- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943869
感想・レビュー・書評
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面白い。兎に角、貫多のクズっぷりが素晴らしい。著者の卓越した文章力と類まれな用語センスが相まり、どうしようもない人間の底辺も底辺な負の感情を、嫌悪感を超越した、大正や昭和初期のような雰囲気を持つ回顧主義的作品に仕上げている。赤塚不二夫作品のような、古めかしくもナンセンスでエキセントリックな、日常を描いているが非現実的物語といえばよいか。「どうで死ぬ身の一踊り」と比べると文学性はやや劣るが、漫画的な私小説の面白さがある。
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短篇集。しかし不潔で臭いのしそうなエピソードばっかり集まっている気がした。どうしようもない怠惰でクズな主人公という風に見せているが、けっこう自分のことをここまで客観的に書くことは難しい。露悪的な感じはあるが、ごまかさないでさらけ出している。読者は彼のナルシシズムや身勝手さを完全に否定出来ない。
ふと思ったが、彼の作品は結局は、自業自得・因果応報という世間の思いにそった終わり方をするのが人気の原因かと。読者も主人公のことを完全に突き放せない状態のままで、主人公にふさわしい顛末を迎えるので他人ごとではなく身につまされる読後感を抱くのではないかと。 -
西村賢太の作品は最悪に面白い。内容はこのうえなく下品で最低、結末も救いの無いものが多い。ところが妙に知性を感じさせる文体、淡々とした描写が一種ユーモアじみた趣を醸し出し、不快とも爽快ともつかない不思議な読後感を残してくれる。更に掘り下げたい作家。
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病的にクズ過ぎて、もはや愛しいレベル。
女子としては、自分のセックスにちょっと自信がなくなるし、ちょっと傷つく。 -
話題の作家で、しかも薄いということで、読んでみた。
こんな人間には近づきたくない、近づかれたくもない。豊崎由美の前のめりの解説がすべてを語っています。 -
ここら辺が一番面白い。
アパートの老家主とのひと悶着のやりとりは飽きさせないものがある。
後は刑務所前の施設の話が興味深く、体験したものがわかる世界が広がっている。 -
目次を眺めるだけで嫌になる小説もそうそう無いだろう。そんな中で曇天の隙間から顔をのぞかせた青空のようなタイトルがひとつ、「春は青いバスに乗って」。どんなバスかと思えば、あぁ・・・という感じ。腋臭風呂とかもう温泉や銭湯へ行くのが怖くなる。
本小説では、青春時代の話で構成されているが、たまに見せる謙虚なところや、何の根拠も無いのに妙に楽天的なところが何ともプリティ。先に挙げた「春は青いバスに乗って」などと言う一見滑稽ささえ感じるタイトルも、妙にしっくりきている。著者の生命力にただただ感服するばかり。 -
201102
他の方のレビューにもあるように、エッセイと紙一重。の私小説短編集。
一冊読めば充分という向きもあるだろうけど、
豊崎さんの解説にもあるように、
「話の展開は似ていても、そこに現出しているみっともらしさは常に新しい」
と、他の空白の時間も知りたい、と癖になりつつ、あります。
ひんるの沼 17歳
潰走 16歳
春は青いバスにのって 25歳
腋臭風呂 18歳⇨40歳くらい
夢想
買淫
逆恨み
後悔
あざましさ
愚かしさ
いじましさ
厭らしさ -
この短編集には、彼が偏執的に愛する藤澤清造絡みの話はほとんど出て来ず、それより過去の話、彼の青春時代の話が中心だ。まさに表題通りに、生き恥をさらした若き日々の様子が相変わらず赤裸々にあっけらかんと語られている。偽悪的な計算なのか、天然なのか、苦々しい本心なのか。まあ、そのすべてであるのだろうなあ。