宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062577311

感想・レビュー・書評

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  •  大変興味深く読みました。
     宇宙の構成物質の中で原子は5%にも満たない。残りのほとんどは暗黒物質と暗黒エネルギー。
     それがないと、今の宇宙の成り立ちや観測されるデータを説明できないそうです。例えばビッグバンのあと、宇宙の膨張はだんだん減速してくるはずなのに観測データではすこしずつ加速している、と。
     これを説明しようとすると暗黒物質や暗黒エネルギーが5次元か6次元の世界から次元を越えて注入されている、としか説明できない(かも)と。
     何故この世に人間が生存できているかという説明のための仮説ですが、実は多元世界は無限にあり、その大半は人間の生存に適さないもの。そのうちのたった一つが我々のいるこの世界(かも)とします。
     物理学の最新理論を解り易く解説します。

  • 多元宇宙とか燃える。

    本書に出てくるドーナツ型異次元の分かりやすい例 → http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1108/05/news036.html

  • 902

    村山 斉
    (むらやま・ひとし)
    1964年東京生まれ。東京大学国際高等研究所数物連携宇宙研究機構(IPMU)の 初代機構長、特任教授。米国カリフォルニア大学バークレー校物理教室教授。 1991年、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学大学院理学研究科物理学科助手、ローレンス・バークレー国立研究所研究員、カリフォルニア大学バークレー校物理学科助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授。米国プリンストン高等研究所メンバー(03~04年)。2007年10月より現職。専門は素粒子物理学。2002年、西宮湯川記念賞受賞。素粒子理論におけるリーダーであり、基礎科学分野における若き指導者の一人でもある。


    原子一つの大きさは一億分の一センチメートル程度で人間の感覚ではとてもとらえられないような小さな粒子である。例えば五〇グラムの鉄の中に含まれている鉄という名の原子の数は約一の後にゼロが二三個付く数()である。このように我々が日常生活で接する物質は膨大な数の原子からできているのである。

     しかし鉄に限らずどんな種類の原子を取ってみても、一つ一つの原子は構造を持っており、原子の中心には原子核というさらに小さなしかも重い核があり、その核の周りに電子と呼ばれる軽い粒子が回っている。ちょうど我が太陽系を思い起こしてみるとよい。太陽系では太陽が中心であり(太陽系の核)、太陽の周りに水星、金星、地球、火星などの惑星が回っている。太陽系ではその核を成す太陽が最も重い。すなわち太陽が原子核に匹敵し、惑星が電子に匹敵する。

    当然原子核は原子よりも小さく、原子核の大きさは一〇兆分の一センチメートル程度である。原子と原子核は言葉上混同されやすいので、以後、原子の中心を成す原子核のことを単に「核」と呼ぶことにするが、必要に応じて原子核と呼ぶときもある。原子爆弾が爆発するのはこの核が爆発を起こすのである。したがってより正確には原子爆弾は核爆弾と称されるべきであろう。

    当時、科学と言えばドイツとうたわれていたくらいにドイツの科学は世界一を誇っていた。そして核分裂はそのドイツで発見されている。第二次世界大戦前までは日本に限らずアメリカでさえも、物理学に限らず科学を志す若者たちの多くはドイツに留学していたのである。原子爆弾の構想が出てきた以上、ドイツは間違いなく原子爆弾開発に乗り出すであろうことは容易に推測できたし、またドイツはそれを可能ならしめるような国であることもわかっていた。イギリスやアメリカの科学者達は、アメリカがヨーロッパ戦に参戦する以前から、ドイツの原子爆弾開発を懸念している。

     マイトナーの父はウィーンで弁護士をしており、彼女はなに不自由ない少女時代を過ごした。数学や物理に対する娘の秀でた能力に気づいた彼女の父は、早くから彼女に家庭教師を付けて大学に入る準備をさせた。当時女性が大学に入ることじたい大変なことであった。しかし彼女は難なく入学試験に合格し、ウィーン大学に入学した。向学心に燃えていたマイトナーはできる限り多くの講義に出席したが、どのクラスも女子学生は彼女一人であった。ある教授の強い勧めもあって彼女は物理学を専攻することになった。当時、ウィーン大学は創立以来五四一年間の長い歴史中わずか一四人の女性にしか博士号を授与しておらず、しかも物理学の分野では一人として女性に博士号が授与されていなかった。一九〇六年、マイトナーが二七歳のとき、その物理学の分野で彼女に博士号が授与されたのである。当時ドイツにはマックス・プランクという物理学者がいた。プランクは後に 黒体輻射 理論を打ち立て、結局それが量子力学というまったく新しい物理学を生み出す結果となり、その業績によりプランクは一九一八年にノーベル賞を受賞することになる。マイトナーがウィーン大学で博士号を取得した頃、ベルリンでプランクは一連の講義を担当していた。内気ではあったが人一倍向学心の強いマイトナーは両親の反対を押し切って、女一人、プランクの講義を受講するためウィーンからベルリンに出向いる。

    さてアインシュタインのもっとも有名な式 E = mc 2 において E はエネルギーを表し、 m は物体の質量を、 c は真空中での光のスピードを表す。真空中での光の速度( c の値)は秒速三〇万キロメートル(時速ではない!)である。地球の赤道にそって光が走行することを考えた場合、光の走行距離は一秒間に赤道の周りを七回り半する。この赤道の周り七回り半の距離がちょうど三〇万キロメートルである。これが光の秒速である。エネルギー E はすべての種類のエネルギーを表す。 E は熱エネルギーであるかもしれないし、運動エネルギーであるかもしれい。

