一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

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  • / ISBN・EAN: 9784062173988

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  • 「一般意志2.0」東浩紀著、講談社、2011.11.25
    262p ¥1,890 C0095 (2021.07.31読了)(2016.01.04購入)(2011.12.06/2刷)
    副題「ルソー、フロイト、グーグル」

    【目次】
    序文

    第一章
    第二章
    第三章

    第四章
    第五章
    第六章
    第七章
    第八章
    第九章
    第一〇章

    第一一章
    第一二章
    第一三章
    第一四章
    第一五章
    参考文献
    固有名索引
    謝辞

    ☆今後読む本
    「市民政府論」ロック著・鵜飼信成訳、岩波文庫、1968.11.16
    「夢判断(上)」フロイト著・高橋義孝訳、新潮文庫、1969.11.10
    「夢判断(下)」フロイト著・高橋義孝訳、新潮文庫、1969.11.10
    「グーグル革命の衝撃」NHKスペシャル取材班著、新潮文庫、2009.09.01
    「ノイマンの夢・近代の欲望」佐藤俊樹著、講談社選書、1996.09.10
    ☆関連図書(既読)
    「動物化するポストモダン」東浩紀著、講談社現代新書、2001.11.20
    「社会契約論」ルソー著・桑原武夫訳、岩波文庫、1954.12.25
    「エミール(上)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1962.05.16
    「エミール(中)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1963.07.16
    「エミール(下)」ルソー著・今野一雄訳、岩波文庫、1964.07.16
    「孤独な散歩者の夢想」ルソー著・今野一雄訳、ワイド版岩波文庫、1991.01.24
    「ルソー」桑原武夫編、岩波新書、1962.12.20
    「ルソー『エミール』」西研著、NHK出版、2016.06.01
    「読書の学校・ルソー『社会契約論』」苫野一徳著、NHK出版、2020.12.30
    「ハンナ・アーレント」矢野久美子著、中公新書、2014.03.25
    「ウェブ進化論」梅田望夫著、ちくま新書、2006.02.10
    「Twitter社会論」津田大介著、洋泉社新書y、2009.11.21
    (アマゾンより)
    18世紀のルソーの見た夢が現代社会で実現する! グーグルやツイッターなど、人々の無意識を可視化する情報技術を使い民主主義の組み替えへ──。政治の新たな可能性を拓く大胆な構想。
    「一般意志」。フランスのみならず世界を代表する思想家J・J・ルソーが18世紀半ばに『社会契約論』の中で唱えた言葉です。しかしその意味するものの難解さから、これまで、さまざまな解釈がなされてきました。
    東さんが本書で展開するのは、このルソーの唱えた「一般意志」は、21世紀のいまこそ実現し得るという大胆かつ斬新な論。ルソーの一般意志をあえてベタに読み込み、それを現代に適用するとはどういうことか、探求します。そして、「人々の無意識を現代の情報技術を駆使することで可視化し、それを政治に反映することこそが、一般意志の実現につながる」と述べるにいたるのです。
    そしてそのアイデアは、いまやさまざまな局面で行き詰まっている、いまの民主主義、政治を突破する可能性に満ちています。
    私たちの多くは「何か問題があれば、議論を尽くしたほうが民主主義的でうまくいく」と思っていないでしょうか? でもそれは本当のことなのでしょうか? 昨今の政治の機能不全を見ていると、私たちが信じてきた民主主義の形はすでに賞味期限を過ぎているような気さえします。
    本書では情報技術を実装した新しい民主主義、政治の道を提示することで、日本の社会に新たな一石を投じるものなのです。
    雑誌連載時から大きな反響を呼んだ注目書、待望の刊行です!!

  • ルソーの一般意思理論の適用について論じたものである。民主的な意思決定プロセスではなく、潜在的な欲望を汲み取り社会政策に反映させるという観点は非常に興味ぶかい。また本書はわりに文章がわかりやすいという印象を受けた。

  • 思いもよらない視点だった。ルソーの精緻な読み取りから一般意志の正確な概念を描き出し、無意識的民主主義を提唱する。

    星5つにできなかったのは、肝であるにもかかわらず、情報技術の変容(発表からたった8年しか経っていないにま関わらず、ニコニコ動画は下火だ)があることと、無意識すら、それが政治に結びつのならば介入する恣意的な動きが予想されるからだ。

