ぼくには数字が風景に見える

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062139540

感想・レビュー・書評

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  • 確かダ・ヴィンチで見かけて「読みたい」と思ったのだが、10年経って地元の図書館で再会するとは思わなかった。サヴァン症候群については以前から興味があったものの、よくもまぁ覚えていたものだ。


    自閉症スペクトラム(正確にはアスペルガーなんだけど)の子どもがどんなことを考え、周囲をどう思っているのか。前半ではそのことが「当事者の言葉で」語られる。
    研究者が語る言葉よりも真摯に届く内容だった。そして、ああ私も似たような経験があるな、と共感を持った。解説より、「自閉症スペクトラムとは、健常者と障害者の境界をなくす意味(※要約)」とあったが、ちょっと納得。

    日常生活の中にもちょっとした支障をきたす彼が、リトアニアにボランティアに行くというのは非常に勇気が必要だったことだろう。だが、ここから彼は大きな成長を始める。
    人を愛し、人との繋がりを築き、前半の人物とは比べ物にならないほど成長する。

    今、私には自閉症かもしれない息子がいる。彼がこれから他の同級生と同じように成長してくれるのか、自閉症なのかはまだ分からない。
    だが、この本を読むことで、彼に障害があったとしても希望を持ってるようになった。どんな子でも成長できる。だから、私は息子が夢を持てるよう、全力を注ごう。
    発達障害の本を読んで悶々するより、この本を読んでよかった。


    キム・ピークのことも気になったので、今度は「レインマン」を見よう。

  • 著者のダニエル・タメットには様々なレッテルが貼られるでしょう。例えばサヴァン症候群であるとか、アスペルガー症候群であるとか、幼少時にてんかんを起こしたとか、9人兄弟の大家族で育ったとか、ゲイで同性のパートナーがいるだとか、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立しただとか。でもこの本はそれぞれのレッテルとなるものの説明ではなく、それらが集まりひとりの人間として形作られ生きてきた道のりを表わすものなのです。
    数字や言葉が形や色を伴って認識される共感覚についても、実にわかりやすく説明されています。しかしそのこと自身が主幹になるのでなく、あくまで著者のこれまでの生い立ちが主幹となります。彼の生い立ちを述べるにあたり必要だから説明されているという感じさえもあります。
    またアスペルガー症候群に関しては、今までフィクション、ノンフィクションに関わらず様々な本やテレビなどで情報を得たり、実際に当人と話したりしたことはあります。でも当人によってどのように世界が見えているのか、どんなことが困るのか大変なのかが書かれているものを読むと認識がガラリと変わる部分もありましたし、今まで気付いてなかったことに気付かされることも多くありました。これは著者の文章能力に負う部分も大きいでしょう。そして障がいを持っていてもも前を向いて進んでいった彼の性格があってこそなのでしょう。もちろんこれはアスペルガー症候群全てに当てはまることでなく、あくまでダニエル・タメットというひとりの人物の話でしょうが。
    しかしそのようにひとりの人物の自伝でありつつも、やはり様々な同じレッテルを貼られた人たちへの応援や支えともなる一冊なのでしょう。いや、レッテルに関わらず全ての人への応援や支えとなるものなのかも知れません。誰にだってできることとできないことがある。その自分のできることに、どれだけ自分は向き合っているのか。そんなことも考えさせられる一冊でした。

  • 2007年刊行。アスペルガー症候群(+サヴァン症候群)の著者の自叙伝。◆共感覚と思しき情報受容の不可思議さが溢れている。それだけではなく、本書における驚きは著者自身の肯定的感情に満たされている点だ。日本のアスペルガー症候群の人たちが、なかなか肯定的感情を抱きにくいと聞く。子育ての違いなのか、学校教育の違いなのか、その両方なのか。あるいはそもそも、社会・文化的要素の違いによるのか。個性の容認度合いの差か。+-の感情を持たず、共感覚を持つ者やサヴァン症候群の不可思議さにただただ触れられる。読後感は悪くない。

  • 再読。
    この、たんたんとした感じが好きだなぁ。
    共感覚、どんなんだろう。

    再読。2022.3

  • サヴァン症候群を知り、理解する本というよりは「サヴァン症候群であるダニエル・タメットの本」だと思う。
    こういう人もいるのね、という選択肢を生むような本だった。

