- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087451511
感想・レビュー・書評
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生活するためのお金を得ることを考えなくても良い環境
家庭教師の元で自分のペースで興味のあることを学べる
とても羨ましい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
下巻もあっさり読み終わりました。長編だけど、レビューを見てたから、大体の事件?は事前に知ってしまってたから…。
後は江國さんの作品に登場する人物が、以前に読んだ作品の登場人物とかぶるようになってきたからかなあ。桐叔父は、左岸の始の叔父、風貌は始自身とかぶる。光一は兄ということと、最初の章では優秀ということだったので、茉莉の兄とかぶるのか?と予想したけど、これは違った。あえてなのか、光一は下巻では愚鈍そうな風になっていた。
絹の秘密は、まあ菊乃にその性質が遺伝したのか…。えッ、あの人の親だよねー?!と。 -
嫁に行って婚家のしきたりに触れると違和感を覚えたり、実家のしきたりが通用するものではないことに気づくことはままあると思います。この小説の長いタイトルはここに登場するある一家に通用する合言葉ともいうべきものです。「ライスには塩を」は自由万歳!の意味がこめられています。
1982年秋、東京・神谷町の大きな洋館に住む資産家である柳島家、この家の4人兄弟は父母から突然学校に通うように言い渡されました。世間一般の家庭とは異なった価値観を持つ柳島家の教育方針で、学校へは行かず家で自由に勉強をしていた彼らはこの方針の転換に戸惑い、いやいやながらも通い始めるのでしたが・・
柳島家の三世代に渡る一族と彼らひとりひとりに関わった人々のその時々の生きざまがそれぞれの視点で語られます。年代を遡りながら先に進みながら物語は約半世紀の時を紡いでいきます。柳島家の兄弟たちは、異父や異母兄弟といった複雑な血縁関係の中にあったのですが仲も良く、風変わりな叔父や出戻りの叔母、そしてロシア人の祖母、一族の長である祖父という大家族の構成に満ち足りた思いをしていたのでした。
1960年から2006年までの年月は一家の歴史に愛はもちろんのこと別離も、そして老いと死を、新しい生を刻みます。ロシア人だった祖母にも最後の時が訪れるのですが、彼女が回想するのは長いこと秘密にしていたロマンスのことでした。そして祖母の死後、父豊彦はある決断をしたのでした。作家になった次女、陸子はその5年後今や年老いた母と叔母との三人だけにになった暮らしにこれまでの思いを巡らすのでした。
三代に渡る年代記ではあるのですが、起点となるロシア人の祖母の話がさらりとしか記述がないため、物語にあまり深みがないのが残念でした。自由な家風で育ちながらも、全く相反する婚家の家風に精神を病み、離縁された叔母の百合を迎える、兄弟の間に流れる優しさが胸を打ちましたが・・
初めとしめくくりに登場する次女の陸子さんは、江國さん自身がモデルなのかなあと気になりました。 -
時間かけて読了。時代や語り手が語り手が変わりつつ、一族の物語が紡がれていた。百合はちょっと苦手、桐之輔が好き。
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2014年3月
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下巻は
上巻とは違って
時間軸に沿って
順番に描かれるところが増えてくる。
核心部分にどんどん迫っていくような、ドキドキ感があって、上巻よりもスラスラ読めてしまう。
お金持ちの家だけど、知らない時代の人たちじゃないし、人間関係の感情の混じり方とか、共感しながら、その場にいることができる。
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下巻に入って
家族ではない人物が
語り手に加わる。
彼女や近所のひと、寿司屋のご主人、…。
柳島家の人々も
そういう人々に混ざって描かれるからか、上巻よりも世間に馴染んで見える。記憶に残る、印象的な人たちであることには変わりないけれども。
年代も
気づくと90年代2000年代に突入し、
どこかセピア色だった物語に
色がつき始めるような感じがする。
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上巻ではゆっくりだった、
物語の時間が下巻では滑り落ちるようにスリリングになった。
上巻では、確固たるものとして描かれていた物たちが、時間の流れに抗えずに、どんどん変化していく。
変化が大きくて
感情が揺れてしまっても、
家族の愛情が、どんな形なのかが読み手にもちゃんと分かるように、絶妙に場面が流れていく。
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衝撃的事実!!