    熟議の限界を指摘したのは見事。

    全体的に荒っぽさは目立つが読んでいて刺激を受けた。

  • 序文にある通り、専門家でなくとも、最後まで興味を維持して読み切れました。

  • ◆感想
    読みやすい。実生活のシーンに合わせて該当箇所を何度もつまみ読みしたくなる一冊。

    ◆内容
    ソーシャルサービスのようなデータベースが国民の無意識を可視化する今、民主主義国家や我々の生活がどうなっていくのか?の問いに迫る。

    小さな政府となり、経済や文化などのレイヤーは政府から切り離され、国民の安全を守るための暴力を抑制するシステムに徹するようになる。
    経済面は功利主義、リバタリアンのレンズで市場に委ねられているという。
    また現在の議会にあたる熟議空間をUstで中継するような流れで異なる意志クラスタから代表者が論点を抽出して熟議の源泉とする民主国家のあり方を提案。

  • 著者はネットが民主主義そのものを変容させる可能性について論じている。
    そこで再考されるのは19Cの思想家「ルソー」だ。
    彼は、多作な著作からうかがえる彼は自発性を重んじる「近代的な自我」が発露した「エロイーズ」や「エミール」等を発表する一方、「社会契約論」等、個人の全体(一般意思)への絶対服従を説いたとされる著作も見られ、全体主義者ととらえられることも多かった。
     だが、ここで改めて「全体意思」ではなく彼の説いた「一般意思」を改めてみてみる。
     著者は「一般意思」は単純な欲望の和ではなく、個々の欲望をすべて合わせ、相殺しあうものを除いた、いわば「ベクトル」としている。
     それは恣意的なものではなく数学的な存在である。
     振り返って、ネットが発達した現代において、かつては机上の空論でしかなかった「一般意思」が現実のものとして立ち上がろうとしている。その母体は「ネットの履歴」である。これが、「集合知」を生み出すとともに「大衆の無意識」となり、民意を生み出すだろう。
     しかし、「大衆の無意識」に我々の政治を任せるのは危険ではないか。
     だが、現代の一般意思、いわばネットに支えられた「一般意思 2.0」は可視化と双方向の交流が可能である。端的なのはニコ動だろう。そこでは、会議が行われている場にそれを視聴する者のコメントが書き入れられ、即時にフィードバックと双方向性が可能である。すべての省庁会議もそうすることで、今まで専門家が密室で「熟議」の上、運営していたため、参加のコストが跳ね上がっていた民主主義のコストが激減する。
     そうなると、国家の役割も変わり、人間の物理的、身体的安全の確保のみとなる。
     それ以外の人間的な性の自由は市場が提供する世界となるだろう。
     
    P227
    「熟議で閉じた島宇宙。その間をランダムにつなぐ感情の糸。熱量の暴走を外部から抑制するネットワーク」

  • 【由来】
    ・ルソーの「社会契約論」をhontoで検索していて。ってか、今まで登録してなかったんだな。ちょうど「多数決を疑う」を読み、「一般意志」について知ったところだったのでタイミングもよかった。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 面白い本だった!著者も「エッセイ」と断り書きを入れているが大胆で魅力的な論になっている。ビッグデータが社会を変えるってマーケティングがどうのこうのいう卑小な話でなくこういうことかも。熟議からデータベースへ。意識でなく無意識に、ヒトではなくモノの秩序にしたがう社会。

    [more]<blockquote>
    P38  ルソーの構想においては、必ずしも人民全員で政府を運営すること(民主主義)につながらない。彼にとって重要なのは、国民の相違が主権を構成していること(国民主権)、ただそれだけなのであり、その主権が具体的に誰によって担われるかは、国民が望むのであれば王でも貴族でもだれでもよいのである。

    P42 ルソーによれば、一般意志も全体意志(みんなの意志)も、複数の個人の意志、彼の用語でいう「特殊意志」の集合であることは変わらない。しかし、一般意志(一般化された意志)が決して誤らないのに対して、全体意思(みんなの意志)はしばしば誤ることがある。

    P56 ルソーはむしろ、一般意志の成立のためにはそもそも政治からコミュニケーションを追い出すべきだと主張した、とそう要約してもいい。

    P69 「均されたみんなの望み」・・・たとえばその同じ会合の席で何か飲み物を出す必要があったとする。というよりも皆漠然とのどが渇き飲み物を欲していたとする。それは無論会合の目的とは関係がない。しかしそれはそれで『意志』だとはいえないだろうか。【中略】会議の飲み物を何にするか、それは出席者が議論をかわし合意を形成するような者えでゃない。そのような課題については、むしろ出席者の好み(特殊意志)はあらかじめ確定しており、スタッフ(政治)がやるべきなのはその均衡点(一般意志)を探るだけ、と考えるのが合理的だ。