    わたしはこの本を母から知った。
    母は読みながら「幼少期の部分はわたしの娘のことだわ」と思ったようで、実家からわたしに電話をよこして読めと急かした。
    小さい子供は誰でもうるさいわけじゃない。何を考えて、何を大切にしたいのか、自分だけにしか正直になれない子供もいる。
    読んで、わたしはあの頃を思い出した。
    何もかも速度が違う。ものすごい勢いでコミュニケーションが進む。自分だけを置き去りにして人の感情は変わる。人自体が変わっていく。

    最終的にわたしは天才でも置き去りにされたままでもなく、年とともに普通の人間に育ったけれど、ダニエル・タメットも孤独な少年ではなく、立派な大人の男性になった。
    「ただの成功物語じゃないか」という人のほうが多いんじゃないの、というくらい少年が変わる本。

    わたしはわりと好きな本だった。

  • 筆者は、サヴァン症候群でアスペルガー症候群の自閉スペクトラムで、共感覚を持つ。こういう人の、自分がどんな風であるか、どんな風であったかの証言は、とても貴重。
    「レインマン」のモデル、キム・ピークに会いに行ったり、一週間でアイスランド語を習得したり、円周率を何万桁も覚えたり、エピソード満載。

  • こういった障害を抱えた人は、実は普通に人より、人に対して誠実だと思う。

  • 彼の感じ方を分かりやすく優しい語り口で伝えてくれる。天才を備え、強い感受性のために幼い頃から生き辛さを抱えてきた人物。

    かなり手強い赤ちゃんであり、子供であった彼を精一杯支える家族がいて、青年へと成長していく。自ら世界を広げ、パートナーとも出会う。

    誰しもが明るい暮らしを描いていいんだっていう、人への優しい気持を分かち合う本だな。

    レトリックに頼らず、平易な文章で伝えたいことを語る、言語の天才ならではの文章なんじゃないだろうか。ダニエルの、読書は好きだが小説じゃなくて事実にのみ興味が向くという気質ともつながる。

    天才の感覚の一端を表す数についての感覚的な説明がおもしろい。語学のウェブサイトもかなり期待できそう。

  • およそ「自伝」と呼ばれるものにありがちな、
    ある種の「虚飾」や「驕り」といった要素が一切感じられず、
    ひたすら純粋に、淡々と振り返られた半生が、
    まっすぐに心に響く。

    NHKのドキュメント番組「地球ドラマチック」で、
    驚異の記憶力をもつ「ブレインマン」として
    紹介されていたのをたまたま観たときには、
    単に「人間の脳のもつ限りない可能性」といった文脈しか
    とらえられなかった。

    著者は脳の障害のために、
    「他人の身になって考える」ことができない。
    社会生活においては致命的ともいえるこのハンディを、
    著者が乗り越えることができているのは、
    数字や言語に関する超人的な能力と同時に、
    彼を受け入れてくれる家族や友人の存在があったから。

    だからこそ、思春期までは家族との絆を感じることもなかった
    著者が、家族からの愛を理解し、家族を大切に思うようになり、
    パートナーとの間に「完璧な安らぎと絆」を感じたり、
    さらには「レインマン」のモデルとなった男性との面会で、
    「心がつながっていることを実感」する場面は心を打つ。

    障害をもつ人の勇気と成長の物語であると同時に、
    「多様性の受容」という、恐らくは日本人が最も苦手なことの一つに
    有益な示唆を与えてくれるかもしれない一冊。

  • 著者のダニエルは、サヴァン症候群と呼ばれる高い知能を持つ自閉症の青年。10ヶ国語を話し、複雑な数式が色や形、手触りなども感じられる風景に見える反面、アスペルガー症候群でもあり、人とのコミュニケーションにハンディがあります。周囲の理解や愛情から、少しずつ自立し、障害を障害ではなく、個性として向き合っていく姿に考えさせられます。

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著者プロフィール

作家、言語学者、教師。1979年、ロンドンに生まれる。9人きょうだいのいちばん上として育つ。2004年、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立。それをきっかけに制作されたTVドキュメンタリー「ブレインマン」は40ヵ国以上で放映され、大きな話題を呼んだ。自伝 Born on a Blue Day は世界中でベストセラーとなった。日本でも『ぼくには数字が風景に見える』(講談社)として出版されて、好評を博す。その他、邦訳書には『天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界』(講談社)がある。現在は、自身のウェブサイトOptimnem で、外国語学習プログラムを展開している。パリに暮らしている。

「2014年 『ぼくと数字のふしぎな世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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