痴人の愛 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005010

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる私も主人公と同じ見栄の塊だと気づかされる。
    どうして読んだ後もこの本の事を考えてしまうんだろう。
    文豪ってすごい。

  • 思うところあって谷崎。
    谷崎はたしか学生時代に「細雪」を読んだくらい。
    恥ずかしながら、ほぼ「通過していない」と云っていいでしょう。
    「もう一度、ジェームス・ブラウンから聴け」てな心境で、大正14年に刊行された本作を手に取りました。
    「今も色褪せない名作」といったあたりが常套句なのでしょうが、色褪せないどころか今も新鮮で艶めかしく、濃密な色香を放っていて夢中で読み耽りました。
    長年の風雪に耐えてきた文豪の作品は、やはり違うなと改めて実感。
    主人公の譲治は、一回り以上も年下のナオミと同居生活を始めます。
    ナオミはまだ数え年で15歳です。
    この幼気な(というかかなりマセてはいますが)少女を自分好みの女に変えようと、譲治は、いわば〝調教〟に励みます。
    ところが終盤、立場は変わり、譲治はすっかり大人の女に変貌したナオミの意のままに操られるようになります。
    ナオミの馥郁たる色気を描く谷崎の筆の容赦のなさと云ったら。
    譲治はナオミに触れたい一心で何とか隙を窺いますが、ナオミはのらりくらりと交わして指一本触れさせません。
    まことに悪魔のような女です。
    私は譲治にすっかり感情移入してしまい、何度も身もだえしました。
    で、ナオミは最後に譲治に馬乗りになって、全ての要求を無条件に飲ませます。
    その執拗さ周到さには驚き呆れました。
    そこまでやるか、と思わず突き込みを入れたほどです。
    まったく女ほど怖いものはない。
    強き者、汝の名は女なり。

  •  喫茶店で働く15歳の少女ナオミを自分の理想の妻に育て上げようと考えた河合譲治。しかし、河合は徐々にナオミの言動に抗えなくなってしまい…

     読む前はナオミがどんなに魅力的で危険な魔性の女っぷりを見せてくれるのか楽しみにしながら読み始めたのですが、ちょっとイメージと違ったかなあ。言動が思ったより露骨で下品だったなあ、というのが正直な印象。

     ナオミに対しそう感じてしまったので、譲治がナオミに囚われていく描写もイマイチ入り込めず…。このあたりは完全に自分の好みの問題だとは思いますが…。

     読み始め当初はナオミに囚われた譲治に対し、「馬鹿だけどかわいそうだな」などど少し同情的に読むところもあったのですが、
    譲治がナオミと喧嘩し「出ていけ」と啖呵を切ったにも関わらず、その後彼がナオミの少女時代から今までの身体の成長の様子を記録したノートを読み返し、後悔する場面を読んでその感情が消し飛びました(笑)。ナオミも大概だけどあんたも相当だよ……。

     二人の関係性がこうなった原因は結局どっちのせいということもなく、どっちもどっちだったのだろうな、と思いました。

    「女は恐ろしい」という言葉がありますが、この本を読んでいると女が恐ろしいというよりかは、破滅すると分かっているのに、結局本能に負けてナオミとの関係をズルズル続けてしまう譲治を通して見えてくる男の肉欲、性欲の恐ろしさ、というものの方が強く感じました。まあ、本人はそれに満足しているみたいなので、読者がとやかく言うことでもない気はしますが。

     譲治のナオミに対する感情って愛なのかなあ…

  • 恐ろしい程気持ちが悪くて美しい作品だった。
    ナオミの妖艶さに河合がひれ伏し堕落していく様はただただおぞましかった。
    美しさを求めるあまり世の理も目の前のことも失われるのが怖かった、美を至上としても、美の感覚は人それぞれ違う、けど美!美!美!だった!上手くまとめられないけど!

    ナオミの接吻を椿の花弁が押し付けられるようだと表現したり肌の白さを林檎の実のようだとたとえてるの素敵、女性美を日本語でここまで表現してるのすごいなぁって。

  • 高校2年生くらいの時に読んだ心から大好きな小説。

    これを読んで、本って面白いなってなったような作品。

    艶かしい足が容易に想像できて、わたしも痴人の愛をきっかけに足フェチになりました。

    不釣り合いな愛。自分が相手を思っていても、相手がぞんざいな扱いをしていたら、自分はますます自分がわからなくなる。

    狂う。

    ちなみにこれの増村保造の映画もすごく良かったです。

  • 大人の男が、自分の妻にふさわしい女を育てたくて、少女と一緒に暮らす話。

    ナオミとジョージの変わっていく様。
    描写が素晴らしい。
    読み終えた後数日、2人が脳裏に浮かんだ。

    読み始めは、昔の口調にモヤモヤしたが、途中から気にならなくなった。

    ジョージのように愛してくれる人が欲しいが、
    ジョージはナオミだからこそ、あの愛し方ができるのでは。
    普通の女性だったら、あんな風に愛せなかったのかもしれない。

  • ナオミの魔性に侵され苦しみ堕落していく主人公の様子が凄まじく、小説の世界に引き込まれてしまい谷崎潤一郎の文章の凄さを改めて感じるものだった。
    騙されて翻弄されても尚、男を狂気の沙汰に貶めていくナオミは『酷い女』なのだが、最後の『これを読んで馬鹿々々しいと思う人は笑って下さい。教訓になると思う人は、いい見せしめにして下さい。私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。』と言う締めくくりは、全ての読者を納得させる、ではないが、何処かしらに落とし込んでくれるものだと思った。
    読者に語りかける一人称と言う形式が一層リアリティを増した様になっているのも面白い。大正時代の街の様子、生活様式や流行り、風俗、価値観に触れる事が出来るのも近代日本文学を読む楽しみの一つ。

  • おもしろかった、読みやすい。
    愚かとは思う一方、まあこれはこれでよいのではとも思う。

  • 谷崎潤一郎は初読でしたが、読んでみると文章はとても読みやすく、終始危険な匂いのする展開にハラハラしながらも先が気になり、一気に読んでしまいました。
    譲治は女性の美的な容姿に対してのこだわりがものすごく、女性の身体のあらゆる部分に対してどのような形で等細かく具体的に描写されているところが面白かったです。よくここまで細かく文章にできるよなーと作者の谷崎の凄さと奇人さを感じます。

    ナオミが15歳のあどけない少女だったところから、譲治と暮らしはじめ、お金をもらい贅沢を覚え、自分の容姿に対しての世間からの評価も分かっていき、次第に我儘で口調も行動もガサツで下品な女に変貌していく様も見事でした。

    他の谷崎潤一郎の作品も読んでみたいです。

  • 時代が変わっても男って、、、と思ってしまった。主人公に同情するか、共感するか、呆れるか、楽しみ方は色々。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

谷崎潤一郎の作品

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