- Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102159750
感想・レビュー・書評
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ついに完読。読み切ったという達成感のみ。ガモフ・アルファー・ハーマンのビッグバンモデル、ホイル・ゴールド・ボンディの定常宇宙モデル、パラダイムシフト、ペンジアス・ウィルソン、CMB放射、COBE衛星の観測。
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宇宙が膨張しているというビッグバン理論が、全ての星々が遠ざかっているというハッブルの観測結果により、アインシュタインが間違いを認めるほど優勢になった。だが、証明が完了したわけではない。「宇宙の大きさが一定でも、速度が早い星々だけが遠方まで到達可能なはず」「遠くまで到達した光はエネルギーが失われるため、赤いほうにずれる」といった無理筋なものから「観測結果の年代測定では、宇宙の方が星よりも若くなってしまう」「ビッグバン理論で元素分布を証明できるか?」といった当然の疑問まで、多くの批判検証にさらされることとなる。
天動説がそうであったように、今から思えば明らかに間違いであったと思われるような理論であっても、その時代に可能であった観測範囲においては、現象を説明するのに適していた。その多くが覆されてきたのは、観測の技術の進歩とともに、新たな科学の分野の登場があったからこそだ。
ラザフォードが原子構造から核融合を導き出し、星の誕生プロセスの解明から元素分布の謎が解き明かされ、宇宙の年齢は新たな多数の観測結果により訂正され、二次大戦における電波技術の発達の結果、電波天文学が誕生し、遠方のみに存在する若い電波銀河やクエーサーからの電波が観測され、ついては宇宙誕生の証ともいえる、宇宙背景放射が観測された。
かくして宇宙創生の物語は、神話と宗教の領域から科学へと至った。だが、そこで明らかになったのは、ビッグバンにより時間と空間が誕生したということだった。では、時間と空間が存在しない領域とは一体なんであるというのか。ベビーユニバース、パラレルユニバース、マルチバース。未だ創造の域を出ない領域であり、その端緒を現実世界で掴むことは論理的に不可能といったことすらあり得るだろう。だが、現時点においては、やるべきことは失われてはいない。宇宙の膨張を加速する暗黒エネルギー、銀河の星々の離散を押しとどめる暗黒物質。力の統一理論、ボース粒子、ヒッグス粒子、冥王星探査機。科学技術の進歩の限界は、論理的に証明されていない。 -
下巻は、ビッグバンの裏づけのための話と対案となった定常宇宙モデルの論争をポイントに話が進み、ビッグバンが現時点の結論として確からしいというところで話のピークをもってきている。エピローグとしては、ビッグバン直後のインフレーション理論や宇宙の構造等にも触れているが、その証明については、将来ということになる。
概要としては、元素の話から始まり、ガモフ、アルファー、ハーマンらの原子物理学により、初期宇宙は、陽子、中性子、電子からなる高密度のスープだったと考え、宇宙創造の瞬間から30万年後に光が自由に進めるようになり、その光のこだまは今も検出できるはずと予測された。
フレッド・ホイルらは、宇宙はある一点から開始したのではなく、永遠の過去から存在し、膨張はするが、希薄化した宇宙には新たな物質が補充されるという定常宇宙モデルを提示する。
1960年代に光のこだまが発見されたものの詳細なデータを取れるようになったのは、1992年に衛星を使っての観測から。そして、これがビックバンの証拠として認知され、定常宇宙モデルよりビッグバンが正しいという証明となった。
ビッグバン論争に一応の終止符が打たれたあと、宇宙が平坦に見えるのはなぜか?という疑問からインフレーション理論が出てきたり、銀河内部の星の重さが与える重力の研究から、なんか足りないねということで、暗黒物質の存在が認識されてたり、暗黒エネルギーとか。。
