- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101005010
感想・レビュー・書評
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直接的な表現は避けてあるのに、ナオミの艶めかしさが目に浮かびます。
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若くて美しい女に溺れていく男の話
そう言ってしまうと、ちょっとチープになってしまうが…分かりやすく言えばこんな感じだと思う。
友達のキス、これを考えつく谷崎潤一郎は、やっぱり日本の宝だと思う。笑
でも、常人には思い付かないような発想だし、本当ぶっ飛んでるなと思う
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p.263
そこには恋人としての清さも、夫婦としての情愛もない。そうそんなものは昔の夢と消えてしまった!それならどうしてこんな不貞な、汚れた女に未練をのこしているのかと云うと、全く彼女の肉体の魅力、ただそれだけに引き摺られつつあったのです。
(略)いや時としてはその卑しむべき娼婦の姿を、さながら女神を打ち仰ぐように崇拝さえもしたのですから。
貞操や情愛を超えた、純粋な肉体の美しさ。しかも悪魔のような肉体の魅力。その自由奔放な精神。
漠然としたあらすじでは、男を手玉に取りつつも知的で美しい女性、というのを想像してた。実際は、わがまま放題奔放でだらしない女性、でもそうなればなるほど崇拝してそれに目をつぶり金を貢げば極上の女性に跨ってもらえる、これはこれで惨めでも幸せな夫婦。
口に息を吹きかけてもらう「友達のキス」、寝れば沐浴すれば冴え渡る肌の白さ、お馬さんごっこ、足首の締まり方と様々な履物、質感と柄の凝ったシンプルでエキゾチックな着物と似合うナオミ、谷崎の倒錯した美学、見事。 -
潤一郎的鉄板シチュエーション
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全集で「痴人の愛」のみ読んだ。28の譲治は、15の少女ナオミに一目惚れし、引き取って自分好みの女性に育てようとするが、いつのまにかナオミに翻弄されていく。はじめは譲治に対してそれはあかんやろ、と思っていたが、途中からはナオミに対してもおいおい、という気持ちで、もうどう読み進めればいいのか。なんやかんやでお似合いの二人。瀬戸内寂聴曰く、ナオミのモデルになったせい子は、宮崎が毎月お金を送ってきていたことに対し「十五の時の私をやっちゃったのよ。犯罪でしょ。いくらむしり取っても大丈夫」と言っていたそう。
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年下の女性への盲目的な恋により破滅する男性を描いた小説。一回りも年下の女性と同棲し、自分好みの女性に仕立て上げようとするのは、ある意味では男性の夢ともいえるのかもしれない状況なのだが、みるみる膨れ上がるその女性の欲望に飲まれ、結局は女性にひれ伏すこととなってしまう。この生き様はみっともないと思わざるを得ないのであるが、そこが男性の弱いところなのかもしれない。
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なぜかすごく期待して読み始めたら時代背景!!!!!ってなった。
そもそも「ナオミ」って名前がハイカラとからいやもうそもそもハイカラって!!!ってツッコミどころ多。それと、話し方も昔だから「よう!ナオミちゃん!」とかね、「よう!」ってなに!とにかく面白かった。
読み終わったあとにこの作品が大正に出版されたと知り、なんて読みやすい本だろうと感心した。
ただ、話はごく単純なアバズレ女に振り回される中年だった。いや、13歳の年の差なんて現代ではそう珍しくもないけどね。
ただ、もう初めから譲治さんはナオミの若さに惹かれてるし、ベビちゃんとかって呼んじゃってるし、甘やかしちゃってるしそもそもが対等じゃない付き合いなのだから、溺れていくのも当然と思うけど、ナオミが羨ましい!!! -
近代文学を読もう16。
再び谷崎潤一郎、ついに読んでしまったよー。
身も心も、そして金も(←)全てを捧げ尽くす、谷崎のマゾヒズム炸裂の『痴人の愛』。
オーディブルにて読了。平川正三さんのナレーション、ナオミの婀娜な魅力が十分に伝わりました。
女性経験がなく、「君子」とあだ名がつくくらい真面目なサラリーマンである28歳独身の河合譲治は、浅草のカフェーで出会った15歳の美少女ナオミを見初め、自分が教育と作法を身につけさせ、夫婦になろうと思って彼女を引き取り、一緒に住むようになる。
ナオミ16歳のときに二人は入籍。しかしナオミをレディーに仕立てようという彼の期待は、次第に裏切られていく。ナオミは怠惰で行儀が悪く、言葉遣いも男のようで、浪費家で飽きっぽい。ナオミの散財で、金銭的な余裕はなくなっていった。
しかしナオミは次第に女としての魅力を開花させていき、譲治はナオミに抗うことができなくなる。
ある日、彼が早く家に帰ってみると、玄関の前でナオミが若い男と立ち話をしていた。ナオミはお友達だと否定する。
しかしまもなく、ナオミが他にも何人もの男と深い仲になり、卑猥なあだ名までつけられていることを知り、一切の付き合いを禁じる。しかしナオミがおとなしくなったのは表面だけで、また男と密会していることを知り、ついにはナオミを追い出す。
追い出したものの、譲治はナオミが恋しくて仕方がない。反対にナオミは、知り合いの男性の家に泊まり、豪華な衣装で遊び歩いて楽しく暮らしているようで、自分への未練などなさそうだ。
もう忘れようと決意していた譲治のもとへ、ナオミがふらっと現れるようになり、肉体的な魅力をふりまいて翻弄する。ナオミは自分の魅力を十分に知って、譲治が自ら陥落するのを待っていて…。
譲治は全面的に降伏し、すべてをナオミに捧げると違う。
う、うん、すげー話でした。ここまで恋焦がれてしまうナオミの魅力。惚れたもん勝ちと言うけど、その一番沼の深いバージョンでしょうか…。大正時代に書かれたというが、現代でも読んでギクっとする人は多いのではないでしょうか?笑
あざとい女って女からは嫌われるけれど、男の人は、自分の気をひこうとするそのあざとさが可愛いって思うものらしいよね。ナオミまでいくと、さすがに可愛いとか言ってられないけれど。
翻弄されて身悶えしながらも恍惚としている譲治。彼なりに幸せな人生だったといえるのでしょう…(でも金の切れ目が縁の切れ目になってないか心配だな)