  • 「母さん、ぼくのあの帽子どうしたでせうね?」

    子供の頃、角川映画が大流行りだったころにCMでよく
    流れてたのかな?
    このセリフだけすごく覚えてるのですが、
    内容の記憶が薄く読んでみました。

    読み始めるといきなり興味をひかれる事件が発生。
    その後いくつもおよそ無関係と思われる出来事や人物が登場し、
    それらにどんどん引き込まれていきます。

    例えば松本清張などは大筋はともかく本を読むと、
    書き方でしょうか・・・古臭さは否めません。
    しかしこちらは同じ何十年も昔の作品とはいえ、
    そう古臭さを感じず読めましたね。
    面白かったです。

    ラストはそこまで結びつけなくとも・・・
    と、思うほど見事に全てがつながります。
    不自然さはないのですが、
    逆にそこが現実ではなく小説っぽく感じました(笑)

    証明シリーズは他にもあるので、
    今更ですが、もう少し読んでみようと思います。

  • 東京の高級ホテルでアメリカ人が刺殺された。ちょうど同じ頃、一人のホステスが行方不明となる。
    アメリカ人殺人事件を追う日米の刑事、ホステスを追う夫と不倫相手、そして逃亡者たち。散在する各々の経路が交錯し、全てが繋がってゆく。
    昭和後期の日本を舞台にした上質のサスペンス。

    この作品の良さを以下の3点にまとめた。

    1.プロットが秀逸
    これほど複雑に絡み合っていて、最後にすっきりまとまる作品はないだろう。

    2.テーマが揺るがない
    人間性を我々が持っているという主張が小説に一貫して流れている。それは犯人もそうだし、猜疑する刑事たちもそうだ。全ての行動に裏付けがあり、その人物の歴史が垣間見える。だから、現実味がある。

    3.文章が美しい
    その言い回しの端々に著者の美学を感じる。非常にわかりやすく、心地よいリズムの文章である。


    動機もよくわからない変質者を犯人として登場させ、自己満足している小説家さんには是非とも読んで頂きたい。
    そんな上質のサスペンスでした(・∀・

  • ≪内容覚書≫
    スカイレストランへ登るエレベーター内で黒人男性が、死亡した。
    胸に深くナイフを突き立てたまま、最上階を目指した彼は、
    いったいそこに何を求めたのか。

    犯人を探し、日本と米国双方が刑事が、殺された男の足跡をたどる。

    被害者、犯人、刑事。
    それぞれの思いが交錯する中、人間らしさとは何かを問う1冊。

    ≪感想≫
    推理小説としては、展開が無理やりなところはあると思うが、
    この作品を、「人間らしさ」とは何かを問うものと考えれば、
    そんなものは些細な問題として流せる。

    登場人物が絞られているおかげで、
    混乱することなく読めるが、その分役割が読みやすい。
    推理小説としては、そのあたり、物足りなさが残った。

    その代り、愛憎は表裏一体、というのを見せつけてくれる作品。
    人間を憎みながらも信じたかった刑事。
    息子との再会を喜びながらも憎しみを抱いてしまった母親。

    愛があるからこそ、愛を求めるからこそ、
    憎しみが生まれるんだろうと実感。
    感情が理解しやすく、移入しやすい。

    ただ、さて、じゃあ、母に裏切られた時、
    それを受け入れて仕方ないと思えるほど、
    母を愛しているかと問われると、正直、分からない。
    ジョニーの母への思いの強さに心が打たれた。

    また、それ以上に、随所にちりばめられたニューヨークの問題や、
    日本の民族性に関しての記述が興味深かった。

    様々な人種が集まるアメリカと違い、
    単一民族(一応)で構成される日本の
    その結束力の話は説得力があった。
    確かに、一応、みんな日本人で、
    外見もそれほど変わらないからこそ、助け合える気がする。
    「外人」を、なんとなく避けてしまうのは、
    他国でもあることなのかな、と思う。

