メイン・ディッシュ (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087474244

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  • ある雪の日、劇団女優のユリエはミケさんという男と出会い、一緒に暮らし始めた。
    プロ顔負けの料理の腕を持っているミケさんは、劇団が遭遇する事件も見事に解決に導いていく。
    しかし、過去を明かさない彼には誰にも言えない秘密があった。
    ミケさんこと三津池修とは何者なのか――。

    連作短編集ですが、二つのストーリーが交互に語られるうちに中盤で絡み合い、一つの本流の謎へとつながっていく…その展開にもまた二重三重の仕掛けが施され、最後まで気を抜けませんでした。

    登場人物たちも、みんな魅力的でした。
    おいしそうな料理を作りながら飄々と推理をしてみせるミケさんの佇まいも素敵。
    サバサバした性格のユリエも好感が持てました。
    男性作家が描く女性はステレオタイプが多いので違和感を感じるのですが、ユリエの人物像はリアルで親しみがもてます。
    劇団の座付き作家の小杉も、いい味出してましたねー。
    毎回、的外れの推理を披露するピエロの役割を担っているのですが、愛嬌があって何か憎めない。
    核心を突いた推理をするかと思ったらいきなり突飛な方向にいっちゃって大きくはずしたりとか。
    彼が一番魅力的かもしれない。
    梁山泊のような劇団のわちゃわちゃした雰囲気も良いし、いつまでも読んでいたい、終わりが来るのが寂しいと思わせてくれました。

    ただ、長編としては構成も凝っているしストーリーのメリハリもあって面白く感じるのですが、各短編の謎解きには首を傾げてしまうものもありました。
    辻褄合わせというか、説得力に欠ける無理矢理な推理もあって、「有り無しでいえば無しかな・・・」って感じ。
    そこが少し残念です。

  • 文教大学図書館の所蔵情報はこちらです: https://opac.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=539595&test=t

  • 話の展開について行くのが難しくて、何度も前を読み返してしまいました。でもミケさんいいな!実在したら間違いなく惹かれそうです。

  • ミステリ色が強め。食べ物本という感じはあまりしない。小杉さんが中々に良キャラ。

  • ひとつひとつの短編で 物語を作りながら
    全体として ひとつの大きな物語にするという手法である。
    それで、ひとつひとつの物語では ストーリーになっているが、
    全体を通すと 不具合が 生まれる物語。
    つまり、都合よく破綻しているのである。

    評価がしにくい小説である。
    料理については 推理はあるが おいしいというだけで
    なんと表現力がないのだろうと思う。

    主人公は ミケさんということで、設定してみる。
    アペリティフ(プロローグ)
    雪の中にたたずむ ミケさん。
    ミステリーのどんでん返しを期待していた。
    『雪が、そんなに楽しい』と声かけられて、
    ネコさんに拾われる。

    ネコさん。主役女優。
    どうも、最後までイメージがわかないキャラクター。
    ミケさん(三津池修)にぞっこんであることは確かだが、
    なぜか、性格が悪そう。いわゆる根性わる。

    5人の学生の友達。
    貧しくて、ワンコイン(500円)出して、
    カレーを食べる。そのカレーがおいしいと言っても、
    タマネギをたっぷりじっくり炒めることのようだ。
    タマネギの甘味を引き出す。

    第1話 ストレンジテイスト→グルテンのフリッター 
    2組しか客を取らない料理店。
    そこは、とても人気があるが、
    季節の素材が、夏のもの、冬のものが混ざっている。
    世の中、旬がなくなった。そのため、旬のおいしさが消えてしまった。
    チロシン、ドーパミン、アンフェタミンが隠し味。

    第2話 アリバイレシピ→カレー
    伊能由佳里。カレー仲間の紅一点。
    レイプ、妊娠 そして 死んでしまう。
    それが、様々な不幸を引き寄せる。性格の悪さが引き立つ。
    恩田徹也が工学部の学生でカレーつくりの名人。
    彼も、自殺をしてしまう。
    泉谷伸吾(会社一筋、女房に逃げられる。実家は温泉旅館で裕福)は、
    カレーを作り 七年振りに滝沢良平と谷口優太を招待する。
    泉谷は会社を辞めて、作家になると言う。

    第3話 キッチンマジック→ラーメン
    ひったくりの話。高校生が死んでいた。
    中華料理屋の娘が劇団に入ってくる。
    そのラーメンを作ろうとするが ミケさん失敗する。

    第4話 バッドテイストトレイン→松花堂弁当
    滝沢良平は、料理人だが 臭覚障害者。
    ミケさんこと三津池修に、松花堂弁当をゆずる話。
    10日間 風呂に入らなかったから、匂いをまき散らすことが可能か?