バクダンが最後の方で立て続けに用意されていて、
でも、それはこの物語の、この家族の根底を流れるルーツになっていて、
破滅的なようでいて、
実は何も変わりないのかもしれないのかもしれず、
物語のはじめに描かれた、小学校事件が、“事件”でありつつも、それだけが突出した事件ではないという、
やはり壮大な“愛”(というべき概念に収まるか分からないが、人と人が交わる時に生まれる、それぞれの愛みたいなもの)を描いているのを感じる。
出来事が
語り尽くされてないことも奥深く、
読むたびに直接は描かれてないことを感じられたり、分かってきたりすることが、たくさんありそうで、
再読するのも楽しみだと思える。
こんなふうに味わって行きたいと思える話は、なかなか出会えない。
140311
上巻はこの世界を探るように、ゆっくりと味わいながら読んだのに、
下巻はジェットコースターみたいに、あっという間でした。。。
家族の外のひとから見ると
不可解にもまとまっている家族の
美しい部分だけが綺麗に描かれていて、
こんなにも葛藤を生みやすい、一筋縄では消化しきれない、出来事が続くのに、
醜い部分は見事に隠されて、にこやかに振る舞う人びとの様子は異様とも思える。
岸部さん夫婦を迎える家族の様子や、
卯月誕生祝いの時の麻美さんの振る舞いや、
離婚に際しても平然といる菊乃、
そういう時の腹のうちは描かれていない。
つまりそれは、それぞれで思うことはあっても、それが破滅的にはならず、努めて平静を保とうとする、
そのとき心の中に立つ波風よりも、大きな守りたいものが、それぞれにあるんだと感じる。
私みたいな他所者からは、感じ取れないことで、この物語に奥深さを感じてしまう部分でもある。
こういうシーンは巧みに外部の人間(他所者)を通して描かれることで、効果的な印象を与えられる。
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一見、淋しく終わっているように感じてしまうが、
それぞれの人たちは全員やりたいように生きており、
ハッピーエンドとは何か
幸せとは何かを
自分はどうしていたいのか
考えさせられる。 -
徐々に世間との接点が増えていく家族。だんだんにはなれていく家族。
ラスト近くの物悲しさと、凛としたなんとも言えない雰囲気。
読み終わりの感情が微妙で、また読み返したいような、もう自分の中にしまい込みたいような複雑な気持ちです。 -
かなり裕福でとっても風変わりな大家族の物語。
親世代、子世代それぞれの若かりし頃、幼いころ、
青年期、壮年期など章ごとに語り手となる主要人物を
変えて語られる長い長い年月の物語。
ふーむ、ホントに長かった。
個人的には、良くも悪くも印象が残りにくい物語だったな。
早く別の物語を読みたくて、さっさと読み終えたい、
そんな気持ちでいっぱいだった。 -
奇妙な一家のお話。
章ごとに語り手と年代が変わり、ワープするような感覚で楽しい。
一番好きなのは桐之輔叔父。海外に出て、日本でのバックグラウンドから切り離されて、一個人として日々を過ごす姿が清々しくて気持ちいい。
日本に帰ってからも、奇抜なファッションや、一家とは一見そぐわない口調(語尾を延ばして話すのだ。今で言う、チャラい男の口調に似た感じだろう)で自由奔放に振る舞う姿、甥や姪に対する愛情ほ微笑ましい。
だから、そんな彼の死の場面は涙が止まらなかった。
菊乃は、若い頃のはちゃめちゃぶりが好感を持てた。父親に反発して家を出て、不倫の末に子供を作り、その子を実家に戻って昔からの許婚だった人と育てる。単には信じがたい。
でも、夫にも愛人がいて(しかも最後には夫と離婚する)、更に遡ると母親の絹も、彼女の夫(菊乃の父親)ではない人を愛していたという事実には驚きを隠せない。そしてその人間関係が深く深く繋がっていることにも。ここまでくると、作者の技量に敬服するという次元の話になってくる。
読んでいて面白かったのは、この風変わりな一家の、一般社会との違いが浮き彫りになるエピソードたち。
家庭で勉強をしてきた子供達が小学校に通わされたり、大学に入り恋人を作ったり。今まで当たり前としてあった自分の周りの人たち、習慣なんかが、決して皆に通用するものではないことが浮き彫りになる。
それら異質なものへの接し方も、人それぞれ。光一は甘受して、結婚し家を出るし、陸子は馴染めずに結局家にいる。
長い物語だけど、読み終えた後も暫く頭から離れなそう。 -
桐叔父が亡くなって以降、どんどん寂しさを感じるようになってくる。
あの天真爛漫さが、大家族をいかに明るく保っていたか。
絹さんの物語は、老いるとはこういうことかと哀しくなった。
けれど死ぬことは怖くないのかも、と思えた。
あの賑やかだった柳島家からどんどん子供たちが巣立って行って、最後は3人きりになってしまうのが堪らなく寂しかった。
けれど人生ってこういうものだなあ。
常に淋しさに備える心構えが必要かもしれない。
菊乃は好きになれない、という意見が多いようだけれど、最終的に夫に去られる菊乃に同情した。
因果応報ということかなあ。