斜陽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 1310
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006024

感想・レビュー・書評

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  • 再読した。
    太宰はやっぱりすごいなぁ。
    文章の流れみたいなものがとても上手い。ところどころにあるユーモアも良い。
    多様な読書体験ができる。

  • なんでしょうね。太宰さんの小説って、人の深層にある闇を描きますよね。
    ただ、人間失格よりそのバランス感が丁寧かも…人間失格って死際に書いた作品だけあって、かなりなりふり構わずというか、破壊力みたいなのがあったけど、斜陽はもっとじわじわと侵食されていく感じ。
    何にも満たされない、理解されない者同士が心の隙間を埋め合うのは同じですね。なんかこの「あなたは私にしかわかってあげられない」感が、女性にモテた原因だったんだろうな。

  • 断片でとるととても秀逸で、寓話に富んでいる。
    全体を見ると、これはこの時代に、その空気のなかだからこそ書けるのだとおもう。
    太宰はほんとうに、その時代の空気感、人の心の機微を肌で感じる作家であったのだ。
    その肌感覚の鋭敏なること!
    それを言葉で表せるかという驚きが、何十年もたった今でも、鮮度高く、身に迫ってくるのだ。

    さいごの解説も秀逸です。

    だいぶちがうけど、朝井リョウとかはいつかこういう本が書けるかもしれない。

  • 2019年1月5日、読み始め。
    高校生の時に通読したと思う。当時から40年位たってから再読することになる。没落、人間の弱さ、時代の流れ、など、高校生時代では理解不能だったことも、歳を重ねたことで、いくらかはわかるようになってきた。名作を再読する意味がある所以である。

    2019年1月19日、95頁まで読んで終了とする。

  • 太宰治は、これを読む前といえば、
    「走れメロス」しか読んだことが無かった。
    本来はもっと、濃い、暗い、どんよりとした作品を書く人、
    というイメージはありました。
    でも、わざわざ暗くて後味の悪そうな本は読みたくない、
    と、元々「その手」の本は敬遠するタチでした。
    それが、授業の関係上避けられなくなって、読んだ作品。

    「斜陽族ってなんだそりゃ、、、」
    滑稽だな、位に思っていましたが、読んだ後で前言撤回。
    滅びの美とは、このことか、と。
    人が堕ちていくとは、このことか、と。
    それを「革命」と呼んでみたり。
    何しろ、かず子の言葉遣いがあまりに素敵。
    直治の哀れな手記も、
    どうやったらこんなに退廃的な文が書けるのだろう、と思った。
    もっとも、後に「人間失格」を読んで、
    更に強烈な廃人を目撃することになったのですが。

    カズオイシグロの「日の名残り」と同じタイミングで読みました。
    それぞれ、人生の黄昏時を描いているわけですが。
    「日の名残り」のスティーブンスは、
    滅びていくものを受け入れ、
    新しい幸せに向かっていることが見えるけれど、
    直治は死ぬし、美しいお母様も死ぬ。
    かず子も、希望なんて実際見えやしない方向へ向かう。
    より不幸へと向かっているように見える。
    向かう方向は、違っていても、
    黄昏時が美しいことには変わりがない。

    ぼんやりとそんなことを思ったものです。
    あまりにインパクトが強くて、
    本当に、感じたことを丁寧に表現しようと思ったら、
    以前書いた小論文と同じ位、
    強烈に神経張り巡らして、推敲して、推敲して、
    じゃないと書けないや。だからこの辺で。
    M.C.


  • 1.おすすめする人
    →日本文学に興味がある、太宰治を知りたい

    2.内容
    →読み終わった後に何とも言えない
     空虚感を感じる作品。
     没落していく貴族が、社会に抗うこともできず、
     人生を終えていく。
     悲しくて、なんだか辛い。

  • 深いなぁ...

    没落した貴族の家庭で人が破滅していく様を描いた作品。

    ある意味で戦争が起こした悲劇を感じることが出来た。


    説明
    内容紹介
    直治が南方から帰って来て、私たちの本当の地獄がはじまった。

    〝斜陽族〞という言葉を生んだ名作。没落貴族の家庭を舞台に麻薬中毒で自滅していく直治など四人の人物による滅びの交響楽が静かに始まる。

    破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため"生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族"という言葉を生んだ太宰文学の代表作。

  • 人間くさい女性だった。この人は私がいないとだめになるの、みたいなメンヘラに似たような人。
    現代にこのような人はあまり見ない。遠慮し合い、空気を読みながら、自分が変わればいいと自分の気持ちを抑え込む。

    斜陽の女性のように、何がなんでも自分が正しいと思っている人が現代にいると、煙たがられるんだろうな。自我が薄い世の中よりかは楽しくなりそうなんだけど、、


  • 日没前の太陽を意味する「斜陽」のように貴族階級から没落しながらも最後まで輝き続けるかず子やその家族たちの姿が描かれている作品です。
    終盤あたりで紳士が「東京で『こんちわぁ〜』と軽薄な挨拶ができないと生きていけない」と言いますがこの言葉が貴族社会の崩壊を一言で表しているのかなと感じました。
    高度成長期の足音が近づこうとする戦後は頑張って働けば誰もが資本を持てる時代です。競争相手も増えることで悠長に過ごすとが減り挨拶や人間関係も軽薄になる。今まで働かず自分のペースで生きてきたかず子たちにとって生きづらい時代になったのかもしれません。
    そしてかず子たちの奥ゆかしく品のある話し方も戦後から消えつつある気がします。それは経済成長と共に日本人の大切な何かを失おうとするサインであるのかもしれません。

  • 気持ち悪い気もするが読後感は悪くない。むしろ良い。しっかり全てを提示してもらっているので、あとはどう受け取るか、受けとめるか、だけ。いい作品を読んだ、という感じ。
    上原は貴族の清さを嫌っている。かずこと関係を持つが妻の純真さを愛している。非常に気持ち悪い。人間失格の主人公に共通するものを感じた。
    少し上原の心理に共感してしまい、あーあとなった。でも自分に若干引く自分もあっさりしていて、そういうお話。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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