わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767101

感想・レビュー・書評

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  • ◯ 雪国ゆうたら雪国やんか(80p)

    ★独特の文体。バランスが難しい。成立しているのがすごい。

    ★青木に思いの丈をぶつける、8ページに渡る長台詞に圧倒された。

  • すごい。こんなすごい本、久々に読みました。すごい。すごい。
    独特な文体は詩のように言葉の可能性が広がり、新たな言語世界に没入します。言葉世界の可能性を感じます。言葉に基づいた思想の自由に自分の狭い世界から解き放たれた気分がします。
    語り口調こそ独特ですが、そこに語られる「存在」「生」「自我」等に対する根源的な問いは哲学書の様相です。

  • 夏物語にも通じるところがあるような、子どもが望んだわけでもないのに子ども=新たな世界を生んでもいいのか、というテーマを感じた。
    「私」はどこにあるのか、脳という人は多いけれど脳がない状態を経験したことはないからそうは言い切れない、だからわたしは奥歯に私が詰まっていることにした。わたしは歯が痛んだことがないから、痛いことがあったらそれを奥歯に詰め込んで蓋をする、という。私=痛みの蓄積?
    雪国の冒頭の主語は何なのか、私は、ではなく、神秘的で美しい。
    エッセイとか小説とか言うよりは、リズミカルな関西弁の詩、って感じ。

  • 天才•川上未映子、デビュー小説
    その問題意識とか文学的なテーマみたいなものが、未加工のまま、ある意味では尖り切り、ある意味では理解不能なかたちで散在している。

    身体性に着目しながら、「かけがえのないわたし」像などどこ吹く風で、「わたしは奥歯や」と喝破してみせる。そのイメージは現実と正論でボコボコにされ、さらには抜き去ることさえ可能であることが示される。
    しかし、だからこそ、世界は奥歯にパンパンに詰まっている。その逆説に、震えた。

  • よく分からなかった。
    呪文を読んでるみたいだった。

  • 主人公の見た目を勝手に想像して読み進めていたけれど、最後でびっくりした。すべて真夜中の恋人たちもそうだった。

  • 痛みの総和。その人も痛みをもらったから、自分に移動しただけ。でも自分で留めたいから、耐える奥歯、耐えられるはずだった奥歯。
    わたしは私から絶対に逃れられない。わたくし率がゼロになったら、ほんとうにわたしという主語がなくなるのかはわからん。わたしが手離せなかった思春期の頃の痛みと虫歯みたいに膨らんで行った妄想は、わたしが私でなかったら消えてたものなんかな。

  • わ、わけわからーん!!(笑)

    人はいったい体のどこで考えているのか、「わたし」はそれを奥歯と決め、歯医者に転職、まだ見ぬ我が子へ日記を書きながら愛する青木のことを想う…
    文章の書き方が独特で、なんとなく哲学的なことが描かれているのかなぁ…ということしかわからなかった…

    「わたし」を通して、なんだかこちらの心と体までもがじくじくと痛むお話でした。
    読み返したくないけど、もう一度ちゃんと読みたい。(矛盾…)
    『雪国』の冒頭の主語のくだりがおぉ、なるほど…とおもしろく感じました。

    もう一編のお話の主婦と妊婦さんとの問答が興味深かったです。

    この文章のリズミカルさ(?)がくせになる人はなるのかも!

  • 「自分」には3つの型がある。
    主観としての自分。
    他人から見た客観としての自分。
    そして、自分から見た客観としての自分。

    「ほんまのことは、自分が何かゆうてみい、人間が、一人称が、何でできてるかゆうてみい、一人称なあ、あんたらなにげに使うてるけど、これはどえらいもんなんや、おっとろしいほど終りがのうて孤独すぎるもんなんや、これが私、と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私!!」

    言葉が、思いが、急加速して「わたし」を突き抜けていく。

    永久歯の生えてこない幼女と、それを不安に思う母親とに、「おだいじに」と声を掛けるラストシーンは、本作の主題、根源であり、また、象徴だ。それは人間と云う生命の美しさでもあり、切なさでもあり、悩ましさでもあり。

  • 歯で思考してるから脳と違って思考がまとまってない。ただひたすら喋り続けてる感じ。無心で読むと脳じゃなくて歯で考え事してる感触が味わえる。
    これは歯垢…じゃなくて、至高の思考ですな。

    無茶苦茶に適当こいてるんじゃなくて、ちゃんと理解できる。深い。奥歯くらい深い。タイトル回収もしっかりある。なんで「奥歯」なのかも書いてある。

    ・わたくし率 イン歯ー、または世界
    「私」は奥歯(人による。多くの人にとって脳)であって、その他の部位、いわゆる身体は「私」のあつかう物質でしかないのであって、それがどうしようが直接的に「私」には関係ない。主人公にとって奥歯はわたくし率100%。

    ・感じる専門家 採用試験
    物質は有る無しではなく、認識の概念では「在る」であるので「生む有無問題」は破綻。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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