僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

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  • / ISBN・EAN: 9784061385160

感想・レビュー・書評

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  • 何故消耗する働き方になるのかという説明でわかりやすい例が上げられてました。天井にお金がぶら下がっているのでそれを取るために毎日全力でジャンプをしていたら当然疲弊します。しかし、仮に土台を置いて30%くらいの力でジャンプして届けば消耗も少なくなるという話は印象に残りました。
    また、年収・昇進から得られる満足感-必要経費(肉体的・時間的労力、精神的苦痛)=自己内利益の価値観は大切にしたいと思いました。

  • 資本主義経済の中で私たち“労働者”が必然的に置かれている状況についてであり、そこから考え始めることで、どういう「働き方」を選択すればラットレースに巻き込まれず、
    幸せに暮らしていけるかがよくわかるのです。今の働き方に疑問を持っているのであれば、転職や独立、ワークライフバランスを考えても意味はありません。
    しんどい働き方は、もっと根本的なところから考え、変えていかないといけないのです。

    <サマリ>
    ・「使用価値」と「価値」は異なる
     使用価値:それを使って意味があるかどうか(有益かどうか、役に立つかどうか)で測られる
       価値:それを作るのにどれくらい手間がかかったかで測られる

    ・「労働力の価値」も「商品の価値」と同じ理屈で決まる!
     労働力の価値=明日も同じ仕事をするために必要なものの価値の合計

    ・途上国は物価が安い⇒労働者が安く生活できる⇒労働力の再生産コストが低い⇒労働力の価値が低い
     つまり途上国の人件費が安いのは「労働力の価値」が低いから

    ・食費、家賃、洋服代、ストレス発散のための飲み代などのほかに、スキル習得費が「労働力の価値」として考慮される
     医者の給料が高いのは、医者の仕事をこなすための膨大な知識身に着ける必要があり、そのために長期間準備をしてきたから。

    ・伝統的な日本企業の給料の決まり方は「必要経費方式」であり、オジサンの給料が高いのは必要経費が高いからに他ならない。
     オジサンは結婚して子供を育て、家も車も買い、親の介護もやらないといけないから必要経費が20代と比べると高いのは当たり前

    ・古くからある大企業の給料が高いのは「高度経済成長期」「バブル期」のいい時代の社会的必要経費がベースとなり給料が決まっており、それを継続しているから

    ・労働者の労働は2種類に分けられる
     1、自分の為に「給料分の価値」を生み出す労働
     2、資本家の為に「剰余価値」を生み出す労働

    ・給料のベースは「使用価値」ではなく「価値」で決まっているので、高い使用価値ではなく、高い価値を持たなければならない

    ・企業も個人も「利益」の出し方は同じ
     企業:「売上」-「費用」=「利益」
     個人:「年収・昇進から得られる満足感」ー「労力などの必要経費」=「自己内利益」

    ・自己内利益を増やすための働き方のポイント
     1、世間相場よりもストレスを感じない、精神的な苦痛が小さい仕事を選ぶ
     2、まず「積み上げ」によって土台を作り、その土台の上でジャンプする
     3、労働力を「消費」するのではなく「投資」する
     4、長期的な資産を作る仕事を選ぶ
     5、過去からの「積み上げ」ができる仕事(職種)を選ぶ
     6、変化のスピードが遅い業界・職種をあえて選ぶ
     7、賞味期限が長く、身に着けるのが大変で、高い使用価値のある知識・経験をコツコツ積み上げる

    ・「資産を作る仕事を、今日はどれだけやったか」を毎日自分自身に問うこと

  • 経済に疎い私にとっては、非常に刺激的な内容でした。

    【要約】
    資本主義経済では給与の仕組みが一律で決められており、企業間ごとの差はさほど無いこと。
    企業が利益を生み出す上での労働者の位置付けなど。
    このような現状を説明した後に、著者が編み出してきた自己内利益を向上させる具体的な働き方を提唱してくれます。

    【感想】
    これからの日本で、年功序列から本格的な成果主義での報酬システムに変化していくのであっても、今回学んだ歴史ある資本主義経済での給料設定の仕組みの考え方は、基礎知識として役立つかと思います。
    例えば、専門知識やスキルを習得するまでに費やした労力・時間に対して、企業はその分のお金を支払います。これが、労働者の価値となるため資本主義経済では給与水準を設定するベースとなります。
    すなわち、成果主義の報酬システムで評価される社会に変化したとしても、単に業務成果だけで評価するのではなく、継続的に自己投資して伸ばしているスキルや自分にしかできない能力があるのであれば、それらを日々意識し、会社にアピールしていくのも重要かつ有意義なことになるのでは無いかと思います。
    そのため、今から自己投資する。すなわち、自分の能力やスキルを伸ばすための仕事の仕方が重要になってくると考えます。