”2001年に亡くなったフレッド・ホイルは、準定常宇宙モデルは正しく、ビックバンモデルは間違っているという固い信念を墓場まで持っていったが、彼は自伝の中でこう述べた。「多くのビックバン支持者がやっているように、自分たちは正しい理論に到達したのだと主張することは、ほとんど傲慢に等しい行いであろう。もしも私自身が過去においてそうした傲慢の罠に陥ったとすれば、ひとときの思い上がりの後には必ず罰が下されたに違いない」こういう健全な反抗の精神は、本来的に科学がもっているはずのものであり、ゆめゆめ否定的に捉えてはならない。”
この書籍全般を通じて、宇宙についての論理と観測の両面からの追求が紹介されてきた。多くの研究者たちが、命をかけて、探求してきたものを感じることができた。
ビッグバンの名付け親にして、その対案の支持者であったフレッド・ホイルの自伝の引用では、これまでの宇宙探求の歴史をそのまま言い当てているようで、現在の観測データからビッグバンが正しいとは言えるが、遠い将来、別の観測結果が出てきたら、それもひっくり返ることを示していて興味深かった。
宇宙物理学が観測上の限界に達したことが、ウォール街そしてSNS企業への人材流出とつながってたりするのか?とか思ってみたり。 -
上巻ほどの勢いは無かったけど、上下巻通じて大変に読み応えのあるサイエンスノンフィクションでした。自分が生きている間に、どこまで人類は真理を突き詰められるのだろうかと、その先を知ることができない寂しさを感じる読後感。
■メモ
Ⅳ:宇宙論の群雄割拠
①ビッグバン宇宙VS静的で永遠な宇宙
・惑星の年齢よりも宇宙の年齢が若くなってしまう矛盾
・原子物理学にその論証のバトンが渡された。軽い元素が重い元素よりはるかに多い理由を説明できるか?
・ラザフォードは核融合を解き明かし、太陽の輝きが核融合によるものであることを示した
・1940年台、ガモフ、アルファー、ハーマンらは初期宇宙を電子、中性子、陽子からなる高密度のスープと考えた
・ビッグバン直後の高温度の中で核融合が進む→軽い元素についてはこれで説明ができたが、思い元素については説明がつかないまま
・宇宙創造の約30万年後から光が自由に進めるように成った、その時の光のこだま(宇宙マイクロ波背景放射)は今も観測できるはず
・同じ頃ホイル、ゴールド、ボンディが定常宇宙論を展開
Ⅴ:パラダイムシフト
①矛盾の解消
・バーデ、サンディッジが銀河までの距離を修正し、宇宙の年齢が正された
・ホイルが重い元素の創生を解明、死にゆく星の中で生まれていた
・その後電波天文学により銀河の分布が明らかに、定常宇宙論との矛盾が起きた
・セレンディピティによりCMB放射を偶然発見→論争はビッグバン中心に
・1992年、COBE衛生によりCMB放射のゆらぎを観測、ビッグバンの証拠が発見された -
下巻はビッグバン宇宙論が定説となるまでの歴史を一通り。宇宙背景放射とかその辺が証拠になって今に至る、と。今まで読んだ3つのサイモンシンの中では一番、一般向け科学史って感じの内容だった。非常に面白かったのだけれど、ブラックホールとかダークマター的な粒子の話とかまではいかなかった。今日新聞でたまたまニュートラリノ?とかいう知らない粒子の話を読んだのだけれど、CERNで実験して探す予定らしい。ダークマターの候補らしく、本著の後も宇宙、素粒子物理は日々進化しているようだ。エーテルとヒッグス粒子の違いも分からない自分には、もうお話としてもついていけなくなりつつある…
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宇宙論の面白さというのは未知の塊である事だと思う。
青木氏もあとがきで書かれているが、その未知に対して人類が科学的方法によって一歩一歩前進していく過程が本書に描かれている。
その仮説、検証、考察の繰り返しの過程は宇宙のみならず未知に対する取り組みとして普段の生活における教訓ともいえる。
毎回思う事だが改めてサイモンシン氏の知識、取材力、表現力と青木氏の意訳の上手さに感服した。 -
この人 凄い!
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下巻はほぼビックバン宇宙論が確定するまでの、観測と物理と理論を軸とした人間模様。理論が観測によって打ち破られたり、補強されながら、共通の認識とされていく歴史は中なかスペクタクル。歴史モノとして読んでも十二分に面白いんじゃなかろうか。
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面白い。ゆっくり読みたいのでデジタル版が欲しいがない。自炊するしかないか。