世界屠畜紀行 THE WORLD’S SLAUGHTERHOUSE TOUR (角川文庫)
- KADOKAWA (2011年5月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043943951
感想・レビュー・書評
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内澤さんの屠畜への興味、そして敬意が粘り強い取材活動と率直な文章、イラストに溢れ出ている一冊。
肉食や屠畜など今の食生活についても考えさせられると同時に、その食生活を支えてくれている多くの職業人の実情も詳しく書かれている。
屠畜を通じた文化人類学の書でもある。
これはバイブルに認定。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
10年かけて取材しつくした感じ(・ω・)圧巻の文章力と知識!屠畜について、世界から日本から突き詰める内澤さんのアプローチの姿勢に感動!
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(推薦者コメント)
肉を食べるとき、その肉が元々生きていた動物であったことを私たちは意識しているだろうか。誰しも一度は考えたことがあると思うが、どうやって屠殺が行われているのかを分かっている人はほとんどいないだろう。本書は、世界の屠畜の現実をまじまじと見せつけてくれる。 -
読みながら落ち込んでしまった。でも面白い。
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大事な部分は隠されるか、ぼやけさせる昨今ですが、この本はそんな世界にかかったモザイクの一部を外しにかかっている。肉食だろうが、草食だろうが、生命を喰らう者として読んで良かった。
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実に興味深く、面白かった。ぜひ続編も希望したい。
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まだ読み途中だけども、どうもペースがあがらね。内容は興味深いし見聞きしたものを描写している分にはいいんだが、著者が自分の感想や考えを述べるとどうにももやる。
なんだろうなあ、タブーや恐怖、忌避、差別を文化的宗教的な側面から探り、差別はよくないって言いたいんだろうけど、考察の浅さと著者の思い込みが前面に押し出されて、こいつが一番差別主義者なんじゃねえかとの印象を受ける。無理に差別させて、それを非難したい的な?
気持ち悪い。
最後まで読んで、感想に変化があれば続きを。
読み終えて、基本的な感想は変わらず。差別主義者というよりは、自分は特別で変わり者だと思いたいんだな、気持ち悪っと思ったぐらい。
著者の、ちょこちょこ入る無駄な自己顕示を取っ払えば、スマートで分かりやすい屠畜入門書になったかもね。 -
韓国ーバリーイスラムーエジプトーモンゴルー日本と、世界各国のと畜場を回ってのと畜場の様子だけでなく、と畜場を通して見えてくる社会や歴史まで軽く描かれていて面白い。以前の版でも迷っていたが、文庫化されたこともあって、手を出してしまった。
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我々が食べている肉は、はじめからパックされている訳ではないということを、あらためて実感した。
昔は日本でも身近にあったであろう「屠殺」が、現在では全く外からは見えないところで行われている。
しかし見えないだけで、この、命を「いただく」ということを忘れてはならない。 -
軽いタッチでえぐいことを書く。
屠畜に関する情報量もしっかりで、読み応えあり。
何度も読み返して、命をいただくことを噛み締めたい本。 -
人は生き物を殺して生きている。
そんな当たり前のことが「殺す人」が他に居ることで「穢い」、「恐ろしい」ことになっているという現実が、ひしひしと伝わる。
だが、変な話なんだけど、著者自身のスタンスが「肉好き! じゃあ肉が作られる現場を見よう」という、好奇心旺盛の子供のような探究心(悪く言えばお気楽なスタンス)なので非常に読みやすい。
悪く言えば……という風に見られることを著者自身も自覚していて、それでも自分の身の丈で「思うこと」を率直に書いているのがすがすがしい。この人強いなぁ。
続編を書いているとのことなので、それも楽しみ。
肉が好きでも、ベジタリアンでもオススメ。 -
密度が高くてとにかく読ませる。
でも、ヘヴィになり過ぎない独特の軽みが魅力。
お肉を食べるのが嫌になる、ことはまず無い(むしろ逆)。
でも意識は変わる、かも知れない。
これで飼い喰いへと進むのだからスゴイ。 -
イスラム圏の家畜事情とか宗教観とか ひじょうにおもしろかった。
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誰もが読むべき本
もともと差別解放の雑誌で連載していた為差別関連の記述が多いですが、人間が生きるとはどういうことなのかを考えるきっかけになる本だと思う。生き物が死ねことを見えなくしてしまった日本で残酷とか気持ち悪いとかあるとは思うが差別の問題も含め直視した良本 -
今まで知らなかった、気にしていなかった世界。
毎日のように何らかの肉を食しているのにあまりの無知に恥ずかしくなる。
イラスト入りでわかりやすくおもしろい。
もっと前に読んどけばよかった。 -
ずっと気になっていて、なかなか読む機会がなかった。文庫になったので購入したけど、ちょっと後悔。文庫だと肝心のイラストが小さすぎるのだ!電子書籍化を望む!