  • タイトルから、よくある「ブラック企業に搾取されている若者たちが可哀相」とか悲観する内容の本かと思いましたが違いました。
    「労働者の働き方に責任があるのは、労働力自身である」ということが書かれています。

    ・マスコミの取り上げる「貧困問題」では、「こんなに頑張っているのに、給料が少ない。この人は社会からいじめられている可哀相な人だ」という描写がされるが、そう描く背景には、「頑張ったら給料が高くなるはず」という思い込みが、あるから。

    ・給与=「労働力の価値」は、「労働力が明日も同じように働くために必要なお金」の合計。
    それは必要経費分しかもらえない。つまり、「必要以上」はもらえない。

    ・ここでいう「価値」とは、「社会一般的にかかる平均労力」で決まる。

    ・「労働力の価値」は、労働力の再生産に必要なものの価値の合計。
    つまり、「明日も同じ仕事をするために必要なものの価値の合計」のこと。
    だから、「努力」や「成果」によっても決められるものではない。

    ・資格、免許、スキルなど、「その仕事ができるようになるための準備」に費やした労力も「労働力の価値」に加算される。
    単純作業者の給与が低いのは、誰でも簡単にできる=「準備がいらない」から。

    ・商品生産前と商品生産後で、どこで「価値」が上がるかというと、「労働」の部分。
    労働者が自分の給与以上の「価値」を生み出させることによって初めて「余剰価値」が生まれる。
    企業は労働者から「1日働かせる権利」を買い取っているので、その範囲でできるだけ余剰価値を生み出せるよう、労働者を酷使するが、それにも限界がある(絶対的余剰価値の限界)。

    ・他社よりも効率的に商品を生産できるようにすること生まれるのを「特別余剰価値」という。
    しかし、資本主義経済においては、「技術革新&コスト削減」が当たり前なので、どんどん価値は下がっていく。
    それは、熱帯雨林の木々と同じ。
    我々も、闇雲に「他人よりも上」を目指すと、得られる「光の量」は変わらない一方で、競い合うだけ体力や気力、時間を失う。無駄に疲弊してしまう。

    ・商品と同じく、労働力にも「使用価値」だけでなく、「価値」がなければならない。
    給与がいくらになるか、その基準を決めているのは「労働力の価値」である。「労働力の価値」が変わらなければ、給料の基準金額も変わらない。そして「労働力の価値」は、積み上げによってのみ変えることができる。つまり、「より高度な仕事をするために費やしてきた労力」も、「労働力の価値」として認められる。

    今よりも上の給与を狙うのであれば、残業代やインセンティブで稼ぐのではなく、「労働力の価値」を上げて、給料のベースを引き上げるべきなのである。

    働き方のポイント
    ・まず「積み上げ」によって土台を作り、その土台の上でジャンプする。

    ・労働力を「消費」するのではなく「投資」する。

    ・長期的な資産を作る仕事を選ぶ。

    ・自分の資産として積み上げる知識・経験は、賞味期限が長いことに加え、「身につけることが大変で時間のかかるもの」=使用価値の高いものでなければならない。

    ・大切なのは、「資産を作る仕事を、今日どれだけやった
    」ということ。

    ・「ひとは、一年でできることを過大評価し、十年でできることを過小評価する」
    殆どの人が目標を一年で達成することができないのは、その人に能力がないからではなく、そもそも「一年間」ではそれほど多くのことを達成することはできないから。
    継続できないのは、私たちが「頭でしか継続の重要性を理解できていないから」

    ・現代の日本では、資本主義の世界の中でどう振る舞うかは各自にゆだねられている。
    しかし、多くの人は、自分の働き方に関してはあまりにも考えてこなかった。その結果として、資本主義の世界にどっぷりとつかり、完成に資本主義のルールに「搾取」されているのである。

  • 数々の企業での経験があり、現在作家として活動する木暮太一氏が現在の資本主義経済での労働の真実とそこから提唱する理想の働き方について書いた一冊。

    「資本論」と「金持ち父さん貧乏父さん」の2冊を通して著者が感じた思いから現在の労働の在り方が必要経費を積み上げてそれを給料としてもらっていることや使用価値と価値の違いなどから社会における労働の仕組みをわかりやすく解説されており勉強になりました。
    また経済用語の解説も多くされており、プロスペクト理論や囚人のジレンマなど社会でよく使われている用語については勉強になりました。
    そして、会計の観点から自分の人生を利益あるものにする考え方は非常に面白いと感じました。
    本書全体を通して労働に対する印象が大きく変わりました。

