四龍海城

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103299813

感想・レビュー・書評

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  • オホーツク海に地図に載らない日本ではない城がある。
    閉じ込められ、城の人になれば戻ることはない。
    中学生の二人の男の子が出会い、友情を育む。
    大事な何かが次第に明らかになっていく。
    ちょっぴり切ない、夏の物語。

  • 健太郎の家の近くの海に、ずっと前から不気味な塔が建っている。地図にもインターネットにも載っていない、謎の建物。夏休みの最初の午後、憂鬱な気持ちで海岸にいた健太郎は、気が付くとその塔に「さらわれ」ていた。そこには感情がなくなった人々の群、閉じ込められた十数人の大人たち、そして昏い目をした少年、貴希がいた。健太郎と貴希は次第に心を通わせ、塔を出るための「出城料」を共に探し始める…。少年たちのある夏、切なすぎる冒険譚(「BOOK」データベースより)

    なんだか健太郎と貴希の関係が、『No.6』の紫苑とネズミに見えてしかたなかった~。
    出城料が何かっていうのはまぁ早くからわかっちゃうのだけれど、この二人のいちゃいちゃっぷり(あ、実際はそんな事してません)を眺めるだけで楽しかった!!!
    気のいい兄ちゃんの関くんもよいキャラでした。
    ただのチャラ男だと思ってたら、トランペット吹きだったなんて。
    なにそのギャップ萌え。
    でもラストで城を出てしまったという事は、例のアレを失ってしまったという事で・・・。
    うーん、やっぱりちょっと哀しいな。
    救いのないラストにはしないだろうと、勝手に思っていたところがあるので、今回のラストには驚き。
    もの悲しさを後に残すラストは嫌いじゃないですが、貴希が哀れで哀れでたまんなかったです。

    きれいだ、と息をのむ。
    きれいで、きれいで。
    でも、もう二度と。
    音色のすべてが鋭い痛みを伴って迫る。あれは、さよならと言っている。さよなら、ずっと、絶対、忘れないと。それが健太郎にはわかる。伝わる。

    うをを泣ける!
    ピエール・ポルトの「フライデー・ナイト・ファンタジー」、ちょっとようつべで聞いてくるー。

  • 【健太郎の家の近くの海に、ずっと前から不気味な塔が建っている。地図にもインターネットにも載っていない、謎の建物。夏休みの最初の午後、憂鬱な気持ちで海岸にいた健太郎は、気が付くとその塔に「さらわれ」ていた。そこには感情がなくなった人々の群、閉じ込められた十数人の大人たち、そして昏い目をした少年、貴希がいた。健太郎と貴希は次第に心を通わせ、塔を出るための「出城料」を共に探し始める…。少年たちのある夏、切なすぎる冒険譚。 】

  • 「吃音」があるため、人とうまく接することのできない主人公は、不思議な建物にやって来た。
    何よりも自己紹介が苦手な彼は、自分のしゃべりにまったく何の感情を見せることのなかった一人の少年に興味を持つことになる。
    打ち解けあった二人は、この建物を出るために奔走するのだが…
    何となく話が見えてはいましたが、落ち着いたとても読みやすいお話だったと思います。
    大人だけでなく子どもが読むことも、おススメ。

  • 秀逸ですな。SFとミステリが合体して、いい話になってますな。

  • 今回の乾作品は、北海道のオホーツク沿岸を舞台にしたファンタジック・ミステリ。主人公の一人、健太郎は中学生一年生なので、どちらかというとヤング・アダルト向けか。

    健太郎の住む道東の龍ノ岬海岸から隣町の霧笛海岸にかけての沖合およそ4キロメートルの場所に、地元の人で誰ひとりとして知らぬものはいない奇妙な高い塔が建っている。

    不思議なことに、どんな地図を調べても記載されておらず、日本の領海内なのにそこは日本ではないらしい。また、地元では海岸に近づくと「神隠し」や「さらわれ」に遭うので、不用意に近づかぬよう口うるさく言われてもいた。ある日、健太郎は引き潮に誘われて、城へ迷い込む、、、

    「城」は特別なルールに仕切られ、囚われた人々はいつしか無気力化し城の中の工場で働かされるらしい。わずかな人だけが、出城料を払いそこを出られるというのだが、、、

    これまで友達らしい友だちがいなかった健太郎は、城の中で出会った中学二年生の葛城貴希と知り合い、新しい自分を見出していく。人との出会いとそれが生み出す自分発見の過程が、奇妙な場所「四龍海城」を舞台に描写されていく。

  • 中学生の健太郎は、海の向こうの四龍海城に閉じ込められてしまい、城で出会った貴希と、戻る為の「出城料」の謎を探る事にしたが・・・
    相変わらず巧いし、二人の少年の不器用な感じとか、雰囲気は好き。
    でも、やっぱり、この結末は個人的にはイヤかなぁ。

  • 海の奥にそびえ立つ異界の城に迷い込んでしまった中学生健太郎。
    そこを出るためには「出城料」を支払わねばならず、
    城で出会った貴希と共に出城料の正体を探す。

    乾ルカ今度はこうきたか!!な異型青春小説。

    中盤で出城料の謎はわかっちゃったけど、
    でも最後まで引っ張られ
    切ないラストにやられた。

    電力や城人のあたりももっと書き込んでほしかったな。

    中高生の夏休み読書感想文にイチオシ。

    【図書館・初読・8/3読了】

  • あの不気味な城は結局なんだったのだろう。なんのためにそこにあるのか。電力を日本政府に売っているという話は本当なのか。そのへんの謎解きはいっさいないまま話が進行するので、若干もどかしい。
    関がやってきたことが、明らかに物語の転換地点だということがよくわかるし、そこからの展開でうすうす出城料の内容がわかってしまった。わかってしまっただけにラストに向かって読み進むのが辛くてたまらなかった。なぜ健太郎は気づかないのだ、とイライラしてしまう。
    ラストの一行は胸に刺さる。
    「フライデー・ナイト・ファンタジー」は名曲です。

  • ふとしたことで異界「四龍海城」に迷い込んでしまった少年の物語。奇妙な城内の世界。感情のない城人たち。そこで育まれる友情と、自分が変わっていくことへの恐怖。そして、城を出るために必要な条件とは何か、という謎解きの要素もあります。
    奇妙な世界観が圧倒的に美しく。しかし非常な恐ろしさも感じさせられました。特に「出城料」の正体は、終盤になると見当がつきますが。……まさかそんなにも残酷なことだとは。
    どきどきはらはらの展開と、ほほえましい友情物語と、そして切なさを残すラスト。とても悲しいのだけれど、後味はどこかしら優しく感じられます。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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