- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061492820
作品紹介・あらすじ
中世的秩序をゆるがし、新たな国家間システムを生み出す契機となった、ハプスブルク家(旧教)・新教諸勢力間の悲惨な長期抗争の推移をたどる。
感想・レビュー・書評
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三十年戦争が起こる背景から終戦までの流れが描かれていて興味深かった。
戦争を終わらせる事がいかに難しいかがわかる戦争だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
30年戦争メインだけど、グスタフ・アドルフとヴァレンシュタインがいなくなると、読んでる方も熱が入らなくなるし、頭に入ってこなくなる…
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30年戦争にいたるまでがちょっと長い。そしてその後が短い。
まず本書は「物語」ではないので、興味がないと読んでておもしろくないかも。あと「ウェストファリア体制にいたるまでの30年」みたいな感じではなくて、マックス・ヴェーバーやカール・シュミットとかがでてくる感じ。そういうの好きなひとはたのしめるかも。 -
ただの領土争いの繰り返しと見るか、個々の物語の集合と見るか。
『戦争は他国に任せよ。幸いなるオーストリアよ、汝は結婚せよ』が家訓のハプスブルク家にしては珍しい戦いの歴史、30年戦争。一言でまとめるならば、カトリックとプロテスタント間の宗教対立に端を発する、ハプスブルクとそれ以外の国々の領土争い。ハプスブルクが戦いでプロテスタントに圧勝し、カトリックの領地さえも抑えようとするとかえって反ハプスブルク連合の結束は固まり、スウェーデンが筆頭となって台頭すれば今度はハプスブルク側に人が集まり、またしてもハプスブルクが一方的な条約を押し付けようとすると今度はフランスが表にでてきて、スウェーデンとともにドイツ国内を荒らしつくす。こうして国を視点にして見ると、ただ各国が領土を争う繰り返しの歴史でしかないが、人に視点を移すと、そこには物語がある。
厳格なカトリック教育の結果により、新教を絶対に許せなくなる皇帝フェルディナント2世、一介の傭兵隊長から軍の総司令にまで登りつめるも、疎まれ惑い、自らの君主に殺されるヴァレンシュタイン。新しい戦術で圧倒的な戦火を上げながら、混乱した戦場であっけなく倒れる北方の獅子グスタフ・アドルフ。文官ながら敵地で国王を失った窮地の自軍を立て直す、獅子の右腕ウクセンシェルナ。カトリックだろうがプロテスタントだろうが、自国のために裏から介入するフランス枢機卿リシュリー。筆頭戦勝国でありながら、臣下の反対を押しのけ多くの権利を放棄したスウェーデン女王クリスチナ。
恥ずかしながら全く馴染みがなかったが、1618年という西洋の戦国時代とも言うべき政治・経済・宗教・思想が大きく変動する時代だからこそ、多くの英傑が誕生したのだろう。どのような過程があってこの歴史に到着したのか。また、ここから如何な時代へ発展するのか。激動の時代は続く。 -
宗教戦争といわれる三十年戦争が一体どんな戦争だったのか、国家間の戦争でも、宗教間の戦争でもなく、封建領主たちの死闘であったことを痛感します。そしてそれを機会に絶対主義により国家の成立が進んでいく。ファルツ、ザクセン、ブランデンブルク選帝侯ら、今では国ではないわけですが、ドイツ成立前夜の動きが面白いです。ハプスブルグ家フェルディナンド2世そして3世がその中心にありつつも、デンマーク、フランスの参戦。そして、スウェーデンのグスタフ・アドルフという英雄の登場、そしてグスタフの死去に伴い、スウェーデンの新女王についたクリスチナの平和への切なる願いから、彼女の大幅譲歩が戦争を終わらせた・・・。しかし、彼女は戦争終結後、プロテスタントからカソリックに改宗したという不思議。全く知らなかった新しい歴史に今更ながら、これまでの無知を感じました。
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出版された順番から行くと逆なのだが、この本の前に菊池先生の「傭兵の二千年史」と「神聖ローマ帝国」を読んでおいたほうがいい。あと、読みながらそれらの本を参照するとよりわかりやすい。
人物やものごとの「意味」は、作られるものだから、ほんとうはまず「年号」と「場所」と「人物名」を押さえるべきで、教科書というのは極めてその点で(いろいろ意見はあるだろうが)「公平」に作られている。
でも、つまらないし頭に残らない。
この本は、物語ではないが、「30年戦争」という、結果として近代の条件を整えた出来事を、ハプスブルグ家という「神聖ローマ帝国」の皇帝と、それを取り巻く人々に焦点を当てて読み解いたもので、読みやすく、印象に残りやすい。
とはいえ、やはり名前だけの人や事件、背景がわかっていないとすっきりしない部分もあるから、この本の後で菊池先生が書かれた上述の2冊の本から読むのが良いと思う。
今までベルサイユのばらですら読んだことがなかったが、その150年前に起きた「自由選択の主体が現れるには、特定の生活から引き剥がされるという極めて暴力的な過程を経なければならない。リベラリズムがヨーロッパで出現したのはカトリックとプロテスタントとの30年戦争あとである。(ジジェク「暴力」)」と言われた特別な事件であるこの事件について、包括的に知ることが出来て本当に良かった。
この本だけでは☆4だが、上記の2冊とマリアージュして☆5です。 -
様々な要素が混在する三十年戦争を、やや物語調で描いていて、非常に楽しく読むことができました。
ベルンハルトやヴァレンシュタインなどの傭兵隊長がいかにして三十年戦争に関与したか。特にヴァレンシュタインに関する記述は興味深かったですね。
また神聖ローマ皇帝フェルディナントの理想も面白い。皇帝軍は最初こそ快進撃だったものの徐々に勢いを失っていく・・・。ハプスブルク家の、この戦争を通しての栄枯盛衰がよくわかります。
そしてなんといってもグスタフ・アドルフのスウェーデン軍です。彼の登場が三十年戦争にとってどれほどの衝撃だったかを活き活きと描いていて、読んでいてわくわくしました。教科書などではグスタフ・アドルフの戦死後は詳しく書かれていませんが、オクセンシェルナやトルステンソンの活躍もしっかりと記述されています。
新書ということもあり、気軽に三十年戦争を学ぶのはもってこいの本だと思います。また読みやすい文体で、飽きることなく一気に読めてしまうのもいいですね。