    P123 ルソーは、自分が何を望んでいるのか自分でもよくわからない、そのような弱い人間像を前提として社会契約説を生み出した。【中略】社会が生まれたのは、単純に人間が他人の苦しみに共感し手を差しのべてしまうから、彼自身の言葉を用いれば『憐れみ』を持っているからということになっているのである。人間は『憐れみ』のゆえに、幸せな孤独を捨てて群れて生きてしまう。

    P136 総記録社会の誕生は、市場原理主義とも社会民主主義とも結び付く、イデオロギー的には中立の変化だ。
    【中略】公(全体意志)と私(特殊意志)の対立を理性の力で乗り越えるのではなく、その二項対立とは別に存在している、無意識の共(一般意志)を情報技術によって吸い出すことで統治の基盤を据える新しい国家。

    P145 現代社会には「大きな公共」は存在しない。社会全体を納得させることのできる熟議は存在しない。わたしたちはもはや『小さな公共』の切り張りでしか政策を作ることができない。

    P152 現代社会はあまりに複雑で、すべてを見渡せる視線はもはや存在しない。それはすなわち、古典的な選良が存在しないことを意味している。いま「選良」と呼ばれる人々は、現実には特定の『業界』の専門家でしかない。【中略】実際にツイッターのようなソーシャルメディアは、かなりその身も蓋もない現実を暴いてしまっている。

    P165 ルソーの理想は、意識ではなく無意識に、「人の秩序」ではなく「モノの秩序」に導かれる社会にあった。

    P170 ルソーは、一般意志の生成のためにはコミュニケーションは必要ない、皆が自分のことだけを考えていればいいのだ、とはっきり記していた。彼はいわば、引きこもりの作る公共性に賭けた思想家だったのである。けれども私たちはここでルソーと袂を分かつ必要がある。というのも「社会契約井論」から現在までの二世紀半は、また同時に、一般意志が以下に移り気で残酷か、国家が集合的な情念(ナショナリズム)に導かれた時いかに暴力的な存在になるか、その危険を人類すべてが思い知った二世紀半でもあったからである。

    P173 非のうちどころのない手続きを踏んで得られた合意も、人々の欲望に支えられなければ結局は力をもたない。【中略】実際、今私たちの国を襲っている政治の困難は、結局はそのような欲望の欠如に集約されるのではないだろうか。

    P194 未来の国家では、政治家には、大衆の欲望に盲目的に従うのでもなければ、無視するのでもなく、大衆の欲望にじかに向かい合い、その力を受け止めたうえで、社会の暴走を食い止める調整の役割が期待されることになる。【中略】それはいわばワイドショーのコメンテイターのようなものである。

    P197 本能に従い天真爛漫に生きる幼児=動物でもなければ成熟した人間でもなく、欲望の噴出に戸惑い懊悩する思春期の青年のイメージが最も近いのだ。青年は動物と人間の間で揺れている。未来の社会も動物と人間の間で揺れている。

    P213 目の前に苦しんでいる人がいたら、自分の利害はともかく、とりあえず放っておけないという憐みの感情。反省以前の情念。精神分析の言葉を用いるならば『無意識』の反応。実はローティは、大変興味深いことに、そのような心の状態こそを『リベラル』と呼ぼうという提案を行っている。「残酷さこそ私たちがなしうる最悪のことだと考える人々が、リベラルである」と彼は宣言している。

    P220 未来の国家は人々の動物的な安全にしか関わらない。人間的な自由に関わらない。【中略】未来の国家の業務は、町の巡回警備に住民への食糧配給と健康診断を加えたような、実に地味なものである。百年の計をめぐる派手な論争はもはやない。【中略】ひとつ例を挙げれば、それはあたかも、今の私たちにとっての水道事業のような存在である。

    P250 ネットは政治を変える。確かにそうだろう。と言うよりもそうでなくてはならない。しかしそれはおそらく、単純に電子選挙だとかネット政党だとかいった話ではない、そこよりもさらに深く、そもそも政治とは何か、あるいは国家とは何か統治とは何か、その定義そのものをラディカルに変える可能性につながっているのだ。</blockquote>

  • 東浩紀氏の著作とは思えないほど、読みやすいし興味深いです。年配の方にも読んでもらいたい気がします。

  • 2018年3月18日紹介されました!

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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