サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫 こ 1-1-1)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年5月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044743017
感想・レビュー・書評
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河野裕先生作「サクラダリセット」。超能力者が集まる咲良田町で繰り広げられる、ヒューマンドラマをメインとした作品は、全体を通して透明感が漂っており、苦しさすら覚える薄さです。空気が薄い、とはこのようなことなのか、と思うような読後感でした。
何が面白いのか、と問われると難しいのですが、私が良かったと思えるのは主人公の感性と能力の合致です。主人公は「絶対に忘れない」という能力を保持しており、パートナーの「リセット能力者」と協力して、未来の記憶を持ったまま事件を解決するという展開になっています。
この能力、一見優秀っぽいですが、私はもっとも不必要な力だと思います。人間は忘却の生き物ですが、それは覚えられないのではなく、すべてを覚えておくと逆に不都合だからです。嫌な記憶は、楽しい記憶より残りやすい。聞いたことがあると思いますが、主人公は永遠につらい記憶にさいなまれ続けていて、どこか達観したような感性を持つに至った。そんな風に想像してしまいます。
そこまで考えて読むと、針が降り切れてしまって何も感じない心。それでも、端々に諦めきれないという未練が滲んでいる。この二つを感じるたび、切なくなってきます。傑作、とまでは言えないのかもしれませんが、最高級とは言い切れるぐらいの作品です。古いからって、敬遠せずに読んでほしいです。 -
本作の著者の本は他の本も一通り読んでいますが、箱庭物(という表現が正しいのかわかりませんが)のように、限られた空間での世界観やその中で起きる出来事をすごく丁寧に描写される方だなと思います。
このシリーズはタイムリープを繰り返して少年が理想とする世界を手に入れるというのが大きなテーマだと思っていますが、初巻の本作は一番それが色濃く出ていると思います。浅井ケイの願いがキレイで読んでいて何度でも読み返したくなる作品です。 -
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
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『タイムリープ』のような時間SFが題材の乙一作品風青春ミステリ
現時点では『六番目の小夜子』より余程上なので今後に期待 -
異能者たちが現れてきた咲良田市では、「管理局」が異能者たちを取り締まっている。「管理局」に目をつけられているケイと美空、その能力からペア扱いされ、二人で管理局からの依頼をこなしていた。今度の依頼は、「猫を生き返らせてほしい」というもの。美空が「リセット」ということにより、世界は「セープポイント」まで巻き戻す。そこは、まだ猫が生きている世界――。
乙一、米澤穂信を想起する流れるような透明感のある文章でした。特異なキャラクターではないので、あまりライトノベルぽくはないんだけれど、メインストーリーはライトノベルぽく異能を扱っている。美空がなんでそこまでケイに懐くのかとか、もれているところはあるけれど、この文章だけでもすごくよかった。これからが楽しみです。このシリーズだけに縛られず、いろんな作品を書いていってほしいなあ。一般文芸でもいけそうな気がする。女性にもおすすめです。 -
ライトノベル
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ラノベだっていううがった見方をしてみれば、うまく書けている部類に入ると思う/ しかし平坦な文体で、読んでて冷めてくる/ 暗い/ 主人公がスカしすぎ/ あといかにもオチのために配置しましたってキャラと能力があざとい/ 構成が出来すぎてるだろ、と/ 本当に最後の最後の、オチのあとのシーンでなんとか救われたかなと思う
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特別な能力を持っているとはいえ、主人公たちは高校生。
大いなる決意や野望を語っても、やっぱりどこか浅い。
けど、自分たちが経験し悩み導き出した答えに必死に向き合い行動する姿はとても眩しい。青春グラフィティとして秀逸な作品でした。
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著者の最近の作品を読んでから処女作を読みました。昔からこの文体なんですね。難しいことを言っているようでそれでいて内容のあるような無いようなでも大事なことを言っているふわりとした雰囲気の文章が大好きなので、とてもたのしく読めました。主人公もヒロインも淡白そうだけど、春埼はしっかりヒロインっぽくケイに恋をしていてかわいいです。ケイも高校生にしては頭も良すぎるし淡々としてるようだけど、それは能力ゆえ仕方ない気もします。残酷だけどやさしいお話でした。あまりラノベっぽくないです。普段一般しか読まない人にも勧めたい。
次巻以降も読みたいです。