痴人の愛 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101005010

感想・レビュー・書評

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  • 直接的な性表現を遣わずに、
    ここまで耽美なエロスを描けるなんて。
    その切なくも愛すべき倒錯の世界は、
    湿った感じを醸し出す大正ロマン。
    堕ちてゆくと知りながら、
    主人公のロマンチックが止まらない!(笑)
    究極の精神的マゾヒズムだ。

  • 気持ち悪くも変態とも感じなかった、自分も変態の部類なんだと気づいてしまった、、

  • 初めて読んだ谷崎潤一郎先生の作品でした。
    妖艶で美しくなっていくナオミは私の中では高貴な野良猫のように感じられました。
    現代でクズ男に沼っている女の子たちも譲治のように、頭ではわかっているけど心がついていかないような気持ちなのかななどと重ねて考えたりもしながら読み進めることができて面白かったです(^_^*)

  • 美しい文体で読みやすく、容易く一気読みしてしまった。

    ナオミの蠱惑に翻弄される主人公が絵かがれる。

    肉体美を希求し、翻弄される事を喜びと感じてしまう異常性。いや、異常ではなく、肉体美と性浴に取り憑かれる我々を思えば、あくまで普遍的で社会的なマゾヒズム構造を描いた作品なのかもしれない。

  • 谷崎潤一郎のしつこくねちっこい書きぶりがこの小説にぴったり!一回り年下の直美に、振り回される譲治。直美にどこまでも翻弄され、落ちてゆく様が最後はコメディーのようであった。
    純文学って、学生時代はとっつきにくいと思っていたけれども、大人になってから読むと「こんなにぶっ飛んでんだ!」と思う。

  •  気っっ持ち悪っっっ!読みながらところどころ笑ってしまうくらい気持ち悪かった。でもその一方で、すごく興味深い、今までにない読書体験でもあった。
     内容はただ気持ち悪いだけで(ごめんなさい)、これといった山場もなければ最後のどんでん返しもない。主人公の河合譲治を筆頭に登場人物のほぼ全員に嫌悪感を抱くし、次の展開も読めるし、大方予想通りになったし、あらすじを求められたら「妖艶な若い女に翻弄された愚かな男(=痴人)たちの物語」で事足りる。でも、なぜか最後まで読みたいと思う。なぜだろう。その答えは間違いなく、圧倒的な文章の力だ。もし仮に谷崎潤一郎がこんなに文章が上手ではなかったら、あるいは同じテーマを描いた他の作家の文章だったら、河合の気持ち悪さがその気持ち悪さのまま直球で届いてしまって、きっと半分も読めなかった。でも谷崎潤一郎の文章が美しくて、冷静で、洗練されていて、読んでいる最中は「あれ、もしかして河合の存在はそんなに気持ち悪くない? これぞ純愛???」と錯覚してしまう。でもぱたっと本を閉じた瞬間、谷崎の文章としてではなく自分の言葉で内容を反芻し、情景を思い描いた瞬間、そこはかとない気持ち悪さがいっきに襲ってくる。それなのに、しばらく経つとまたページを開きたくなってしまう。そして気付けば最後まで読んでしまった。エンディングもなんということはない、河合らしい気持ち悪い終わり方。でも時間の無駄だったとか読まなければよかったとかは全く思わない。不思議な体験。たぶんわたしはこの小説で圧倒的な文才というものの怖さというか不気味さに触れたのだと思う。

  • 表現が細かく綺麗で、読者を2人の世界にズブズブと没入させてくれるなと感じました。最後の文の締め方も、ナオミのみならず譲治の(男の?)狂気を見せしめるかのようでした。他の作品も読もうと思います。

  • 真面目なサラリーマン・河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを理想の女性に育て自分の妻にする。成熟するにつれ妖艶さを増し、男友達も群がり、譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。

    ナオミに対する譲治の愛憎。狂気的なまでの渇望、何度かある二人の喧嘩のシーンは圧倒的。

    女性の服装(着物)へのこだわり、活動写真、社交ダンス(当時、女性は着物で踊っていた)など、大正時代の風俗もたくさん描かれている。また、西洋人への卑屈なまでの崇拝と、その裏返しとしての軽蔑も印象的。

  • ナオミに最後にギャフンと言って欲しかったが、そうはいかないところが天性の悪女と痴人。

  • とんでもねぇもんを読んでしまったな...
    これが一番の感想です。笑

    田舎出身の生真面目なサラリーマンが、カフェの女給の少女を自分の理想の女に育てるべく引き取る。
    その女は天性も相まって魔性に育ち、男が群がる...

    と、なんとなくストーリーは想像通り。
    よくあるドロドロ漫画でも同じような展開はある。でもこれは私小説として生真面目なサラリーマン、その彼自身が自嘲も込めて語る体裁をとっているため
    一緒になって舞い上がり、落ち込み、
    一緒に堕落し、憤り、失恋するといった具合に
    感情のジェットコースターを伴走する感じ。

    おい主人公!しっかりしろ!!!
    と何度も言いたくなるけど、これがマゾヒズム文学の金字塔です、と言われれば納得...

    先の展開は読めているのに読む手が止められず
    久々にワクワクしながら読了しました。

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著者プロフィール

1886年7月24日~1965年7月30日。日本の小説家。代表作に『細雪』『痴人の愛』『蓼食う虫』『春琴抄』など。

「2020年 『魔術師  谷崎潤一郎妖美幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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