- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101104362
感想・レビュー・書評
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1-3巻が元の"白い巨塔"、4-5巻が"続・白い巨塔"。
大学病院内での教授の座をめぐる権力争いとその渦中で起こる医療ミスをめぐる裁判を描く。教授選挙の決着と医療ミス第一審判決までが本編、学術会議会員選挙と控訴審判決までが続編。
昭和の金と力の時代を描き切った作品。その意味では本編完結までが純粋な作品。
本編の医療ミス裁判の現実社会での反響が大きく、作成された続編では、裁判と主人公の身に起こる異変が並行して進む。結末は裁判と天命により主人公の人生にけりがつけられる一方、単なる悪役ではない誇り高き医療者の一面を示して終わる。 -
裁判の一審は遺族側の敗訴に終わった3巻。権力に迎合できなかった者は地方へ飛ばしたりとやりたい放題の新教授一派。当然遺族が納得できるわけではなく上告、二審へと話は進んでいく。
その間にも遺族側はワンマン社長を失ったことにより会社は左前になり倒産寸前まで追い込まれ悲惨な状態に。それでも弁護士をはじめとした正義の心を持つ者たちの協力で新しい証言や医学的根拠を見出すために奔走する。
さてそんな中、新教授は教授選で支援してくれた大ボス教授の思惑で更に日本学術会議会員の選挙に出ることになる。大ボス教授の思惑に乗せられた形ではあったが裁判の二審も学術会議選も私が勝つ、と野心をメラメラと燃やす。
権力の恐ろしさ、相手を意のままに操ってしまうその力に辟易しながらも遺族側に立って行動する人たちの屈せぬ心に勇気をもらいながら読んだ。本筋とずれた全く別の視点なんだけど、権力や名誉を得るためにやらなくちゃいけないこと大量にあってめんどくさそうだなぁ、よくやるなぁ...とも思った。
いよいよ次が最終巻...どんな結末が待っているかな。 -
里見は、地方に飛ばすと鵜飼教授にとって逆風になるから助かった。
助教授の次は教授、教授の次は学術会議員。
トップになるまで野望は続き、大変な労力をかける。ここまでした、費用対効果はあるのか。金が余っているから、費用を度外しに、名誉や地位を求めるのか。 -
財前がかつての患者と同じような手術をするのだが、その時の感情の動きが印象的。まるで呪い。
物語も佳境に入ってきた。
裁判の決着がこの物語の結末なのかなぁ。 -
権力を最大限に使って部下を思うままに動かしているように見える財前の中に、真実に対する恐怖や、孤独に耐える苦悩も垣間見える。
成果を求められ、比べられる世界で、患者の命に誠実に向き合い続けることは簡単なことではない。
周囲からの評価、権力や財力を抜きにして、自分が何をしたいのかを見つめることの大切さを感じた。
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一度は読んだ方が良い本である。
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【感想】
大作・白い巨塔も、気づいてみれば5分の4を読了致しました。
(ちなみに、面白すぎて本レビューを書いているこの段階で既に最終巻のラスト100ページほどまで読み終えております。詳しいレビューは5巻目にて書かせて頂こうかと思います。)
ず~っと胸糞展開が続きながらも、やはり山崎豊子の代表作の1つ、とてもとても面白い!!!
ネックとなっていた訴訟にも無事勝利し、また問題視している学術会議選挙も無事終えて順風満帆な様子の財前ですが、4巻目~5巻目にかけてこれまでうっすらと抱えていた小さな問題たちが段々と表面化し、財前の首を絞める展開が続いています。
どのように物語が終結するのかが今後の見どころですね。
別巻のレビューでも触れましたが、患者に対する医者や医療機関の姿勢、金銭価値、医局の封建性などなど、やはり当時と現代では大きく乖離している部分が多く感じます。
ですから、そのギャップや時代の変遷については、最終巻を読み終えた後にちょっと自分で調べてみようと思います。
「白い巨塔」を執筆するにあたっての山崎豊子の考えや執筆に至った理由なども、読後に照らし合わせると更に面白いかもしれませんね。
とにもかくにも、読み終えるのが非常に楽しみな1作品です。
【あらすじ】
浪速大学教授・財前五郎の医療ミスを訴えた民事裁判は、原告側の敗訴に終わる。
同じ大学の助教授の身で原告側証人に立った里見は、大学を去る。
他方、裁判に勝訴した財前のもとに、学術会議選挙出馬の誘いがもたらされる。
学会人事がらみの危険な罠を感じながらも財前は、開始された医事裁判控訴審と学術会議選挙をシーソーのように操り、両者ともに勝利することに野望をたぎらす。
【メモ】
p61
「しかし、何といっても学術会議会員の選挙だよ。地方区といえども、当選すれば、学術会議会員としての栄誉が加わる」
「その栄誉は欲しいし、鵜飼さんへのお返しは恐いしというところでしょう。教授になってからのあんたは、面白くなくなったわ」
ケイ子の言葉の中に、軽侮するような響きが感じとられた。
「何が面白くないんだ。僕ほどの名医に向かって、冗談にも失敬なことを言うなよ」
むっと不快げに言うと、
「名医というのは、腕と人格の二つ兼ね備わった人のことを言うのではないのん?」
ケイ子の顔を、複雑な笑いが浮かんだ。
p129
「最初は大学にいる時の煩わしい雑事を逃れて、研究に専念出来ることに大きな安らぎを感じたけれど、最近はそれ以上に、各科の研究者たちと忌憚なく意見を交換し、活発に仕事が出来ることが嬉しい。ここへ来てほんとによかったと思っていますよ」
p353
教授室に帰ってからも、財前は暫く安田太一の手術中に襲って来た不気味な思いが拭いきれなかった。
財前の胸に、いつか前任教授の東が「医者というものは、たとえ最善を尽くしても自分が誤診して死なせた患者のことは、一生心の中について回り、忘れないものだ」といった言葉が思い出された。 -
財前側の人間が皆ホントやな奴ばっかりです。
ケイ子さんだけは別。
特に国平弁護士と佃が本当に嫌。
逆に関口弁護士はすごく好感が持てました。
分野外のことを自分の知識にするのって難しいと思います。
佐々木さん一家の応援をしつつ最終巻に突入します。