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面白くて惜しみながらちびちび読んでいました。
著者と同様どうしてこういった職業に差別があるのか
疑問に思っていたので興味深く読みました。
ただその問題について追及しているのではなく
どういった仕事内容なのか著者の好奇心をもって
つまびらかにしています。
非常に面白い。
豚、牛、羊等を捌く様子を細かく描写していて
お肉が食べたくなって仕方なかった。
確かに生でその様子を見たいとはあまり思わないが
どういう工程を経て私たちが食べさせてもらっているのか
どれほど神経を使って作業されているのかを
知ることは必要だと思う。何も知らずに怖いとか
もちろん差別なんてもってのほか。
読んでいて何度も思ったけど、魚(マグロ)の解体ショーは
人気があるのに豚の解体ショーはあり得ないんだよな。
この人の本は2冊目だけど、非常に読みやすく面白いです。
ほかの作品もぜひ読みたい。 -
以前、NHK-AMの深夜番組で著者の方が出演していた。その時に話題に上がっていた本が文庫化されており、待ってましたと言わんばかりに発見と同時にレジへ。
個人的には屠畜について、考えることは少ない。私は自分一人での食事は肉を選ばない習性があるけど、それは別にベジタリアンを気取っているわけでも、動物愛護の観点でもなく、必要性が無いだけ。肉=ご馳走のイメージがあるので、ひとりで食べても楽しくない。皆でなら、焼肉も行く。雰囲気が楽しいから。
自分の話はさておき、当然'肉を食べる'=血が通ってた動物を殺して捌いた結果である事は常々理解しており、だからこそご馳走だと考えるわけなのだが、そこに差別意識がある事を本書で知ってえらく驚いた。本書はその差別を解明しようという筆者の視点が一つの核になっているので、ちょっと斜めから入ってしまった感はあるけれども、それはあまり問題無く、とにかくよく屠畜について描かれており、大変勉強になった。写真も撮らずに、ここまでの描写が出来るとは‥ひとえに筆者の情熱が成せる技。あっぱれ。筆者の作品、別のも早速購入しました。楽しみ。 -
去年からちょこちょこ読んでようやく読了。
『世界屠畜紀行』の名の通り、世界中で動物を屠り、肉を作る現場を取材したルポタージュ。
屠畜を巡る長い長い旅である(著者曰く、まだまだ行きたいところがあるそうで現在続編を執筆中とか)。
本書は『部落解放』という雑誌に掲載されていた連載であり、「日本における屠畜という行為、屠畜という職業に就く人々に対する差別感」に対する疑問がそもそもの執筆のきっかけになっているそう。
しかし私が本書を手に取ったのは部落差別、職業差別に興味があったからではない。
帯の「こうして今日も世界で『肉』は作られる」という文字に引かれただけのことだ。
でもそれこそが著者の最大の狙いだったのだ。
あとがきにこうある。
「本書では、日本はもとより芝浦の屠畜場で働く人々が具体的にどのような差別を受けてきたかの記述は最小限にとどめている。差別を受けた側の立場に成り代わって被差別の歴史を詳しく書くよりも、まず屠畜という仕事の面白さをイラスト入りで視覚に訴えるように伝えることで、多くの人が持つ忌避感を少しでも軽減したかった。」
ああ、まんまとひっかかった。
著者の屠畜と差別感に対する疑問は随所に現れているが、それよりも何よりも「屠畜」に対する関心や愛着が感じられるルポタージュである。
私も著者と一緒に世界中を旅し、楽しみ、自分の中の差別感を見つめるきっかけとなった。
今まで意識したことのない差別感と向き合う。
私はもちろん肉を食べる。
では、食べるために家畜を殺すことは「かわいそう」なことなのか、家畜を殺す人々は残忍で差別されて当然なのだろうか・・・。
最後に、屠畜には差別感だけではない他の様々な社会問題をも孕んでいる、ということを示唆しながら本書は終わっている。
続編に期待が膨らむ。 -
筆者がアメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄。世界の屠畜現場を徹底取材して書かれている本書には各地の「お国柄」というものがにじみ出ておりました。
僕も前から何度も食肉を作る過程を扱った本をいくつか紹介してきて、動画サイトでそういう様子を見ていても、やっぱり平然と肉を食べることができるのは、この本の作者とどこか似通った感性を持っているからではないかと勝手にそう思っています。この本のあらずじは
「食べるために動物を殺すことをかわいそうと思ったり、屠畜に従事する人を残酷と感じるのは、日本だけなの?他の国は違うなら、彼らと私たちでは何がどう違うの?」
という筆者の疑問に端を発し、アメリカ、インド、エジプト、チェコ、モンゴル、バリ、韓国、東京、沖縄国内外の屠蓄の現場を訪ね歩き、詳細なイラストと、文章でつづったものです。この本を読んで、屠蓄のやり方、というものは国や民族によって、『お国柄』というものがすごく出るものなんだなと実感しました。
特にモンゴルの羊のつぶし方は長年の伝統で、こういうものが脈々と伝わっているんだなということに感動を隠せませんでした。そして、日本。東京は品川にある芝浦食肉加工場にも筆者は取材を敢行し、一体の牛や豚が屠蓄され、解体されて肉となり、皮革製品をつくるための革となり、ホルモンとなっていく様子をレポートしております。そこで展開されているのは目を見張るような職人芸で『仕事が人間を創る』という教えは本当なんだなと確信を深めたしだいでございます。日ごろ、僕らがおいしくいただいている、肉。それがいかにしてできるのか?今だからこそ、知っておかなければいけないことのひとつだと確信しております。 -
世界のあらゆる屠畜の様子を紹介しています。
牛/豚/羊/犬/ラクダまで!!