    第5話 マイオールドビターズ→ビール
    自家製のビールをつくる。
    大金持ちの道楽。それがコマーシャルだったとか。
    劇団員が テレビに出れるようになったきっかけ。
    泉谷とネコさんは昔同棲していたということをしり、ミケさんは行方不明。
    一体いつ同棲したのか?泉谷は結婚してバツイチなのに?

    第6話 バレンタインチャーハン→タマゴチャーハン
    ネコさんが自慢の料理を作る。
    ミケさんに教えられた タマゴチャーハン。

    第7話 ボトルダミー
    ミケさんのつくり置きの1年経ったブランデーはちみつ梅酒。

    第8話 サプライジングエッグ 
    ミケさんは 三津池修と名乗っているが、本名は滝川だった。
    実験をあやまらせた谷口は 三津池修となのり、海外逃亡。
    (では、7年後にカレー料理食べた谷口はどうやって参加?)15年の歳月を得て、三津池修である谷口はもどってきた。

    第9話 メインディッシュ

    この物語は 入れ替わりがあり、それが、よくわからないようにしてある。結局 作者も混乱している。それが、ますますわからない状態に。
     

  • 料理系にミステリーが加わった本だが、ストーリーやキャラクターが自分にはあまり合わなかった。

  • 言うなれば「巧緻」。技巧を凝らしたシェフのお任せコース。
    作中の料理が美味しそうなミステリと言うと石持浅海『Rのつく月には気をつけよう』がとても魅力的だったが、こちらもお腹が空く。
    連作ミステリが収斂していくさまは実に好みだ。どんでん返し好きとしてはもう一ひねり欲しいところだが。7.5

  •  主人公がものすごいウザい頭の悪い責任感のない都合のいい美少女で、ふわふわしててワケワカンねえイカニモ作者に創作されたような美青年が飯を作ることで、美少女の回りの人間関係の問題を解決する話。
     美青年の方は薄ぼんやりした実像しかないから置いておくけど、美少女の方はさすがにキモい。周囲で起きる事柄に対して、心の中でツッコミすぎ。そのツッコミがまたお寒い。「化学構造式見ると気分が悪くなる」っていうのもキモい。読者に媚びてるのか何なのか。
     これが真面目な小説だと思うから腹が立つ。ライトノベルならあるある設定だし納得も行きます。

  • ご飯本として読むには余計な描写が多い。少し前のニッポンミステリーて感じ。

  • 紅神楽という劇団の看板女優であるネコさんこと紅林ユリエ。劇団の座付き作家の師匠こと小杉隆一,そしてネコさんの同居人のミケさんこと三津池修。この三人のキャラクターを中心に,伊能,泉谷,谷口,滝川といった大学生達の話が紛れ込み,二つの話が交錯していくという設定。ひとつの大きな話をつくる11の短篇。個々の作品の感想などは以下のとおり。

    ○ アペリティフ
     エピローグ。雪の日に街を歩く謎の男

    ○ ストレンジ テイスト
     劇団紅神楽の次回公演のミステリ劇「未明の家」が完成しない。網野屋という店に店主の妻とその愛人がやってくる。そして,店主か,愛人のどちらかが死ぬ。料理店の店主が犯人なのか?被害者なのか?小杉隆一は,そのどちらにせよ,納得する動機が思いつくことができず,台本を完成することができないのである。ミケさんは,師匠が作った台本に出てくる料理のメニューから,隠された伏線を作り出す。料理店の店主の料理の秘訣は,料理に入っていたアンフェタミン=覚せい剤だったのだ。そして,妻の愛人はスポーツ選手。ドーピング検査で料理の秘密がばれるくらいなら,殺人者になることを選ぶ…。伝説の料理人のこだわりが動機となった。この動機になっとくした師匠は,台本を完成させるべく,執筆を開始するというオチ。話のテンポ,キャラクターの造形の秀逸。傑作といっていいデキ。

    ○ アリバイレシピ
     いわゆる,飴色玉ねぎを作り方がアリバイトリックにんっている作品。伊能由佳理の復讐に利用され,死に至る前の最後の告白の場に呼んですらもらえなかった泉谷という男の悲しい話。なんとも言えないいやな読後感だが,アリバイトリックはさておき,話の作りがうまい。これも傑作といっていいデキ

