夏を喪くす (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773829

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハの短編集。この人は、働く女の人を書くのがうまいのかな。
    主人公たちは大人の女性という感じで酸いも甘いもしっていて、
    その中で人生の局面に立たされたときにどういう行動をとるか。
    自分には遠い世界の話だったか、引き込まれるものがあった。
    というか原田マハの本はどうしてこう引き込まれるのだろう。

  • 祝文庫化!単行本時のタイトル「ごめん」

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    「範子―偶然目にした詩が、自分たちを捨てた父親の記憶を呼び起こした。陽菜子―意識不明の夫の口座に毎月お金を振りこみ続けていた人物と、ついに対面を。咲子―不倫と新たな恋。病気を告知され、自分の願いがはっきりわかる。麻理子―行方不明の親友と暮らしていたNYのアパートを、7年ぶりに訪れて。―その瞬間、4人の女性は何を決意したのか? 『楽園のカンヴァス』で今年文芸界の話題をさらった女流作家の新星による、揺れ動く女性たちを描いた感動小説集。 」

  • 「夏を喪くす」はこの短篇集に収録されているうちの1篇のタイトル。
    意図があるかどうかは分からないけど、収録されている4篇すべてに「喪う(失う)」要素があったように感じた。あらゆる意味での、「喪う」ストーリーたち。

    その中でも表題作の「夏を喪くす」は一番分かりやすい。実年齢より若く美しいことをアイデンティティとして生きてきたアラフォーの主人公・咲子が、乳がんになり、乳房を全摘出しなければならなくなる。夫との関係はもうとっくに破綻していて、歳の離れたステディな不倫相手はいるものの…という物語。
    女性にとっての象徴を喪うということ。とくに美しさをアイデンティティとしてきた咲子にとっては、女性であること自体を喪くすことと同義で、彼女は事態を理解したときにとある決断を心の中で下す。

    自分自身の身体に物理的に存在していた何かを喪う。それはきっと精神にも大いに影響を及ぼす出来事。
    そんな中でもバリバリ働く女性の咲子はいつも通りの日々を過ごすが、その途中で、仕事のパートナーである青柳にも、「喪う」につながるとある重大な出来事が起きていることを知る。

    他、事故で意識不明のまま目を覚まさない夫が隠し持っていた秘密を探る「ごめん」(これも夫婦関係が破綻しているのがミソ)、娘が雑誌の詩の投稿で佳作に選ばれたことからひっそり詩作していたどうしようもない父のことを回想する「天国の蝿」、9.11以降行方不明のままの親友クロと自らの裏切りを追想するニューヨークが舞台のお話「最後の晩餐」。
    全員、女性が主人公の物語群。

    形あるもの、形のないもの、色んなものを人は喪う。自分の意思ではどうしようもない出来事もあれば、自分の選択によってそうなってしまう場合もある。
    喪ったのか、手放したのか、その時は分かりかねることもあるけれど、自分から手放したことが後になって大きな傷になることもある。

    原田マハさんのあまり感情が絡まない美術ミステリがとても好きで何冊か読んできたけれど、人のどうしようもなさを描いた作品もやはりいいな、と思った。
    知識や経験という下地があるって強い。そして、人の感情がよく解るということも、同じく強い。

  • 大人の女性のお話。心を揺さぶられる。
    私だったらどうするだろう。

    夫になにかあったら。私になにかあったら。、

  • マルタ島旅行中に読んだ。ひとり海外旅にぴったりの本だった。バリバリ働いて、お金、パートナー等手にした女性がふと岐路に立って人生を振り返る。短編ほどではない中篇がいいなーと思った。

  • どれも結構重めでシビアな作品。夏を喪くすとは人生の夏を謳歌してきた主人公が人生の秋を迎える決意を表しているように思えるという解説を読んですごくしっくりきた。特製カバーが可愛くて買ったけど当たりだった

  • 2023.8

    9月に読み終えたのだけど、感想を書くのを忘れていた。泣いてしまうので途中まで読んでから暫くの間眠らせていたけど、夏が終わるまでに読み終えたかったので良かった。今の年齢に合う本だった。泣きながら読んだ。

  • 4人の女性の4つのお話。
    「天国の蝿」は、初っ端から心にじんと沁みるいい話だった。正直、借金まみれの父親になぜそこまで優しい感情を持てるのかわからないが、子供は親を憎めないことと同じで範子も心奥底では父親を愛していたのだろう。

    「ごめん」は1番好きな話だ。世の中には様々な夫婦関係があって、奇妙だと思えることも普通に罷り通っていて不思議な気持ちになった。植物状態になった夫の秘密を知った陽菜子は、後悔するだろうと思った。死ぬことよりも脳死や植物状態に陥ることのほうがよっぽど怖い。

    表題作の「夏を喪くす」はタイトル通りの話だと思った。生まれて死ぬまで共に過ごす予定だった、自分の乳房。それをなくすということは、女の機能を一部失うと言うことだ。もうこれから、夏にビキニを着ることも無くなるし、人に見せることも無くなるだろう。

  • 天国の蝿で一気に引き込まれた
    言葉にできない感情を、言葉で引き出せる作者さん凄い

  • めも
    短編集
    不倫や女性疾病などを経て
    それでも前向きに生きていくような終わり方になっていたので読後感はそんなに悪くなかった

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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