    自己内利益を高めることや過去の積み上げから稼ぐBS思考をもつことなどから今後の自分たちの働き方の意識が変わるきっかけになりました。

    著者は関連著書も出版されているので経済学の観点からも読めると感じました。
    ただ残念な部分として巻末に用語索引があれば理解が深まるとも感じました。
    本書で書かれている10年と長期的に持続して努力することを意識し、そして自己内利益を高め自分資産をつくり人生を豊かにしようと感じた一冊でした。

  • 経済学に対して造詣が浅い読者向けに、マルクス経済学等などから基礎的な経済学の用語を援用して、資本主義における労働者のあり方を解説し、満足感の高い仕事人生の送り方を指南した本。

    日系企業の給与の決まり方、「価値」と「使用価値」の違い、剰余価値など、僕にとって少し目新しい内容もあったが、最終的な結論が「長期的に稼げる土台を作れるような仕事をする」という、漠然として多くの人にとって実効性があるか疑問なものだったので、全体としては今一つな本という印象だった。
    最後の方は、PLやBSなどを出して目新しい議論のように見せかけながら、言っていることは同じことだったり、技術革新の速度が激しいという理由でIT業界を勧めなかったりと、首をかしげるような記述もちらほらあった。
    まぁ個人的には、金融の世界で使用価値の高い能力や経験を身に着けて、高給取りになっていきたいと思う。

  • 必要経費方式で給料を貰っているという視点はありませんでした。
    確かに企業からすれば労働者が翌日も同じように働けるように
    その労働者が必要とするお金を(成果に関わらず)賃金として
    支払うというのが日本企業における給料の決め方なのでしょう。
    しかし著者の議論があまりに資本論の原則にとらわれ過ぎていて
    ちょっとうんざりする(というかくどい)印象も受けます。

    まぁそういった原則を元にどう働いていくべきかという点については
    参考になる点も多かったです。
    ・消費ではなく投資の意味も含めて仕事をする
    ・積み上げていくことのできる仕事をする
    ・市場価値を高めるためには敢えて流行りではない業界を選ぶ
    などなどこれからも仕事をしていく上で頭の片隅に置いておきたいと思います。

  •  個人的には五章だけで十分だ。

     消費ではなく、何かを後に生み出す投資の重要性。これは時間・仕事・余暇いずれについても妥当するものといえる。ロバート・キヨサキ関連書(かつて読破済)とマルクスの資本論を読めば、本書の内容は推測しうるところだが、概ね未読の資本論は読みこみたいが、時間が…。

     もっとも、富裕層:貧困層=1:99という現実の中、ロバート・キヨサキ風の処世術が妥当するのはごく少数で、多数の庶民とは無関係だ。この実情を踏まえると、本書のごとき生き方本が、どれほどの妥当性・有効性を持つかは疑問なしとしない。

     給与の意味・仕事の意味に意識的になるのは悪くはないが、適応可能性という観点から見ると、大多数の人々はそれだけに止まる可能性も高いだろう。

  • 「どうすればしんどい働き方(ラットレース)から抜け出せるか」
    ラットレースは金持ち父さんでも出てきた言葉です。

    この本は「金持ち父さん貧乏父さん」と「資本論」から「資本主義経済の中では労働者は豊かになれない」という共通の命題を見出してその解決策を前者は「投資」後者は「革命」にもとめるとしています。

    「資本主義経済における目指すべき働き方とは何か」をこの本は解説しています。
    必要経費(体力 ストレス等)を使って満足度(給料 出世)を上げることが資本主義の働き方です。
    となると効率が良いのは
    「満足度を変えずに必要経費を下げる」
    「必要経費を変えずに満足度を上げる」
    になります。
    前者はストレスをかけずに仕事をするということです。
    この本では好きなことを仕事にするとか不可能なことを言うのではなくてどんな仕事でも興味を持ちましょうとありました。
    後者は必要経費を使わなくても高い成果を得れる土台を作りましょうということでした。
    そのためには一生使える(陳腐化しない)スキルを選んで身につけましょうということでした。

    それほど難しいことは書いてなかったですがマルクスの資本論の仕組みがよくわかる本でした。

  • あたり、だ。

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著者プロフィール

1977年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から複雑な物事を言語化し、シンプルに表現することに異常な執着を持ち、大学在学中に『資本論』の解説書を自作し学内で大ヒットさせる。リアルな現場と経済学の両面から、個人が幸せに生きるための働き方を分析し提言している。コミュニケーション、投資、個人ビジネスの立ち上げ手法を構造化・言語化し累計5万人以上に指導。また出版コンテンツへのコンサルティングも行い、延べ1000冊以上プロデュース。著書には、『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』(講談社+α文庫)、『カイジ「勝つべくして勝つ! 」働き方の話』(サンマーク文庫)ほかがある。趣味はハワイ。


「2022年 『その働き方、あと何年できますか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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