    ○ キッチンマジック
     再び,紅神楽という劇団の話。師匠,ねこさん,ミケさんの三人がメインキャラ。手際のよすぎるひったくり犯と,ミケさんがラーメン作りに失敗する話。三人組みのひったくり犯が,事故で仲間のひとりが死んだ点を隠すために,ひとりを被害者に仕立てあげる話と,死んだ父のラーメンの思い出がつらい思い出だったので,ミケさんのラーメン作りを失敗させた劇団員の話。これもなかなか。

    ○ バッドテイストトレイン
     滝沢良平という男と,みんなからミケと呼ばれる三津池修が出会う話。滝沢が嗅覚障害者であることと,奇妙な乗客が犯人と警察であることを推理する話。これは普通のデキか。

    ○ マイオールドビターズ
     三度,師匠,ねこさん,ミケさんの話。劇団を貸し切って自分のための公演を行おうとする金持ちが出てくる。師匠は,館の主人が偽物であることを見抜くが,何らかの犯罪に巻き込まれたと推理する。しかし,真相は,CM撮影だったという話。これにより,劇団員が有名になり,テレビ進出を果たしていくという展開になる。また,ねこさんんは昔,泉谷という男と同棲していたことをミケさんに語ると…ミケさんはねこさんの前から姿を消す。

    ○ バレンタインチャーハン
     ミケさんがねこさんの前から姿を消して半年たった時点の話。紅神楽は,CM撮影がきっかけで劇団員がテレビ進出を果たし,座付き作家だった師匠はミステリ作家としてデビューしている。ねこさんが,ミケさんから唯一教わったチャーハンを雑誌に掲載するが,そこで犯罪まがいのことが起こる。ねこさんが作ったチャーハンを食品サンプルを使って撮影し直していたというオチ。作品としては普通程度。しかし,この話から,二つの時間軸の話が交錯してくる。

    ○ ボトル”ダミー”
     ミケさんが残した梅酒をめぐる話。なお,「アリバイレシピ」と「バットテイストトレイン」は,師匠が作家の作中作という位置づけになっている。夏樹裕美が率いる劇団夏毅組の座付き作家の自殺の話が絡められる。真相は座付き作家がダミーで,夏樹裕美が本当の座付き作家だったのだ。最後に,泉谷から,滝沢がなぜ三津池修になったのかの話を聴こうとするところで終わる。

    ○ サプライジングエッグ
     ミケさんと泉谷の関係,ミケさんと滝川の関係が明らかになる。滝川と泉谷が大学生のときに,恩田徹也という研究生が自殺した事件の真相。それは,谷口という男が,生卵を凍らしておき,実験データを狂わせたからだった。罪の意識を持った谷口は,三津池修と名を変える。しかし,それでも罪の意識は晴れない。滝川は,三津池に外国を旅するように言い,時効が中断しないように,自らは三津池として日本に残った。15年が経ち,三津池は帰国し,ミケさんは,滝川に戻る。そして,ネコさんのもとに帰るという話。短編としては普通程度。しかし,キャラ設定がいいので,結構入り込んでしまう作品。良作。

    ○ メインディッシュ
     エピローグ。ネコさんのもとに,ミケさんが戻り,劇団紅神楽が久々の公演をするという話。

    ○ 特別料理
     ボーナストラック。解決編を考えずに,問題編を雑誌に掲載した師匠は解決編を書く事ができず,苦悩する。ミケさんは,師匠の話を聴いて,とんでもない真相が隠されていると師匠に話す。マッサージ機械を改造した電気屋が犯人で,マッサージ機を利用していたことを隠すために死体を切断したのだという…。かくして,またひとつ,新たなバカミスが生まれるのだった…。ボーナストラックとしてはこの程度。最後の最後で,「毛利多喜子」が「北森鴻」のアナグラムであることが分かるというオチ。

     個々の短篇のデキがよい。そう思わせるのはトリックのデキではなく,ミケさん,ネコさん,師匠のキャラクターによるところが大きい。メインとなる謎は,ミケさんの正体は誰か?ミケさんはなぜ,ミケさんという名を騙っていたのか?この謎の真相は,「ふーん」と思える程度だが,キャラクターがいきいきしているので存分に楽しめた。★4で。


     

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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