    その頃、フランス人科学者ピエール・キュリーに嫁いでいたポーランド人のマリー(ポーランド語ではマーヤ)はこのミステリアスな放射線に異常な興味を抱いた。夫のピエールはすでにピエゾ効果の発見者として有名になっていた。結晶をギューッと押して圧力を与えるとその結晶に電圧が現れ、逆に結晶に電圧をかけてやると結晶の形は変わり歪むのである。これがピエゾ効果である。ピエール・キュリーはこのピエゾ効果を利用して電位計、エレクトロメーターを考案した。マリー(キュリー夫人)はこの電位計を用いてウランから出てくる放射線を測定し、放射線の実在を確かめたのである。いちいちフィルムを感光させて放射線の有無を確かめるよりも電位計を用いたほうがより正確で手っ取り早い。この電位計を用いる方法によりマリーは、さらにウランだけでなくトリウム元素からも同じような放射線が出ていることを突き止める。

    放射能に侵されていた晩年のキュリー夫人は手の指は曲がったままになり、目はほとんど見えなくなっていた。「暴いてはいけない自然を暴いてしまった神のたたりなのかしら?」と言ったことがあるマダム・キュリーは、一九三四年、白血病のため六七歳の生涯を閉じる。

    ただ中性子は電気的に中性であるという点ではガンマ光子と同じである。ガンマ線を中性子線(中性子群の流れ)に置き換えてみると、右に掲げた二つの奇妙な点は完全に取り除かれることがわかったのである。

    ニュートリノの存在の予言はオーストリアの物理学者ヴォルフガング・パウリによってなされている。

  • 私のブルーバックス積読シリーズの一つ。
    最近「量子力学の多世界解釈」を読んだが、非常に関連している本。この本は量子力学こそ出てこないものの、宇宙理論の最新を追うと、やはり解釈問題が出てきて、多次元宇宙となってくる。それすなわち量子力学の世界であり、さらに理解が深まった。

    この本は一般向けにも読みやすく、「ブラックホールとは何か?」「暗黒物質とは?」といった視点から広げられる。
    どうしても「最新は分かっていない」という結論も多いが、最新宇宙研究を追ってみたくなる興味深い本だ。

  • 村山斉さんの平易な現代宇宙論。素粒子を扱った『宇宙は何でできているのか』の続編に相当する。「そうか、暗黒物質は原子でできているものじゃないんだ」と今更ながら再認識。暗黒物質の正体を見つけるべく、次元が空間の中に織り込まれている多次元世界が提案されている。そして宇宙の膨張を加速する暗黒エネルギーを説明するための多世界宇宙の導入。高度に進んだ物理学は、SF をも超えていく。最新の宇宙論は物理学者たちの荒唐無稽なつじつま合わせなのか、それとも新しい宇宙の姿への幕開けなのか?特定のモデルにとらわれることなく、提唱されている複数の学説を紹介する。何よりも薄いのがありがたい。

  • 何故遠くの行くことができない星の成分がわかるのだろう。何故距離がわかるのだろう。
    そのような素朴な疑問をひとつひとつ拾い上げて丁寧に解説してくれている。
    距離は離れるほどに電磁波の波長が長くなる=赤くなる(赤方偏位)。
    では、なんで元の色より赤っぽいってわかるの?
    というのは、1つ前の解説である、地球に届く光からどの元素が吸収されたかでその星を構成している元素が判明している=元素の炎色反応の色は正確にわかっているからそれとどれだけ違うかでわかる、と玄人には先の解説とつながって言わなくてもわかるだろう部分を、きちんとひとつ間を置いて質問を挟んで繰り返して解説してくれるから素人にもわかりやすい。
    暗黒物質や暗黒エネルギーの話も、拡張する宇宙の話とともに興味がひかれる解説をされている。ないと観測事実と矛盾するのに観測できずどんな物質なのかわからない、というその物質は次元が違うところにあるから見えないのでは? と誰でも思い浮かぶ仮説を思い浮かべたところで、次元の話が入るから、本当にタイミング良く読みやすい。
    次元の話も「小さくて丸まっている」というのはどこかで聞いた話だったが、「小さい」から量子論の話に結びつき、丸まっているからワープの話に結びつくのは、なるほど、と思わせてくれる。

  • 宇宙背景放射の成り立ち、ダークマター、ダークエネルギーについて分かりやすく書いてくれている。
    見えない、感じれないものがどうして存在すると分かるのか?どうやって「観測」しているのか。

    後半、多元宇宙の話は、理解が追い付かないところが多い(ほとんど?)が、必死に理解しようとすることで、頭の体操になった。でも分からん。

  • 宇宙完全に理解した(してない)という感じの内容。暗黒どーのこーの何て漫画か何かの話だと思ったら真面目な奴。宇宙の始まりだとか意味を考えると狂いそうになる感覚をより一層味わえる一冊。

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著者プロフィール

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)教授、カリフォルニア大学バークレー校Mac Adams冠教授。
1964年東京都生まれ。1991年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。東北大学助手などを経て、2007年から2018年10月までKavli IPMUの初代機構長を務めた。専門は素粒子論・宇宙論。『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)はじめ著作多数。メディアを通して研究成果を伝えることにも力を入れる。難解な素粒子論・宇宙論をわかりやすい言葉で語る。

「2020年 『そうたいせいりろん for babies』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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