二度はゆけぬ町の地図 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043943869

感想・レビュー・書評

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  • 面白い。兎に角、貫多のクズっぷりが素晴らしい。著者の卓越した文章力と類まれな用語センスが相まり、どうしようもない人間の底辺も底辺な負の感情を、嫌悪感を超越した、大正や昭和初期のような雰囲気を持つ回顧主義的作品に仕上げている。赤塚不二夫作品のような、古めかしくもナンセンスでエキセントリックな、日常を描いているが非現実的物語といえばよいか。「どうで死ぬ身の一踊り」と比べると文学性はやや劣るが、漫画的な私小説の面白さがある。

  • 「二度はゆけぬ町の地図」西村賢太
    読み終わりました

    二度はゆけぬ町の地図という一つの物語ではなくて、短編4つの構成になっていた。
    西村賢太といえば、テレビやネットで見た印象では、あまり清潔な作風ではないのかなという感じを受けたのだが、例に漏れず本題や短編のタイトルどおり、どこか気味の悪い作品だった。
    だからといって作品が面白くないわけではなく、薄気味悪さ、不気味さなどがある中でも、所々に笑える部分があったりなど、サクサク読み進めることができた。

    内容は、ふしだらな生活を続ける男の生活を描いたものである(西村賢太自身を投影している?)
    典型的なダメ人間である主人公が日雇いで稼いだお金をその日で使い切り、家賃を払わなかった(払えなかった)り、バイト先の先輩を殴って留置所いきになったなどクズさがいかんなく表現されているこの作品はなんとなく本質的な部分で真面目系クズである自分に似ているなと思った、もっともこの作品の主人公はクズ系クズと表現するのが妥当であると思う。

    なかなか面白かった、西村賢太の違う作品も読んでみることにする。

  • 短篇集。しかし不潔で臭いのしそうなエピソードばっかり集まっている気がした。どうしようもない怠惰でクズな主人公という風に見せているが、けっこう自分のことをここまで客観的に書くことは難しい。露悪的な感じはあるが、ごまかさないでさらけ出している。読者は彼のナルシシズムや身勝手さを完全に否定出来ない。
     ふと思ったが、彼の作品は結局は、自業自得・因果応報という世間の思いにそった終わり方をするのが人気の原因かと。読者も主人公のことを完全に突き放せない状態のままで、主人公にふさわしい顛末を迎えるので他人ごとではなく身につまされる読後感を抱くのではないかと。

  • 西村賢太の作品は最悪に面白い。内容はこのうえなく下品で最低、結末も救いの無いものが多い。ところが妙に知性を感じさせる文体、淡々とした描写が一種ユーモアじみた趣を醸し出し、不快とも爽快ともつかない不思議な読後感を残してくれる。更に掘り下げたい作家。

  • 病的にクズ過ぎて、もはや愛しいレベル。

    女子としては、自分のセックスにちょっと自信がなくなるし、ちょっと傷つく。

  •  話題の作家で、しかも薄いということで、読んでみた。
     こんな人間には近づきたくない、近づかれたくもない。豊崎由美の前のめりの解説がすべてを語っています。

  • ここら辺が一番面白い。

    アパートの老家主とのひと悶着のやりとりは飽きさせないものがある。
    後は刑務所前の施設の話が興味深く、体験したものがわかる世界が広がっている。

  •  目次を眺めるだけで嫌になる小説もそうそう無いだろう。そんな中で曇天の隙間から顔をのぞかせた青空のようなタイトルがひとつ、「春は青いバスに乗って」。どんなバスかと思えば、あぁ・・・という感じ。腋臭風呂とかもう温泉や銭湯へ行くのが怖くなる。
     本小説では、青春時代の話で構成されているが、たまに見せる謙虚なところや、何の根拠も無いのに妙に楽天的なところが何ともプリティ。先に挙げた「春は青いバスに乗って」などと言う一見滑稽ささえ感じるタイトルも、妙にしっくりきている。著者の生命力にただただ感服するばかり。

  • 201102
    他の方のレビューにもあるように、エッセイと紙一重。の私小説短編集。

    一冊読めば充分という向きもあるだろうけど、
    豊崎さんの解説にもあるように、
    「話の展開は似ていても、そこに現出しているみっともらしさは常に新しい」
    と、他の空白の時間も知りたい、と癖になりつつ、あります。

    ひんるの沼 17歳
    潰走 16歳
    春は青いバスにのって 25歳
    腋臭風呂 18歳⇨40歳くらい

    夢想
    買淫
    逆恨み
    後悔

    あざましさ
    愚かしさ
    いじましさ
    厭らしさ

  • この短編集には、彼が偏執的に愛する藤澤清造絡みの話はほとんど出て来ず、それより過去の話、彼の青春時代の話が中心だ。まさに表題通りに、生き恥をさらした若き日々の様子が相変わらず赤裸々にあっけらかんと語られている。偽悪的な計算なのか、天然なのか、苦々しい本心なのか。まあ、そのすべてであるのだろうなあ。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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