    きれいごと、なような気もしなくもないが、
    現代の問題をいろいろ見せてくれた良い作品。

  • まずはRIP。最近多いなぁ。。。と思うのは当方もアレに近づいている証か。。。
    ともあれ再読しました。
    人間の描写に主題があったのかもしれませんが、どうでしょう、設定・ストーリー展開が粗すぎる、正直。いわゆる時代であり、サスペンスの進化を感じさせてくれます。
    また、進駐軍に関わる設定がここでも。その時代を知らずに現在を生きる人間は相応の想像力を働かせないといけないですが、こういった具合に小説の素材になる、ましてや人間とは?を問いたい作品に登場するくらいなので、当時に生きた人々への衝撃度は功罪ともにかなりのものだったんですね。改めて考えさせられます。

  • 子どもの頃に映画の宣伝がテレビでしきりに流れていて、「母さん僕のあの帽子どうしたでしょうね〜」だけが印象に残っていた。西条八十だったのか。しかし作品の内容についてはまったく何も知らず、先日、森村誠一さんが亡くなったのをきっかけにようやく読了。

    複数のエピソードがぽんぽんぽんと出てきて、これがいったいどこと、誰と、どう繋がっていくのかと思いながら読み進める。すべてがちゃんと納まるところへ収まっていった。すごい。
    ニューヨークについての描写がなんというか容赦なさ過ぎて、ひえー、と思う。
    映画では設定がだいぶ変わっていたようだった。棟居さんは松田優作がやっていたのか。

    新装版の解説は横溝正史。

  • またもや大きな勘違いをしていた。やはりこの題名のせい。

    推理小説だったのですね…

    何となく松本清張を思わせるような雰囲気。それなりに面白く読んだけど、プロット的にはもっと練れても良いようにも思われる…

  • 森村誠一と横溝正史は、なぜか頭の中でセットになっている(笑)
    よって、つい比べてしまうのは仕方ないことなのか、ひと言で言っちゃうなら、横溝正史の代表作にあるような「あの哀しさ」がない。
    そこが、なぁーって感じ。

    東京をメインに霧積温泉からNY、さらに富山の八尾と、こんなに舞台が広がるミステリー小説、今ないよなぁーというあたりはとてもいいと思うし。
    本筋とは全然関係ないひき逃げ事件をからませて読者の目をくらませる手法なんかも、すごく好き(笑)
    …なんだけど、浅間嶺で死体が見つかったいきさつをキャラ設定も含めごちゃごちゃ書くくらいだったら、その母と子、それぞれの哀しさ、そして霧積温泉に行った時の憧憬をちゃんと描いてよ!と思ってしまうんだよなぁー。
    だって、それがなかったらひき逃げ事件、いらないじゃん。
    目くらましが好きと書いておいて何だが、ひき逃げ事件のエピソードは2人の子供の人生の対比が描かれることで生きてくると思うんだけど。

    くどいようだけど、森村誠一と横溝正史はセットになっているみたいなところがあって。
    つまり、読み終わった後、「これ、横溝正史が書いていたらなぁー」と思ってしまったというのはいくらなんでも失礼すぎ?w

  • 2019_01_28-009

  • 43年前の本とは思えない人間の本質をえぐる本

  • どんどん手繰り寄せられていく。
    遠い糸も出どころは同じ。

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著者プロフィール

森村誠一
1933年1月2日、埼玉県熊谷市生まれ。ホテルのフロントマンを勤めるかたわら執筆を始め、ビジネススクールの講師に転職後もビジネス書や小説を出版。1970年に初めての本格ミステリー『高層の死角』で第15回江戸川乱歩賞を受賞、翌年『新幹線殺人事件』がベストセラーになる。1973年『腐触の構造』で第26回日本推理作家協会賞受賞。小説と映画のメディアミックスとして注目された『人間の証明』では、初めて棟居刑事が登場する。2004年に第7回日本ミステリー文学大賞受賞、2011年吉川英治文学賞受賞など、文字通り日本のミステリー界の第一人者であるだけでなく、1981年には旧日本軍第731部隊の実態を明らかにした『悪魔の飽食』を刊行するなど、社会的発言も疎かにしていない。

「2021年 『棟居刑事と七つの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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