- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101320816
作品紹介・あらすじ
「形而上学」「私は考える、ゆえに私は存在する」「超越論的主観性」-。哲学のこんな用語を見せられると、われわれは初めから、とても理解できそうにもないと諦めてしまう。だが本書は、プラトンに始まる西洋哲学の流れと、それを断ち切ることによって出現してきたニーチェ以降の反哲学の動きを区別し、その本領を平明に解き明かしてみせる。現代の思想状況をも俯瞰した名著。
感想・レビュー・書評
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この本を読まずして哲学を語ることなかれ。
西洋哲学の見方が変わること間違いなし。 -
本書は私の哲学の先生です。反哲学というタイトルに日本人でありながら西洋哲学を教えるということへの葛藤が表現されてます。教養として、ノートを取りながら読みました。
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哲学に反対している訳ではないので、タイトルを鵜呑みにしてはならない。ソクラテス・プラトン・アリストテレス直系の西洋思想源流を狭義の「哲学」とし、そうしたモノの見方をひっくり返したニーチェ以降の思想をして「反哲学」と言っている。そういう思想の入門書だが、主題(反哲学)を理解する前提である古来の哲学の概観だけでも十分に勉強になった。肝心の「反哲学」の部分は、解った気になりそうだけど、やっぱり難しいと感じてしまったのは、読者の力量の責である。普通?の一般向け哲学書物よりは、若干読みやすいとはいえ、遅々と何度も反芻しながら読み終えた。
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タイトルから、アンチ哲学!とうたった本に勘違いされそうだが、そうではなくとても平易かつ内容の濃い哲学解説書。
この本が言わんとする反哲学とはニーチェ以降の哲学のこと。
プラトンに始まる西洋哲学は、キリスト教、神との折り合いをつけるために自然を無機的なものとして捉えてきた。ただしそれにより、近代は破滅的な状況に向かってしまったため、ニーチェが自然の考え方を捉え直し、以降にハイデッガーやポストモダン、構造主義が続いて今がある、という話。
そのために、この本は主要な西洋哲学についてしっかりと書かれており、結果哲学入門といって差し支えない内容。
日本人には分かりづらい哲学や理性といった概念を分かりやすく伝えてくれる。とはいえ、後半に進むにつれて一読しただけでは僕には理解が及ばない難しい題材も多く、これから何度か読み返して勉強したい本だった。 -
哲学とはプラトンから始まる西洋固有の見方であり、日本では本当のところ理解しにくい、との出発点から、西洋哲学史が流れるように語られる。大変に興味深いく読めた。個別の哲学者の著作は読んでいても、なかなか俯瞰的な視点は得られないものだからだ。ニーチェ、ハイデガーに持ってくるまでが白眉か。仏教の縁起思想の位置づけを考える上でも参考になった。
・つくる、うむ、なるの三つで全ての神話が整序できる。
・丸山:つくるでなるを乗り越える。ハイデガー:なるでつくるをのりこえる。
・ソクラテスにあるのは知りたいという欲求であって、積極的に示すことはない。
・「書物の運命」
・デカルトの近代的自我は神的理性の出張所。
・神学、科学、哲学の調和の時代が17世紀の理性主義。
・ニーチェ、ヤスパース、ハイデガーは実存主義ではない。
・存在するものの全体を、生きておのずから生成するものと見、自分もその一部としてそこに包み込まれ、それと調和して生きる時と、その存在する者全体に<それはなんであるか>と問いかける時とでは、存在者の全体へのスタンスの取り方がまるで違います。 -
バートランド・ラッセルの『哲学入門』を読んだら、この「反」の方も読みたくなった。
あまりにもわかりやすく哲学史(反哲学史)を説明してくれているのに何より驚いた。
ものすごく大雑把に書くと、哲学というのはギリシャのソクラテス、プラトン、アリストテレスによって生み出されたものすごくローカルなもので、そのローカルなものがキリスト教とミックスされることで全ヨーロッパの学問の土台にまでなった。しかし、哲学というのは生成する「自然」(ピュシス)を否定することによって生じたすごく不自然な代物だった。
そのことを指摘し、批判したのが古典文献学者として出発したニーチェだった。ここから、ヨーロッパにおいても「反哲学」、「自己批判」の歴史が始まった。
何より痛快なのは、そんなローカルな出自を持つ学問だから、日本人に理解できなくてもそりゃ「当然 natural」だよ、と著者が考えている点。でもたまたまハイデガーを始めとするヨーロッパの哲学者たちが
自己批判を始めたから、もともと自然とともに生きてきた日本人にもいくらか哲学を理解できるようになっただけさ、といった著者の毅然とした態度がうかがえるところもスカっとする。 -
文庫で厚みもそんなになくサラッとした体裁の本ですが、とてつもない名著だと思います。倫理の授業で習ってもイマイチよくわからなかった「イデア」「純粋形相」「神」「理性」「精神」、、、これらが何であるか。第一章でいきなり書いてあって、ガツンときました。す、すげーーー!なぜ今迄誰もおしえてくんなかったの?ってくらいの驚き。
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さすがのわかりやすい文章。終盤のハイデガーあたりはきつかったが、とにかく「西洋哲学」=「プラトニズム」=「超自然的思考」=「神」であり、日本はもともと自然の中での考え方が根付いていたので哲学が育たなかったというあたりは非常に興味深かった。