正直、かなり生々しい表現も満載で、想像するだけでお肉はちょっと・・・となりそうなものやけど
それ以上に
肉が食べたい!!と思わせる文章力がすごい!!
ひとえに筆者の取材対象への愛がそうさせるのだなと感じます。
根性と愛情に満ちた1冊
イラストも魅力的!
身近なことのはずやのに知らないことだらけでワクワク感も半端ないです。
物事を公平に、そのものを伝えるってめちゃくちゃ難しいことやなと感じます。
おすすめ! -
タイトルどおりに世界の屠畜現場をルポ。
まずは詳細なイラストに目を奪われます。淡々と精密に描いているのですが、どこかユーモラスでもあり。内臓グッチョリなものが多くても、決してグロさは感じられない。
屠畜の「技」を紹介すると同時に、現場に関わる人たちへの差別問題に触れることがしばしば。
うーん、素晴らしい著書だとは思うけど、正直タイトルに求めていたものとはちょっと違う。もっと「モンド」な視点で語る方が、僕は逆に考えさせられたりするんだけど。 -
素晴らしい本だった。
牛や豚や鶏など肉を食べている人でも、
なぜ屠畜(家畜を殺して肉にすること、屠殺とも)を気味悪がるのか、
という根源的な問い。
命をいただくという行為の奥深さ。
主張の全てに同意できるわけではない。
けれども、取材姿勢と、豊かなイラストと正直な文章による表現が胸を打つ。 -
なぜ屠畜に携わる人が差別されるのか、を考える上で大事な本。
この本を読んで「俺は差別しないけどなぁ」と思っている自分の心にこそ、別なものに対して差別したい心が潜んでいるような気がしている。
その差別したい心を偽って「私は差別しません!」と言ってしまうことこそ最悪なんであって、必要なのは、差別したい対象に直面した時にどういう態度をとるかなんだと思う。
差別したい対象は、嫌いな人と同じように、突然お付き合いしなければいけないこともあろうから。 -
傑作。スゴイ。面白くて続けて2回読んでしまった。
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今までずっと詳しく知りたかったことが書いてあり、とても面白く読めた。
イスラム世界やアメリカ、インド、韓国、そして日本でどのように家畜が「屠畜」(屠殺)されているのかを分かりやすく、面白く(?)伝えている本。
イラストが詳細で、それでいて温かみがあって残酷さはあまりない。
文章が屠畜の様子をある意味浮つきながら面白がっているようにも見えるのが少し嫌だった。
その分最後の最後で、著者が自分で鳥の死体から羽を毟るところでの落ち着いた視点は興味深かった。
命をいただくことへ責任感や罪悪感を過度に感じてしまうのが日本人なのだろうか。
屠畜を行う人への差別のようなものもないつもりでいたし、肉食も否定していないし、ベジタリアンでもないが、この本を読んでいる間は肉を食べる気にはなれなかった。
直接見えなくでも、ゼラチンやスープの出汁、その他もろもろの食品に使われているのだから口にしていないということはないが……。
差別の歴史や、その反抗がどのように行われてきたかは意図的に省かれているようだが、次刊では詳しく触れてほしいと思う。
屠畜だけでなく、乳牛や卵の生産にも思うところはあり、これらも含めてじっくり考えていきたいと思う。 -
川西能勢口の田村書店の古書の部で購入。540円
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2011年6月21日購入。未読。
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タイトルにひかれて「世界朝食紀行」みたいなつもりで読み始めると、中盤からどうも違和感が。各地の屠畜をきっちりルポしてみせてるのだけど、そこからの考察パートが、軽いと重いの間で迷ってるようで、読み手側もふりまわされてしまう。文庫版あとがきをみると著者もその点はわかっているようなので、現在書いているという続編がどのようにシフトしたものになるのか気になるところ。